農作業研究
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研究論文
  • 四宮 一隆, 山本 清仁, 丸居 篤, 飯田 俊彰
    2025 年60 巻1 号 p. 3-12
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル フリー

    水稲の有機栽培の面積拡大には省力的な雑草抑制技術の導入が不可欠である.本研究では,除草作業の省力化に有効な自動抑草ロボット(以下,抑草ロボット)の導入が水稲生産全体の作業時間に与える影響を調査した.茨城県坂東市の有機栽培ほ場において,抑草ロボットの導入年(2023)と未導入年(2022)の作業時間を比較した結果,全体の延べ作業時間は最大で30%削減されることが示唆された.特に,乗用型水田除草機による除草作業は87%,人力による除草作業は79%の作業時間が削減された.ただし,潜在的に雑草発生量が多いほ場では抑草ロボットのみでの抑草は難しく,乗用型水田除草機による除草作業が2回必要となった.一方で,耕起,砕土,均平,畦塗り,畦畔修繕の作業時間は増加したが,これは,抑草ロボットの安定的な稼働に必要なほ場の均平化と水深維持のため,これらの作業を丁寧に実施した結果と推察された.また,抑草ロボット導入により水管理のほ場巡回回数は増加したが,1回あたりの作業時間が短縮されたため,延べ作業時間には差が見られなかった.これは,水稲苗の移植前の畦畔修繕作業が丁寧に実施されたことで,従来の巡回時に必要だった漏水発生の有無の確認や修繕作業が不要となり,水深の確認と給水栓の開閉作業のみが行われたためと考えられた.

研究報文
  • 梅野 覚, 西川 純, 菊池 豊
    2025 年60 巻1 号 p. 13-24
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル フリー

    乗用型農業機械の周囲における低視認性に関する課題を明らかにするため,農業機械の周囲における低視認性,視認性改善装備に関するアンケート調査を行った.本調査は,2022年から2024年の間に農研機構 農業機械研究部門を訪問した農業者479人を対象に行った.調査の結果,88.9%の回答者が農業機械の低視認性が問題と認識しており,特に作業機付き乗用トラクタ,コンバイン,田植機で視認性が低いと認識していた.また,回答者の48.0~71.6%が,これら3機種の機体後方の視認性改善を求めていた.さらに,視認性改善装備として,カメラモニタ,安全センサ,警報装置,ミラー,AIカメラ,自動運転が回答者に期待されていた.これらの装備への支出額は,ミラーでは2~5万円,カメラモニタ・自動運転では2~10万円,安全センサ・警報装置では3~5万円,AIカメラでは3~10万円がそれぞれ希望された.

  • 田邊 大, 田中 惣士, 冠 秀昭
    2025 年60 巻1 号 p. 25-35
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル フリー

    土壌水分は,農業において農業機械の作業性や作物の生育を左右する重要な要素である.既往の土壌水分を推定するリモートセンシング手法では,センサーが高価であることや解析に時間がかかる,撮影時の外的環境に影響を受けるなどの課題がある.本研究では,安価で外的環境による影響を受けにくい,リモートセンシングによる土壌水分推定手法を確立するために,土壌の可視光画像とCNNを活用した土壌水分推定CNNモデルを試作し,その性能を評価した.試作した土壌水分推定CNNモデルは,多湿黒ボク土に対して高い精度(R2 = 0.79~0.93)で土壌水分を推定することができた.土壌水分推定CNNモデルは,土壌の可視光画像から土壌水分を推定することが可能で,外的環境による影響が見られないことから,既往の土壌水分を推定するリモートセンシング手法と比較して安価・簡便で環境を選ばない推定手法であると示唆された.

  • 落合 将暉, 島 武男, 石井 孝典
    2025 年60 巻1 号 p. 37-45
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,UAV(Unmanned Aerial Vehicle)で撮影したRGB画像の教師あり分類により,サツマイモ基腐病の被害株率の推定と被害状況の可視化を試みた.まず,画像内のかんしょ栽培圃場の被覆状況を分類するために,3種類の教師あり分類の精度を比較した.その結果,ランダムフォレストが最も分類精度が高く,RGB画像の色情報に基づき圃場内の健全葉,黄化葉,枯死葉,マルチ,土壌を0.880の正解率で分類できた.次に,分類された黄化葉と枯死葉の合計割合と地上調査による被害株率との関係を解析したところ,有意な相関関係がありR2が0.41以上の線形回帰式が得られたことから,基腐病の被害株率を推定できると考えられた.さらに,作成したランダムフォレストモデルをRGB画像に適用することで,基腐病による被害発生・拡大状況とその経時変化を可視化できることが分かった.一方,雑草が多い圃場では画像上でかんしょの茎葉状態を評価できないため,推定精度の低下が顕著だった.以上のことから,雑草などによる被覆に留意する必要があるものの,今回作成したモデルを用いることで,UAVで撮影したRGB画像からサツマイモ基腐病の被害株率の推定と被害状況の可視化が可能であることが示された.

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