日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
選択された号の論文の918件中201~250を表示しています
  • 服部 一樹, 中村 研三, 石黒 澄衞
    p. 202
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
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    ジャスモン酸(JA)は植物の病虫害抵抗反応に重要な植物ホルモンで、傷害により一過的に多量に生合成される。JAは葉緑体の脂質に含まれるリノレン酸から生合成されるが、シロイヌナズナの葉の葉緑体には平常時でも膜脂質に結合したJAの生合成中間体が多量に存在するとの報告があり、傷害時にはこの中間体を遊離させることでJAを急速に生成しているのかもしれない。リノレン酸にせよ合成中間体にせよ、膜脂質から遊離するにはリパーゼが必要である。我々はJA生成に関わるリパーゼとして開花直前の蕾で発現するDAD1を同定しているが、dad1突然変異体でも傷害によるJAの生成は見られることから、傷害誘導に関与するリパーゼは別に存在すると考えられる。そこで、このJAの傷害誘導に働くリパーゼの同定を目的として実験を行った。
     シロイヌナズナのゲノムにはDAD1に相同性を示す遺伝子が11個あり、そのうち6個(DAL1-DAL6)が葉緑体のリパーゼをコードすると推定される。発現解析の結果、DAL2, 3, 4 は傷害を与えた葉でも与えない葉でも発現していたのに対し、DAL6DAD1は傷害を与えた葉のみで強く発現していた。最も発現レベルの高いDAL3の遺伝子破壊株を単離して調べてみたが、傷害によるJAの生成に伴って発現するVSP遺伝子の発現量は野生型と同じであった。現在これらの遺伝子の多重突然変異体を作成して解析を進めている。DAL3タンパク質の細胞内局在部位の解析についても併せて報告する。
  • 今西 俊介, 永田 雅靖
    p. 203
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
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     トマト果実の成熟は、生長の中で強度に制御かつ高度にプログラムされているが、その分子機構に関しては不明な部分が多い。生化学および分子生物学的解析から、成熟を制御している内的因子としてエチレンが大きな役割を果たしていることが知られている。また、ジャスモン酸等のオクタデカノイド類は、新しい植物ホルモンとして、植物の病害抵抗性や、老化、成熟に深く関わっていると考えられる。トマト果実へジャスモン酸等オクタデカノイド類を処理すると、エチレン生成量の上昇を引き起こすことが報告されている。本研究では、トマト果実の成熟関連遺伝子群の発現に対するオクタデカノイド類の影響を明らかにすることを目的とする。
     様々な成熟ステージの普通種もしくは成熟変異種のトマト果肉組織から、コルクボーラーによって果肉ディスクを作製し、蒸留水、もしくはエテフォン、ジャスモン酸メチルエステルで処理し、エチレン生合成系等成熟関連遺伝子について発現レベルを解析した。その結果、ジャスモン酸メチルエステル24時間の処理によって、LeACO1およびLeACS2遺伝子については、発現レベルの上昇が見られたが、成熟特異的に発現することが知られるLeACS4遺伝子の発現については、顕著な影響は見られなかった。
  • 関本(佐々木) 結子, 多木 希, 大林 武, 櫻井 望, 鈴木 秀幸, 青野 光子, 野路 征昭, 斉藤 和季, 高宮 建一郎, 柴田 大 ...
    p. 204
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     ジャスモン酸(JA)やメチルジャスモン酸(MeJA)等のJA類は、病傷害応答や老化、葯の開裂に関与するシグナル物質として知られている。本研究ではこれまでにMeJAに応答する遺伝子群として、JA生合成遺伝子群、トリプトファン生合成遺伝子群、オーキシンやサリチル酸の代謝に関与する遺伝子を報告してきた。
     今回、JA類に応答する遺伝子群をさらに大規模に同定するために、13,516 EST(8,384遺伝子相当)をスポットしたcDNAマクロアレイを行い、JA類に応答する300遺伝子座を得た。得られたJA類応答遺伝子群を推定された機能ごとに分類するために、まずアミノ酸や二次代謝産物の合成に関与する遺伝子群に着目した。その結果、先に報告した遺伝子群に加え、オーキシン生合成、インドールグルコシノレイト生合成、硫黄同化、グルタチオン生合成、およびアスコルビン酸の代謝に関わる遺伝子群が見出された。さらに詳細にJA類応答遺伝子群を解析した結果、これら代謝経路のほぼ全てのステップにおける遺伝子の発現がJA類により誘導されることが明らかになった。含硫化合物の定量やアスコルビン酸再生系に関わる酵素活性の測定から、ジャスモン酸類が実際に生体内でこれらの代謝経路を活性化することが示唆されたため、その結果について報告する。
  • 軸丸 裕介, 浅見 忠男, 瀬戸 秀春, 吉田 茂男, 横山 正, 小原 直美, 長谷川 守文, 児玉 治, 西山 真, 野尻 秀昭, 山根 ...
    p. 205
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
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     ジャスモン酸(JA)結合タンパク質の単離・解析に用いる分子プローブの開発を目的として、JA-アミノ酸複合体、JA-biotin複合体、JA-dexamethasone複合体、JA-FITC複合体を合成し、3種の検定系を用いてそれらの生理活性検定を行った。天然に存在することが報告されているJA-アミノ酸複合体については、イネ伸長抑制活性検定で天然型の(−)-JA-L-アミノ酸、非天然型の(+)-JA-L-アミノ酸がほぼ同等の生理活性、ダイズ培養細胞phenylalanine ammonia-lyase(PAL)誘導活性検定では天然型が非天然型よりも活性が高く、イネファイトアレキシン誘導活性検定では、天然型のみが活性を示し非天然型が不活性であった。JA-biotin複合体、JA-dexamethasone複合体は、イネ伸長抑制活性、PAL誘導活性で微弱な活性を示したが、JA-FITC複合体は全ての活性検定系で不活性であった。以上の結果より、JA-FITC複合体以外のJA誘導体はJA結合タンパク質の単離・解析に有用であることが示された。また、合成した誘導体の活性スペクトルが異なることから、それぞれの検定系で異なるタイプの受容体が機能している可能性が示された。
  • Ivan Galis, Mami Sasaki, Hiroo Fukuda, Ken Matsuoka
    p. 206
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
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    Expressed sequence tag (EST) library was prepared from a model tobacco BY-2 cell culture. This EST library includes approximately 10,000 partial cDNA clones that are now opened to public users at (http://mrg.psc.riken.go.jp/strc/). We also carried out multiple microarray analyses with the selected EST clones, and with particular interest in the plant hormone-regulated gene expression. As one example, BY-2 cells cultivated under auxin-deficient conditions were treated with stress-related hormones salicylic acid, abscisic acid and methyl jasmonate. The expression patterns induced by these hormones with a special focus in commonly and/or differentially regulated genes, and the correlation of gene expression with the hormone-induced phenotypes, will be discussed.
  • Mamoru Mimuro, Seiji Akimoto, Takanori Goto, Makio Yokono, Machiko Aki ...
    p. 207
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    To understand the function of Chl a in Acaryochloris marina in which Chl d is a major pigment, we measured delayed fluorescence (DF) and estimated a pigment content. A. marina was grown in BG 11 medium under incandescent light with intensities of 5, 15, and 35 μE/(m2 sec). DF in the nanosecond time range was measured with a time-correlated single-photon counting method. Pigment content was estimated by HPLC. The DF was observed only in the wavelength region of Chl a both in A. marina and Synechocystis sp. PCC 6803, and the DF completely disappeared by heat-treatment in both species. Analyses on pigment content revealed that the Chl a/Pheo a ratio decreased as decrease in light intensities, but never lowered than one. These clearly indicated that the primary electron donor of the PS II in A. marina is Chl a as in another cyanobacteria.
  • 村上 怜子, 伊福 健太郎, 高林 厚史, 鹿内 利治, 遠藤 剛, 佐藤 文彦
    p. 208
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
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    光化学系IIのルーメン側に存在する表在性33-kDaタンパク質(PsbO、もしくはOEC33)は、すべての光合成器官に共通して存在し、光合成酸素発生に重要な働きを持つタンパク質である。シロイヌナズナにおいて、このタンパク質はpsbO、psbO2の2つの遺伝子によってコードされている。これらの遺伝子産物は高い相同性を有しているが、その蓄積量はpsbO遺伝子に由来するPsbOタンパク質のほうが明らかにおおい。psbO遺伝子に変異をもち、PsbOタンパク質が合成されないシロイヌナズナの突然変異体を用いた解析の結果、psbO2遺伝子のみではpsbO遺伝子の欠損を補えないことが明らかとなった。すなわち、両遺伝子の発現および機能に差異が存在する可能性が示唆された。本研究では、両タンパク質の機能を検証するため、大腸菌大量発現系を用いて組換えPsbO、PsbO2タンパク質を調製するとともに、精製したこれらタンパク質とホウレンソウのPSII膜を用いてin vitro再構成実験を行なった。その結果、PsbO2タンパク質が結合することによる酸素発生活性の回復は、PsbOタンパク質が結合した場合よりも低く、両タンパク質の間には機能的差異が存在することが示唆された。現在、両タンパク質のPSII膜への結合活性の検討を含めた、より詳細な解析をすすめている。
  • 石原 靖子, 山本 由弥子, 伊福 健太郎, 佐藤 文彦
    p. 209
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    タバコ(Nicotiana tabacum)の酸素発生系表在性23-kDaタンパク質は4つのpsbP isogenesにコードされている。これらのpsbP遺伝子は配列相同性によりグループI(1A, 5B)とグループII(2AF, 3F)とに分類でき、グループIIが主な成分として発現している。本研究では、2つのpsbP遺伝子グループの機能を明らかにする為、RNAi法により作製したグループI及びグループII特異的PsbP発現抑制形質転換タバコ(山本他、本学会2004年会)の解析を行っている。
    Western解析とNorthern解析によりそれぞれのPsbPグループの発現抑制がT1世代でも維持されていることを確認した。次いで、T1抑制体を用いてクロロフィル蛍光を測定した。グループI抑制体ではコントロール株と顕著な差は示されなかったが、グループII抑制体では高いクロロフィル蛍光(F0)と強光条件下における光合成活性の低下が観測された。PsbPの減少による光合成活性の低下は、これまで植物体レベルでは報告がなく初めての例である。この光合成活性の低下が、PsbPのグループ間の機能の差、あるいは単に発現量の差によるものなのかを明らかにする為、現在、T2抑制体で詳細な解析を進めると共に、グループ特異的抑制体に異なるグループのpsbP過剰発現コンストラクトを導入した過剰発現体を作製している。
  • Hiroshi Ohkawa, Leeann Thornton, Yasuhiro Kashino, Nir Keren, Johnna R ...
    p. 210
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    Photosystem II, a large membrane protein complex, catalyzes the important reaction of water oxidation to molecular oxygen. Many PSII subunits are conserved between plants, green algae, and cyanobacteria. The extrinsic proteins that comprise the oxygen evolving complex differ between cyanobacteria and chloroplasts. In the current accepted model, higher plants and green algae have PsbO, PsbP and PsbQ, while cyanobacteria contain PsbO, PsbV and PsbU. Interestingly, homologs of both PsbP and PsbQ have been found according to previous genomic and proteomic analysis in cyanobacterium, Synechocystis 6803. To clarify the function of these two proteins in cyanobacterial PSII, we have analyzed isolated PSII complexes from knockout mutants of both proteins. In this presentation, we demonstrate that the functional roles of PsbP and PsbQ proteins are conserved between cyanobacteria and plants and that five lumenal extrinsic proteins are present in cyanobacterial PSII. [Supported by National Science Foundation]
  • 鈴木 健裕, 藤利 彰彦, 太田 尚孝, 榎並 勲
    p. 211
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     我々は既に、緑藻の表在性23, 17 kDa蛋白は他の表在性蛋白の有無に関わらずPSII膜蛋白に直接結合し、高等植物とは大きく異なる性質を示すことを報告した(Suzuki et al., Plant Cell Physiol. 44, 76-84, 2003)。この結合様式の違いを明らかにするために、我々は様々な組み合わせの表在性蛋白を用いて緑藻(Chlamydomonas reinhardtii)と高等植物(spinach)のPSIIに再構成実験を行った。その結果、緑藻の表在性蛋白はspinach PSIIには直接単独では結合できず、緑藻の表在性蛋白がPSIIへ直接結合できる理由は、緑藻のPSII膜蛋白に依存することが示めされた。さらに、我々は23, 17 kDa蛋白がどのPSII膜蛋白と相互作用しているかを調べる目的で、緑藻PSIIの水溶性カルボジイミドを用いた架橋実験を行った。その結果、緑藻の23 kDa蛋白はcytchrome b559の大型サブユニットと架橋することが判明した。従って、23 kDa蛋白は cytchrome b559と静電的に結合していることになる。spinach PSIIではcytchrome b559は表在性33 kDa蛋白と架橋することが明らかになっているので、高等植物と緑藻のPSIIではcytchrome b559と相互作用する表在性蛋白が異なる事になる。
  • 由比 賢蔵, 鈴木 健裕, 太田 尚孝, 榎並 勲
    p. 212
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    表在性33 kDa蛋白は全ての酸素発生型のPSIIに存在し、Mnクラスターの安定化と機能保持に重要な役割をもつ蛋白で、PSII膜蛋白に静電的結合と水素結合により比較的緩く結合している。我々はすでに、蛋白表面の電荷を消去する化学修飾法を用いて33 kDa蛋白のPSII膜蛋白への結合には正電荷が重要であることを報告し、ホウレンソウおよび紅藻の33 kDa蛋白に共通して6つのドメイン内に存在するリジン残基がPSII膜蛋白との静電的結合に関与していると推定した。本研究では、これらの6つのドメイン内に存在するリジン残基の中でどのリジン残基がPSII膜蛋白との静電的結合に直接関与しているか同定するため、紅藻の33 kDa蛋白の部位特異的変異による解析を試みた。その結果15番目と164番目のリジンをグリシンに置換した33 kDa蛋白は機能的にはPSII膜蛋白に結合できないことが明らかになった。一方、198番目のリジンをグリシンに置換した33 kDa蛋白は機能的に結合した。また、74番目のリジンをグリシンに置換したものでは、結合による酸素発生の活性化はnativeなものの2/3に抑えられた。他の部位特異的変異した33 kDa蛋白の結果とも合わせ、33 kDa蛋白のどのリジン残基がPSII膜蛋白との静電的結合に直接関与しているか討論する予定である。
  • 岩井 雅子, 片山 光徳, 池内 昌彦
    p. 213
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    PSII-Hタンパク質は 植物やシアノバクテリアの光化学系II複合体に結合している6.5 kDaの膜貫通タンパク質で、植物ではN末端がリン酸化される。これまでに破壊株の解析からPSII-Hは系II複合体でのQAQB間の電子伝達、系II複合体の分子集合や安定性に関わることが報告されている。我々は好熱性シアノバクテリア Thermosynechococcus elongatus BP-1を用い、psbH遺伝子破壊株を作製した。破壊株は光独立栄養条件で野生株よりも増殖が顕著に遅くなった。細胞、チラコイドの状態での2,6-DCBQを受容体とする系II複合体の酸素発生活性は、野生株の半分であった。陰イオン交換カラムを用いて系II複合体を分画したところ、野生株では主に二量体として回収されたのに対し、破壊株では二量体がほとんど消失し、野生株では小さかった2つのピークが大幅に増加していた。1つは表在性タンパク質 (33kDa, cytC550, 12kDa) を失い、酸素発生活性をもたない単量体の系II複合体であり、他方は表在性タンパク質も活性も保持した単量体の系II複合体であった。また破壊株の系II複合体では単量体、二量体に関わらず、PSII-Xが消失していた。以上の結果から、PSII-HはPSII-Xと表在性タンパク質の結合した二量体の系II複合体の安定化にかかわることが示唆された。
  • 水澤 直樹, 石井 麻子, 中澤 重顕, 寺本 陽彦, 小野 高明
    p. 214
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系II(系II)D1蛋白質前駆体はC末端延長部分がプロセッシングを受け成熟化するが、切断により露出するC末端アラニン(A344)のカルボキシル基が酸素発生系Mnクラスターの配位子となっていると提唱されている。 本研究ではA344をGly、Val、Aspに置換したSynechocystis sp. PCC6803変異株(A344G、A344V、A344D)を作製し、変異がMnクラスターの構造と機能に与える影響を検討した。変異導入のためのホスト株はSer345をstopコドンに置換して延長配列を予め欠失させ、さらにHisタグをCP47C末端に付与してある。光独立栄養条件(50 μE m-2s-1)では、A344G、A344 V株はS345-stop株とほぼ同等の、A344D株はかなり遅い生育速度を示し、それぞれの細胞はS345-stop に対し90、 90、40%の酸素発生活性を示した。光強度を200 μE m-2s-1に上げると、A344G、A344Dは光独立栄養的に生育できなくなった。A344G、A344D両株は熱発光Q-バンド(S2QA-)、B-バンド (S2QB-)ともにピーク温度がS345-stopに比べ5oC高温にシフトしていた。変異株からNiカラムにより単離した系IIコア標品のポリペプチド組成は変異によって影響を受けていなかった。以上の結果はA344のGly、Aspへの置換はMnクラスター自身もしくはその近傍に直接影響を与えることを示唆している。現在、変異がMnクラスターの構造に与える影響を検討するためEPR測定をおこなっており、その結果もあわせて報告する。
  • 山成 敏広, 木村 行宏, 水澤 直樹, 石井 麻子, 小野 高明
    p. 215
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    光合成酸素発生反応の触媒中心は光化学系IIに存在する4核Mnクラスターであるが、その詳細な構造は不明である。本研究ではMnクラスターの推定上の配位子の一つD1タンパク質のC末端Ala344をGly, Val, Aspで置換したSynechocystis sp. PCC 6803変異体(A344G, A344V, A344D)から調製した光化学系IIコア標品について光誘起S2/S1赤外吸収差スペクトルを測定し、変異がMnクラスターに与える影響を検討した。すべての変異体でカルボキシレート配位子由来のバンド (1600 - 1300 cm-1)が、野生株と比較して顕著に異なっていた。また、A344Gでは1112(-) cm-1のバンドが強く出現し、A344VではアミドI, II領域にも大きな変化が見られた。以上の結果は、C末端アミノ酸側鎖のわずかな違いがMnクラスター周辺のタンパク質、アミノ酸配位子の構造に大きな影響を与えている事を示している。また、Alaと構造的に最も類似したGly置換体(A344G)において、Mn-O-Mn骨格振動に帰属されている606(+)/625(-) cm-1のバンドに顕著な変化が見られ、Mnクラスター自身の構造に変化が起こっている事が示唆された。
  • 河盛 阿佐子, 沈 建仁, 三野 広幸, 古川 貢, 松岡 英一, 加藤 立久
    p. 216
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    シアノバクテリアのPS II単結晶S0とS2状態で6Kの低温でW-バンド(95GHz)の周波数でマルチラインEPRが観測された。マルチラインはS2状態で21本の超微細構造よりなり,これは4個のマンガンがスペクトルに関与していることを示す。超微細構造は結晶の方向に拠らず等方的であるが,各スペクトルの位置は角度とともに変化するので、無配向試料では信号は観測されない。NH2OHで還元して得られたS0状態でも似たスペクトルが観測された。これらの結果はg-因子の異方性を考慮してシミュレーションを行っている。
  • 長坂 将明, 杉浦 美羽, 野口 巧
    p. 217
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系IIにおいて、第二キノン電子受容体(QB)は、第一キノン電子受容体(QA)により還元され、さらに二電子還元の後、プロトン化されてキノール分子として蛋白質より遊離する。こうしたQBの機能発現と、系II蛋白質のQB結合部位の構造との関係は未だ明らかとされていない。そこで本研究では、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用い、QB結合部位におけるプラストキノン分子の構造と、QBの一電子還元の際の近傍蛋白質の構造変化について調べた。
    ホウレンソウまたはラン藻より調製した光化学系II標品を用い、酸素発生系とQB間のFTIR差スペクトル(S2QB-/S1QB)と、酸素発生系のみの差スペクトル(S2/S1)を測定し、二重差スペクトルを計算することにより、QB-/QB差スペクトルを得た。このスペクトルには、セミキノンアニオンのCO伸縮振動によるバンドが1480 cm-1に観測された。この振動数はQA-のCO振動数よりも2 cm-1高く、QB-とQA-ではCO基の水素結合強度が異なることが示された。また、QB-/QBスペクトルには、1747 cm-1にCOOH基のC=O伸縮振動由来の正のバンドが観測され、QB-生成に伴い、近傍のAspまたはGlu側鎖がプロトン化を受けていることが明らかとなった。
  • 鈴木 博行, 杉浦 美羽, 野口 巧
    p. 218
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系II蛋白質複合体中の酸素発生Mnクラスターにおいて、二分子の水は4つのプロトンと1分子の酸素に分解される。この水分解反応はS状態と呼ばれる中間状態(S0-S4)の光駆動サイクル(S状態サイクル)によって行われることが知られているが、その反応の分子機構は、未だほとんど不明である。本研究では、閃光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトル法を用いて、S状態サイクルにおける各中間状態遷移のpH依存性を調べ、水分解反応におけるプロトン放出過程について調べた。
    好熱ラン藻Thermosynechococcus elongatusから調製した光化学系IIコア蛋白質に、4回閃光照射を行い、それぞれの閃光によるS1→S2, S2→S3, S3→S0, S0→S1遷移の際のFTIR差スペクトルを測定した。この測定をpH4.0-10.0の範囲の緩衝液を用いて行った。各pHでの閃光誘起差スペクトルを、pH6.0における標準スペクトルを用いてフィッティングすることによって、各S状態遷移の効率を求めた。その結果、S2→S3、S3→S0、S0→S1遷移の効率は、低pH側(4.0 < pH < 5.5)で減少し、高pH側(7.0 < pH < 9.0)では、ほとんど変化しない傾向が見られた。このことから、水分解の過程において、S2→S3、S3→S0、S0→S1遷移でプロトンが放出されている可能性が示唆された。
  • 小村 理行, 柴田 穣, 伊藤 繁
    p. 219
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系II(PSII)は77 Kで685 nm(F685)、695 nm(F695)に蛍光ピークを示し、それぞれコアアンテナCP43、CP47上のクロロフィルaの蛍光とされる。シロイヌナズナ生葉のピコ秒領域での蛍光の減衰過程を77 Kよりさらに低い5 K、40 Kで測定し、F685、F695の他に687 nm付近にピークを持つ新しい成分(F687)の存在を確認した。温度が上がるとF687の減衰は速くなった。77 KでもF687は観測されるが、減衰が速くバンド幅も広がるため遅い時間領域ではF695と重なり識別できなかった。単離したホウレンソウPSII 、シアノバクテリアSynechosystis sp. PCC6803のチラコイド膜標品でも5 K-77 Kの範囲でF687は観測され、多くの種においてF687が存在することが確認された。シアノバクテリアは高等植物と比較しF685、F687、F695の減衰が速い。各蛍光バンドの立ち上がりと減衰の過程からPSII内の励起エネルギー移動のモデルを構築した。
  • 三野 広幸, 伊藤 繁
    p. 220
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    植物の酸素発生は光化学系IIにある4つのマンガンからなるマンガンクラスターで行われると考えられている。 マンガンクラスターは酸化状態の低いものからそれぞれSi (i = 0-4 )と表記される。 我々はCa2+除去試料を用いてS1状態で245 Kで短時間(10 s )の光照射によりg=2近傍にbroadな信号が観測されることを今回見出した。 この条件では273 K暗所で静置することによりTrapされたYZラジカルとともにbroad信号は消失し、代わりにS2マルチライン信号が生成する。 TrapされたYZラジカル信号とマルチラインの量はよく対応しており生成したマルチライン信号がTrapされたYZラジカルによる酸化であることがわかる。 一方Broad信号のkineticsはYZラジカルとよく一致しているが生成量はかなり小さい。 broad信号は、同時に観測されているYZラジカルとは明らかに無関係な起源をもち、マンガンクラスターとその近傍に生成したラジカル種との磁気的相互作用由来と考えられる。 
     
  • 木村 行宏, 山成 敏広, 石井 麻子, 小野 高明
    p. 221
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    光合成酸素発生複合体の触媒中心を担う光化学系IIマンガン(Mn)クラスターは、S0からS4の5つの酸素発生反応中間状態(S状態)を経て2分子の水を1分子の酸素に変換することが知られているが、その詳細な反応機構は解明されていない。本研究では赤外分光法を用いて、好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatus光化学系IIコア標品の各S状態間遷移に伴うクラスター骨格振動及びMn-配位子(水分子、アミノ酸)由来の振動の変化を直接検出し、これらのモードに対するH2180置換の効果について調べた。中赤外領域(1800 - 1000 cm-1)ではS2/S1、S3/S2、S0/S3、S1/S0遷移に対応したタンパク質やアミノ酸配位子由来の特徴的な振動構造が観測されたが、これらのバンドに対するH2180置換の効果は見られなかった。一方、低波数領域(650 - 350 cm-1)では650 - 600 cm-1の領域にS状態遷移に伴って符号や強度が変化するバンドが観測された。これらのバンドはH2180置換により顕著な同位体シフトを示したことから、光合成酸素発生反応に密接に関与したMnクラスターの骨格構造、或いはMnクラスターと基質の水分子の相互作用に由来するものであることが示唆された。
  • Yusuke Yoshida, Kohji Hasunua
    p. 222
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    In Neurospora crassa light signal can affect several morphogenesis including stimulation of carotenoid synthesis in mycelia, and 2)perithecial polarity. We have reported that mutation in nucleoside diphosphate kinase, ndk-1P72H showed lack of perithecial polarity. We present that superoxide and hydrogen peroxide may be included in the process of light signal transduction. Using a mutant in superoxide dismutase (Cu/Zn SOD), sod-1 we detected that the production of carotenoid in sod-1 under light was accelerated compared with that of wild type. The photoreceptor mutant wc-1 and wc-2 showed no production of carotenoid in the mycelia. However, double mutant, wc-1, sod-1 and wc-2 sod-1 did not show stimulation of carotenoid synthesis. The vvd mutation in VVD gene, which suppress the function of wc-1 and wc-2, showed enhanced production of carotenoid in the mycelia. The double mutant, vvd, sod-1 showed additive stimulation of carotenoid synthesis.
  • 藤田 悟史, 伊関 峰生, 渡辺 正勝, 吉川 伸哉, 本村 泰三, 川井 浩史, 村上 明男
    p. 223
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     褐藻類は、生活史の特定のステージで2本の鞭毛を持つ遊泳細胞を放出する。ある種の褐藻類の遊泳細胞は顕著な走光性反応を示し、それらは共通して 1)眼点を有する、2)眼点と対峙する鞭毛基部に膨潤部が存在する、3)膨潤部を持つ鞭毛はフラビン由来と思われる緑色蛍光を発する、という特徴をもつ。一方、遊泳細胞の走光性作用スペクトルは、フラビンがその光受容に関与することを示唆している。我々は、褐藻類の鞭毛に局在し光受容体の候補となるフラビンタンパク質を同定するために、鞭毛の単離とタンパク質の精製を試みた。
     褐藻カヤモノリScytosiphon lomentariaの成熟藻体から放出した遊泳細胞を大量に集め、振盪処理と分画遠心により鞭毛を単離した。この鞭毛分画を凍結融解し、可溶成分に含まれるフラビンタンパク質をイオン交換とゲルろ過により分離した。各画分を熱変性させ蛍光スペクトルを測定したところ、120mM NaClおよび40kDa付近の溶出位置にフラビン蛍光のピークが見出された。同じ画分のSDS-PAGE分析により、フラビンは41kDaのタンパク質に結合していることが示された。抽出色素のTLCでは、FMNと同じ移動度のフラビンが検出された。以上の結果は、カヤモノリの鞭毛にFMNを非共有結合する分子量41,000のフラビンタンパク質が存在することを示唆している。
  • 廣瀬 文昭, 原田 浩司, 七夕 高也, 篠村 知子, 島田 浩章, 高野 誠
    p. 224
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     私たちの研究室では、イネにおける光応答反応の解明の一環として青色光受容体であるクリプトクロム(CRY)遺伝子群を単離し、その機能解析を進めている。私たちはこれまでに3種類のクリプトクロム遺伝子(OsCRY1a, 1b, 2)をイネから単離し、それらの発現様式を解析してきた(前年度本大会発表)。今回は、抗OsCRY1a, 1b, 2抗体を用いたタンパク質レベルでの解析とイネの初期光応答反応におけるクリプトクロムの機能解析の結果を報告する。
     まず、イネ・クリプトクロムのC末端側を抗原として認識する抗体(抗OsCRY1a, 1b, 2抗体)を作製し、OsCRY1a, 1b, 2それぞれに特異的であることを確認した。それらの抗体を用いて、イネ・クリプトクロムのタンパク質レベルでの組織特異性を調べた。
     次に、イネ初期生育暗視撮影装置を用いて、イネの子葉鞘の伸長におけるクリプトクロムの機能を解析した。子葉鞘の伸長反応は青色光の短時間照射で抑制されることから、クリプトクロムの関与が示唆されていた。そこで、OsCRY1a, 1b過剰発現イネとWTを用いて、子葉鞘の伸長抑制における青色光の感受性を比較して、クリプトクロムが青色光照射による子葉鞘の伸長抑制に関与していることを明らかにした。また、青色光照射による子葉鞘の伸長抑制以外でのイネ・クリプトクロムの機能を解析するために、様々な組み換えイネを作製し、生育過程を観察した。
  • Ken Haga, Makoto Takano, Moritoshi Iino
    p. 225
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    The cpt1 mutant of rice was isolated in our laboratory as a mutant showing no coleoptile phototropism and severely impaired root phototropism. Map-based cloning of the CPT1 gene indicated that cpt1 mutation is linked to a deletion of 208 kb at position 85 centimorgan on chromosome 2. This region included a gene homologous to Arabidopsis NPH3 (AtNPH3), known to be essential for hypocotyl phototropism. The cpt1 mutant transformed with genomic DNA of rice NPH3 (OsNPH3) showed normal phototropisms of coleoptiles and roots, demonstrating that OsNPH3 is CPT1. The deduced amino acid sequences of OsNPH3/CPT1 and AtNPH3 showed 58% identity. Database and sequence analysis indicated that rice has at least 36 NPH3 homologs and that OsNPH3 is an ortholog of AtNPH3. The fact that mutation in NPH3 genes results in severely impaired phototropism in both Arabidopsis and rice indicates that the product of NPH3 is essential for phototropism of higher plants.
  • 江見 崇, 木下 俊則, 島崎 研一郎
    p. 226
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     フォトトロピンは高等植物において、青色光受容体として機能していることが明らかとなっているが、その下流や周辺で働いている因子についてはほとんど明らかになっていない。本研究ではYeast two-hybrid screeningを行い、ソラマメのフォトトロピン、vfphot1aと結合するタンパク質としてVicia faba dynein light chain like protein, vfDLCを単離した。このvfDLCはvfphot1aのN末端側に結合するが、vfphot1bには結合しなかった。また、ノーザンブロットの結果、vfDLCは孔辺細胞に多く存在することが明らかとなった。vfDLC-GFPを一過的発現させると、vfDLC-GFPは細胞膜上に点線状の蛍光を示した。このDLCは、動物では微小管上を移動するモータータンパク質、ダイニン複合体のサブユニットの一つであることが知られている。そこで、青色光に依存した気孔開口に対する微小管脱重合剤の影響を調べたところ、気孔開口が部分的に阻害された。また、青色光に依存した孔辺細胞プロトプラストのH+-pumpingも微小管脱重合剤に部分的に阻害された。これらの結果から、vfDLCは孔辺細胞において青色光情報伝達の一部として働いていることが考えられた。
  • 木下 俊則, 江見 崇, 冨永 美寿実, 阪本 康司, 土井 道生, 島崎 研一郎
    p. 227
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    青色光は孔辺細胞細胞膜H+-ATPaseを活性化し、気孔開口を引き起こす。最近我々は、気孔開口の青色光受容体がフォトトロピンであることをシロイヌナズナのフォトトロピン変異体を用いて明らかにした。しかしながら、孔辺細胞におけるフォトトロピンの生化学的解析は行われていない。本研究では32Pラベルしたソラマメ孔辺細胞プロトプラストを用いてフォトトロピン(Vfphot)のリン酸化反応を調べた。Vfphotは青色光照射(100 μmol/m2/s, 30 s)によりただちにリン酸化され、照射開始から約1分で最大となり20分でもとのレベルまで脱リン酸化された。一方、細胞膜H+-ATPaseのリン酸化は約5分で最大となり、H+-ATPaseの活性化に先立ってvfphotがリン酸化されることが明らかとなった。この過程において、リン酸化されたVfphotに14-3-3蛋白質が結合することを見出した。14-3-3蛋白質の結合は、青色光照射開始から30秒で最大となり、15分以内に結合が見られなくなった。これらの結果はVfphotのリン酸化部位には、14-3-3の結合に関わる部位と関わらない部位が存在することを示している。さらに、組換えVfphot1bを用いた実験より、14-3-3蛋白質の結合にはLOVドメイン間の344番目のセリン残基(RRKS344)のリン酸化が必須であることが明らかとなった。
  • 井上 晋一郎, 木下 俊則, 島崎 研一郎
    p. 228
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    青色光受容体フォトトロピンは、高等植物において光屈性, 葉緑体定位運動, 葉の展開, 気孔の開口等の反応に関与する。最近我々は、ソラマメ孔辺細胞においてリン酸化されたフォトトロピンに14-3-3蛋白質が結合することを明らかにした。本研究では、シロイヌナズナを用いてフォトトロピン(phot1, phot2)と14-3-3蛋白質の結合について解析を行った。組換え14-3-3蛋白質をプローブとしたFar Western 解析により、黄化芽生え, 緑葉, 孔辺細胞のすべてにおいて青色光照射開始から1分以内にphot1への14-3-3蛋白質の結合が示された。結合の半飽和に必要な青色光強度は7.2 μmol m-2 s-1 (30 秒)であった。また、14-3-3蛋白質の特異的抗体を用いて免疫沈降を行うと、青色光に依存して14-3-3蛋白質とphot1は共同沈降し、これらが細胞内でも結合していることが示された。一方、フォトトロピンのアイソフォームであるphot2には、どの強度の青色光照射によっても14-3-3蛋白質の結合は見られなかった。これらの結果は、14-3-3蛋白質は青色光に依存してphot1に特異的に結合し、この結合はphot1に制御される反応において共通の現象であることを示唆している。さらに、phot1の様々な断片を大腸菌で発現させてFar Western 解析を行い、14-3-3蛋白質の結合部位がLOV1とLOV2の間の領域にのみ存在することを明らかにした。
  • 武宮 淳史, 木下 俊則, 島崎 研一郎
    p. 229
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    青色光受容体であるフォトトロピン(phot1、phot2)は、細胞膜H+-ATPaseの活性化を行い、気孔開口を誘導する。しかしながら、フォトトロピンからH+-ATPaseに至る情報伝達系についてはよくわかっていない。本研究では孔辺細胞青色光情報伝達系におけるプロテインホスファターゼの関与を明らかにするために、タイプ1、タイプ2Aプロテインホスファターゼ(PP1、PP2A)の阻害剤であるトートマイシン(TAU)が青色光情報伝達反応に与える影響について調べた。材料にはソラマメの表皮および表皮から調製した孔辺細胞プロトプラストを用いた。TAUにより青色光に依存した気孔開口はつよく阻害され、気孔開口の駆動力となる青色光に依存したH+放出も阻害された。また、TAUはH+-ATPaseの活性化に必要なこの酵素のリン酸化さらに14-3-3タンパク質の結合を阻害した。しかしながら、TAUは青色光に依存したフォトトロピンの自己リン酸化には影響を与えなかった。これらの結果は、孔辺細胞青色光情報伝達系においてプロテインホスファターゼがフォトトロピンの下流、かつH+-ATPaseの上流でポジティブレギュレーターとして機能していることを示唆している。
  • Xiao Zhang, Heng-Bing Wang, Atsushi Takemiya, Chun-Peng Song, Toshinor ...
    p. 230
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    Blue light (BL)-dependent H+ pumping by guard cells, which drives stomatal opening, is inhibited by phytohormone abscisic acid (ABA). We investigated this response in respect with activity of the plasma membrane H+-ATPase, and hydrogen peroxide (H2O2) generated by ABA in Vicia guard-cell protoplasts (GCPs). BL-dependent phosphorylation of the H+-ATPase and subsequent binding of a 14-3-3 proteins were inhibited by ABA at 10 μM or H2O2 at 1mM in similar degrees. Inhibitions of BL-dependent H+-pumping and phosphorylation of the H+-ATPase by ABA in GCPs were partially reversed by ascorbic acid. A single-cell analysis revealed that H2O2 is generated by ABA in GCPs mainly from guard-cell chloroplasts. Fusicoccin-dependent H+ pumping and binding of a 14-3-3 protein to the H+-ATPase were inhibited slightly by both ABA and H2O2. These findings suggest that H2O2 may be involved in ABA-inhibition of BL-dependent H+-pumping through decrease in phosphorylation levels of the H+-ATPase.
  • 稲田 さやか, 大岸 麻紀, 間山 智子, 岡田 清孝, 酒井 達也
    p. 231
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナにおいて、フォトトロピン1(phot1)とphot2は青色光によって誘導される胚軸光屈性、葉緑体光定位運動、および気孔開口運動の青色光受容体として機能している。つまり、同じ光受容体を介して、植物体の異なる器官で異なる応答反応が誘導される。これまでに、phot1が誘導する胚軸光屈性のシグナル伝達因子として、RPT2とNPH3 が機能することが示唆されている。しかしながら、葉緑体光定位運動と気孔開口運動のシグナル伝達における両者の関与、およびRPT2がphot2の下流で機能しているかどうかについては不明である。rpt2nph3 突然変異体、およびフォトトロピンとの二重変異体の遺伝学的な解析によって、RPT2はphot1が誘導する胚軸光屈性と気孔開口運動に関与しているが、phot2が誘導する応答反応には関与していないことが示された。さらに、RPT2はphot1やNPH3と同様に膜画分に存在し、in vivo でphot1と結合することを明らかにした。一方、NPH3は葉緑体光定位運動と気孔開口運動のどちらのシグナル伝達にも関与していなかった。以上の結果から、phot1とphot2はシグナル伝達因子を使い分けることで3つの異なる応答反応を誘導していると考えられる。
  • 光井 友梨, 笹野 奈緒子, 馳澤 盛一郎, 近藤 矩朗
    p. 232
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    気孔は光照射により開口するが、中でも青色光と赤色光が浸透圧調節により気孔開口を促進する事が知られている。一方、我々は気孔開閉には孔辺細胞の浸透圧変化の他に表層微小管が関与していることを示唆する結果を報告している。表層微小管は概日リズムにより、明け方気孔が開く際に構築され始め、日中は放射状の配向をとり、夜間には消失するという事を報告したが、どのような光が微小管構築に関与しているかは不明である。そこで光による放射状表層微小管の構築と気孔開口のメカニズムを解明する事を目的に、ソラマメの葉で、青色光および赤色光照射下における放射状表層微小管構築と気孔開口度との関係を調べた。その結果、表層微小管は青色光下でも赤色光下でも構築されたが、気孔開口度は青色光を照射した時の方が大きかった。次に、プロピザミドを用いて表層微小管構築を阻害したところ、青色光下のみで気孔開口度の上昇が阻害された。さらに、GFPにより微小管を可視化したシロイヌナズナを用いて青色光あるいは赤色光を照射して気孔開口度と表層微小管の構築を調べたところ、気孔開口度はソラマメと同様に青色光照射時の方が大きかった。青色光でも赤色光でも表層微小管は構築されたが、青色光照射時の方が、よりはっきりした放射状配向を示した。現在表層微小管の配向と気孔開口との関係を調べつつ、さらに微小管構築に関与している光受容体について検討している。
  • 大岸 麻紀, 佐治 健介, 岡田 清孝, 酒井 達也
    p. 233
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナでは、二種の青色光受容体、cryptochrome、phototropinが存在し機能している。Cryptochromeのcry1、cry2は光形態形成を制御し、phototropinであるphot1、phot2は運動応答を制御している。そしてそれぞれ同種の青色光受容体は光強度依存的に重複して機能している。しかし、cryptochromeとphototropinとの間に共通の青色光応答制御が存在するのかどうかは、従来の機能欠失型の機能解析からは、殆ど明らかになっていない。そこで、我々は多重変異体比較法を用い、機能重複に隠されたそれぞれの青色光受容体の機能を検出することを試みた。
    これら四つの青色光受容体全てを欠失した四重変異体を作成し、そのうち一つが回復した三重変異体と、その青色光応答能を比較した。その結果、cryptochromeが新規の青色光に依存したランダムな胚軸の屈曲を制御していること、phototropinが子葉展開という光形態形成に関与していることが明らかになった。マイクロアレイ解析では、青色光応答遺伝子の発現制御において、cry1、cry2は独立に主要な役割を果たしているが、phot1、phot2は補佐的にしか機能していないことが明らかになった。
  • 藤原 恵美, 望月 堂照, 恩田 弥生, 豊島 喜則
    p. 234
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     葉緑体遺伝子psbDは青色光応答プロモーター(psbDLRP)を有し,PEPシグマ因子の一つSIG5により特異的に認識され転写される.シロイヌナズナではPEPシグマ因子としてSIG1-6が同定されており各々核コードであるが,SIG5の転写が他と異なり,クリプトクロムを介し青色光特異的に誘導されることから,我々はpsbDLRPの青色光応答性はSIG5の青色光転写誘導挙動に起因すると結論した.しかし,SIG5転写は弱青色光(5 μmolm-2s-1)で誘導されるが,psbDLRPは弱青色光のみでは活性化されず,青色光に加えて青色光非特異的強光が必要である.本研究では2種の光シグナルによるpsbDLRP活性化制御機構を解析した.
     シロイヌナズナを暗所適応後,青色光(5 μmolm-2s-1)照射すると、SIG5は約30分後から経時的に増加し120分で一定値に達した.ここで赤色光(50 μmolm-2s-1)に切り替えたところ,psbDは速やかに転写誘導され,これはDBMIB処理により促進された.このような結果から、青色光によりSIG5が転写誘導された後,光合成電子移動によるプラストキノンプールの還元状態への移行によりpsbDLRPが活性化されることが示され,psbDの転写が核における青色光情報伝達および葉緑体における還元状態の両者により調節されている可能性が示唆された.
  • Masayoshi Nakasako, Tetsuya Iwata, Daisuke Matsuoka, Katsuaki Inoue, S ...
    p. 235
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    Phototropin (phot) is a plant blue-light receptor. Higher plants has two phot isoforms, phot1 and phot2, each of which has two chromophoric domains named LOV1 and 2 in the N-terminal half, and the C-terminal half works as a serine/threonine kinase. Photoreaction of LOV domains may alter their stracture to activate kinase. To make this clear, small-angle X-ray scattering was measured with phot1 and phot2 of Arabidopsis. Results indicates that LOV1 fragments of both phot1 and phot2 exist in a dimeric form and do not exhibit any detectable light-induced structural change. On the other hand, LOV2 is in a dimmer in phot1 and a monomer in phot2. Futhermore, LOV2 fragment of phot1 shows marked changes in scattering patterns under light illumination, indicating global structure changes during the photoreaction. These results will be discussed in connection with the different roles of LOV domains in regulating the kinase activity of phot.
  • Daisuke Matsuoka, Satoru Tokutomi
    p. 236
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    Phototropin (phot) is a blue-light photoreceptor for tropic responses, relocation of chloroplasts and stomata opening in plants. Phot has two chromophoric domains named LOV 1 and 2 in the N-terminus half, and a serine/threonine protein kinase domain in the C-terminus half. Phot has been shown to be autophosphorylated in response to blue light, however, no other substrate has been detected. Bacterially expressed Arabidopsis phot2 kinase domain (KD) with GST-tag (GST-KD) phoshorylated casein, a common in vitro substrate of ser/thr protein kinase. Using this in vitro analysis system, the roles of the each LOV domain were studied. GST-LOV2-KD phosphorylated casein in a light-dependent manner that was abolished by introduction of mutation blocking photochemical reaction of LOV2. GST-LOV1-LOV2-KD also showed light-activated protein kinase activity. Blocking the photochemical reaction of LOV1 had little effect on the kinase activity. In contrast, that of LOV2 brought significant decrease of the activity
  • Dai Nozaki, Tatsuya Iwata, Tomoko Ishikawa, Takeshi Todo, Satoru Tokut ...
    p. 237
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    Phototropin (phot) is a blue-light receptor in plants. Phot has two FMN binding domains named LOV domain. In response to light absorption, a covalent adduct forms between a cysteine and FMN C(4a), which is called S390. According to the crystal structures of the LOV2 domain of Adiantum phytochrome3 (phy3), a chimeric phytochrome/phototropin, in the dark and S390 states, the side chain of Gln1029 switches hydrogen bond with FMN.
    The structural changes were measured in the Q1029L mutant by low-temperature FTIR spectroscopy. It was implied that hydrogen-bond of FMN C(4)=O group is not formed in Q1029L. Upon formation of S390, hydrogen bond of C(4)=O becomes weaker in both WT and Q1029L. On the other hand, the protein structural changes of Q1029L were smaller than those of WT at room temperature.
    These results suggest that the hydrogen-bonding interaction of Gln1029 with FMN plays an important role in the protein structural changes of phy3-LOV2.
  • 石井 忠, 亀山 眞由美, 小野 裕嗣
    p. 238
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    ペクチンは一次壁の主要な多糖で、ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナンI (RG-I)、ラムノガラクツロナンII (RG-II)の3つの多糖から成る。RG-Iは GalA-Rha二糖をくり返し単位とし、RhaのC-4位にアラビノースやガラクトースから成るオリゴ糖側鎖が結合している。ガラクトース転移酵素(GalT)研究は14C-ラベルしたガラクトース(Gal)の取り込み量によって測定されてきた。本研究ではガラクトオリゴ糖(重合度DP 1-7)の還元性末端を2-アミノベンズアミド(2AB)により蛍光標識した2AB化ガラクトオリゴ糖を受容体として用い、生成物をHPLC, LC/MS NMR、酵素加水分解により解析した。2ABガラクトオリゴ糖(DP 6)、UDP-Galとモヤシミクロソーム画分を反応させると、2時間後にはDPが20に達した。反応生成物のLS/MS、 1H NMR分析、酵素加水分解の結果より、酵素転移産物はβ-1, 4-ガラクトオリゴ糖であることが確認された。Galを側鎖にもつ2ABラベル化RG-IはGalTの受容体となったが、Galを持たない2ABラベル化RG-Iオリゴ糖は受容体にならなかった。
  • 古西 智之, 小竹 敬久, 円谷 陽一
    p. 239
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    ペクチンは高等植物の細胞壁に含まれる多糖の一種で、セルロース、ヘミセルロースとともに植物細胞壁を構成している。本研究では、細胞間接着や細胞壁の間隙形成等に関わると考えられているペクチン側鎖のβ-1,4-ガラクタンの生合成機構に着目した。これまでに、ガラクタン合成に関わるダイズ胚軸のガラクトース転移酵素 (GalT) について、酵素の特徴付けを行なった (Planta, 印刷中)。本酵素をはじめ糖転移酵素の多くはゴルジ体に局在する膜結合型酵素と考えられているが、生化学的手法による植物の糖転移酵素精製は数例しかない。今回はGalTの更なる解析のため、酵素の可溶化、精製について検討した。
    ダイズ胚軸の粗膜画分から、0.75% (w/v) Triton X-100の存在下でGalTの可溶化を検討したところ、総活性の7~8割が可溶性画分に回収された。続いて各種クロマトグラフィーによるGalTの精製を試みた。可溶化GalTは陽イオン交換体に吸着し、かなりの夾雑タンパク質と分離して溶出された。現在、精製標品を用いた生化学的特徴付け、アミノ酸配列解析、ならびにGalT遺伝子の同定を目指して、各種クロマトグラフィーによる酵素の精製を進めている。
  • 石澤 敏洋, 小竹 敬久, 三浦 剛, 稲津 敏行, 円谷 陽一
    p. 240
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     アラビノガラクタンプロテイン(AGP)は高等植物の細胞間マトリックスや細胞膜に存在し、器官の分化・成長に伴いその糖鎖構造が変化する。AGPの糖鎖の基本骨格はβ-3,6-ガラクタンで、側鎖を構成するβ-1,6-結合したGal残基にα-L-Arafやβ-GlcAあるいは4-Me-GlcA等が結合した分岐構造を有している。本研究ではAGPの糖鎖の生合成の解明を目的としてβ-ガラクトース転移酵素(GalTase)の諸性質およびGal転移生成物について解析した。
     ダイズの黄化胚軸のミクロソーム画分を酵素源、UDP-[14C]Galを供与体、β-1,3-ガラクタンを受容体として用い、高分子画分へのGal転移量を測定して酵素活性を求めた。GalTaseの最適pHは5.7で、0.75% Triton X-100と15 mM MnCl2を含む条件で最大活性を示す(比活性約500 pmol/min/mg protein)。[14C]Galの転移生成物をエキソ-β-1,3-ガラクタナーゼで分解するとβ-1,6-[14C]Gal2が主な産物として生じるので、Gal残基は主にβ-1,6-結合でβ-1,3-ガラクタンに転移されて分枝結合を形成すると思われる。結合様式が異なるガラクトオリゴ糖の受容体活性を調べた結果、β-1,3-Gal2-5は受容体として働き、重合度が大きくなるにつれ活性も高まった。β-1,6-Gal2-6はわずかな活性しか示さなかった。これらの性質はダイコン一次根のGalTase[1]と類似している。
    [1] Kato et al., Planta, 217 (2003) 271
  • 小竹 敬久, 土屋 光司, 金子 哲, ハク アシュラフル, 小林 秀行, 円谷 陽一
    p. 241
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物に広く存在するアラビノガラクタンタンパク質(AGP)は、細胞生長、細胞接着、細胞死といった現象に関与している植物のプロテオグリカンである。AGPは糖鎖の基本骨格としてβ-3,6-ガラクタンを有しており、重量の90%以上が糖鎖で構成されているが、糖鎖の詳細な構造や糖鎖が持つ生理的な機能については明らかにされていない。
    我々は、AGP糖鎖の構造解析、機能解析に有効なツールとしてTrichoderma virideからエンド-β-1,6-ガラクタナーゼ(Tv6GAL)を、またダイコンからα-L-アラビノフラノシダーゼ(RsAraf)をクローニングした。RsArafはα-L-アラビノフラノシダーゼ/β-D-キシロシダーゼ活性を有しており、ダイコンより精製したネイティブなAGPからL-アラビノースを遊離する[1]。Tv6GALはアラビノフラノシダーゼ処理したAGPに作用し、β-1,6-ガラクトシル側鎖を分解する。アミノ酸配列解析からTv6GALは新規のファミリー5糖質分解酵素メンバーであることが明らかとなった[2]。現在、AGP糖鎖構造の改変が与える影響について解析するため、これらの遺伝子を高発現する組換えシロイヌナズナを作成している。
    [1] Hata K. et al (1992) Plant Physiol. 100: 388-396
    [2] Kotake T. et al (2004) Biochem. J. (in press)
  • 岸 光子, 村田 隆, 長谷部 光泰, 渡辺 雄一郎
    p. 242
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物、糸状菌、細菌などに存在するpolygalacturonase(PG)は、植物細胞壁を構成するペクチンを加水分解する。植物内在性のPGは葉において器官脱離・病原抵抗性に関与する事が知られている。polygalacturonase β-subunit(PGβS)はPG活性を持つサブユニットに強固に結合し、触媒活性の阻害あるいは細胞壁内でペクチンへのアクセスを阻害していると予想されている。
    タバコ葉(Nicotiana tabacum)の細胞壁から高濃度のLiClを用いてタンパク質を抽出すると、葉の展開に合わせて抽出画分内の分子量約42Kのタンパク質が微増する。42Kタンパク質のN末端アミノ酸配列を元に、トマトPGβSと高い相同性を持つタバコPGbSホモログを得た。タバコPGβSホモログのmRNAの発現は展開中の葉では見られたが、成熟した葉では見られなかった。タバコPGβSホモログの発現を抑制する目的で、トマトモザイクウイルスをベースとしたウイルスベクターに遺伝子配列の一部を導入し、Nicotiana benthamianaに感染させた。感染1週間程度でウイルス接種葉に壊死が見られ、接種葉上部の葉でサイレンシングが誘導される感染3週間目には成長の遅れが見られた。タバコPGβSホモログの発現時期と発現抑制の結果から、このタンパク質の葉の成長に関わる機能が期待される。
  • 松井 章浩, 横山 隆亮, 西谷 和彦
    p. 243
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    XTH (エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素) 遺伝子はキシログルカン分子間の繋ぎ換えや加水分解の活性を持つ一群の酵素をコードする遺伝子であり、細胞壁の構築や再構築において重要な役割を担うと考えられている。シロイヌナズナのXTHは合計33の遺伝子にコードされている。これらXTH遺伝子の発現は器官や発生段階によってそれぞれ異なる事から、各XTH遺伝子が植物体内において個別に役割を分担しているとする仮説を私たちは提唱してきた。この仮説を実証するために、各XTH遺伝子について、欠損変異体をシロイヌナズナのT-DNA挿入変異体の中より単離し、その形態の解析を進めてきた。33のシロイヌナズナXTH遺伝子のうち、現在までに24遺伝子について変異体を単離した。このうち、大部分の変異体では巨視的な形態上の異常が観察されなかった。一方、XTH12XTH27遺伝子の変異体では、それぞれ根の伸長異常とロゼット葉で斑点状の細胞枯死が観察された。これらの結果はXTH遺伝子群が多くの部分で機能的に重複をしている事を示唆すると同時に、特定の組織や発達段階において単独で重要な役割を担うXTH遺伝子が存在する事を示している。これらの形態観察と遺伝子発現の結果を合わせて、XTH遺伝子群の植物における役割を考察する。
  • hye-kyoung Kwon, 横山 隆亮, 西谷 和彦
    p. 244
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    植物細胞壁は多種類の遺伝子ファミリーにコードされる多数のタンパク質群の働きを通して構築されるダイナミックな細胞構造である。シロイヌナズナの全ゲノム配列が決定されたことで、細胞壁構築に関与する遺伝子ファミリーが多数同定されている。しかし、これらの遺伝子にコードされる細胞壁構築関連タンパク質群の機能はまだ明らかではない。我々は細胞壁の構築過程を解剖するために、シロイヌナズナの培養細胞を用いて1M KCl溶液で細胞壁タンパク質を抽出した。また、細胞壁構築過程で分泌されるタンパク質を解析するため、プロトプラストから細胞壁の再生を始めて1時間目及び3時間目の細胞からも、それぞれ1M KCl溶液により細胞壁タンパク質を抽出した。これらのタンパク質は、二次元電気泳動により分離とマッピングを行った。その結果、培養細胞では72個、1時間再生した細胞で176個、3時間再生した細胞で213個のKClで抽出される細胞壁タンパク質を検出した。これらのタンパク質をMALDI-TOF MSを用いて同定を行った。これらの解析結果を基にして、細胞壁の形成に関わるタンパク質の種類および細胞壁中での挙動について考察する。
  • 間瀬 浩平, 佐藤 かんな, 中野 仁美, 西窪 伸之, 梶田 真也, 北野 英己, 芦苅 基行, 松岡 信, 片山 義博
    p. 245
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    イネ科植物では、多糖に結合したヒドロキシケイヒ酸類 (polysaccharide-linked hydroxycinnamoyl esters, PHEs)を介した、リグニンと多糖の結合が、細胞の表層や維管束の細胞壁に特徴的に形成される。この架橋構造は、急激に伸長し、かつ重い種子を支えなければならないイネ科植物の柔軟性や、細菌からの防御などに対して非常に重要な役割を持つと考えられている。しかし、PHEsの合成と制御については、その代謝系がリグニンの代謝系と重複し、同一組織で蓄積するため、PHEsについてのみの解析が非常に困難ではほとんど進んでいない。
     そこで本研究では、壁成分の一つであるPHEsを節間柔組織に過剰に蓄積するイネ一遺伝子欠損変異体ふ系71号を用い解析を行った。その結果、この変異体の柔組織ではwild-typeと比較して、PHEs合成のためにフェニルプロパノイド代謝経路に芳香族アミノ酸を供給するシキミ酸代謝経路遺伝子のDAHPSから、フェニルプロパノイド代謝経路遺伝子の4CLまでが高発現していることが明らかとなった。さらに、PHEs合成に特徴的に関与する各遺伝子を特定することに成功した。そして、PHEs合成のための遺伝子発現制御が、遺伝子の欠損が原因となりどのように行われるかについて検討した。
  • 谷本 英一, 林 弥智, 堤 竜生
    p. 246
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    ジベレリン(GA)は根の成長を制御する。エンドウ(cv. Alaska)では,GA合成阻害剤・アンシミドール(Anc)存在下でGAが根の成長を促進する。成長には細胞壁の伸展性が必要で,根のGA誘導伸長でも細胞壁物性や多糖分子量などが変化することを我々は明らかにしてきた。本研究では細胞壁蛋白質の働きを調べるため,GA処理で変動する主要アポプラストタンパクを網羅的に探索した。
     エンドウの根細胞壁分画から,塩で溶出されるタンパクをSDS-PAGEで分析した。GAおよびAnc処理で変化する主なバンドの部分アミノ酸配列から,ホモロジーの高い既知タンパクを検索した。Anc処理とGA+Anc処理とを比較し,バンド強度の異なる11種のタンパクのうち,8種の部分アミノ酸配列が判明したので,ホモロジー検索によりそれらの機能を推定した。
     これらタンパクのうち,Pectin methylesterase(GAで↑)とPeroxidase(GAで↓)は細胞壁多糖の分子間結合に関与している可能性がある。変動したタンパクと相同性の高いデータベース上のタンパク13種のうち,少なくとも9種はシグナルペプチドを有していた。そのため,今回,根の細胞壁から抽出されたタンパクはアポプラスト由来で,細胞質タンパクの混入は少ないと考えられた。以上の結果から,ジベレリンはアポプラスト蛋白の量的制御を行っていることが示された。
  • 竹田 浩之, 中川 直樹, 桜井 直樹
    p. 247
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    デヒドロジコニフェリルグルコシド(DCG)はバラの腫瘍細胞から発見されたサイトカイニン様の細胞増殖活性をもつネオリグナンである。我々はアスパラガスが不定胚を形成する時にアポプラストに分泌され、コニフェニルアルコール(CA)を2量体化しデヒドロジコニフェリルアルコール(DDCA)に変換するペルオキシダーゼ、AoPOX1をクローニングした。DDCAはDCGのアグリコンなので、我々はアスパラガスが不定胚を形成する時にネオリグナンが細胞増殖・分化を同調的に制御しているという仮説を提唱した(Takeda et al. 2003)。DCGの生合成はアポプラストに分泌されたCAがペルオキシダーゼによってDDCAへ変換され、その後グルコシル化される経路と、細胞内でCAがグルコース配糖体(CAG)となり、アポプラストでCAと結合する経路が考えられる。アスパラガスの細胞壁タンパク粗酵素画分を用いた実験ではDDCAはDCGに変換されなかった。そこで現在、不定胚細胞内でCAがCAGに変換されるか、また培地中のCAGやDCGの濃度を検討している。
  • 加藤 晶, 井上 雅裕
    p. 248
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    アズキ懸濁細胞は炭素源としてスクロースやグルコースを利用するがガラクトースとマンノースは利用できない。細胞に取り込まれたガラクトースはスクロース合成を強く阻害するがマンノースはこの作用がなく炭素源として認識されない可能性がある(井上,加藤2003年)。本研究は、マンノースで成長できないアズキ懸濁細胞とマンノースに順応したアズキカルス細胞を用いて細胞内スクロース濃度変化を調べた。またマンノース利用の鍵酵素と思われるホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)の活性も測定した。まず懸濁細胞をマンノース液体培地で培養したがマンノース順応細胞は得られなかった。これらはマンノースをスクロースに転換できないため細胞内スクロース濃度が減少していた。次に懸濁細胞をマンノース寒天培地に移植し長期培養したところ最初はほとんど増殖しなかったが約30日後には新しい細胞塊が出現した。これに先立ち細胞内スクロース濃度が増加することも確認した。従って、カルス細胞はマンノースからスクロースを合成する新たな経路(酵素)を誘導することによりマンノース培地に順応すると考えられた。そこで、マンノース6リン酸をフルクトース6リン酸に転換するPMIの活性を測定した。その結果、エイジとともにPMI活性が増大することがわかった。しかし、スクロース培地で培養したカルスでも類似した酵素活性が検出されたので他の転換酵素についてもさらに調査する必要がある。
  • 橋本 鉄郎, 井上 雅裕
    p. 249
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    アポプラストのレドックス環境は細胞壁代謝と細胞成長を左右する重要な要因の1つと考えられる。本研究では明所と暗所で生育させたアズキの上胚軸切片の伸長成長に対するアスコルビン酸(AsA)とグルタチオン(GSH)の影響を調べた。これらは植物の代表的な抗酸化剤として知られる。その結果、暗所において両物質は上胚軸切片の伸長を促進することなくむしろ阻害的に作用した。一方、明所の実験ではGSHが伸長成長を強く促進しAsAはそれを阻害するという極めて対照的な結果が得られた。ここでGSHはインドール酢酸(IAA)を添加しない場合にも切片の伸長を誘導したので部分的にオーキシン作用を模倣すると思われた。外部から与えたGSHがアポプラスト内で作用するのか細胞内で作用するのかその機構については全くわかっていない。そこで細胞内のGSHとGSH関連物質の濃度変化を調べた。その結果、GSH処理によって細胞内GSHの濃度が増加することがわかった。しかし、その合成阻害剤であるブチオミンスルフォキシミン(BSO)を添加してもオーキシンによる伸長成長は殆ど阻害されなかった。以上の結果からGSHはアポプラスト環境の変化もしくはシンプラストへの輸送過程に伴う変化のどちらかによって細胞成長を促進すると考えられた。
  • 佐々木 慎弥, 馬場 啓一, 小川 直人, 西田 友昭, 堤 祐司, 近藤 隆一郎
    p. 250
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
     我々は、ポプラカルス細胞壁から単離した細胞壁結合性ペルオキシダーゼアイソザイム(CWPO-C)がシナピルアルコールやリグニンポリマーに対する高い酸化能を有することを明らかにし、酵素の動力学的特性の面からCWPO-Cがリグニン脱水素重合に関与することを示唆してきた。今回、CWPO-Cの全長cDNAのクローニング、in vivoにおける発現特性及び免疫染色法によりポプラの二次木部におけるCWPO-Cタンパク質の局在パターンを解析したので報告する。
     アミノ酸シークエンスから特異的プライマーを作成し、RT-PCR、RACE法により全長cDNAを得た。競合的PCR法を用いて、4~7月におけるxylemにおけるmRNAレベルでの発現量を調べたところ、その発現量はほぼ一様であり、調査した木化する組織においてその発現量は同程度であった。また、本アイソザイム発現は傷害ストレスに誘導されないことから、CWPO-Cは二次木部で恒常的に発現していることが示唆された。二次木部においてCWPO-Cタンパク質は2次壁肥厚帯中期から成熟期にかけて局在し、繊維細胞ではリグニン含有率が高い細胞間層とセルコーナーに観察された。したがって、CWPO-Cは恒常的に発現し木繊維壁でのリグニン脱水素重合に関与すると判断された。
  • Yong Woo Park, Kei'ichi Baba, Takahisa Hayashi, Yuzo Furuta, Ikuho Iid ...
    p. 251
    発行日: 2004/03/27
    公開日: 2005/03/15
    会議録・要旨集 フリー
    Adjacent cellulose microfibrils are thought to be cross-linked by xyloglucans and the separation of microfibrils during elongation has been thought to require enzymes that cleave xyloglucan or loosen its binding to microfibrils. By overexpressing xyloglucanase and producing a knockout mutant of xyloglucan, it would be possible to study the function of xyloglucan in the primary and secondary walls of higher plants. The expression of xyloglucanase constitutively in Populus alba increased the lengths of stem and petiole and enlarged palisade parenchymal cells compacting in the limited space of the leaf. Degradation of xyloglucan network not only decreased the wall elasticity in the elongating stem but also increased the elasticity of secondary xylem. The increased elasticity corresponded to an increase in specific gravity, showing that the degradation of xyloglucan might cause an increase in cellulose density in the secondary xylem.
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