日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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  • 栂根 一夫, 前川 雅彦, 飯田 滋
    p. 402
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    幼苗期に黄化した葉が生育に従って緑色に回復する virescent 変異は、種々の植物で報告されているので、色素体の緑化機構は生育段階により違いがあると思われる。イネの易変性変異体 pyl-v (pale yellow leaves-variegated)は幼苗期の葉が黄色地となる表現型を示すが、その一部に細胞の系譜に沿った緑色の斑を示す領域を含んでいる。この緑色の斑が小さいと枯死するが、充分な大きさを持つと生存でき、 pyl-v 変異体の黄色地部分は生育とともに緑化する。 pyl変異は、DNAトランスポゾンnDart Pyl遺伝子への挿入変異であり、その脱離によって易変性となる。 Pyl遺伝子はプロテアーゼと予想される ClpP遺伝子と相同性を持つので OsClpP5と命名された。OsClpP5タンパクは葉緑体に局在するので、葉緑体でのタンパク質分解の欠損がビレッセント変異の原因と考えられるが、幼苗期の pyl変異体の葉緑体で未発達なグラナ層は、緑色となってもほとんど発達せず、葉緑体が未発達のまま緑色となっていた。 OsClpP5遺伝子の発現は生育によって減少するが、ストレスによって誘導されることが判明した。更に pyl変異体で緑化を誘導する環境因子及びホルモンの影響や OsClpP5遺伝子のパラログの発現様式の解析も行ったので、緑色回復との関連も論じる。
  • 中村 英光, 羽方 誠, 土岐 尚子, 梶川 真理子, 安藤 成子, 天野 晃, 廣瀬 文昭, 市川 尚斉, 松井 南, 上野 修, 高野 ...
    p. 403
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    我々は、イネに有用形質を付与するイネ遺伝子をゲノムワイドかつ迅速に選抜することを目的に、Full-length cDNA Over-eXpresser gene (FOX) hunting systemを用いてイネ完全長cDNAの機能解析を行っている。その過程で、約25,000の独立したFOXイネ系統カルスから2,4-D含有培地で緑化する2系統のカルスを得た。両系統はGARP転写因子をコードするOsGLK1遺伝子を高発現していた。同遺伝子の発現誘導は野生型イネカルスを再分化培地に置床した後の緑化誘導と同調していた。OsGLK1-FOX系統カルスのマイクロアレイ解析では野生型カルスと比較して多くの葉緑体/光合成関連遺伝子の発現上昇が観察された。さらに、同FOXカルスの透過型電子顕微鏡観察でグラナ構造のよく発達した葉緑体が見られ、同FOX系統のシュートでは、葉緑体が比較的未発達な維管束系細胞でも葉緑体の発達が促進されていた。また、このOsGLK1過剰発現による葉緑体分化(クロロフィルの合成、膜構造の発達、葉緑体関連遺伝子の発現誘導)は暗黒下では起こらなかったことから、OsGLK1の機能は光により厳密に制御されていることが示唆された。以上より、OsGLK1は光や植物ホルモンの制御下で、葉緑体分化のkey regulatorとして機能していることが強く示唆された。
  • 北村 元嗣, 柳田 一樹, 宇野 知秀, 山形 裕士, 金丸 研吾
    p. 404
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    (目的)葉緑体ゲノムには、光合成系遺伝子と転写・翻訳系遺伝子など約120の遺伝子がコードされている。そのうちtRNAは20種類のアミノ酸全てに対応しているがアンチコドンでみると30種類しかない。しかし全てのコドンに正確に対応する高度な翻訳システムを構築している。葉緑体バクテリア型RNAポリメラーゼシグマ因子の研究から、葉緑体発達段階ではテトラピロール合成の必須コファクターでもあるtRNA-Gluを含む複数のtRNAがSIG2やSIG6依存的に発現誘導される重要性が示唆された。本研究では、葉緑体発達段階に限らず、tRNAの発現調節は葉緑体においていかに動的であるか、また転写制御以外に調節に関わる分子機構を検証することを目的に実験を行った。(結果)明暗条件では、葉緑体tRNAは核コード遺伝子を含めた光合成系遺伝子等とは逆の挙動を示した。つまり暗条件で増加し、明条件で減少した。この現象はsig2変異株やNEP変異株でも見られたことから転写誘導以外の機構がより重要であることが示唆された。またN(窒素)/C(ショ糖)バランスが崩れてもtRNA発現量は変動することが示唆された。また各種翻訳阻害剤実験では、葉緑体の翻訳系を阻害したときにtRNAは蓄積した。さらにtRNAの成熟に関わるPNPase変異体でも発現量が変動したが、Glu-tRNA合成酵素の過剰発現では変化しなかった。これらの結果をもとに、葉緑体tRNAのダイナミズムと分子機構、その生理的重要性について考察する。
  • 上田 七重, 小嶋 美紀子, 倉川 尚, 前川 雅彦, 小林 薫, 長戸 康郎, 経塚 淳子, 榊原 均
    p. 405
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    サイトカイニン(CK)はIPTによりヌクレオチド体として合成されたのち塩基体に変換され活性型となる。CKの活性化経路についてはヌクレオチダーゼとヌクレオシダーゼによる二段階反応によると考えられてきたが、我々はイネ茎頂分裂組織の維持欠陥変異体であるlogの原因遺伝子(LOG)が、ヌクレオチド体から一段階反応で塩基体に変換する新規酵素をコードすることを同定した。
    LOGはputative lysine decarboxylaseとアノテートされていたが、その活性は全く認められなかった。そこでLOGホモログ遺伝子が一部の病原性土壌細菌のIPT遺伝子に隣接していることに着目し、CK代謝系への関与を検討したところ、iPRMPやtZRMPなどのCKヌクレオシド一リン酸からリボース一リン酸を外し、塩基型CKに直接変換する活性を持つことが明らかになった。
    さらにlog変異体アレルにおける表現型の程度差とそれぞれのLOG変異体酵素活性の相関を調べた。log-1, log-4, log-5, log-6変異体がコードするLOGの酵素活性を測定したところ、表現型が比較的弱いlog-1, log-4由来のLOG-1とLOG-4は非常に弱い活性がみられたが、シビアな表現型を示すlog-5, log-6由来のLOG-5, LOG-6では活性が検出できなかった。以上の結果よりlog変異の表現型は、茎頂分裂組織においてLOGによるCK活性化機能が低下した結果であると考えられる。
  • 黒羽 剛, 榊原 均
    p. 406
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    サイトカイニンは、植物生長において非常に重要な役割を果たしているが、このうち活性型サイトカイニンのレベルは、植物の発生における様々な時期、場所によって厳密に制御されている。最近、サイトカイニン合成の最終段階において活性化に直接関わる新規酵素LONELY GUY (LOG)がイネから同定された。LOGと相同性の高い遺伝子は、イネにおいて他に9遺伝子、シロイヌナズナにおいて9遺伝子存在することが予測されているが、それらの機能は全く明らかになっていない。そこで、我々はイネのLOG遺伝子と相同性の高いシロイヌナズナゲノム中の遺伝子AtLOG1~9についてコードする各タンパク質の酵素活性と、各遺伝子における植物体内での発現部位の比較を試みた。RT-PCRにより得られた7遺伝子由来のcDNAを用いて大腸菌によりタンパク質の発現誘導及び精製を行い、活性評価を行ったところ、全ての遺伝子産物においてイネLOGと同様のサイトカイニン活性化に関わる酵素活性が検出された。また、GUS遺伝子を用いたプロモーター解析により、各AtLOG遺伝子の発現部位に差異がみられた。以上の結果から、シロイヌナズナの発生におけるサイトカイニン活性化制御において、各AtLOG遺伝子産物が時空間的に異なる機能を果たしていることが予想された。
  • 武井 兼太郎, 小嶋 美紀子, 榊原 均
    p. 407
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    シロイヌナズナのCYP735A1およびCYP735A2はイソペンテニルアデニン型サイトカイニン(CK)のイソプレノイド側鎖を水酸化し、トランスゼアチン(tZ)型CKを合成する酵素である。我々はCK水酸化の生理的な役割を明らかにする目的で、これら酵素遺伝子破壊株や過剰発現株の解析を進めている。野生株と同様な成長を示すcyp735a1およびcyp735a2変異株に対し、二重変異株cyp735a1 cyp735a2の地上部は野生株と比較して、成長が抑制され、花茎数が多い形態を示した。地上部と異なり、根の成長には野生株と大きな差は観察されなかった。CK蓄積量の分析の結果、二重変異株ではtZ型CK蓄積量が野生株の3%程度にまで著しく減少し、逆にiP型CK蓄積量は増加していた。tZ投与により表現型が部分的に相補されたことから、二重変異株の表現型の原因がtZ型CKの減少によるものと考えられる。35Sプロモーター制御下で遺伝子を過剰発現させるとtZ型CK蓄積量が増加したが、これら過剰発現株の形態は野生株と違いはなかった。現在DNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を進めており、その結果も合わせて報告したい。
  • 岩間 綾子, 山篠 貴史, 田中 泰史, 榊原 均, 柿本 辰男, 佐藤 修正, 加藤 友彦, 田畑 哲之, 長谷 あきら, 水野 猛
    p. 408
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    シロイヌナズナにおけるHis-Aspリン酸リレー系はサイトカイニンやエチレンといった植物ホルモン情報の受容と伝達に必須の役割を担っている。特に、これらの情報伝達系においてHisキナーゼはシグナル受容体として機能している。シロイヌナズナには11種類のHisキナーゼ様因子が存在するが、その内8種類はサイトカイニンあるいはエチレン受容体として働いていることが知られている。残りの3種類の内、AHK5(またの名はCKI2)に関してはほとんど機能解析が進んでいない。今回、我々は遺伝学的な解析によりAHK5の働きの一端を明らかにしたので報告する。AHK5に関して機能欠損と思われるT-DNA挿入変異体を3種類独立に取得し、共通する表現型を検索した。その結果、いずれのahk5cki2)変異体も根の伸長阻害作用に関してABA及びエチレンに対して高感受性を示すことが明らかになった。従って、AHK5はアブシジン酸(ABA)とエチレンのシグナルが統合して制御されて起こる根の伸長阻害作用に深く関わっていることが示唆された。そこで、ABAやエチレンに関する既存の情報伝達系との関連も含めて、AHK5が関わる情報伝達系に関して考察する。
  • 井手 康平, 大西 利幸, 横田 孝雄, 坂田 完三, 水谷 正治
    p. 409
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    カンペステロール (CR) からブラシノライドに至るブラシノステロイド生合成経路では、カンペスタノール (CN) を経由する経路がこれまで提唱されてきた。しかしC-22位水酸化酵素CYP90B1および、C-23位水酸化酵素CYP90C1, 90D1の基質特異性の解析から、早期にC-22位が水酸化される経路、すなわちCNを経由しない新規経路の存在が示唆された。5α還元酵素であるDET2が (24R)-ergost-4-en-3-one (4-en-3-one) を基質とすることは既に報告されているが、今回新たに22-OH-4-en-3-oneと22,23-diOH-4-en-3-oneも基質となることを明らかにした。また、我々はCYP90A1がC-3位酸化/異性化反応を触媒することを明らかにした。CYP90A1はCRを基質としないのに対し、22-OH-CRと22,23-diOH-CRは基質となり、基質特異性を調べた結果、22-OH-CRは22,23-diOH-CRに比べkcat/Km値が13倍高いことがわかった。CYP90B1の基質特異性と考え合わせると、CRから22-OH-CRを経て22-OH-4-en-3-oneへと反応する経路が主流であることが強く示唆された。DET2の基質特異性の解析、CYP90A1とは異なるCRのC-3位酸化/異性化酵素についても報告する予定である。
  • 中野 雄司, 山上 あゆみ, 辻本 雅文, 吉田 茂男, Chory Joanne, 浅見 忠男
    p. 410
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    ブラシノステロイドは発生・成長・生殖などの植物生長の様々な過程で重要な生理機能を発現している。本研究は、ブラシノステロイド生合成阻害剤Brzによる形態変化を指標として変異体を単離する化学遺伝学(ケミカルジェネティクス)の手法を用いることにより、未解明の部分が多く残されているブラシノステロイド情報伝達機構の解明を試み、それらによる植物栄養成長期制御の分子機構を解明することを目的としている。
    暗所Brz存在下において発芽した野生型Arabidopsisは暗所下ながら胚軸が矮化し子葉が開く、暗所光形態形成を示す。この条件下において光形態形成を示さない胚軸徒長形質bil (Brz-insensitive-long hypocotyl)変異体は、ブラシノステロイド情報伝達の活性型突然変異体であると予測される。そこでFast Neutron変異種子から半優性形質のbil5を単離した。bil5は、ロゼッタ葉の細長形態での縮小、花茎の垂直方向の短化と水平方向の細化を伴う細矮性slender dwarf様の特徴的な矮性形質を示した。このbil5のmappingを進め、新規な遺伝子ORF上の脱メチル化変異を同定した。このエピジェネティック変異に起因する遺伝子発現の活性化がbil5の変異様式であると考察し、機能解析を行っている。
  • 山上 あゆみ, 中野 雄司, 中澤 美紀, 松井 南, 作田 正明, 篠崎 一雄, 辻本 雅文, 吉田 茂男, 浅見 忠男
    p. 411
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    ブラシノステロイド(BR)は植物生長の様々な局面で重要な機能を果たしている植物ホルモンである。我々はBR情報伝達機能の解明を目指し、BR生合成阻害剤Brz存在下での胚軸伸長を選抜条件にして、ArabidopsisのアクティベーションタグラインからBR情報伝達変異体bil (Brz-insensitive-long hypocotyl)の選抜と原因遺伝子の単離を行っている。
    アクティベーションタグラインから、暗所Brz存在下において胚軸徒長を示す半優性の変異体bil4を単離した。明所下で生育したbil4はロゼット葉の細小化と花茎の短化に基づく細矮性Slender Dwarf様の形態を示した。分子遺伝学的な手法によりbil4変異候補遺伝子を単離し、過剰発現体による再現実験により7回膜貫通ドメインを持つ新規遺伝子を第一候補と考察した。このBIL4遺伝子発現の組織特異性を明らかにするため、BIL4 プロモーター::GUS形質植物体の解析を行った。その結果、葉原基や根の細胞分裂直後の細胞伸長帯でGUS活性が観察されたが、子葉や本葉などでは観察されなかった。また、GFP形質転換体の解析により、BIL4タンパク質が液胞膜上に局在していることが明らかになった。今後、BRおよびBIL4による、液胞膜と初期細胞伸長の制御機構が存在するとの仮説を立て、その検証を行っていきたいと考えている。
  • 小松 知之, 中野 雄司, 中澤 美紀, 松井 南, 篠崎 一雄, 川出 洋, 夏目 雅裕, 安部 浩, 吉田 茂男, 辻本 雅文, 浅見 ...
    p. 412
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    我々はブラシノステロイド情報伝達機構解明を目的とし、ブラシノステロイド生合成阻害剤Brzに対する暗所発芽時の応答性を基準に、シロイヌナズナアクティベーションタグラインから新規変異体の選抜と遺伝子解析を行っている。
    暗所Brz存在下において胚軸が徒長する変異体bil(Brz-insensitive-long hypocotyl)として半優性のW114を単離した。明所下での成熟個体はロゼット葉の細小化と花茎の短化を伴う細矮性形態を示した。現在、タグ挿入部位を同定し、候補遺伝子の特定を行っている。
    野生型シロイヌナズナの子葉およびロゼット葉は、Brz存在下において、葉緑体発達による緑化促進が観察される。この条件において、低緑化を示めす劣性の変異体bpg2(Brz-insensitive-pale green2)を単離した。変異原因は葉緑体局在が予測されるGTP結合タンパク質相同遺伝子の破壊であると考えられた。このBPG2遺伝子は、葉で最も発現量が高く、暗発芽後の光照射により発現が誘導されるなど、葉緑体分化と連動した機能が推察される。
    暗所発芽時、通常培地条件では野生型と同程度の胚軸伸長を示しながら、Brz条件下においてより胚軸短化を示すBrz高感受性変異体bss(Brz-sensitive-short hypocotyl)として半優性のZ1を単離した。明所下での成熟個体は花茎伸長が著しく阻害された矮性形質を示した。現在、タグ挿入部位を同定し、原因遺伝子の特定を行っている。
  • 飯野 真由美, 中野 雄司, 森 昌樹, 浅見 忠男, 郷田 秀樹, 吉田 茂男, 服部 明, 辻本 雅文, 竹内 安智, 米山 弘一, 横 ...
    p. 413
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    プロゲステロンは、ほ乳類において受精卵の着床や妊娠維持などの生理機能を持つ雌性ステロイドホルモンである。我々の研究グループでは、GC-MSによってアラビドプシス、イネなど様々な植物においてプロゲステロンが存在すること、および、プロゲステロンがアラビドプシス暗所発芽時の胚軸伸長を促進することを明らかにしてきた。そこで、プロゲステロンの植物における生理活性発現の分子機構を解明することを目的とし、プロゲステロン受容体候補遺伝子の探索を試みた。
    動物で研究が進んでいる核内転写因子型のプロゲステロン受容体遺伝子は相同性解析の結果、植物ゲノム上には存在しないと考察されたが、近年新たに同定されたヒトの7回膜貫通型プロゲステロン受容体mPRについては、アラビドプシスのゲノムDNA上に相同性遺伝子を6種同定した。この6種の内、特にAmPR1遺伝子の破壊株において、花器官の大きさ、及びさやの長さが野生型に比べて30%短くなる形態を示すことが明らかになった。また、AmPR1:GFP形質転換体の構築により、AmPR1は細胞膜上に局在することが明らかとなった。
    現在、このAmPR1タンパク質のプロゲステロン結合活性を評価する目的で、大腸菌におけるリコンビナントタンパク質の発現・精製を試みている。
  • 岩瀬 哲, 光田 展隆, 小山 知嗣, 平津 圭一郎, 新井 剛史, 井上 康則, 青柳 秀紀, 田中 秀夫, 高木 優
    p. 414
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    脱分化した植物細胞 (カルス) は、自然界では植物が傷を受けた時の癒傷組織としてみられる。またin vitroでもカルスは組織切片の切断面から生じることが多い。このためカルスは傷害応答による遺伝子発現の変化によって顕在化する植物細胞の一つの形態であると捉えられる。しかし、脱分化の分子機構の解明は、ほとんどなされていない。植物細胞の脱分化の誘導、およびその維持に必須な遺伝子群を明らかにするため、シロイヌナズナ植物体と培養細胞での遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法を用いて比較解析した。その結果、植物特異的な転写因子群であるAP2/ERFファミリーに属する遺伝子の発現が培養細胞で特異的に上昇していた。この遺伝子は植物ホルモン処理による組織細胞の脱分化に伴って発現が上昇する。CaMV 35Sプロモーターを用いてこの遺伝子をシロイヌナズナで過剰発現した結果、強い表現型のT1植物体で茎頂、葉および根が脱分化しカルスが生じる形質(カルス化)を示した。弱い表現型を示した形質転換体のT2植物体のオーキシン感受性を調べたところ、野生株がカルス化しない低濃度のオーキシン処理でもカルス化した。このカルス状の細胞は、植物ホルモンを含まない培地でも、カルス状態を保ちながら細胞が増殖し継代培養が可能である。この転写因子の機能とカルス化との関連について報告する。
  • 矢野 覚士, 塚谷 裕一
    p. 415
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    葉の展開は細胞の分裂と伸長成長によるものである。これまでに、細胞数や細胞サイズの経時計測を通じて、葉の展開・発生を理解しようとする研究が数多く行われてきた。しかし発生途中の葉では、細胞伸長と細胞分裂が同時に起こっており、この事が全体的な理解を難しくしている。そこで今回我々は、計算機上で細胞分裂ならびに、細胞伸長を再現し、細胞の移動をシミュレートした。解析対象は、比較的情報量が多く、細胞の形状が単純でサイズも均一な柵状組織細胞を選択した。
    シミュレータ構築に用いた基本的な情報は、細胞の位置、体積の二つである。伸長成長については、細胞の位置によって決定する細胞伸長ポテンシャルを導入し、細胞体積の増大量を決定した。細胞の形状は、個々の細胞が押し合う力が等しいと仮定し、周囲の細胞配置に応じて決定した。細胞は葉の展開に従って移動するが、その移動量は対象とする細胞自身の伸長量と、対象よりも葉の基部側に位置する細胞群の伸長分の合計として算出した。一方、細胞分裂に関しては、位置情報に依存した分裂ポテンシャルを導入し、ある閾値に達したものから分裂を行うものとした。また、分裂後には分裂ポテンシャルを初期状態に戻す処理を行っている。分裂方向については、細胞長軸方向に対して垂直に分裂面が入るものとした。
    発表では、上記モデルといくつかのパラメータセットにおける計算結果について報告する。
  • 楠城 時彦, 吉永 秀一郎, 馬場 繁幸
    p. 416
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    本研究では,マングローブ樹種の耐塩性機構に注目して生理学的解析をおこなった。西表産マングローブ数樹種の器官別塩イオン濃度を測定した結果,根から吸収されたNa+は地上部栄養器官まで到達していた。しかし,すべての樹種において,種子のNa+濃度は他器官に比べて有意に低かったことから,種子と栄養器官の間でNa+がろ過されると考えられた。特に,ヒルギダマシ(Avicennia marina)の種子-栄養器官間の塩濃度勾配は顕著に大きかった。さらに,ヒルギダマシの種子でのみNa+/K+比が1より小さかったことからNa+を選択的にろ過する機能が推定された。塩イオンを選択的にろ過するためには,根圏由来の水が維管束系の連続が途切れた柔組織を通過する必要があると考え,ヒルギダマシの解剖学的解析をおこなった。その結果,維管束系は花茎から種皮および種子内部の胎座様組織まで連続しており,胎座と種子胚軸下端部は,維管束系ではなく柔組織同士で密着していた。細胞内のNa+を特異的に認識する標識試薬をもちいて,ヒルギダマシ種子生切片のNa+分布を蛍光観察した。その結果,花茎からの維管束系が連続する種皮や胎座にNa+が局在し,胚軸および子葉にはNa+が見られなかった。本研究によりわれわれは,ヒルギダマシ種子の胎座部分が,Na+を選択的かつ効率的にろ過する機能をもつことを明らかにした。
  • 三木 直子, 加藤 潔, 岡崎 芳次, 吉田 久美
    p. 417
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    空色西洋アサガオ(Ipomoea tricolo r cv. Heavenly Blue)花弁は、ツボミは赤紫色で開花すると青色になる。既に我々はこの変化が液胞pHの上昇によることを明らかにした1, 2)。開花過程で表皮有色細胞の体積は数倍に増大するが、この現象は細胞浸透圧の上昇による水吸収と伴う一種の伸長成長と推定された(2006年会)。しかし、浸透圧変化に寄与する液胞内イオン濃度の経時変化は不明であった。そこで、開花時の細胞体積とイオン濃度変化を分析した。
    露地栽培のアサガオ花弁を経時的に採取して、酵素処理により有色プロトプラストを調製した。プロトプラストの数と体積を計測後、細胞内の陽イオンと陰イオンをキャピラリー電気泳動法で分析した。主な陽イオンはK+ で開花24時間前では 約50 mM含まれていたが、12時間前には半減し、その後再び上昇して開花時には約40 mMとなった。Mg2+、Ca2+はいずれも、24時間前では数mMであったものが開花時には1 mM以下に減少した。主な陰イオンはCl-とPO43-でいずれも24時間前では 約10 mMであったが、開花に向けて1/3程度に減少した。リンゴ酸イオンは開花期を通じて一定値(約2 mM)であった。有職細胞の色変化と伸長生長の関係をイオン輸送システムの発現をもとに考察する。
    1) K. Yoshida et al. Nature, 373, 291 (1995). 2) K. Yoshida et al. Plant Cell Physiol. 46, 407 (2005).
  • 小幡 年弘, 北本 宏子, 中村 敦子, 福田 篤徳, 田中 喜之
    p. 418
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    イネの耐塩性機構に関与する新規カチオン輸送体遺伝子を単離する目的で,酵母を用いたイネ完全長cDNAの機能スクリーニングを行い,イネのShaker型K+チャネルであるOsKAT1がNa+ポンプを欠損した塩感受性酵母株(G19, Δena1-4)の塩感受性を相補することを見出した。OsKAT1は内向き整流性K+チャネルの相同タンパク質であり,さらにK+取り込み能が低下した変異酵母株(CY162,Δtrk1-2)の高濃度K+要求性を相補したことから,細胞内へのK+の取り込みを促進することが明らかになった。OsKAT1発現酵母は塩ストレス培養前期において高い細胞内K+含量を示したが,培養後期のK+含量はコントロール株と同等になり,かわりにNa+含量が低下した。一方,イネ培養細胞においてもOsKAT1の高発現により耐塩性が向上し,細胞内K+含量が上昇したが,Na+含量は低下しなかった。酵母およびイネの両細胞においてOsKAT1の発現により細胞内のNa+:K+比が低く保たれたことから,OsKAT1は塩ストレス条件下における細胞内イオンバランスの維持に寄与する可能性が示唆された。OsKat1遺伝子の発現は節間部と枝梗に限られていたが,器官毎に様々なK+チャネルホモログの発現が見られたことから,これらのチャネルが協調して植物体の耐塩性に関与することが考えられる。
  • 中村 敦子, 福田 篤徳, 小幡 年弘, 酒井 愼吾, 田中 喜之
    p. 419
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    高塩濃度環境に生育する植物の細胞内におけるイオンの挙動を解析することは耐塩性機構を明らかにする上で重要である。植物のNa+輸送体が塩ストレスの回避に重要な役割を担っているが、Na+のカウンターイオンであるCl-が、塩ストレス条件下においてどのように取り込まれ、挙動しているのか明らかではない。植物において、クロライドチャンネルはシロイヌナズナのAtCLC-aおよびAtCLC-cが細胞内硝酸イオン濃度の調節に関与していることが報告されているが、これ以外に報告はない。
    我々はこれまでイネのcDNAライブラリーより単離した2種類のクロライドチャンネル(OsCLC-1,OsCLC-2)について解析し、ゲノム中における遺伝子構造やmRNAの発現パターン、細胞内局在など多くの類似点をもつことを明らかにしてきた。今回、イネの完全長cDNAデータベースの検索で新たなCLCホモログ遺伝子3種 (AK066375, AK101523, AK119459)を見出し、それぞれの分子生物学的解析を行った。OsCLC-1,OsCLC-2とは異なり、特異的な器官に発現するもの、またOsCLC-1,OsCLC-2遺伝子破壊系統において発現量が増加するものなどがあり、OsCLC-1,OsCLC-2とは異なる機能を持つことや、相互に発現調節することが示唆された。
  • 新免 輝男, 菊山 宗弘, 緒方 惟昭
    p. 420
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物が傷害を受けると電気的なシグナルを発生する。シャジクモ類は体制が簡単なために、その解析に適している。オオシャジクモを用いてその解析システムをつくった。二つの節間細胞がつながった試料を作成した。一方の細胞(犠牲細胞)が切断によって死ぬと、もう一方の細胞(受容細胞)の末端で二種類の脱分極が発生した。一つは速い反応であり、他方は長く続く反応であった。これまでの研究よって、長く続く反応は犠牲細胞から漏出するカリウムによって誘導されることが示唆されている。本研究では速い反応に着目して解析を行った。犠牲細胞が切断されると、瞬時にその膨圧が失われる。これが速い反応を引き起こす原因ではないかという仮説に基づいて解析を進めた。犠牲細胞の外液に高濃度のメタノールを加えると、一時的に膨圧が急激に下がる。この処理により、犠牲細胞が切断された時に発生する速い反応に似た反応がみられた。このように、オオシャジクモでは、犠牲細胞から漏出するカリウムと、犠牲細胞の膨圧消失が、傷害にともなう電気応答を誘導していることが示唆された。
  • 金子 智之, 高橋 直哉, 菊山 宗弘
    p. 421
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物はさまざまな機械刺激に応答し、受容器電位を発生する。我々は、受容器電位発生の最初の過程は、機械刺激感受性の Ca2+ チャネルの活性化であることを明らかにした。さらに、このCa2+ チャネルを活性化するものが細胞膜の変形である可能性を示したが、変形よりむしろ膜張力の変化あるいは膜の伸展である可能性を見いだしたので報告する。
    節間細胞に高張処理(原形質分離)を行うと、ほとんどの場合活動電位の発生が見られた。これに低張処理(原形質復帰)を行うと、やはり活動電位の発生が見られた。しかし、これに再び高張処理を行っても、膜電位変化はほとんど見られなかった。原形質分離では細胞壁と膜とが離れる際に、原形質復帰では原形質が膨らむときに、それぞれ膜の伸展が起こるはずである。他方、2度目の高張処理では膜の収縮は起こっても伸展は起こらない。このことは、膜の伸張と膜電位変化の間の密接な関係を示唆する。
    浸透圧変化と細胞内 Ca2+ 濃度変化の関係について調べた結果、高張処理と低張処理の両方の処理で細胞内 Ca2+ 濃度が上昇するが、それぞれの細胞内 Ca2+ 濃度変化のパターンが異なることを確認した。また、再度高張処理した細胞内 のCa2+ 濃度変化は有意に小さくなった。これらのことは、膜の伸展が機械刺激感受性チャネルの活性化を引き起こす要因であることを示唆している。
  • 浜本 晋, 丸井 淳一郎, 松岡 健, 三村 徹朗, 中川 強, 村田 芳行, 中西 洋一, 前島 正義, 矢部 勇, 魚住 信之
    p. 422
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    K+は細胞内の主要なイオンであり、そのK+の輸送を司るK+チャネルは環境変化に適応した細胞の恒常性の維持に関与している。細胞レベルの解析には培養細胞の利用が有効であることからタバコBY-2細胞よりK+チャネル遺伝子を単離して解析を行なうことを目的とした。BY-2およびタバコ(Nicotiana tabacum cv. SR1)より、BY-2から3種類のK+チャネルをコードする遺伝子とSR1から1種類の遺伝子を単離した。そこで両者に共通する遺伝子を以降の研究に利用することとした。本K+チャネルの局在性を検討するために、本チャネルのペプチドに対する抗体を作成して、本チャネルのBY-2細胞の過剰発現株より調製した細胞膜画分と液胞膜画分を用いて検討した。液胞膜画分にのみにcross reactする単一バンドを示したことから、本K+チャネルは液胞膜に発現していることが示唆された。本K+チャネル遺伝子の機能を調べるために本遺伝子をK+輸送能の欠損した大腸菌に導入したところ、K+輸送活性変異の相補が確認された。しかし、酵母細胞膜やアフリカツメガエル卵母細胞膜では機能発現は観察できなかった。次に、液胞膜のK+輸送活性を抑えた変異株を作成して、本K+チャネルの輸送活性をパッチクランプ法で直接K+電流を検出することを試みたところ、Na+と比較して高い K+選択性を示し、整流性の弱い外向き電流を観察した。
  • 田中 由祐, 大西 美輪, 三橋 尚登, 関口 陽子, 中川 強, 西村 幹夫, 林 誠, 三村 徹郎
    p. 423
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    フィチン酸は、イノシトール6リン酸(IP6)の別称で、myo-inositol環に存在する6つのヒドロキシル基全てにリン酸基が1つずつ結合した低分子である。種子におけるリン酸貯蔵物質としてよく知られている。酵母では、IP6がmRNAの核外搬出に関わっている事が報告されている。高等植物では、フィチン酸の生合成に関与するとされる酵素は複数知られており、それらの変異体では、根毛の伸長や花粉管の伸長等に異常が見られる。しかし、イノシトールリン酸の生合成や生理的役割に関しては、尚不明の点が多い。
    私達は、植物細胞におけるフィチン酸の生合成経路とその生理機能を解明するために、植物の培養細胞を用いて、フィチン酸の生合成を誘導する系を立ち上げる事を試みた。培地にKH2PO4を加えた結果、シロイヌナズナの培養細胞Deep株でフィチン酸の生合成を誘導する事に成功した。フィチン酸の生合成の最終段階に働くと考えられているAtIPK1と呼ばれるイノシトールリン酸キナーゼに、蛍光タンパク質GFPを繋げ、Deep培養細胞に一過的に発現させたところ、細胞質ゾルにGFPの蛍光を確認した。これまでフィチン酸は小胞体内で合成される可能性が示されていたが、Deep培養細胞においては、フィチン酸は細胞質ゾルで合成されている可能性が示唆された。
  • 豊岡 公徳, 後藤 友美, 浅妻 悟, 松岡 健
    p. 424
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    SCAMP(Secretory Carrier Membrane Protein)は、脊椎動物の神経細胞で見出され、 4回膜貫通領域と細胞内輸送に関わる様々な配列を持つ膜タンパク質である。我々は、植物細胞におけるSCAMPの局在およびその機能に興味を持ち、タバコ培養細胞BY-2株を用いて、詳細に解析を行った。共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)解析の結果、SCAMPは細胞膜(PM)と細胞内に多数のドット状の構造体として存在した。膜系オルガネラマーカータンパク質、蛍光色素、輸送阻害剤を用いてSCAMPの局在を検討した結果、そのドット状の構造体は、トランスゴルジネットワーク(TGN)以降のオルガネラであるが、多胞体/液胞前区画(MVB/PVC)ではないことがわかった。さらに、高圧凍結技法による免疫電顕を行った結果、SCAMPはTGNおよびPM、そして、小胞のクラスター構造体に局在を示した。電顕、4D-CLSM、全反射顕微鏡解析の結果、このクラスターは、TGNとは異なりゴルジ体と独立して存在することから、我々はSVC (SCAMP-containing vesicle cluster)と命名した。さらに、SVCがPMおよび細胞板と融合する像を得た。以上の結果から、SCAMPはTGN, SVC, PMに局在し、SVCはゴルジ以降の分泌に関与する新規オルガネラである。
  • 江波 和彦, 植村 知博, 佐藤 雅彦
    p. 425
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナは他のモデル生物と比較して多くのSNARE遺伝子を有しており、その中でも細胞膜局在性を示すSNAREの割合が非常に高い。このことからシロイヌナズナでは細胞膜を中心とした複雑な小胞輸送系を発達させていることが伺える。我々は細胞膜局在Qa-SNARE(PMQa-SNARE)9種類に着目し、形質転換植物の根部におけるGFP融合SNAREタンパク質の発現解析を行うことで、組織特異的発現性を持つ複数のPMQa-SNAREタンパク質の存在を明らかにした。(第47回日本植物生理学会年会)そのうちの1つであるSYP123は根毛細胞特異的発現性を示し、さらに根毛の出芽と同時にその発現が開始した。トランスポゾンタグ挿入変異株あるいはSYP123過剰発現株を用いたloss-of-function、gain-of-function解析から、主根では形態異常は見られないのに対し、根毛細胞列では根毛出芽後の伸長異常や伸長中の根毛の形態異常が観察された。また、GFP-SYP123発現株を用いたFRAP解析を行ったところ、SYP123タンパク自身の細胞内局在性が根毛の伸長に伴い変化することが明らかとなった。以上の結果は、SYP123が根毛伸長に根毛の先端成長に必要な小胞輸送経路で機能するSNAREであると同時に、小胞の極性輸送を制御している可能性を示すものである。
  • 郷 達明, 内田 和歌奈, 竹内 雅宜, 小林 聡子, 佐藤 健, 上田 貴志, 中野 明彦
    p. 426
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    Rab5は,エンドソームに局在し,GDP型とGTP型をサイクルして分子スイッチとして機能することにより,その融合を制御している.シロイヌナズナには,動物のRab5のオルソログと考えられるAra7/Rha1と,植物特異的なAra6の2つのタイプのRab5メンバーが存在する.私たちは,シロイヌナズナのすべてのRab5メンバーを制御するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF),AtVps9aの単離に成功した.AtVps9aの機能を完全に欠失したatvps9a-1変異体は,魚雷型胚で胚発生が停止する.このことから,発生の初期よりエンドサイトーシスが必須の機能を有することが示された.atvps9a-1変異体におけるAra6とAra7の細胞内局在を調べたところ,両者ともに細胞質への拡散が観察された.このことから,in vivoにおいても,Ara6とAra7がともに正常に活性化されていないことが示唆された.一方,部分的な機能欠失変異体であるatvps9a-2では,胚発生は完了するが,発芽後の根の伸長に異常を示した.この表現型は,Ara7のGTP固定型の過剰発現によって抑圧されたことから,atvps9a-2に見られる表現型が,主にAra7/Rha1の活性化異常に起因していることが示唆された.一方,Ara6のGTP固定型の発現はatvps9a-2変異に対し顕著な影響を示さなかった.このことから, Ara7/Rha1とAra6の機能が,同じAtVps9aの制御を受けるにもかかわらず,明らかに分化していることが示された.
  • 砂田 麻里子, 郷 達明, 伊原 健太郎, 上島 珠美, 若槻 壮市, 上田 貴志, 中野 明彦
    p. 427
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    Rab5 は,エンドサイトーシス経路で機能し,エンドソームの融合のみならず多様な現象を制御していることが報告されている.このRab5を,GDP型からGTP型へと活性化するRab5グアニンヌクレオチド交換因子(Rab5 GEF)には,Vps9ドメインと呼ばれる活性部位が広く保存されている.シロイヌナズナにおいても,Vps9ドメインを持つAtVps9aが,Rab5ホモログ(Ara6,Ara7,Rha1)の全てを活性化している。この活性化機構をより詳細に解析するため,AtVps9a/Ara7複合体の結晶構造を決定した.その結果,D185,Y225をはじめとするいくつかのアミノ酸が,AtVps9aとの相互作用に関わると予測された.そこで,これらのアミノ酸に変異を導入したAtVps9aを作成しGEF活性の検証を行ったところ,D185やY225に変異を導入したAtVps9aでは,Rab5グループ3つに対するGEF活性が顕著に低下することが確認された.また、C末端側を欠失した変異型AtVps9aは,Ara6に対してのみ特異的に活性が上昇することも明らかとなった.一方,これらの変異型AtVPS9aは,野生型遺伝子同様atvps9a-1変異の胚致死性を一見完全に相補することが出来る.現在,変異型AtVps9aが植物体内でどのように作用するのかを調べるべく,解析中である.
  • 市川 尚斉, 中澤 美紀, 近藤 陽一, 石川 明苗, 川島 美香, 飯泉 治子, 長谷川 由果子, 関 原明, 藤田 美紀, 武藤 周, ...
    p. 428
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    優性突然変異を引き起こすミューテーションは、遺伝子ファミリーを形成する遺伝子群のゲノム的機能解析など、遺伝子破壊型のタギング法では表現型が現れない遺伝子の機能解析に欠かせないテクニックである。我々は総合的な遺伝子の機能付加を目指して、約1万種の独立シロイヌナズナ完全長cDNAからなる標準化cDNAライブラリーをアグロバクテリアのバイナリーベクター上で作成した後、このバクテリアライブラリーをシロイヌナズナに花感染させることでシステマティックに形質付与を起こさせる方法として、Fox Hunting Systemを開発した。T1世代の植物を15,000ライン以上観察したところ、可視変異の起きた1,487ラインを単離した。そのうち本葉でうす緑色の変異を起こした115ラインに関して次世代植物の観察を行ったところ、59ライン(51%)が優性もしくは半優性にT1表現系を再現した。cDNAの再導入によって表現型が再現したラインの1つは、ペールグリーンの性質の他に花芽形成が早まり、徒長成長も示すことが判明した。遺伝子配列を解析したところ、このcDNAは未知の遺伝子で分泌たんぱく質様の構造を持つ95アミノ酸配列の小型のたんぱく質をコードしていることがわかった。この新規機能遺伝子を例にしてFOX-hunting systemの有効性を議論する。
  • 黒田 浩文, 堀井 陽子, 高瀬 智敬, 清末 知宏, 松井 南
    p. 429
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    F-boxタンパク質はユビキチンシステムのE3の一つであるSCF複合体の構成タンパク質であり、ユビキチン化の標的タンパク質に対するレセプターをして働く。我々は、In Silico解析からシロイヌナズナゲノムに存在するF-boxタンパク質を568個予測している(Kuroda et al. 2002)。これまでに約20のF-boxタンパク質の生理的機能が報告されているが、予測した遺伝子の殆どが機能未知である。我々は、逆遺伝学的にF-boxタンパク質の機能解析を行っており、そのツールとして、TAIRの予測配列を基にしたORFセットの作成を試みた。
    様々な組織由来のtotal RNAを用いたRT-PCRおよび完全長cDNAを鋳型にしたPCRによりORFの増幅を行い、塩基配列解析を行った。このORFセットは、1)完全長cDNA の報告がない遺伝子のORFを含む、(2)新規なスプライシングバリアントと考えられるORFを含む、(3)終止コドンを含まない、(4)GATEWAY対応の特徴を持つ。新規なORFについて、塩基配列、ドメイン構造、発現パターンについて解析した結果、スプライシングバリアント間でのドメイン構造の変化、新規なスプライシングタイプ(Li et al. 2006)に属するスプライシングバリアント、組織特異的スプライシングを行う遺伝子の存在が明らかになった。
  • 佐藤 修正, 中村 保一, 金子 貴一, 浅水 恵理香, 加藤 友彦, 笹本 茂美, 小野 章子, 渡邊 安希子, 田畑 哲之
    p. 430
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物に特有の形質を分子レベルで解明するためのモデル植物としてミヤコグサ(Lotus japonicus)が注目を集めている。我々は、共生系のメカニズムやマメ科植物の多様性・有用性を解明するための基盤整備を目的として、ミヤコグサゲノム解析プロジェクトを進めている。
    これまでに、ゲノムクローンベースとした解析により190Mbpのゲノム配列情報が得られており、併用しているwhole genome shotgun 法で得られた情報と合わせて、ミヤコグサESTの9割をカバーするゲノム配列情報が蓄積されている。また、配列解析を行ったゲノムクローンの8割が遺伝地図上にマップされており、得られたDNAマーカーの情報はマップベースクローニング等に利用されている。本プロジェクトで得られた情報リソースはwebデータベース [http://www.kazusa.or.jp/lotus]で公開している。また、ミヤコグサのゲノム情報を他のマメ科植物の解析に応用することを目的として、蓄積されたゲノム配列情報と位置情報を利用したマメ科植物間の比較ゲノム解析を進めている。
    本報告では、ミヤコグサゲノム解析プロジェクトの進捗状況について紹介するとともに、得られたゲノム配列に対するアノテーション情報を基にして行っているミヤコグサの遺伝子構成の解析や、マメ科植物の比較ゲノム解析の状況について紹介する。
  • 深井 英吾, Madsen Lene, Dobrowolska Alicja, Sandal Niels, 梅原 洋佐, 河内 宏, 廣近 ...
    p. 431
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科モデル植物であるミヤコグサは、根粒菌との共生窒素固定制御機構の研究に広く用いられている。以前我々は、ミヤコグサ内在の転移活性を持つTy3-gypsy型レトロトランスポゾンLORE1を見いだし、現在その遺伝子タギングへの応用に向け研究を行っている。今回新たにLORE2 (Lotus Retrotransposon 2)を同定したので報告する。
    デンマークのオーフス大において作成されたAc/Dsタギング集団から見いだされた2つの独立の共生変異体において、それぞれの原因遺伝子にTy3-gypsy型レトロトランスポゾンの挿入が見られた。両挿入断片は互いに高い相同性を示し、LORE1とは配列が明らかに異なることからLORE2と名付けられた。LORE2のエコタイプGifuにおけるコピー数は約20と推定され、また上述の共生変異体においてはコピー数の増加が見られた。
    調査した全ての組織とカルスにおいてLORE2の転写産物が検出されたが、転写量は低かった。またカルスにおける明らかな転写活性の上昇は見られなかった。これらの事と、2つの共生変異体が選抜された過程から、LORE2はカルスではなく、植物体組織において転移したと推測された。現在LORE2の転写/転移誘導条件を探索しており、LORE1と同様に分子遺伝学的利用を試みている。
  • 鈴木 昭徳, 黒森 崇, 篠崎 一雄, 斉藤 和季, 高橋 秀樹
    p. 432
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物の栄養吸収においてトランスポーターは中心的な役割を果たすが、トランスポーターをコードする遺伝子の発現制御に関する研究は立ち遅れている。本研究では、転写因子の遺伝子破壊株を収集し、トランスポーターをコードする遺伝子の発現量を指標として発現制御に関わる因子を迅速に同定する手法を確立した。
    シロイヌナズナでは1968遺伝子が転写因子をコードすると推定されている(RARTF: http://rarge.gsc.riken.jp/rartf/)。これらのうち約20パーセントは理研トランスポゾンタグラインコレクションにより破壊株を揃えることが可能である。今回の解析では265遺伝子の転写因子の破壊株のホモ系統を確立し、スクリーニングの対象とした。硫黄同化で主要な役割を担う硫酸イオントランスポーターSULTR1;2の硫黄欠乏による発現誘導、窒素同化で主要な役割を担う硝酸イオントランスポーターNRT2;1の糖欠乏による発現抑制をリアルタイムPCRにより定量的に解析し、野生型株とは異なる発現パターンを示す変異候補株を遺伝子破壊株コレクションの中から複数系統分離することに成功した。
  • 尾形 善之, 櫻井 望, 青木 考, 岡崎 孝映, 斉藤 和季, 柴田 大輔
    p. 433
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    DNAマイクロアレイ技術の進歩により、多くの生物種で遺伝子発現データが蓄積されてきた。植物においてもゲノム解明が進み、今後さらにトランスクリプトーム解析を効率化する手法が必須である。昨年の年会で紹介した共発現予測アルゴリズムにおいて、予測された遺伝子群の共発現性を定量化する指標として「ネットワーク特異率」を導入し、予測精度の向上を実現した。
    1388チップのシロイヌナズナDNAマイクロアレイから計算した、22263遺伝子間での転写量における相関係数データを入手し、本解析に用いた。本アルゴリズムを全遺伝子に対して適用し、抽出した遺伝子群のネットワーク特異率を算出した。高い特異率を示す遺伝子群の機能推定を試みた。
    高いネットワーク特異率を示す遺伝子群の中には、一次代謝および二次代謝に関連する遺伝子群が含まれていた。一次代謝において、ヒストンタンパク質をコードする遺伝子のみからなる遺伝子群を抽出した。比較検証として、相関係数の高い順に選んだ遺伝子群では、特異率が低くなり、ヒストン遺伝子以外にも含まれていた。二次代謝において、フェニルプロパノイド生合成に関連する遺伝子群を抽出した。その遺伝子群中には、既知の代謝関連遺伝子以外に、機能が十分に解明されていない遺伝子が含まれていた。本アルゴリズムの適用により、代謝経路のさらなる解明に繋がる機能推定が可能となった。
  • 増村 友昭, 中西 洋一, 中西 華代, 前島 正義
    p. 434
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物の液胞は巨大な酸性オルガネラであり、様々な物質を貯蔵することで外環境としての役割をもつ。すなわち、毒性のあるNa+や重金属イオンを細胞質から隔離するとともに、H+やK+、Ca2+の流出入により細胞質のpH調節やシグナル伝達など動的な現象にも関わる。さらに、細胞空間を充填する液胞のサイズを変えることで、細胞の伸長成長や気孔の開閉のような細胞運動にも関わっている。こうした液胞機能は膜輸送体などの液胞膜蛋白質とそれらの複合体、相互作用ネットワークにより支えられている。本研究では複合体で機能する膜蛋白質の網羅的な探索を目指した。
    シロイヌナズナ培養細胞の液胞膜画分を界面活性剤で可溶化した後、blue native-PAGE/SDS-PAGEの二次元電気泳動で分離した。その結果、複数ポリペプチドで構成される複合体の候補約20個、ホモ多量体を形成するポリペプチドの候補約20個を検出した。また、シロイヌナズナの主要な液胞膜輸送体のblue native-PAGE上での分子量を、ペプチド抗体(約40種)を用いた免疫ブロッティングで検討した。さらに、可溶化膜画分を同じ抗体ライブラリを用いた免疫沈降に供し、共沈降する蛋白質の検索を行った。これらの方法で検出された複合体構成蛋白質についてMALDI-TOF-TOF MSを用いたシーケンスタグ法により同定を進めているのでその結果と併せて報告したい。
  • 秋 利彦, 執行 美香保, 米山 忠克, 柳澤 修一
    p. 435
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    篩管は同化産物をソース器官からシンク器官へと運搬するための高等植物特有の器官である。近年、この長距離輸送システムを介したシグナル分子の伝達機構が存在することが示唆されつつある。そこで我々は、新規な植物栄養シグナル伝達機構の探索を行うために、篩管液中に存在する蛋白質及びペプチドの網羅的解析を試みた。イネ篩管液よりインセクトレーザー法により高純度の篩管液を調製し、ゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過の3種類の分画方法を用いて蛋白質とペプチドを分画した。ナノフロー液体クロマトグラフィーとオンラインで接続されたイオントラップ型質量分析計を用いて解析し、約70種の蛋白質と6種類のペプチドを同定した。それらの中には、従来から篩管液中に存在が知られていた酸化還元や生体防御反応等に関与する蛋白質のほか、ジンクフィンガー型の転写因子と推定される蛋白質等も含まれていた。このことから、篩管は単なる物質輸送器官ではなくシグナルの伝達においても重要な役割を果たしていると推測された。この結果を基に、篩管を介した新規な長距離型シグナル伝達経路とそれのプロテオームによる同定の可能性について議論したい。また、イネ導管液からも現在までに約40種の蛋白質を同定しており、合わせて報告する。
  • 佐藤 直樹
    p. 436
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    系統プロファイリングは,系統特異的に保存された遺伝子群を探し出すのに用いられる方法で,多数のゲノムデータが整ってきた昨今では,機能未知タンパク質の機能アノテーションにおける有効性が高まっている。これまで私は,ゲノム中の全タンパク質配列の総当たりBLASTPの結果に基づいて,相同グループを推定するクラスタリングソフトウェアGclustの開発を行ってきた。Gclustにより作られるクラスタは, NCBIのCOGを自分なりにカスタマイズしてつくるものと思えばよい。COGが予め決められた66種の微生物で作られているのに対し,Gclustは用いるゲノムデータセットを選ぶことができる。NCBIでは,真核生物はKOGといって,別のデータベースになっているが,Gclustでは,真核・原核を通じた解析も可能であるという点も特長である。こうしてできた相同グループをもとにして,系統プロファイリングを行う手法を誰でもが利用できるようにするため,Gclustサーバーを構築した(http://gclust.c.u-tokyo.ac.jp/)。これを利用すると,選択したゲノムデータセットにおいて系統特異的に保存されているタンパク質を,簡単に見つけだすことができる。また,系統解析のコアデータとしても有用である。発表では,シアノバクテリア由来の葉緑体タンパク質,窒素固定共生菌に保存されたタンパク質,などの例を通じて,Gclust手法の利用法を紹介する。
  • 佐々木 直文, 佐藤 直樹
    p. 437
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    ゲノム比較法には、それらの共通な遺伝子の並びに着目し、それらの遺伝子間で生物種間に共通な遺伝子間相互作用を推測する方法がある。しかし、この方法を適用するには個々の遺伝子の塩基配列間に高い相同性が保存されている必要があるため、進化的に離れた種間の比較には適さなかった。この問題を解決するため、我々は複数の生物種間で相同性の高い遺伝子をクラスタリング手法によって分類したデータセット(遺伝子クラスター)を相同遺伝子の代わりに使用して解析をおこなった。遺伝子クラスターのデータセットは当研究室の佐藤によって開発されたGclustサーバー ( http://gclust.c.u-tokyo.ac.jp ) 上のシアノバクテリア16種のデータセットを用い、ゲノム上での距離関係について解析した。その結果、これらの生物種では相同遺伝子の両側数十個にわたってクラスターの近接関係が保存されており、これらの関係が海洋性シアノバクテリアと淡水性シアノバクテリア、およびAnabaena属の3つのグループ間で異なっていることが分かった。また、この距離関係を用いて隣接関係の類似度を階層型クラスタリングで分析したところ、分子系統樹による系統関係とほぼ一致する結果を得た。これらの結果から本手法がシアノバクテリアに限らず、一般的な生物種間のゲノム比較に応用可能であることが分かった。
  • 山本 義治, 市田 裕之, 阿部 知子, 松井 南, 鈴木 穣, 菅野 純夫, 櫻井 哲也, 佐藤 将一, 関 原明, 篠崎 一雄, 小保方 ...
    p. 438
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    我々は完全長cDNAの情報をもとにシロイヌナズナ・イネ・ヒト・マウスの正確なTSS情報を持つプロモーターデータベースを用意し、プロモーターがどの様な構成因子により成立しているのかを解析した。我々はプロモーター上の特定の位置で多く見られる短い配列を抽出するというアプローチから、ゲノムあたり500-1000個程度の因子を一括して同定することが出来た。この中にはTATAボックス、CAATボックス、Inr、並びに転写調節を担う既知のシス配列が含まれる。さらに新規の植物プロモーター固有の配列や、多数の転写制御配列の候補が得られた。この手法により、マイクロアレイ解析等の知見やを必要とせずにゲノムごとの固有な情報を得ることが出来た。以上の解析により動植物ではコアプロモーターの構造に違いがあることが示唆された。
  • 近藤 徹, 宮本 良, 三野 広幸, 松岡 昌弘, 浅井 智広, 大岡 宏造, 伊藤 繁
    p. 439
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    ヘリオバクテリアは絶対嫌気性の光合成細菌であり、そのI型ホモダイマー光化学系反応中心(RC)は植物やシアノバクテリアのヘテロダイマー型光化学系I (PSIRC)と相同性をもつ。ヘリオバクテリアRC内の電子伝達系は未だ不明確で、キノンが、RC内で電子受容体として機能しているのも未解明である。本研究では鉄硫黄センターFA/FBを欠いたヘリオバクテリアRCコア標品を使い、transient ESR法により閃光照射後のESRスペクトルの変化を測定し、電子伝達反応を調べた。この標品ではレーザ閃光照射後これまでに報告されているP800+Fx 由来のラジカル対特有の信号とは大きく異なる信号が得られた。この信号はスペクトルの形、減衰時定数からキノン由来の信号であると考えられ、ヘリオバクテリアRC内でもキノンが電子受容体として機能していることが示唆された。またPSIRCでみられる信号との比較の結果から、ヘリオバクテリアとPSIでは異なる電子受容体の配置が示唆された。その違いが電子伝達機構に影響していると示唆された。
  • 大竹 伸也, 坂田 優, 笹嶋 由佳, 池上 勇
    p. 440
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    PS1RC(PsaA/B) complexからエーテル処理によってChl aの大部分を除去し、P700当たり12~14分子のChl aしか含まない標品を調製した。(1)これにPhe a、Zn-Chl a、Cu-Chl aをリン脂質PGと共に加え、これらのChlが結合した標品を得た。(2)Zn-Chl aはChl aと同じく、添加量の約1/3が結合したが、Phe-aは約1/6しか結合しなかった。一方、Cu-Chl aは添加量が少ないとあまり結合せず、多いと結合数は増加した。(3)P700の光酸化初速度を測定したところ、Zn-Chl aではChl aの場合と同様に結合した分子数に比例して光酸化の量子収率は上昇した。一方、Phe aとCu-Chl aでは量子収率の増加は認められなかった。(4)5℃におけるChlケイ光(Fl680)の収率をChlあたりで比較すると、いずれの場合もChl aを結合した場合とほぼ同じであり、結合分子数が増えると減少した。以上の結果から、結合したZn-Chl aはChl aとほぼ同等のアンテナ機能を持つことが示された。一方、中心金属がないとき、およびCuに置き換わったときは、これらの色素はChl a結合部位へ結合できず、その結果、アンテナ機能も回復できないと推定された。
  • 日原 由香子, 村松 昌幸
    p. 441
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803において、光化学系I(系I)遺伝子群の転写は弱光下で活性化、強光下で抑制される。系I遺伝子はゲノム上に分散して存在しているにも関わらず、その応答は統一的かつ鋭敏である。我々は系I遺伝子群の発現を統一的に制御する機構が存在するのではないかと考え、反応中心サブユニットをコードするpsaAB、および小サブユニットの一つをコードするpsaDのプロモーター構造比較を行った。その結果、両遺伝子の二つのプロモーターの内、psaABの上流プロモーターと、psaDの下流プロモーターの強光応答が、いずれもコアプロモーター領域の直上流に位置するATリッチ配列により制御されていることを見出した。これらのATリッチ配列は、通常はプロモーター活性を正に調節しているが、強光下で一過的に不活化されることにより、その強光応答が達成されていた。psaCpsaEpsaK1psaLIの各小サブユニット遺伝子についても同様な制御機構が働いており、系I遺伝子群の統一的な強光応答に、コアプロモーター領域直上流のATリッチ配列が必須であることが明らかになった。
  • 緑川 貴文, 松本 浩二, 片山 光徳, 池内 昌彦
    p. 442
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    われわれはすでに鉄硫黄クラスタを結合したレドクスセンサーSufRによるsuf遺伝子群の調節について報告している。一方、大腸菌ではsuf遺伝子群の調節は別の鉄硫黄クラスタ結合転写因子IscRによって調節されている。シアノバクテリアではこのiscRのホモログが広く分布しているが、保存されたシステイン残基はすべて存在しない。本研究ではSynechocystisでのiscRホモログslr0846の破壊株を作製しDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、psaABの転写量が野生株の25%程度にまで低下していることが明らかとなった。また、Δslr0846株ではクロロフィル量の減少、低温蛍光スペクトル測定からPSI/PSII比の低下が確認された。この株は野生株よりも生育の速度が遅く、顕著な強光感受性を示した。このことはSlr0846が光化学系I転写調節に関与することを示唆している。さらに、Slr0846とpsaABプロモータ領域の直接的な結合を検証するため、大腸菌で発現させたHis-tag融合タンパク質を用いてゲルシフトアッセイを行っている。また、Δslr0846株は復帰変異が起こりやすく、既に複数クローンの復帰変異体が得られている。そこで、これらのpsaABプロモータ領域及びその関連遺伝子にどのような変異が起きているのかも現在解析中である。
  • 矢部 俊樹, 堀 洋, 中井 正人
    p. 443
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまで,CnfUと名付けた蛋白質が鉄硫黄クラスター生合成過程の足場として機能し,フェレドキシン(Fd)や光化学系Iへ鉄硫黄クラスターを供給していることを示してきた(Yabe, et al. Plant Cell, 16, 993-1007).一方,シロイヌナズナのhcf101変異体は,[2Fe-2S]型のFdは正常であるが,光化学系Iを含む[4Fe-4S]型の鉄硫黄蛋白質が顕著に減少していることが報告されている(Lezhneva, et al. Plant J., 37, 174-85).CnfU変異体の解析結果とあわせて考えると,HCF101は鉄硫黄クラスター生合成過程においてCnfUの下流で[4Fe-4S]型の鉄硫黄クラスター形成に関わる事が推測される.そこでHCF101蛋白質の生化学的特徴を調べるため,大量発現系を構築し,精製を行ったところ,鉄硫黄クラスター様の補欠分子を保持する状態で精製されてきた.精製蛋白質の還元剤や金属キレーターへの反応性から,保持されている補欠分子属として2種類の異なったものが結合していることが推察された.更に,モデル基質として[4Fe-4S]型のFdのアポ型を用いた鉄硫黄クラスター転移反応再構成実験の結果,HCF101上の鉄硫黄クラスターが転移し,ホロ型の[4Fe-4S]型Fdが生成されることが確認された.このことから,HCF101蛋白質自身が[4Fe-4S]型鉄硫黄クラスターを一過的に保持し,アポ型基質蛋白質へと受け渡しする,足場蛋白質として機能する可能性が示唆された.
  • 小澤 真一郎, 大西 岳人, 高橋 裕一郎
    p. 444
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系 I 複合体(PSI)は14のサブユニットから構成され、集光性クロロフィルタンパク質複合体(LHCI)が結合してPSI-LHCI超分子複合体を形成する。高等植物の超分子複合体には4つのLHCIが存在するが、緑藻クラミドモナスには9種のLHCIが検出され、より大きなアンテナ複合体が機能している。PSI-LHCI超分子複合体は多数の構成成分が段階的に分子集合すると考えられるが、その生化学的な実態は明らかではなかった。2005年度の植物学会で、我々はクラミドモナスのPSI-LHCI超分子複合体の分子集合中間体をタンパク質のパルス・チェイスラベル法などを利用して同定した。今回はPSIサブユニットに対する抗体を利用して分子集合中間体の解析をさらに進めたので報告する。ウェスタン分析により分子集合中間体にはPsaGとPsaKが存在しないことが分かった。その結果、LHCIは、PSIとの結合が弱くなり、チラコイド膜を温和に可溶化する過程で遊離すると結論した。一方、PsaFは反応中心とLHCIに挟まれた部位に存在し、LHCIが遊離した結果、結合が弱まり精製の過程で失われることが示された。したがって、緑藻クラミドモナスでは分子集合の最終段階でPsaGとPsaKが結合し、構造的にも安定なPSI-LHCI超分子複合体が形成されるであろうと結論した。
  • 近藤 久益子, 片山 光徳, 池内 昌彦
    p. 445
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    フィコビリソームはシアノバクテリアや紅藻で光化学系の主要な集光装置として機能するタンパク質複合体であり、光化学系IIだけでなく系Iにもエネルギーを渡すことが示唆されているが詳細は不明である。我々はこれまでに、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803において2コピーのロッドコアリンカータンパク質(CpcG1とCpcG2)がフィコビリソームの形成や光化学系へのエネルギー伝達において異なる機能を持つことを明らかにした。既知のフィコビリソームとは異なり、CpcG2が形成するフィコビリソームはコアの主要な構成成分を欠いており、光化学系Iへのエネルギー伝達に関与していることが示唆された。また、細胞粗抽出液を可溶化すると、CpcG1はおよそ半分がチラコイド膜画分から回収されるのに対し、CpcG2はほとんどがチラコイド膜画分から回収されることが分かった。さらに今回、可溶化した光化学系タンパク質をグリセロール密度勾配遠心により分画し、CpcG2の一部が光化学系I三量体と共局在していることを見いだした。また、様々な条件がチラコイド膜とCpcG2との相互作用に及ぼす影響を解析中である。これらのことから、CpcG2の形成するフィコビリソームがチラコイド膜とどのように相互作用し、光化学系Iへのエネルギー伝達にどのように関与しているのかについて議論する。
  • 高林 厚史, 遠藤 剛, 佐藤 文彦
    p. 446
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系I循環的電子伝達経路に機能する高等植物葉緑体NDH (NAD(P)H dehydrogenase) は、葉緑体ゲノムコードの11サブユニットおよび核ゲノムコードの3つ以上のサブユニットから構成される巨大で複雑なタンパク質複合体である。しかしながら、既知の14サブユニットには、電子供与体であるNAD(P)Hを認識し、酸化する機能を有するサブユニットが含まれておらず、おそらくは核ゲノムコードの未同定サブユニット群が存在すると考えられている。そこで本研究ではNDHの新規サブユニットを同定するため、ゲノム比較法を用いて、既知のNDHサブユニットと同じ系統プロファイル (phylogenetic profile) を示すシロイヌナズナのタンパク質遺伝子を37個選抜した。さらに、それらのうち機能未同定の10タンパク質についてT-DNA挿入変異株をABRCから取り寄せNDH活性を測定した結果、2ラインのNDH活性を消失した変異株を見出した。それらの変異株ではNDH複合体の蓄積量が顕著に減少しており、それら2つのタンパク質の欠損がNDH複合体の安定性を低下させることが明らかとなった。本発表ではそれら2つのタンパク質がNDHの新規サブユニットである可能性について議論する。
  • 村岡 良平, 奥田 賢治, 小林 善親, 鹿内 利治
    p. 447
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    NAD(P)H dehydrogenase (NDH) 複合体は光化学系Iサイクリック電子伝達及び葉緑体呼吸電子伝達に関与している。現在までにNDH複合体は葉緑体ゲノムに11つ、核ゲノムに3つサブユニット遺伝子がコードされているが、サブユニット構成の全ては未だ解明されていない。シロイヌナズナcrr3 変異体は光照射後に観察される、クロロフィル蛍光の一時的な上昇の欠如を指標として単離された。CRR3遺伝子(At2g01590)は葉緑体移行シグナルと一つの膜貫通領域を含む、機能未知タンパク質をコードしている。CRR3はチラコイド膜に局在しており、NDH複合体の蓄積に不可欠である。またNDH複合体もCRR3の蓄積に必要である。これらの結果からチラコイド膜においてCRR3がNDH複合体と相互作用している事が示唆された。またNDH複合体の他のサブユニットとは対照的に、CRR3はNDH複合体が由来すると考えられているシアノバクテリアでは保存されていない。以上の結果は、CRR3が葉緑体に特異的なNDH複合体の新たなサブユニットであるということを示唆している。
  • 桶川 友季, 賀川 裕悟, 小林 善親, 鹿内 利治
    p. 448
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系I(PSI)サイクリック電子伝達はリニア電子伝達と同様、光合成と光防御に不可欠である。高等植物においてはPGR5(PROTON GRADIENT REGULATION 5)依存の経路がメインでありフェレドキシンからプラストキノンへの電子伝達を担っている。この経路にはPGR5という低分子のチラコイド膜タンパク質が不可欠であることが証明されているがこのタンパク質の機能および経路の詳細はまだ明らかにされていない。またこの経路の重要性にもかかわらずin vivoでのこの経路による電子伝達の速度およびその制御については様々な議論がある。
    そこで私たちはシロイヌナズナの突然変異株、pgr5の単離葉緑体を用いてPGR5依存のPSIサイクリック電子伝達活性を評価した。測定に用いる光強度および測定用培地のpHの検討の結果、in vitroにおいてリニア電子伝達が十分に駆動されている条件においてもPGR5依存のPSIサイクリック電子伝達によるクロロフィル蛍光変化を観察できた。またこの経路による電子伝達が活性化される条件を見つけ出した。さらにNADP+を用いた競合実験の結果、野生株においてNADP+の光還元と光化学系Iサイクリック電子伝達の間にフェレドキシンの酸化をめぐる競合が見られるとことが明らかになった。これらのことからin vivoにおけるPGR5依存のPSIサイクリック電子伝達の貢献は表現型を説明するのに十分なだけ大きく、NADP+の酸化還元状態がこの経路を調節していることが示唆された。
  • 上妻 馨梨, 明石 欣也, 宗景(中島) ゆり, 久堀 徹, 横田 明穂
    p. 449
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物は多くの外的環境下において必要以上の光エネルギーを受け取るため、チラコイド膜の光化学系と、その電子伝達によりチラコイド膜に形成される電気化学的ポテンシャルの制御は非常に重要である。特に、強光乾燥ストレス下の植物葉では気孔閉鎖に伴いCO2固定反応が停止するが、このときチラコイド膜のエネルギーレベルがどのように制御されているのかについては知見が少ない。我々は、乾燥強光ストレス下の野生スイカにおいて、葉緑体ATP合成酵素εサブユニット蓄積量が選択的に減少することを見出した。εサブユニットはチラコイド膜からのプロトン流出とATP合成を共役させる重要な因子であり、その減少はチラコイド膜からのプロトン漏出を促進すると予想された。実際、クロロフィル蛍光解析においてストレスを与えた葉における作用光消去後のNPQの解消速度は非ストレス葉と比較して2倍に増加した。次に光照射下の単離チラコイド膜におけるΔpH形成能をアミノアクリジンによって測定した。その結果、ストレス条件下のチラコイド膜のΔpHはストレス前と比較して低下した。さらに、ストレス葉から調製した単離チラコイド膜にεサブユニットを添加したところ、ΔpH形成能の顕著な回復が見られた。これらの結果は、チラコイド膜ルーメンからストロマへのプロトン流出促進に、εサブユニットの選択的分解が直接的に関与していることを示す。
  • 三田 智子, 宗景(中島) ゆり, 吉田 和生, 明石 欣也, 横田 明穂
    p. 450
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    乾燥強光ストレス下の植物においては、気孔からのCO2流入が制限されるために炭素固定反応が低下し、電子伝達系の過還元、光合成器官の酸化的ダメージが引き起こされる。このような光障害を回避するための植物の防御機構を解明するために、本研究では乾燥耐性能を持つ野生種スイカを用いて、乾燥強光ストレス下のチラコイド膜タンパク質をプロテオミクスによって解析した。その結果、複数の葉緑体Rieske鉄-硫黄タンパク質が検出され、それらが乾燥強光ストレス前後で異なる挙動を示すことが明らかになった。この挙動の違いを詳細に調べるために抗Rieske抗体を作製し、二次元電気泳動・ウエスタンブロットを行ったところ、非ストレス下において分子量はほぼ同じで等電点の異なる複数のRieskeスポットが確認された。また、乾燥強光ストレス下ではより酸性側に複数のRieskeスポットが出現し、それらのスポットは再潅水によって消失することがわかった。ストレスの前後でスイカ葉の不溶性画分に含まれるRieskeタンパク質蓄積量に変化はみられず、サザンブロットから野生スイカではRieske遺伝子が一つであることが明らかになった。これらの結果から、Rieskeの翻訳後修飾が起こること、またその修飾が乾燥強光ストレスを回避するための未知機能に関連する可能性が考えられる。
  • 前田 勇, 高市 真一, 八木 清仁
    p. 451
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    煩雑な操作や高度な分析機器を必要とせず、水試料に加えて放置するだけで特定の化学物質を検出することが可能な微生物センサーを開発する。光合成細菌が合成するカロテノイドによる色調変化を、さまざまな細菌が有する転写スイッチによる制御と連動させることにより、化学物質を検出することが可能か否かの検討を行った。
    紅色細菌Rhodovulum sulfidophilumのカロテノイド生合成の最終段階であるスフェロイデン酸化酵素の遺伝子crtAの発現調節を、大腸菌が有する亜ヒ酸あるいはR. sulfidophilumが有するジメチルスルフィド応答性の転写スイッチに連動させた。これらの二つのセンサー株では、それぞれ亜ヒ酸あるいはジメチルスルフィドが存在すると、1日以内に黄褐色から赤色へとカロテノイドの色調変化が生じた。検出下限濃度はそれぞれ0.6-6 μg/lと3-30 μMであった。亜ヒ酸あるいはジメチルスルフィドの添加により黄色色素であるデメチルスフェロイデンのモル比が減少し、赤色色素であるスフェロイデノンのモル比が増加した。また、菌体前培養あるいは化学物質検出の過程において、酸素分子がセンサーとしてのCrtA機能に必須であることが明らかとなった。重金属など他の化合物への適用、簡便な水質管理の開発を目指している。
    新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成17年度産業技術研究助成事業
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