日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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  • 加来 友美, Suda Cecilia N.K., 馬場 啓一, 林 隆久
    p. 252
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    細胞壁中のキシログルカン分子鎖のつなぎ換えを行うキシログルカンエンドトランスグルコシラーゼ(XET)は、ドナーとアクセプターの2つの基質を用いて転移反応を触媒する。エンドウ上胚軸から精製したXETアイソザイムを用いて酵素反応速度論的に二基質反応機構を解析したところ、酵素・ドナー・アクセプター複合体を形成するシークエンシャル機構で働くことが示された。このことから、細胞壁中でXETはキシログルカン分子の中に結合した「酵素・ドナー複合体」と、キシログルカン分子の非還元末端に結合した「酵素・アクセプター複合体」の状態で存在していると考えられる。アクセプターとして蛍光標識したキシログルカンフラグメントオリゴサッカライド(XXXG、1 kDa)をエンドウ茎切片に与えたところ、第3節間において表皮組織に取り込みが見られた。また、ドナーとして蛍光標識した高分子キシログルカン(50 kDa)を与えたところ、第1節間および第2節間の維管束に強い取り込みが見られた。このことから、XETにおいて、アクセプターを取り込む「酵素・ドナー複合体」と、ドナーを取り込む「酵素・アクセプター複合体」が異なった局在性を示すことが認められた。
  • 石水 毅, 橋本 周子, 藤井 健太, 武田 亮, 長谷 純宏
    p. 253
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    植物細胞壁多糖の代謝関連酵素には未知のものが未だ多い。我々はキシログルカンに作用する新規α-1,2-フコシダーゼを見出したので報告する。
    我々は、糖タンパク質のN-配糖体のManβ1-4GlcNAc結合をエンド型で加水分解する植物特異的酵素、エンド-β-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.152, EBM)を発見した(J. Biol. Chem. 279, 38555 (2004))。EBMは液胞に存在し、糖タンパク質糖鎖の代謝に役割を担っていると推測される。さらに我々は、EBMがもう一つのタンパク質と結合した複合体を見出し、この複合体をテッポウユリより精製した。結合タンパク質は植物由来の機能未知タンパク質とのみ高い相同性があり、ビフィズス菌由来AfcAタンパク質のフコシダーゼドメインとわずかながら相同性を示した。基質特異性解析により、この複合体酵素は非還元末端にあるα-1,2-フコシド結合を加水分解することが判明した。α-1,2-フコシド結合を持つ植物糖鎖であるキシログルカン由来の糖鎖にもよく作用した。この新規α-1,2-フコシダーゼの生理機能との関わり、EBMとの結合の意義について興味が持たれる。
  • 小竹 敬久, 北條 祥子, 円谷 陽一
    p. 254
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    UDP-糖やGDP-糖といった糖ヌクレオチドは、高等植物のサルベイジ経路では、単糖1-リン酸とヌクレオチドから合成される。グルコース、ガラクトース、キシロース、L-アラビノース、グルクロン酸は、サルベイジ経路でUDP-糖に変換されるのに対して、L-フコースはこれらとは独立した反応でGDP-糖に変換されると考えられる。今回、我々はシロイヌナズナとイネのゲノムデータベースを利用して、L-フコキナーゼ遺伝子とGDP-L-フコース ピロホスホリラーゼ遺伝子両方に相同性を有する、新規の遺伝子(AtFKGPと命名)を同定した。イネにも高い相同性の遺伝子(OsFKGP)が存在するが、動物や酵母、細菌には相同遺伝子が存在しない。大腸菌で発現した組換えAtFKGPは、ATP、GTP、L-フコースからGDP-L-フコースを合成した。AtFKGPは、シロイヌナズナの花の蕾で比較的強く発現していた。T-DNA挿入によるAtFKGP遺伝子機能喪失変異体では、細胞質画分にL-フコースが蓄積していた。これらのことから、AtFKGPは、L-フコースとATPからL-フコース1-リン酸を生じる反応と、L-フコース1-リン酸とGTPからGDP-L-フコースを生じる反応を触媒する植物特有の酵素であり、シロイヌナズナではL-フコースのサルベイジ反応に関与することが示唆された。
  • 古西 智之, 小竹 敬久, ソラヤ ディナ, 金子 哲, 五十嵐 圭日子, 鮫島 正浩, 円谷 陽一
    p. 255
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    アラビノガラクタン-プロテイン (AGP) は植物の細胞膜や細胞壁に普遍的に存在するプロテオグリカンであり、細胞接着、形態形成、細胞死など多様な機能を持っている。その重量の約90%を占める糖鎖部分は植物の組織や発育段階により構造が変化することが知られており、AGPの機能に重要であると考えられる。ダイコンのAGPにはガラクトース、L-アラビノース (L-Araf ) の他にグルクロン酸 (GlcA)、4-O-メチル-グルクロン酸 (4-Me-GlcA) が多く存在するが、これらのウロン酸の結合様式や生理機能は判っていない。
    AGP糖鎖の構造・機能を解明するため、Aspergillus niger およびNeurospora crassa からβ-グルクロニダーゼ遺伝子 (AnGlcAase, NcGlcAase) をクローニングし、組換え酵素を作製した。ダイコンから精製したネイティブなAGPはこれらの組換え酵素であまり分解されなかったが、α-L-アラビノフラノシダーゼ処理したAGPからは、両ウロン酸が遊離された。また、根と葉由来のAGPで比較したところ、L-フコース (L-Fuc) 残基の多い葉AGPには殆ど作用しなかった。このことから、AGP糖鎖のL-Araf 残基やL-Fuc残基は、β-グルクロニダーゼの作用において立体的な障害になっていることが示唆された。
  • 佐藤 由夏
    p. 256
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    被子植物の生殖器官である花は、一般的にがく・花弁・雄しべ・雌しべという器官で構成されており、その器官の数・配列・形態などが多種多様である。原始的な被子植物の花は全て放射相称であり、花器官の一部がらせん配列である。進化の過程で、被子植物の花はらせん配列から輪生配列になり、さまざまな系統で放射相称から左右相称へと変化していった。本研究では、らせん配列から輪生配列が生じた事が花形態の多様性にとって最初の重要な出来事として考え、輪生配列の起源について調べることを目的とした。そのためには、花器官がらせん配列である植物を用い、花の発達過程の形態およびそれに関わる遺伝子群の機能を調べ、輪生配列の植物と比較する必要があると考えた。
    私達は以前から真正双子葉類の基部に位置するキンポウゲ科のタガラシに着目している。タガラシは多数の雄しべと雌しべがらせん配列しており、またライフサイクルも約4ヶ月と短くモデル植物になりうる可能性を持っている。そこで本研究では、このタガラシにおける花芽形成の発生初期の機構を解明することにした。そのために、現在以下の実験を行っている。1)花芽分裂組織決定遺伝子であるAPETALA1LEAFYの相同遺伝子の単離。 2)栄養生長期と生殖生長期におけるこれら遺伝子の発現パターンの解析。3)タガラシの形質転換系の確立。
  • 有手 友嗣, 岩田 広隆, 大島 健司, 中嶋 正敏, 榊原 均, 小嶋 美紀子, 前川 雅彦, 経塚 淳子
    p. 257
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    植物には一般に頂芽が存在すると腋芽の伸長が抑制されるという現象が存在し、これを頂芽優勢と言う。頂芽からのオーキシンが腋芽の伸長に対して抑制的に働くことは古くから知られている。しかしながらオーキシンがどのように腋芽に作用しているのかはよく分かっていない。我々はイネにおける頂芽優勢機構の解明をめざし、分子レベルでの解析を行っている。イネにおいても頂芽を取り除くことによって腋芽の伸長が促進された。さらに、切断面からオーキシンを与えると頂芽優勢が維持されたことから、今まで研究されてきた双子葉植物と同様に、イネにおいても頂芽からのオーキシンが頂芽優勢の維持に働いていると考えられた。
    イネのd3、d10、d14、d17、d27の5つの変異体はどれも頂芽優勢が低下している。d10の原因遺伝子D10は、カロテノイド切断酵素をコードするMAX4/RMS1のオーソログであった。MAX4/RMS1は腋芽の伸長を阻害するホルモン様物質(Shoot multiplication signal, SMS; Beveridge, 2006)の代謝に関わっている。d10変異体では頂芽の存在に関わらず、腋芽が著しく伸長する。また外生的にオーキシンを与えることによって、D10のmRNAが顕著に蓄積した。以上の結果からオーキシンの二次メッセンジャーとしてD10およびSMSが働いている可能性について考察する。
  • 高野 翔, 新濱 充, 相田 光宏, 田坂 昌生
    p. 258
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    高等植物は地上部の大部分の器官を茎頂分裂組織(Shoot Apical Meristem : SAM)から作り出す。SAMの形成、維持、およびSAMからの器官形成機構を理解することは植物の形作りを理解する上で重要である。我々は、地上部の形態形成に異常を示すシロイヌナズナの劣性変異体gorgongor)を単離した。gorでは抽薹開始後しばらくの間、花茎先端の肥大化が進み、側枝や花をほとんど形成しないまま抽薹が進行するが、やがてそこから花や花をつける枝が複数同時に形成される。gorでは発芽直後からSAMのサイズの拡大がみられた。また抽薹直後の花茎先端においては肥大したSAMの周囲に多数の突起状器官が形成された。さらに花においては雌ずいの内側から新たな花や花器官が形成された。gorではSHOOT MERISTEMLESSSTM)遺伝子上にミスセンス変異が生じていた。既知のstmgorについてアレリズムテストを行なった結果、gorの原因遺伝子はSTMであることが強く示唆された。STMはSAMの形成と維持に必要であり、既知の機能損失型stm変異体ではSAMの欠失や縮小がおこる。しかしgorstmとは大きく異なり発生を通じてSAMの拡大がみられる。このことからgor変異は機能損失型stm変異とは異なる影響をSAMの発生に与えている可能性が示唆される。
  • 相田 光宏, 椿本 有雅, 苅谷 綾乃, 清水 聡子, 桧原 健一郎, 田坂 昌生
    p. 259
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    茎頂分裂組織から新たな器官原基が形成されると、その周囲に境界部が生じる。器官境界部は「くぼみ」を形成することで隣り合う器官どうしを物理的に分離すると共に、新たな分裂組織が形成される場として機能する。シロイヌナズナのCUP-SHAPED COTYLEDON遺伝子CUC1CUC2CUC3は、いずれもNACドメインを持つ転写活性化因子をコードしており、胚性および腋生分裂組織の形成とシュート器官境界部の形態形成に重要な役割を果たす、互いに機能が重複した遺伝子群である。今回CUC遺伝子の下流で機能する遺伝子の同定を試みた。野生型とCUC1過剰発現体の芽生え、および野生型とcuc1 cuc2二重変異体の胚の二種類の組み合わせについて、それぞれマイクロアレイを用いた遺伝子発現の比較を行い、CUC1CUC2に正に制御される遺伝子の一次スクリーニングを行った。次に、得られた遺伝子についてRT-PCR法による二次スクリーニングを行い、CUC1過剰発現体において発現が上昇する、またはcuc1 cuc2において発現が低下する、のいずれかの条件を満たす下流候補遺伝子が合計21個得られた。現在これらの候補遺伝子について、野生型胚における発現パターン、および各遺伝子の発現に対するCUC1CUC2の影響を解析中であり、その結果を報告する。
  • 上原 健生, 奥島 葉子, 三村 徹郎, 深城 英弘, 田坂 昌生
    p. 260
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    側根形成能が顕著に低下するシロイヌナズナ変異体 crane-1 (cra-1) および cra-2 は、互いに独立に得られた新奇の優性変異体であり、本葉の下偏成長や矮化など類似した表現型を示す。両変異体において、オーキシンシグナル伝達で働くと考えられる IAA18 のドメイン II に、アミノ酸置換を伴う機能獲得型変異が見つかった。このことは、CRANE 遺伝子が IAA18 であることを強く示唆する。リアルタイム RT-PCR を用いた発現解析の結果、IAA18 遺伝子は芽生えの根を含む植物体のほぼすべての器官で発現していた。われわれのこれまでの研究により、IAA14/SLR ならびにこれと直接相互作用する転写活性化因子 Auxin Responce Factor 7 (ARF7) および ARF19 が側根形成の初期過程で重要な機能をもつことが示されている。IAA18 タンパク質もこれら 2 つの ARF タンパク質と相互作用することを酵母 two-hybrid 法により確認した。これらの結果は、IAA18 も IAA14/SLR と同様に、これらの ARF と相互作用して側根形成の制御に働く可能性を示唆する。現在、変異型 IAA18 タンパク質を発現する植物体の詳細な解析、レポーター発現系を用いた IAA18 の発現部位の同定などを進めており、その結果も合わせて紹介する。
  • 池山 芳史, 深城 英弘, 田坂 昌生
    p. 261
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    高等植物の根系構築には胚発生以降の側根形成が重要な役割を果たす。我々は、側根形成の分子機構を明らかにすることを目的として、シロイヌナズナから側根形成能が顕著に低下する劣性変異体rlr50(reduced lateral root formation50)を単離した。rlr50変異体は側根原基の形成密度が野生型と比較して約6割に減少するほか、ロゼット葉の矮小化を示す。また、rlr50変異体では外性オーキシンに応答した主根伸長の抑制と側根形成の促進が起こることから、rlr50変異はオーキシン応答に直接影響を及ぼさないと考えられる。マップベースドクローニングと形質転換による相補性試験の結果、RLR50遺伝子はNADPH酸化還元酵素において保存されたドメインの一部を持つ機能未知のタンパク質をコードすることを明らかにした。また、レポーター遺伝子を用いた発現解析の結果から、RLR50遺伝子は根を含む植物体全体の器官、組織で発現していることが分かった。さらに、RLR50-GFP融合タンパク質を発現する培養細胞および植物体の観察から、RLR50タンパク質は細胞質に局在することが強く示唆された。これらの結果から、RLR50はシロイヌナズナ側根形成の初期過程に直接または間接に関わる新規因子であると考えられる。
  • 草野 博彰, 安田 敬子, 島田 浩章, 岡 穆宏, 青山 卓史
    p. 262
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    ホスファチジルイノシトール(4,5)-ビスリン酸(PtdIns(4,5)P2)はホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)によって生合成され、多くのタンパク質の活性や細胞内局在を調節する。このPIP5Kは低分子量Gタンパク質やホスホリパーゼDなどと機能的に相互作用することでリン脂質シグナル伝達経路を構成すると考えられる。植物細胞の形態形成では、低分子量Gタンパク質(ROP1,2)やホスホリパーゼDζ1(PLDζ1)、またPtdIns(4,5)P2が根毛や花粉管の先端伸長に関わっていることが報告されている。このため、リン脂質シグナル伝達経路が植物細胞の先端伸長を制御していると考えられる。しかし、植物のPIP5Kの生理機能や分子機能はほとんど明らかにされていない。我々はこれまでに、シロイヌナズナに11種あるPIP5Kアイソフォームのうち、AtPIP5K3遺伝子が根毛の伸長に関わっていることを明らかにしてきた。そこで今回、AtPIP5K3の細胞内局在を詳細に解析したところ、AtPIP5K3が伸長する根毛の先端部に好んで局在することが明らかとなった。また、AtPIP5K3の過剰発現個体では一個の根毛細胞から複数の根毛が発生していることを発見した。これらのことは、AtPIP5K3が根毛の伸長と出芽の両方に関与することを示しており、また根毛の伸長を促進するPtdIns(4,5)P2は根毛の先端で局所的に生合成されていることを示唆している。
  • 冨永 るみ, 岩田 美根子, 佐野 亮輔, 岡田 清孝, 和田 拓治
    p. 263
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    CAPRICE (CPC) は、シロイヌナズナの根毛形成を制御するR3タイプのMYB遺伝子である (Wada et al., 1997)。CPCのホモログとして、TRIPTYCHON (TRY)、ENHANCER OF TRY AND CPC1 (ETC1)、ENHANCER OF TRY AND CPC2 (ETC2) が報告されている。我々はこれらにCPC LIKE MYB3 (CPL3) を加えた5つの遺伝子について解析を進めている。各CPC 相同遺伝子の過剰発現体は、根毛が増加しトライコームが減少した。cpc突然変異体は根毛が減少し、try突然変異体は葉のトライコームがクラスター状になることが知られているが、その他のCPC相同遺伝子突然変異体では顕著な表現型が観察されなかった。そこで二重、三重、四重変異体を作出したところ、根毛の減少及びトライコームの増加がみられ、5つのCPC相同遺伝子が協調的に機能していることが示唆された。またプロモーターGUSやGFP融合タンパク質の局在の観察から、CPC、TRY、ETC1が主にトライコームと根で発現するのに対しETC2CPL3は気孔で強く発現することや、根で細胞間移行するのはCPCのみだということが明らかになった。さらにCPL3遺伝子特異的機能として、胚軸の気孔分布の変化、核相の変化による生長制御及び花芽形成時期の変化が観察された。
  • 石田 哲也, 服部 紗代子, 岡田 清孝, 和田 拓治
    p. 264
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    シロイヌナズナの根の表皮細胞は根毛細胞と非根毛細胞とに分化する。これまでの分子遺伝学的解析より根毛細胞分化を制御する遺伝子や遺伝子間ネットワークが明らかになってきた。現在のモデルでは、WER (R2R3-MYB転写因子)、GL3、EGL3 (bHLH転写因子)、TTG1 (WD40タンパク質)からなる転写制御複合体がHD-Zip転写因子をコードするGL2の発現を促すと考えられている。WER-GL3/EGL3-TTG1複合体の形成はCPC (R3-MYB)の発現によって妨げられる。GL2の発現した細胞は非根毛細胞へと分化し、GL2の発現しない細胞が根毛細胞へと分化する。
    TTG2遺伝子はWRKY転写因子をコードし、変異株ではトライコームの発生が異常になる。しかし、その発現はトライコームだけでなく、根の非根毛細胞列でも観察される。根でのTTG2の発現制御を解析した結果、WER-GL3/EGL3-TTG1複合体によって直接正に制御され、CPC遺伝子に負に制御されていることが分かった。また、TTG2に転写抑制ドメインを融合させたキメラタンパク質(TTG2:SRDX)を発現させたところ、根のすべての表皮細胞から根毛が生じるようになった。TTG2:SRDX株の根ではGL2の発現が減少しており、この結果よりTTG2GL2の発現を正に制御する可能性が示唆された。
  • Tatsuya Sakai, Miki Nishioka, Yukiko Uehara, Mihoko Takahashi, Noriko ...
    p. 265
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    We isolate the tip growth mutant on the root hair cells, antlers1-1 (atl1-1), and identify the ATL1 gene by a positional cloning method. atl1-1 is an allele of the MZH2 kinesin-related gene, and we elucidate the structure of the ATL1 gene and a tissue-specific activity of its promoter. The ATL1 kinesin-related gene shows two homologus genes, named ATL2 and ATL3, in the Arabidopsis genome, and we report an involvement of the ATL2 gene in the helical growth of roots. Furthermore, by yeast two-hybrid screening, we isolate a NIMA-related protein kinase (Nek) gene, AtNek6, which encode a protein kinase bound to the C-terminus of the ATL family proteins. We reveal the function of AtNek6 in the epidermal cell morphogenesis in Arabidopsis seedlings. Our results shed light on the functions of the ARM repeat-containing kinesins and a NIMA-related kinase in epidermal cell morphogenesis of plants.
  • 保見 祥子, 武智 克彰, 滝尾 進, 高野 博嘉
    p. 266
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    葉緑体は藍藻から細胞内共生進化したと考えられているが、藍藻の細胞壁構成成分であるペプチドグリカン(PG)はどの緑色植物の葉緑体からも見出されていない。我々は蘚類ヒメツリガネゴケよりPG合成系遺伝子(Mur Genes)10種類の内 8種類を単離し、このうちPpMurEおよびPpPbp遺伝子をヒメツリガネゴケで破壊すると、両遺伝子破壊ラインで巨大葉緑体が出現することを見出した。ヒメツリガネゴケでは、UDP-MurNAcペンタペプチドのUDPをウンデカプレノールリン酸に置換するMraYと、それにGlcNAcを付加するMurGの遺伝子が見出されていなかった。これらを全ゲノム配列の決定が進行中のヒメツリガネゴケゲノム配列から見出し、RT-PCR並びにRACE法を用いて全長cDNAを決定した。PpMraYPpMurGはそれぞれゲノム中に1コピーずつ存在し、487、400アミノ酸のタンパク質をコードすると推定された。藍藻のMraYMurGとのアミノ酸配列の同一性はPpMraYが43.4%、PpMurGが35.8%であった。細胞内局在はPpMraYが葉緑体とミトコンドリア、PpMurGはミトコンドリアと小胞体と、用いた3種のプログラムで様々に予測された。PpMraYについて遺伝子破壊を行ったところ、遺伝子破壊ラインではPpMurEPpPbp遺伝子破壊ラインと同様に巨大葉緑体が出現していた。
  • 高橋 良子, 武智 克彰, 池上 亮太, 滝尾 進, 長谷部 光泰, 高野 博嘉
    p. 267
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    蘚類ヒメツリガネゴケの葉緑体包膜間には、葉緑体の起源とされる藍藻由来のペプチドグリカン(PG)層は確認されていないが、その核ゲノム中には全てのPG合成系遺伝子が保存されている。PG合成系遺伝子のうち、PpMurE、PpPbp (ペニシリン結合タンパク質)遺伝子を、それぞれ遺伝子破壊すると巨大葉緑体が出現することから、ヒメツリガネゴケにおいてPG合成系遺伝子群が葉緑体分裂に関与していると考えられる。ヒメツリガネゴケにおけるPpMurE、PpPbpの機能を明らかにするため、アナベナ (Ana)MurE、AnaPbp1Aによる機能相補実験を行った。PpMurE遺伝子を破壊したヒメツリガネゴケにAnaMurEを過剰発現させた形質転換体では、葉緑体数の回復と巨大葉緑体の消失が確認された。一方、AnaPbp1A 遺伝子をヒメツリガネゴケPpPbp遺伝子破壊ラインに導入したところ、葉緑体の表現型の回復は観察されなかった。PBPはトランスグリコシダーゼと トランスペプチダーゼの2つの機能ドメインを持つため、PbPbp遺伝子内の一方の機能領域のみをAnaPbp1Aの機能ドメインで置換し、PpPbp遺伝子破壊ラインで強制発現させたところ、トランスペプチダーゼドメインを置換したもので葉緑体数の回復がみられた。これらの結果は、ヒメツリガネゴケとアナベナのMurE、Pbpの機能が同一であることを示唆している。
  • 坂口 恵美, 武智 克彰, 山田 孝幸, 佐藤 博, 滝尾 進, 高野 博嘉
    p. 268
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    葉緑体分裂の最終段階でダイナミン関連タンパク質(DRP)が関与することが、紅藻やシロイヌナズナを用いた研究より示されている。シロイヌナズナゲノム中にはARC5(DRP5B)とよばれる1つの葉緑体型DRPが存在しており、その変異ラインでは分裂途中と考えられるダンベル型の葉緑体が多数観察される。葉緑体が観察しやすく、遺伝子破壊が可能なヒメツリガネゴケよりDRP5B相同遺伝子の同定を行い、PpDRP5B-1-2-3の3種の全長cDNA配列を決定した。PpDRP5B-1、-2、-3の予測アミノ酸配列はARC5と54.7%、54,9%、55.0%の、PpDRP5B内では、54.7%から86.2%の同一性を示した。3種の細胞内局在部位予測プログラムで、これらのタンパク質は葉緑体に移行することが予測された。PpDRP5B-1-2各遺伝子の単一遺伝子破壊ラインを作成したところ、1細胞当たりの葉緑体数は平均46.4±5.5個、46.2±5.3個であり、野生型(49.3±5.5個)と有意差は見られなかった。次に、PpDRP5B-1-2二重遺伝子破壊ラインを作成したところ、1細胞当たりの葉緑体数が平均30.3±6.4個に減少し、葉緑体の肥大化が観察された。電子顕微鏡観察では、肥大化した葉緑体の内部構造に変化は観察されなかった。現在、PpDRP5B-3を含めた三重突然変異ラインの作成を進めている。
  • 稲垣 良作, 朴 杓允, 金地 通生, 塚谷 裕一, 柳田 一樹, 櫻井 望, 鈴木 秀幸, 柴田 大輔, 宇野 知秀, 山形 裕士, 金丸 ...
    p. 269
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    植物色素体ゲノムにコードされた遺伝子群は色素体ゲノムコードの細菌型RNAポリメラーゼ(PEP, plastid encoded RNA polymerase)と核ゲノムコードのT7ファージ型RNAポリメラーゼ(NEP, nuclear encoded RNA polymerase)の2種類のRNAポリメラーゼによって転写される。シロイヌナズナからは3つのNEP遺伝子が同定され、色素体にはRpoTp (RpoT;3)とRpoTmp (RpoT;2)の2つが局在することが示唆されている。今回我々はRpoTpの機能欠損変異株を解析した。発芽初期にアルビノを示すこのΔrpoTp株(sca3-2)は、糖脂質合成がほとんどできないことが示唆された。異常は葉肉細胞に顕著で細胞数の減少と肥大化、空隙の増加が見られた。また、ショ糖を含む培地上でΔrpoTp株の子葉では葉緑体の再構築と推測される形態変化と不完全な緑化が観察された。一方、本葉では色素体分化の非同調性が観察され、RpoTpに葉緑体発達を同期する機能かあることが示唆された。一方、ΔrpoTp株ではNEP依存の遺伝子、PEP依存の遺伝子ともに顕著に影響を受けていた、ただし、RpoTpは色素体遺伝子の発現に非常に重要であるが、生育後期に不完全な緑化が起こることからRpoTmpによる機能的相補の可能性も示唆された。以上の結果をもとに、RpoTp、RpoTmpの機能的差異について考察する。
  • 黒田 洋詩, 杉浦 昌弘
    p. 270
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    植物の葉緑体は独自のゲノムおよび遺伝子発現系をもち,遺伝子発現制御においては,転写だけでなく翻訳などの転写後の過程が非常に重要な役割を果たしていることが知られている.葉緑体の翻訳装置は原核生物のものに類似しているが,原核生物とは異なり,5'非翻訳領域 (5'UTR) に Shine-Dalgarno (SD) 様配列が存在しない mRNA が多く存在する.それらの翻訳開始の促進と翻訳開始点の決定にはトランス因子の関与が考えられているが,そのメカニズムは明らかとなってはいない.そこで我々は,新しい葉緑体 in vitro 翻訳系を用いて,SD 配列のないタバコ葉緑体 psbN mRNA の翻訳開始に必要なシス領域とトランス因子について解析を行った.その結果,psbN mRNA には2つの異なる翻訳開始点があることが明らかとなった.さらに,ゲルシフト法により反応液中のタンパク質濃度に依存したバンドシフトが観察され,また,UV クロスリンク法によりトランス因子と考えられるバンドを検出した.現在,より詳細な解析を行っており,その結果について報告する.
  • 奥田 賢治, 明賀 史純, 本橋 令子, 篠崎 一雄, 鹿内 利治
    p. 271
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    RNA編集は、RNA上で塩基配列を書き換える転写後調節機構であり、幅広い生物で見つかっている。高等植物のRNA編集はCからUへの塩基置換で、葉緑体とミトコンドリアでそれぞれ約30箇所、400箇所以上と非常に多くのRNA編集を受ける部位が存在する。我々は昨年の本大会で、高等植物で巨大な遺伝子ファミリーを形成しているPPRタンパク質の一つCRR4が、葉緑体ndhDの開始コドンを作製するRNA編集部位近傍の配列に特異的に結合することによって、編集部位の特異的認識を行っていることを報告した。
    本研究では、核コード葉緑体タンパク質遺伝子破壊株(Dsタグライン)を用いて、さらなるRNA編集に関与するPPRタンパク質の同定を逆遺伝学的に試みた。その結果、PPRタンパク質の一つCRR21がndhDの128番目のセリンをロイシンへと換えるRNA編集に関与することが明らかになった。CRR4とCRR21は共にPPRタンパク質ファミリーにおけるE+クラスに属する。E+クラスはC末端にEモチーフとE+モチーフ(E/E+ドメイン)と呼ばれるPPRモチーフとは異なるドメインを持っている。このE/E+ドメインの欠損およびCRR4とCRR21間でのドメインスワッピング実験は、CRR4とCRR21間でE/E+ドメインは機能的に保存されていることを示唆した。
  • 服部 満, 西川 友子, 大野 雅幸, 中村 崇裕, 杉田 護
    p. 272
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    Pentatricopeptide repeat (PPR)タンパク質は、35アミノ酸保存配列を繰り返し持つタンパク質である。PPRタンパク質はシロイヌナズナとイネに450種ほど存在することが知られている。その多くはミトコンドリアや葉緑体に局在すると予測されることから、植物のオルガネラ機能の発現を担う重要なタンパク質ファミリーとして注目されている。しかし、その詳細な役割に関しては不明である。我々は最近解読されたヒメツリガネゴケ(以下、コケ)ゲノムのドラフト配列情報から103種のPPRタンパク質遺伝子を見いだした。シロイヌナズナの全PPRタンパク質遺伝子の8割はイントロン配列を持たないのに対して、コケのPPRタンパク質遺伝子の8割はイントロン構造を持つのが特徴である。さらに3種の細胞内局在予測プログラムを使って、コケPPRタンパク質の細胞内局在を予測したところ、葉緑体局在のものが32種、ミトコンドリア局在のものが42種と予測され、残りの29種はその他(ERや核など)となった。葉緑体局在予測のPPRタンパク質については、GFPの一過的発現観察を行ったのでその結果を報告する。最近、コケPPR531-11タンパク質が葉緑体clpP転写物のスプライシングに働くことを明らかにしたのでその結果も合わせて報告する。
  • 北村 后希, 奥田 賢治, 小林 善親, 鹿内 利治
    p. 273
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    葉緑体におけるRNA編集は、RNA上の特定のシチジンをウリジンへ脱アミノ化する過程である。シロイヌナズナ変異株crr4は葉緑体ndhD遺伝子の開始コドンを作るRNA編集能力を特異的に欠く。CRR4はPPRタンパク質をコードし、RNA編集部位周辺の配列に結合することで編集部位の認識を行う。CRR4は脱アミノ化を行うドメインをもたないため、葉緑体RNA編集はPPRタンパク質と共に働く未知のRNA編集酵素により行われると考えられる。本研究ではこの因子の同定を目的とし、crr4-4サプレッサー変異株の単離を行った。crr4はCRR4がわずかに機能する弱いアレルであり、葉緑体NDH複合体活性が大きく減少している。crr4-4にEMS変異原処理を行い、約2万5千のM2個体からNDH活性が野生株レベルまで回復した30のサプレッサー変異株候補を選抜した。候補株ではNDH複合体蓄積量の回復が確認された。しかしndhDのRNA編集活性の顕著な回復は確認されなかった。サプレッサー変異は、crr4-4のみに働くものとヌルアレルのcrr4-3にも働くものが存在する。現在候補株について原因遺伝子の同定を進めている。
  • 小林 啓子, 鈴木 優志, 唐 建偉, 永田 典子, 關 光, 大山 清, 木内 玲子, 金子 康子, 松本 正吾, 吉田 茂男, 村中 俊 ...
    p. 274
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    高等植物のイソプレノイドは、動物とは異なり細胞質のメバロン酸(MVA)経路と、色素体の非メバロン酸(MEP)経路の2つの経路から合成される。しかし、植物におけるこれらの経路の調節機構についての知見は少ない。我々はこれまでに、植物に特徴的なイソプレノイド合成経路の制御機構を調べるために、MVA経路の鍵酵素であるHMGRの阻害剤lovastatin (lov)およびMEP経路特異的阻害剤clomazoneにも耐性を示すlovastatin insensitive 1 (loi1)を単離し、LOI1が新規pentatricopeptide repeat (PPR)タンパク質をコードすることを報告した。
    野生型はこれらの阻害剤処理によって各々の経路の主要代謝産物(ステロール、クロロフィル)含量が著しく減少するが、loi1ではこの減少が緩やかであった。loi1ではlov存在下において野生型よりもHMGR活性が上昇したことから、これがlov耐性の原因と考えた。PPRタンパク質は一般に、オルガネラコード遺伝子の転写後調節に機能すると考えられている。LOI1は一本鎖RNAに結合活性を持ち、N末領域LOI1-GFPはミトコンドリアに局在することが分かった。以上の結果より、LOI1はミトコンドリアコード遺伝子の転写後調節によって、MVA/MEP両経路の活性調節に影響する新規因子である可能性が示された。
  • 今西 優一, 福森 由記, 輿石 望, 小林 香澄, 杉山 康雄
    p. 275
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    ミトコンドリアDNAには酸化的リン酸化系の構成成分をコードする遺伝子があるので、植物ミトコンドリア遺伝子の転写とその調節はすべての組織において細胞の代謝を維持する上で大変重要である。さらに、植物の様々な成長段階、例えば、雄ずいでの雄性配偶子形成や成長点での細胞分裂の時にはミトコンドリアの数や遺伝子発現量が著しく増加するのでミトコンドリアの遺伝子発現は生理現象と密接に連動している。
    高等植物ミトコンドリア遺伝子の多くはモノシストロニックに転写されるが、いくつかの遺伝子は共転写される。そして、イントロンスプライシング、RNAエディティング、5’と3’のプロセシングなどの転写後プロセシング反応によって成熟RNAが生成される。双子葉植物のコアプロモーターとして、CRTAAGAGA (CNM)モチーフとCGTATATAA (TA)エレメントが報告されている。我々はタバコミトコンドリアDNAにある60種類の遺伝子の内、数種類の遺伝子ORFの5’上流にCNMモチーフを認めた。しかしながら、それらを実験で確かめてなかったので、5’-RACEとcircularized RT-PCR法でタバコミトコンドリアの転写系の解析を進めた。現在までに数種類の構造遺伝子とrRNA遺伝子の転写開始点を決め、その5’上流にCNMとCNM様モチーフ、TAエレメントとTA様エレメントを確認した。今後、プロモーター解析に加えて、雄ずいや成長点でのミトコンドリア遺伝子発現の亢進の詳細を調べて行きたい。
  • 安達 澄子, 内宮 博文, 梅田 正明
    p. 276
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期において中心的な役割を果たす。CDKのキナーゼ活性は、リン酸化やサイクリンなどの活性制御タンパク質の結合により制御されることがよく知られている。このような進化的に保存された翻訳後制御に対し、発生や成長に伴った転写制御については、独自の発生様式をもつ高等植物では他の生物とは異なる制御が存在すると考えられる。
    植物の細胞周期を主として制御するA型CDK(CDKA)は、出芽酵母cdc28変異体の相補能をもち発現量が細胞周期に依存しない。シロイヌナズナのCDKA;1のノックアウト変異体は致死であることや、一度分化した細胞が脱分化し細胞分裂を再開する過程で実際の細胞分裂に先立って発現が上昇することが知られていることから、植物組織内においてCDKAの発現量をある閾値以上に保つことが発生や形態形成の基盤として重要であることが示唆される。そこで我々は、CDKA;1の様々なプロモーター領域をGUSにつないで形質転換植物体を作出し、植物組織内におけるCDKA;1の発現パターンの解析を行ってきた。プロモーター領域の網羅的な解析の結果、組織特異性や活性の強さが異なる複数のシスエレメント候補領域を見いだした。今回はCDKA;1の発現に大きく寄与している2つのシスエレメント候補領域を取り上げ、これらの領域がどのような生理的役割を持っているかについても考察したい。
  • 高塚 大知, 梅田(原) 千景, 内宮 博文, 梅田 正明
    p. 277
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    細胞周期の中心的な制御因子はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)である。シロイヌナズナではCDKはA~Fの6タイプに分類されている。このうち、CDKF;1は植物特異的なCDKであり、これまでの研究によりCDK活性化キナーゼ(CDK-activating kinase; CAK)として機能することがわかっている。そこで、今回植物体におけるCDKF;1の機能解析を行う目的で、T-DNA挿入変異体を単離し、その表現型を観察した。cdkf;1変異体では、発芽後、根の成長が著しく阻害されていること、コルメラの細胞層が少ないことが明らかになった。また、根端分裂組織でCYCB1-GUSの発現がほとんど見られなくなることから、cdkf;1変異体では、根端における細胞分裂が極端に抑制されていることが示された。一方地上部においては、地上部全体が矮小化すること、葉の細胞数が減少し個々の細胞が小さくなること、倍数性が低下していたことから、地上部でも細胞分裂が抑制され、葉の細胞伸長も阻害されていると考えられる。これらの結果から、cdkf;1変異体では分裂サイクルおよびエンドサイクルへの突入が阻害されているという可能性が考えられる。しかし、成熟胚では形態的な異常が認められなかったことから、CDKF;1は後胚発生的な細胞分裂において極めて重要な因子であると考えられる。
  • 春山 誠, 大谷 美沙都, 杉山 宗隆
    p. 278
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのsrd2は、胚軸外殖片の脱分化、シュート再生、根の発達に強い温度感受性を示す突然変異体である。この責任遺伝子SRD2はsnRNA転写活性化機能をもつタンパク質をコードしており、これまでの研究から、胚軸脱分化過程において、SRD2に依存したsnRNAレベルの上昇が細胞増殖能を高める一要因であることが分かっている。
    本発表では、SRD2p::GUS形質転換植物体を用いて行なった、胚軸の脱分化に関わるSRD2発現の解析結果を報告する。胚軸外殖片を2,4-DとKinetinを含むカルス誘導培地(CIM)で培養すると、中心柱全体と切断面近くの領域で顕著なGUS発現が確認された。2,4-Dのみを加えた培地で胚軸外植片を培養したときも、CIMの場合と同様の発現パターンを示した。これに対し、Kinetinのみを加えた培地、植物ホルモンを含まない培地で胚軸外殖片を培養したときは、高レベルのGUS発現は切断面近傍に限られていた。細胞増殖との関連から、2,4-D存在下で見られた中心柱でのGUS発現が、脱分化に寄与するSRD2発現を反映していると考えられる。
    また興味深いことに、培地に含まれている糖源をグルコースからスクロースに替えて胚軸外殖片を培養したところ、植物ホルモン非存在下であっても胚軸の中心柱全体で顕著なGUS発現が確認された。この発現と脱分化との関係については現在検討中である。
  • 大林 祝, 杉山 宗隆
    p. 279
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    器官再生の過程では、形態形成の基盤となる要素機構の多くが集約的に動員されていると考えられる。私たちはこうした要素機構の解明を目指し、器官再生の好例である不定根形成に着目して単離したシロイヌナズナ温度感受性突然変異体の解析を進めている。本発表では、これらの変異体の1つrid2の表現型に基づき、脱分化・細胞増殖活性化の素過程についての新知見を報告する。
    rid2は胚軸のカルス化に関しては強い温度感受性を示すが、根の場合は感受性が部分的であり、制限温度下で培養した根外植片は串だんご状の不連続なカルスを生じる。責任遺伝子のRID2は核局在シグナルをもつメチルトランスフェラーゼ様タンパク質をコードしており、何らかの核内メチル化反応への関与が推測される。rid2の胚軸からのカルス形成をレポーター遺伝子等により詳しく解析したところ、制限温度下では細胞増殖の再開がほぼ完全に阻害されること、核小体の拡大を伴う核の形態異常と細胞の歪な肥大が起きることが確認された。一方、根外植片では、カルス化が抑制された領域においてもある程度の細胞増殖は観察され、rid2変異が再開直後の細胞増殖に影響してカルス化の進行を妨げていることが窺われた。この際、核の形態異常や細胞の肥大は見られなかった。これらの結果は、脱分化・細胞増殖活性化の過程において、少なくとも2つの質的に異なる点でRID2がはたらくことを示唆している。
  • 吉積 毅, 津本 裕子, 滝口 朋子, 永田 典子, 山本 義治, 川島 美香, 市川 尚斉, 中澤 美紀, 山本 直樹, 松井 南
    p. 280
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、エンドリデュプリケーションを制御する分子機構を明らかにするために、遺伝学的なアプローチから解析を進めている。アクチベーションタグラインから得られたilp1-1Dでは、胚軸や子葉でDNA含量の増大が見られ、この増大と共に器官の大型化も観察された。
    次に、エンドリデュプリケーションも細胞周期の一つであるため、ILP1過剰発現体において細胞周期関連遺伝子の発現に変動が見られるか解析を行った。その結果、S/G2期特異的に発現するサイクリンA2の発現が減少していることが明らかになった。CYCA2;1の欠損変異でも、ilp1-1Dで見られるDNA含量の増大が見られる。レポーターを用いたIn vivo transcription assayから、ILP1のC末端には転写抑制化能が確認された。これら結果は、ILP1はCYCA2の発現を抑制することでエンドリデュプリケーションを促進していることを示唆している。
    ILP1は植物だけでなく昆虫やほ乳類でも保存されているが、酵母といった単細胞生物では認められなかった。マウスの培養細胞を用いた解析では、マウスILP1ホモログはマウスA-type サイクリンであるCcna2の発現を有意に減少させた。そこで本発表では、ILP1を介したサイクリンAの転写抑制シグナル伝達経路が、多細胞生物で保存されていることについても議論したい。
  • 石川 雅樹, 小栗 康子, 小原 真理, 若月 幸子, 長谷部 光泰, 久保 稔
    p. 281
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    コケ植物セン類に属するヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)は、単細胞である胞子から発芽後、細胞が一列に並んだ原糸体を形成する。その後、原糸体から芽と呼ばれる細胞塊を経て、茎葉体へと発生していく。茎葉体は、茎と葉のような構造をした茎葉から構成されている。茎葉を茎葉体から切り離すと、約24時間目以降で切断面に面した葉細胞が分化全能性幹細胞へと分化転換し、原糸体頂端細胞になる。このようにヒメツリガネゴケは被子植物に比べて高い分化全能性を持っているが、その仕組みは不明である。本研究では、この分化転換の過程(リプログラミング)を細胞周期の観点から解析することを試みている。今回我々は、ヒメツリガネゴケのゲノム配列とEST情報をもとに、サイクリンやサイクリン依存性キナーゼなどの細胞周期関連遺伝子を単離した。その後、リプログラミング過程における細胞周期関連遺伝子の発現変動をリアルタイム RT-PCRを用いて調べた。その結果、茎葉切断後12時間目でサイクリンD(CYCD)転写産物が蓄積し始め、さらに茎葉切断後36時間以降で、サイクリンB転写産物の蓄積量が上昇することが分かった。以上のことから、ヒメツリガネゴケのリプログラミングの過程でCYCDの発現が上昇し、それにより細胞周期が動き出すという可能性が考えられる。
  • 平野 博人, 新名 惇彦, 関根 政実
    p. 282
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物の細胞周期制御は動物との類似性が高く、特にG1/S移行期の増殖制御に重要な役割を果たすRb(retinoblastoma)を中心とするシグナル経路が植物においても機能すると考えられている。Rbは転写因子E2Fと結合してその転写活性化を抑制するが、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)によりリン酸化されるとE2Fとの結合が解除され、S期移行に必要な遺伝子群の転写が活性化される。
    シロイヌナズナはゲノムに1種類のRb関連遺伝子(AtRBR1)を持っており、最近の研究から根端分裂細胞の維持などに関わっていることが報告されている。本研究では、シロイヌナズナ培養細胞を用いて基本的なAtRBR1の発現確認やリン酸化状態の解析、E2Fとの結合解析を行った。また、エストロゲン誘導RNAiによりAtRBR1を抑制させる系を用いてAtRBR1の機能解析を行った。
    結果、AtRBR1はリン酸化タンパク質であり、栄養飢餓時に低リン酸化であったものが、栄養状態の改善に伴いG1期からS期へ移行するときに高リン酸化されていく現象が確認された。また、RNAiによりAtRBR1を抑制した系での機能解析の結果、AtRBR1非存在下では栄養飢餓に応答したG1期停止が起こらないことが分かった。
    以上の結果から、AtRBR1はG1/S期の制御を担っており、栄養飢餓におけるG1期停止を起こすために必須の因子であることが分かった。
  • 山本 裕二郎, 伊藤 正樹
    p. 283
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物の発生過程における細胞増殖の制御は、個々の細胞の細胞周期制御因子を通じてなされていると考えられるが、そのメカニズムは多くの部分が未解明である。サイクリンBを初めとする植物のG2/M期遺伝子の転写は、共通のシスエレメントとそこに結合するR1R2R3-Myb転写因子群によって制御される。シロイヌナズナはR1R2R3-Mybをコードする遺伝子を5個持つが、それらは一次配列から3つのグループに分類される(A-type, B-type, およびC-type)。これまでの逆遺伝学的研究から、A-type MybはG2/M期遺伝子の転写を活性化し、サイトキネシスを正に制御することを明らかにしてきた。今回は、C-type Mybが逆にG2/M期遺伝子の転写を抑制する働きを持つことを明らかにしたので報告する。二つ存在するC-type Myb遺伝子の二重破壊株をマイクロアレイ解析した結果、CDC20KNOLLEなどのG2/M期遺伝子のmRNAレベルが野生株に比べ上昇していた。この発現の上昇は、A-type Mybの働きには依存しないこと、また発生初期の若い葉よりも、発生の進んだ葉において顕著であることが明らかになった。これらのことからC-type Mybの働きは発生が進み細胞増殖が停止した(あるいは停止しつつある)組織においてG2/M期遺伝子の発現を抑制することにあるのではないかと考えられた。
  • 佐古 香織, 園田 裕, 山崎 直子, 佐藤 長緒, 山本 宏子, 池田 亮, 山口 淳二
    p. 284
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    ユビキチン・26Sプロテアソームシステムは不要となったタンパク質を能動的に分解することにより細胞内の恒常性維持を行う“品質管理システム”として機能する。また、特定のタンパク質を然るべき局面で分解し、タンパク質の寿命決定を行う“分子スイッチ”としての機能も合わせ持つ。26Sプロテアソームを構成する数十のサブユニットタンパク質は、単なる複合体の構造要素として機能するだけでなく、個別の機能をあわせもっている。
    本研究では、シロイヌナズナの26SプロテアソームサブユニットであるAtRPT2に着目した。AtRPT2a欠損変異体(Atrpt2a)は顕著な器官の巨大化を示し、これは細胞質分裂を伴わないDNA複製であるエンドリデュプリケーション(ERD)の過剰促進によって核内DNA量が増大したことに起因していた。Atrpt2aにおけるこのような過剰なERDは細胞周期制御の異常に起因すると推測された。実際、Atrpt2a変異体において、ERDの正の制御因子であるサイクリン依存型キナーゼ抑制因子KRP2の過剰な蓄積が認められた。研究成果をもとに、プロテアソームが関与する植物の細胞・器官サイズの決定機構について議論したい。
  • 日渡 祐二, 藤田 知道, 村田 隆, 長谷部 光泰
    p. 285
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    微小管は細胞分裂と伸長を制御する中心的因子の1つであり、微小管制御機構の解明は細胞形態変化と高次発生過程の関係を理解する上で必要である。我々がヒメツリガネゴケから単離した姉妹遺伝子PUBL1PUBL2は分裂細胞に特異的に発現し、微小管の配向制御を介して正常な細胞分裂と伸長に必須な機能を持つ。これらの遺伝子はユビキチン様モチーフを持つII型ユビキチン様タンパク質をコードすることから、我々はタンパク質分解による新規の微小管制御系を提唱し、その制御機構を解析している。
    今回、微小管に対するPUBLsの作用機作を調べるために、GFP-tubulinを発現する系統で遺伝子破壊を行い細胞分裂時の微小管動態を調べた。その結果、二重遺伝子破壊系統ではプラグモプラストの崩壊が遅延し、プラグモプラスト微小管が安定化した。プラグモプラスト赤道面では両極から伸びる微小管のプラス端が交差、架橋されており、その領域がフラグモプラストの形成維持に重要であると考えられている。二重遺伝子破壊系統ではプラグモプラスト赤道面の微小管交差領域が拡大していた。またPUBLs-GFP融合タンパク質は赤道面の微小管交差領域に局在した。従ってPUBLsはプラグモプラスト赤道面の微小管交差領域に作用することでフラグモプラスト微小管の安定性を制御する可能性が考えられた。これらの結果から微小管制御へのPUBLsの作用機作を考察する。
  • 野澤 彰, 宮田 拓治, 戸澤 譲
    p. 286
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    植物には多くの膜タンパク質をコードする遺伝子が存在している。ゲノム解析の終了したシロイヌナズナでは全遺伝子の約1/3が膜タンパク質をコードしていると推定されている。しかし、膜タンパク質は脂質二重膜上で働くため膜上に配置しないと活性を持たない、膜上に存在しないと不溶化しやすく精製が難しいなどの理由から生化学的な解析が困難であり、それらの多くは機能未知のままである。本研究では、タンパク質合成活性に優れるコムギの無細胞タンパク質発現系を利用し膜タンパク質を合成し、ダイズのリン脂質からなるリポソーム上にそれらを配置したプロテオリポソームを用いた膜タンパク質解析系の構築を試みた。
    まず、イネの葉緑体内膜に存在するホスホエノールピルビン酸/リン酸トランスロケーターPPT1をモデルとして実験を開始した。当初PPT1は無細胞系で合成はされるもののその多くが不溶化しているといった問題があった。しかし、いくつかの界面活性剤を合成系に添加することにより可溶化した状態で合成することに成功した。これまでに、この可溶化したPPT1とリポソームを混合し、凍結融解および超音波処理を行うことによりプロテオリポソームを調製し、PPT1のリン酸輸送活性を検出している。現在、このプロテオリポソーム解析系の汎用性を検証するために、他の金属イオン輸送体などを用いて解析を進めている。
  • 佐々木 孝行, Ryan Peter, Delhaize Emmanuel, 松本 英明, 山本 洋子
    p. 287
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    コムギ根におけるアルミニウム(Al)耐性は、根端でのAl活性化型のリンゴ酸トランスポーター(ALMT1)遺伝子の発現量に支配されることが示唆されていた。本研究では、ALMT1遺伝子上流域をクローニングし、その構造についてAl耐性度の異なる系統間で比較解析した。代表的なAl耐性の2系統ET8とAtlas 66では、ALMT1上流域において280 bpが3つの繰り返しになっており、感受性の2系統ES8とScout 66ではその領域は1つであった。そして、中間の耐性をもつChinese Springではこの280 bp領域を含む803 bpが2つ繰り返しになっていた。さらに多数のコムギ系統でAl耐性度と繰り返し配列の関係を解析した結果、日本以外の育種系統には、6種のパターンの異なるALMT1上流配列が存在し、その繰り返しの回数がAl耐性度ならびに遺伝子発現量と正の相関を示した。従って、この繰り返し配列がALMT1遺伝子の高発現に関与することが強く示唆された。一方で、日本の育種系統では2種類の上流配列のみが見られ、発現量やAl耐性との相関は低かった。しかし、Alで活性化されるリンゴ酸放出量とはAl耐性度とは正の相関を示したことから、日本のコムギ系統においてもリンゴ酸放出量がAl耐性に関与するものの、ALMT1遺伝子の転写以外の調節要因も関与する事が示唆された。
  • 元田 弘敏, 佐々木 孝行, 山本 洋子
    p. 288
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    コムギのALMT1は、細胞膜局在性のアルミニウム(Al)活性化型リンゴ酸トランスポーターである。このタンパク質は、459アミノ酸残基からなり、ハイドロパシープロットから5~8の膜貫通領域を持つと予想された。ALMT1トランスポーターの構造解明を最終目的として、本研究ではタンパク質の膜配向性の解析を行った。動物の培養細胞にALMT1遺伝子を導入し一過的に発現させた。その際、ALMT1を発現している細胞を識別するために、N末端やC末端へGFPまたはHisタグを付加したALMT1を発現させ、Hisタグに対する抗体やALMT1のNおよびC末端側の親水性領域のペプチドに対する抗体で免疫染色し、蛍光顕微鏡で観察した。このとき、界面活性剤処理の有無で免疫染色の程度を比較し、エピトープ領域の配向性を判断した。細胞の内側にエピトープがある場合、界面活性剤により細胞内に抗体が透過した場合にのみ染色がみられるが、外側の場合には界面活性剤処理の有無にかかわらず染色がみられる。解析の結果、ALMT1のN末端およびC末端は細胞の外側に存在することが強く示唆された。また、その他の親水性領域についても抗体染色を行っており、その結果を合わせてALMT1の配向性について報告する。
  • 三輪 京子, 高野 順平, 大森 弘之, 藤原 徹
    p. 289
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    ホウ素は必須元素の一つであり、ホウ素欠乏は植物の生育抑制を引き起こす。一方、過剰のホウ素は植物に毒性を示す。シロイヌナズナBOR1は低ホウ素栄養条件下での根の導管へのホウ素の積み込みに働く排出型ホウ酸トランスポーターである。BOR1の蓄積はホウ素栄養に依存して転写後制御されており、ホウ素十分・過剰条件では分解される。
    前年会でシロイヌナズナのBOR1相同遺伝子のうちBOR4が根の内皮で強く発現する排出型ホウ酸トランスポーターであることを示した。今回は、BOR4がホウ素過剰耐性に働く分子であること、および、ホウ素過剰耐性植物を初めて作出したことを報告する。
    CaMV35SRNAプロモーター制御下でBOR4-GFPを発現する形質転換シロイヌナズナを作成し、ウェスタン解析を行ったところホウ素栄養条件に関わらずBOR4-GFPタンパクが同程度検出され、GFP蛍光が細胞膜に観察された。独立な形質転換体6ラインを固形培地で生育させたところ、ホウ素過剰条件で、いずれのラインにおいても野生型株と比較して大幅な生育の改善が観察された。ホウ素通常条件では野生型株と生育に有意な差は見られなかった。
    これより、BOR4はBOR1とは異なり、高ホウ素条件でも分解を受けない分子であり、ホウ素の細胞内から細胞外への排出により、植物に高いホウ素過剰耐性を付与する活性があることが明らかになった。
  • 石丸 泰寛, 増田 寛志, 鈴木 基史, 高橋 美智子, 中西 啓仁, 森 敏, 西澤 直子
    p. 290
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    亜鉛は,成長,発達や分化などの細胞内プロセスを制御に関わる非常に重要な元素である。我々は,亜鉛欠乏誘導性で,分裂組織や維管束に発現するイネの新規亜鉛トランスポーターOsZIP4を同定した。今回,我々はCaMV 35SプロモーターでOsZIP4を過剰発現させた形質転換イネを作製し,解析を行った。この過剰発現イネは,根では亜鉛含量が顕著に増加していたが,茎葉や種子では亜鉛含量は減少していた。ノーザン解析により,OsZIP4過剰発現体におけるOsZIP4の発現解析を行ったところ,CaMV 35Sプロモーターによる外生由来のOsZIP4は根や茎葉で過剰に蓄積していた。しかし,内生由来のOsZIP4は,根では発現誘導が抑制され,茎葉では発現が誘導されていた。マイクロアレイ解析により,OsZIP4過剰発現イネの茎葉における遺伝子発現を網羅的に解析したところ,その遺伝子発現パターンは亜鉛欠乏イネの遺伝子発現パターンとほぼ一致した。つまり,OsZIP4過剰発現イネは,根では亜鉛過剰,葉では亜鉛欠乏になっていることが明らかとなった。以上の結果は,OsZIP4はイネにおける亜鉛の体内分配に関与し,厳密に発現制御されなければならない非常に重要な亜鉛トランスポーターであることを示している。
  • 吉本 尚子, 井上 恵理, 渡部(高橋) 晶子, 斉藤 和季, 高橋 秀樹
    p. 291
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
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    SULTR1;1とSULTR1;2は硫黄欠乏条件においてシロイヌナズナの根の表皮と皮層で発現する高親和型硫酸イオントランスポーターであり、外界からの硫酸イオン吸収を担う。すでに私達はSULTR1;1とSULTR1;2の発現の硫黄欠乏応答性がプロモーターによる制御を受けることを報告した。本研究ではカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターを用いてSULTR1;1およびSULTR1;2をsultr1;1 sultr1;2二重変異体において高発現させた形質転換植物を作出し、SULTR1;1とSULTR1;2の転写後制御について解析した。二重変異体は野生型と比較し硫酸イオン吸収活性が顕著に低いが、SULTR1;1またはSULTR1;2の高発現により硫酸イオン吸収機能が回復した。形質転換植物において、SULTR1;2 mRNAは葉および根の両方で発現したが、SULTR1;2タンパクは硫黄欠乏条件で生育した植物の根で特異的に蓄積した。一方、SULTR1;1のmRNA発現は根に限られ、SULTR1;1タンパク量は硫黄欠乏により増加した。また、形質転換植物の硫酸イオン吸収活性は硫黄欠乏処理により顕著に増加した。SULTR1;1およびSULTR1;2の硫黄欠乏応答および発現局在性は、転写、転写後の両方の段階によって制御されていることが示唆された。
  • 大窪 恵美子, 桧垣 匠, 朽名 夏麿, 佐野 俊夫, 馳澤 盛一郎
    p. 292
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物にとって生長は基本的かつ重要な生理現象であり,分裂後の細胞の体積増加が個体全体の生長量の大部分を決める.成熟した組織では,細胞体積の約9割を占める巨大なオルガネラである液胞が存在し,液胞の発達は植物細胞の肥大に深く関与すると考えられる.しかし,植物細胞の生長に伴う巨大液胞構造の発達過程には不明な点が多い.
    我々は,液胞が吸水により体積を増加させることから,水の膜輸送を担う実体である液胞膜型アクアポリンの発現・生理機能の解析を行なった.まず,通常のタバコBY-2培養細胞において液胞発達過程を同調的かつ詳細に追跡できるミニプロトプラスト培養系を用いて,タバコBY-2液胞膜型アクアポリンNtγTIPの発現を解析した.細胞から巨大液胞を遠心分離によって除去したミニプロトプラストにおいて,液胞は培養6時間目には網状液胞として発達し始め,培養12時間目には液胞内腔が膨らんだチューブ状液胞を経て巨大液胞へと発達する.この液胞発達過程において,NtγTIPは網状液胞からチューブ状液胞への移行時と巨大液胞発達時に発現が上昇した.次に,GFPとNtγTIPとの融合タンパク質をマーカーにして液胞の発達過程を追跡したところ,NtγTIP過剰発現細胞ではコントロールと比較してチューブ状液胞や巨大液胞への発達の促進が見られた.以上の結果から,NtγTIPは液胞の発達に関与している可能性が示唆された.
  • 田中 洋子, 朽名 夏麿, 近藤 矩朗, 馳澤 盛一郎, 佐野 俊夫
    p. 293
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    気孔の開閉は気孔を取り囲む孔辺細胞への水分の出入りによる細胞体積の増減により生じる。孔辺細胞体積の大部分は巨大液胞が占めており、気孔開閉における液胞の構造とその体積変化との関連が示唆されていたが、その詳細は未解明であった。前回我々は、GFP-AtVam3pを発現することで液胞膜を可視化したシロイヌナズナの形質転換体の孔辺細胞を用いて液胞構造の動態を観察し、気孔開閉時には液胞が陥入やバルブ状構造を形成し、液胞膜を折りたたみながら収縮することを報告した。また、複雑化した形状にもかかわらず、収縮時の液胞は細分化されずに、連続性を保っていた。一方、我々が開発したソフトウェアREANTを用い、液胞の立体構築を行い、表面積と体積の変化を算出した結果、気孔閉口時の液胞体積は減少するが、表面積は逆に増大することが判明した。同時に計測した細胞膜の表面積の減少量が液胞膜の増大量に近似していたことから、今回は気孔閉鎖時の増加した液胞膜成分の起源について検証した。膜小胞輸送に関わると予想されているホスファチジルイノシトール3キナーゼの活性を阻害したところ、気孔閉鎖と共に液胞構造の複雑化も阻害された。また、ソラマメの孔辺細胞をFM4-64で染色した後ABAで処理したところ、FM4-64蛍光の細胞膜から液胞膜への移動が促進された。これらのことから気孔閉鎖過程では余剰となった細胞膜成分が液胞膜に取り込まれる可能性が示唆された。
  • 佐野 俊夫, Ivashikina Natalia, Hedrich Rainer, 馳澤 盛一郎
    p. 294
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    カリウムイオン(K+)は植物細胞内にもっとも多く含まれる陽イオンであり、植物の成長に必須の成分である。細胞レベルではK+は細胞内の浸透圧調節物質として働き、細胞伸長、肥大に寄与していることが知られている。一方、K+チャネルを通じたK+の吸収は細胞周期の正常な進行にも必要であることが明らかになった。そこで、本研究ではタバコ培養細胞BY-2を用いて細胞分裂、細胞周期進行におけるK+の役割を調べた。まず、細胞内浸透圧調節への関与を考え、細胞内浸透圧を原形質分離法、およびプレッシャープローブ法を用いて測定したところ、細胞伸長時に比べ細胞分裂時では細胞内浸透圧が低かった。パッチクランプ法によりK+チャネル活性の細胞周期依存性を調べたところ、内向きK+チャネル活性はS期で、外向きK+チャネル活性はG2期で高いことがわかった。そこで、次に細胞質アルカリ化剤の効果を調べたところ、細胞質アルカリ化剤の添加はK+飢餓状態における、細胞分裂率の低下および細胞周期進行の遅延を回復した。これより、細胞分裂、細胞周期進行にはK+は細胞内浸透圧の調節というよりは、細胞質のアルカリ化に関与している可能性が示唆された。
  • 木下 俊則, 高橋 洋平, 島崎 研一郎
    p. 295
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    気孔は青色光に応答して開口するが、この時、青色光は孔辺細胞の青色光受容体フォトトロピンに受容され、細胞膜H+-ATPaseを活性化し気孔開口の駆動力を形成する。これまでの研究により、孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseはC末端スレオニン残基のリン酸化とリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合により活性化されることが明らかとなっているが、この反応を触媒するプロテインキナーゼやホスファターゼは不明である。本研究では、ソラマメ孔辺細胞を用いて、H+-ATPaseのリン酸化反応や複合体の解析を行った。その結果、H+-ATPaseのリン酸化反応は単離ミクロゾームにおいて観察され、キナーゼやホスファターゼが、H+-ATPaseと同じ細胞膜に存在することが示唆された。さらに、ゲル濾過やBN-PAGEによるH+-ATPase複合体の解析を行ったところ、H+-ATPaseは300-500 kDaに検出された。青色光照射によるサイズ変動は見られなかったが、興味深いことに、H+-ATPaseの活性化剤フシコクシンで処理した孔辺細胞では、複合体のサイズが約750 kDaに増加していた。また、免疫沈降による解析を行ったところ、H+-ATPaseはいくつかの未知蛋白質と複合体を形成していることがわかった。現在、精製した複合体におけるリン酸化反応について解析を行っており、これらの結果についても報告する予定である。
  • 中村 みゆき, 三浦 明日香, 木下 由紀, 木下 哲, 加藤 政臣, 角谷 徹仁
    p. 296
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナはゲノム中にCACTAと呼ばれるDNA型トランスポゾンを持っている。このCACTAトランスポゾンはDNA低メチル化表現型を示すddm1変異体において活性化され、転移することができるようになる。加えて、CACTA1ddm1変異により一度活性化されるとDDM1座を野生型に戻しても転移し続ける (Kato et. al. 2004.)。このことはつまり、DNAメチル化がトランスポゾン抑制の「世代を超えた目印」として働くことを示している。本研究では、一度活性化されたCACTAは世代を経ることで転移頻度に変化があるのかを調べるため、ddm1ヘテロ個体から分離したddm1ホモ個体(1世代目)とddm1ホモ個体の自殖から得られた2世代目の間で転移頻度の解析を行った。PCRによる解析からCACTA1は2世代目でより転移が増えているように見られた。さらに詳しく、この転移活性化のタイミングを知るため、組換え遺伝子をもちいてCACTAの転移が起きた細胞を組織レベルで可視化した。現在、トンランスポゼース供給側であるtrans-条件と転移を起こすcis-条件それぞれにわけて世代間で比較し解析を行っている。これらの結果について、CACTAトランスポゾンの転移の活性化機構を発生の観点も踏まえて議論したい。
  • 山崎 朋人, 大濱 武
    p. 297
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    単細胞緑藻のChlamydomonasにおけるRNAi反応の特徴を調べるため、大腸菌由来のスペクチノマイシン耐性遺伝子aadAのmRNAを標的にし、inverted repeat DNAコンストラクトからhairpin RNAを転写させてRNAiを誘起した。強力な遺伝子発現抑止が形質転換直後には見られたが、継代培養後には、標的aadA mRNAの破壊効率が低下し、薬剤耐性能が形質転換前の半分程度にまで復活した細胞が混在した。継代培養後、再び単細胞分離して得たいくつかのコロニーではaadA hairpin RNA蓄積量がコロニー毎に大きく異なった。Inverted repeat領域にはCGメチルが蓄積し、その蓄積量とhairpin RNAの蓄積量には負の相関関係があった。また、脱アセチル化阻害剤の添加により、hairpin RNAの蓄積量が即座に上昇した。以上の事から、ChlamydomonasにおいてRNAi効果が継代培養を通して一定しないのは、inverted repeat配列特異的なCG-methylationが、その領域に付着するヒストン修飾を変化させ、クロマチンの高次構造変化を起こしたことによる、hairpin RNAの転写抑制が主因であることを明らかにした。
  • 小松 晃明, 山崎 朋人, 大濱 武
    p. 298
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    単細胞緑藻のChlamydomonasは、RNAを鋳型とするRNA合成酵素遺伝子を持っていない。そのため、強力なノックダウンを実現するためには、大量の2本鎖RNAを安定的に供給する事が必須である。ところが、Chlamydomonas ではPol II酵素の強力なプロモーターであるrbcS2の上流配列を用いてinverted repeatを転写させ、ヘアピンRNAを生産させるように設計しても、一過的で不安定なノックダウンしか実現できない。そこで、我々はヒト細胞においてtRNAプロモーターを用い、RNAiの誘起が成功していることに注目した。spectinomycin耐性賦与遺伝子aadAを標的にし、Asp tRNA直後にaadAの5’-近傍の150bpで構成したinverted repeat DNA配列を連結し、silencerコンストラクトを作製した。これをaadAが発現している細胞に導入したところ、spectinomycin耐性が劇的に低下し、ヘアピンRNAの蓄積が確認された。ヘアピンRNAが効率よく転写され、かつ核外に輸送される系を確立するために、現在tRNAのアクセプターステム部に変異を導入した6種類のDNAコンストラクトを作成し、強く、かつ安定的にRNAiを誘起でき改変tRNA遺伝子を選抜している。
  • 山口 勝司, 小野 明美, 定塚(久富) 恵世, 寺田 理枝, 飯田 滋
    p. 299
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    DDM1タンパク質はSWI2/SNF2 familyに属する、クロマチンデモルディング因子である。シロイヌナズナの変異体では、セントロメア付近やトランスポゾンなどの高次反復配列を中心にDNAのメチル化が低下し、世代を重ねるにつれて特定部位のメチル化と関連したepialleleが出現することもよく知られており、DNAのメチル化状態の維持に重要な機能を果たしていると考えられている。今回、我々は相同組換えを利用した遺伝子ターゲッティングにより、イネに2つあるDDM1遺伝子であるDDM1aDDM1bを、各々個別に破壊したトランスジェニックイネを得ることを試みた。PCRやサザン解析により、DDM1a及びDDM1b遺伝子を個別に破壊したイネ個体を、各々複数ライン得ることができた。遺伝子を破壊したホモ個体のセントロメア付近の反復配列のDNAメチル化を調べたところ、DDM1aでは明確な差が見られなかったが、DDM1bの破壊株では顕著なDNAメチル化が低下していた。それ故、イネではDDM1bDDM1aよりも中心的な役割を担っていることが強く示唆された。得られたトランスジェニックイネの特徴について、観察結果を報告する。
  • 山内 卓樹, 寺田 理枝, 定塚(久富) 恵世, 森藤 曉, 中村 郁郎, 飯田 滋
    p. 300
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    MET1(Methyltransferase1)遺伝子は、ゲノム複製時にCpG配列のシトシンの5位にメチル基を付加する維持型DNAメチル化酵素遺伝子であり、細胞増殖過程でのエピジェネティックな遺伝子発現の制御に関与すると考えられている。イネにはMET1aMET1bの2遺伝子が存在し、両遺伝子の幾つかの組織での発現の報告はあるが、遺伝子発現部位と機能の詳細な解析は未だ報告されてはいない。そこで我々は、両遺伝子の発現と機能の解析を目指して、相同組換えによる遺伝子ターゲティングを試みた。強力なポジティブ・ネガティブ選抜を用いた遺伝子ターゲティングによるWaxy及びAdh遺伝子のノックアウト変異体作出については既に2004年と2005年の本会で報告しているが、今回は、標的遺伝子のプロモーター領域の下流にGUS遺伝子を挿入するノックインにより、MET1a及びMET1b遺伝子を個別改変した形質転換カルスを得てサザン解析を行い、各々15及び3系統の改変体を得ることができた。また、これらカルスでのGUS遺伝子の発現も確認できた。さらにMET1a遺伝子を改変した形質転換当代(T0)のヘテロ植物体でGUSレポーター遺伝子の発現を解析したところ、主に分裂組織での染色が観察された。これらの結果を踏まえて、ノックインの技術的側面についても議論する。
  • 森藤 暁, 山口 勝司, 定塚(久富) 恵世, 寺田 理枝, 飯田 滋
    p. 301
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、アグロバクテリア菌による大規模形質転換系と強力なポジティブ・ネガティブ選抜及びPCRスクリーニングを組合わせたイネの遺伝子ターゲティング法を用いて、植物のDNAメチル化酵素遺伝子の1つDRM (DOMAINS REARRANGED METHYLTRANSFERASE)のイネホモログOsDRM1a遺伝子を改変したイネの作出を試みた。独立した7系統のOsDRM1a改変カルスを分離して植物体を再分化させ、6系統のトランスジェニックイネ(T0)を得た。サザン解析により、これら6系統のT0イネは全てOsDRM1a遺伝子が予めデザインした構造をヘテロに持つことも確認した。この内の3系統の自殖後代(T1)を展開し、ホモ個体を解析したところ、矮化、分げつの減少、出穂遅延、頴花の形態異常、不稔などが観察された。また、RT-PCR解析により、ホモ個体の葉ではRIRE7CRRなどセントロメア特異的なレトロトランスポゾンの転写の活性化も観察された。それ故、OsDRM1aはイネの正常な発生に必要であり、一部のレトロトランスポゾンの転写抑制にも関わることが示唆された。
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