日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
選択された号の論文の1055件中51~100を表示しています
  • 太田 賢, Zhu Jian-Kang, Hasegawa Paul M., 三浦 謙治
    p. 0051
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    ICE1は低温シグナル伝達系において最上流に位置する転写因子で、DREB1A及び低温誘導性遺伝子の発現誘導と低温耐性に関与している。我々は、ICE1 の詳細な機能調節を明らかにするために、酵母 two –hybrid 法でICE1と相互作用する因子を単離した。その中には、MYC67, 70, 71が含まれていた。myc67, 70, 71変異体は野生株より凍結耐性が向上していた。また、myc67, 70, 71変異体では、低温によるDREB1A/CBF3の発現誘導が野生株より高く維持されていた。最近の研究成果から、ICE1 は気孔の形成過程にも関与していることが明らかになった。そこで、気孔形成を調べてみると、myc67, 70, 71変異体は気孔の形成過程や形態に異常が見られなかった。ただし、myc71変異体では野生株と比べて気孔の数が増加していた。以上の結果から、MYC67, 70は低温応答特異的な負の制御因子、MYC71は低温応答と気孔数の制御の両面において負の制御因子として機能していると考えられる。
  • 遠藤 仁, 山口 雅利, 中野 仁美, 西窪 伸之, 大谷 美沙都, 片山 義博, 出村 拓
    p. 0052
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    私たちはこれまでに、シロイヌナズナ培養細胞の道管要素への分化転換を同調的に誘導する実験系を確立し、これを用いたマイクロアレイ解析により道管要素分化誘導過程において発現が変動する遺伝子を同定した。さらに、これらの中で、NACドメイン転写因子をコードするVASCULAR-RELARED NAC-DOMAIN7 (VND7)が道管分化のマスター因子であることをすでに明らかにしている。本研究ではVND7の発現制御に関わる転写因子を同定するために、道管要素分化過程でVND7と同調して発現が上昇する転写因子に着目し、VND7プロモーター:ルシフェラーゼをレポーターとしたパーティクルボンバードメントによるトランジェント解析を行った。その結果、VND7を含む7種のVNDファミリー遺伝子すべてがVND7の発現を正に制御することが明らかとなった。また、VND以外58種の転写因子について解析を行ったところ、VND7の発現を正に制御する複数の転写因子を同定した。これらにはすでに報告されているASL18/LBD30, ASL20/LBD18 が含まれていた。現在、これら同定した転写因子の詳細な機能解析を進めており、その結果についても報告したい。
  • Matsui Kyoko, Tamura Kentaro, Hara-Nishimura Ikuko, Ohme-Takagi Masaru
    p. 0053
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    The ERF-associated amphiphilic repression (EAR) motif is a plant specific repression domain (RD). The minimum core sequence is 6 amino acids and it acts as a repressor when fused with heterologous DNA binding domain. However, the mechanism of repression via EAR-motif (RD) is not known and it should be clarified whether a plant specific mechanism of transcriptional repression may exist. We attempted iTRAQ proteome analyses to identify factor(s) that interact with RD, and found that plant specific histone deacetylases, a histone demethylase and several nuclear proteins of unknown function were isolated. We are analyzing protein-protein interactions between these factors and RD, respectively, both in yeast and in vitro system. A sub-nuclear localization of representative proteins is examined by confocal microscopy. We present genetic evidences, that the nuclear protein involves in the RD related repression, using transgenic Arabidopsis and mutant lines. We will discuss a possible mechanism of transcriptional repression caused by the RD, including changes of histone codes, such as acethylation and methylation.
  • 玉田 洋介, Yun Jae-Young, Woo Seung chul, Kang Ye Eun, 増田 典子, Amasino Rich ...
    p. 0054
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    冬季一年生シロイヌナズナにおける開花の春化要求性は、FRIGIDA (FRI) による花成抑制因子FLOWERING LOCUS C (FLC) の転写活性化によって確立されている。FRIによるFLCの転写活性化にはヒストンH3の4番目のリシン残基 (H3K4) のメチル化が不可欠である。多くの多細胞生物種において、H3K4のメチル化は出芽酵母Set1が属するクラスとショウジョウバエTrithorax (Trx) が属するクラスの2つのクラスのタンパク質によって触媒される。我々は、Set1クラスに属するARABIDOPSIS TRITHORAX-RELATED7 (ATXR7) がFLC遺伝子座におけるH3K4のメチル化に機能することを明らかにした。まず、atxr7突然変異体は冬季一年生シロイヌナズナにおいて早咲きの表現型を示した。さらに、atxr7突然変異体において、FLCの発現低下とFLC遺伝子座におけるH3K4メチル化量の低下を観察した。Trx クラスに属するATX1の機能破壊株も早咲きの表現型を示すことが知られていたため、我々はatx1 atxr7二重突然変異体を作出した。その結果、二重突然変異体はそれぞれの単一突然変異体を足し合わせた強い表現型を示した。以上の結果から、Set1とTrx両方のクラスのH3K4メチル化酵素がFLCの転写活性化に必須であることを明らかにした。
  • 眞木 祐子, 佐古 香織, 綿引 雅昭, Goto Derek, 山口 淳二
    p. 0055
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    26Sプロテアソームはユビキチン化されたタンパク質を能動的に分解する巨大タンパク質複合体であり,特定のタンパク質を特定の時期に分解することで様々な生命現象を制御している.特に植物では多くの生命現象がユビキチン・プロテアソームシステムにより制御されており,環境適応能力獲得のための中心的働きを担っていると考えられる.我々はこれまでにシロイヌナズナの26SプロテアソームサブユニットAtRPT2aが細胞分裂を伴わないDNA複製であるエンドリデュプリケーション(ERD)による細胞サイズの制御に関与していることを明らかにした.rpt2a変異体において,過剰なにERDより器官サイズの増大が観察される.(Plant J. 60: 68, 2009 )
    さらに,このrpt2a変異体において外性遺伝子の過剰なサイレンシングが生じていることが示唆された.後天的な遺伝子発現制御機構として,DNAメチル化,ヒストン修飾などが知られている.今回,植物において顕著にみられるDNAメチル化に着目し解析を行った.その結果, rpt2a変異体における遺伝子サイレンシングはDNAメチル化阻害剤,DNAメチル化関連遺伝子の変異により解除されることが分かった.26Sプロテアソームと遺伝子発現制御機構との関係性について議論したい.
  • 渋川 登美子, 菊池 彰, 鎌田 博
    p. 0056
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    植物において、胚乳形成時にDNAメチル化によって発現制御される遺伝子が知られている。しかし、胚発生関連遺伝子の発現に対するDNAメチル化の影響について明らかになっていない。本研究では、シロイヌナズナの胚発生関連遺伝子FUS3の発現制御にDNAメチル化が関与するか調べるため、FUS3の発現レベルとDNAメチル化レベルの関係およびそのDNAメチル化機構を調べた。
    シロイヌナズナの全ゲノム配列のDNAメチル化レベルが解析され、そのデータがThe SIGnAL Arabidopsis Methylome Mapping Toolにおいて公開されている。このデータベースを用い、FUS3周辺領域のメチル化レベルを調べたところ、5’上流領域にメチル化領域が存在した。発達段階を追った解析により、この領域のDNAメチル化レベルはFUS3の発現が低下する種子成熟時に上昇することを見出した。そこで、この領域を人為的に高メチル化し、FUS3の発現への影響を調べた。その結果、FUS3 5’上流領域のメチル化レベルとその発現量に負の相関が認められた。さらに、各種DNAメチル化酵素変異体の解析から、DRM2が種子成熟時のde novo DNAメチル化に関与し、FUS3の発現に影響することが認められた。これらの結果から、種子成熟時、FUS3の発現制御にDRM2を介したDNAメチル化が関与することが示唆された。
  • 早川 慶紀, Jin Jun-Young, 関口 陽, 溝井 順哉, 藤木 友紀, Lee Youngsook, 西田 生郎
    p. 0057
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    CDP-コリン合成酵素 (CCT, EC 2.7.7.15)は、ホスファチジルコリン(PC)の生合成経路であるCDP-コリン経路の鍵酵素である。シロイヌナズナのCCTをコードする二つのイソ遺伝子CCT1CCT2に欠損をもつT-DNA挿入二重欠失ラインcct1-1 cct2では、花においてエピジェネティックホメオシスを示す。具体的には、雄蕊は心皮に、花弁はがくに置き換わり、形態異常は世代を重ねることでより顕著になる。変異は、花形態形成のABCモデルによると、Bクラス遺伝子の変異ときわめて類似していたのでAPETALA3 (AP3)とPISTILLATAの発現レベルに対する影響をRT-PCRにより調べた。その結果、AP3のみ転写産物レベルが抑制されていることがわかった。 AP3プロモータ領域のDNAのメチル化レベルをバイサルファイトシーケンス法により調べた結果、これまでに報告した領域(関口ら、植物生理学会年会2008)のほかに、高度にメチル化されている領域の存在が明らかになった。以上のことは、cct二重変異株で観察されるエピジェネティックホメオシスは、Bクラス遺伝子AP3のDNAメチル化が原因であると考えられる。
  • 金 鍾明, 藤 泰子, 遠藤 高帆, 田中 真帆, 松井 章浩, 石田 順子, 諸澤 妙子, 篠崎 一雄, 豊田 哲郎, 関 原明
    p. 0058
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    真核生物の転写活性およびゲノム機能の維持、調節には、ヒストンN末端領域の化学修飾を介したクロマチンの状態変化が関与する。シロイヌナズナにおいて、ヒストン脱アセチル化酵素HDA6 は、遺伝子の発現抑制やヘテロクロマチン構造の構築に機能するエピジェネチックな因子として知られている。我々は、ChIP-chip法を用いて、HDA6によって制御されるシロイヌナズナゲノム上のAGIコード領域を特定し、それら領域におけるヒストン修飾状態のゲノムワイドな解析を行っている。これまでに、抗ヒストンH4アセチル化抗体を用いたChIP-chip実験を行い、hda6変異株に特異的な、およそ160カ所の高アセチル化したゲノム領域を見いだした。これらヒストンアセチル化ピークのほとんどは、転写開始点の近傍に局在していた。同定されたヒストン高アセチル化領域には、セントロメア近傍に位置するSahdu およびCopia等を含むトランスポゾンが多数含まれていた。現在、HDA6により直接脱アセチル化されると考えられる、いくつかのヒストン修飾部位について、ChIP-chip法による解析を進めいている。本発表では、HDA6の解析データをもとに、シロイヌナズナゲノムの遺伝子発現調節機構におけるヒストン修飾状態の役割について議論したい。
  • 佐々木 卓, 小林 啓恵, 佐瀬 英俊, 角谷 徹仁
    p. 0059
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    シロイヌナズナのddm1(decrease in DNA methylation 1)変異体では、ゲノム全体でDNAメチル化が低下し、自殖後代で様々な発達異常が観察される。ddm1の自殖後代から得られたbonsai(bns)は、開花遅延や矮化、頂芽優勢の低下などの表現型を示す。この表現型の原因遺伝子、BNSは、細胞周期の制御に関わるAPC13(Anaphase Promoting Complex 13)に類似のタンパク質をコードしており、bns変異体ではDNAが高度にメチル化され、転写が不活性化されていることが示された (Saze and Kakutani 2007)。
    ゲノム全体でのDNAメチル化の減少を背景に、BNS遺伝子座において局所的なDNAメチル化上昇が起こる機構を調べるために、エピジェネティックな制御に関わる因子とddm1との二重変異体を作成し、BNS遺伝子座のメチル化誘導に必要な因子を探索した。その結果、BNS遺伝子座のDNAメチル化は、植物のde novoメチル化機構として知られるRdDM(RNA-directed DNA methylation)機構ではなく、ヒストンH3K9メチル化酵素のKYPと、植物に特異的なDNAメチル化酵素で非CpG配列のDNAメチル化維持に関わるCMT3を介した機構によって誘導されていることが示唆された。
  • 福留 章仁, 金屋 明宏, 江上 舞, 中澤 悠宏, 平栗 章弘, 森山 裕允, 福原 敏行
    p. 0060
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    真核生物に広く保存されるRNAサイレンシング経路において、Dicer-familyタンパク質とdsRNA結合タンパク質の特異的な相互作用は重要な働きを持つ。本研究はシロイヌナズナのDicer-like 4 (DCL4)による長鎖dsRNA切断におけるdsRNA-binding protein 4 (DRB4)の役割を生化学的に明らかにする事を目的とした。幼植物から調製した粗抽出液を用い、アクチン遺伝子配列由来の500bp dsRNAを基質としたdsRNA切断反応を行った結果、野生型由来の粗抽出液は21ntのsmall RNAを生じ、dcl4-2およびdrb4-1由来の粗抽出液では21ntのsmall RNAを生じなかった。次に、抗DRB4抗体を用いた共免疫沈降によってDCL4を含むDRB4複合体を粗抽出液から精製しdsRNAと反応させた結果、21ntのsmall RNAを生じた。また、抗DCL4抗体を用いて精製したDCL4複合体も同様の活性を示した。drb4-1由来の粗抽出液から精製したDRB4を欠くDCL4複合体はdsRNA切断活性を示さず、精製した複合体にリコンビナントDRB4を添加することでsmall RNAの生成が回復した。これらの結果は、DRB4がDCL4による長鎖dsRNA切断と21ntのsmall RNA生成において重要な役割を持つことを示唆している。
  • 佐古 佑介, 木村 美奈, 杉本 渚, 大場 久美子, Thompson Kari, Karlson Dale, 長谷部 光泰, 佐藤 良勝
    p. 0061
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    近年の研究により動物細胞はいくつかの遺伝子を導入することにより胚性幹細胞様の細胞にリプログラミングされることが分かってきたが、その作成効率は非常に低い。ところが、植物細胞は適切な条件下においては自発的にリプログラミングされることが知られている。我々は、その分子機構を明らかにするために、ヒメツリガネゴケを用いて頂端幹細胞で特異的に蓄積するコールドショックタンパク質(PpCSP1)のリプログラミングへの関与に着目して研究を進めている。PpCSP1は分化した葉細胞から頂端幹細胞への再生過程において急激に発現上昇し、なおかつ3' UTRによりpost-transcriptionalに発現抑制されていることを見いだした。3' UTRをゲノムから除去した変異株を作成したところ、PpCSP1転写産物が細胞内において蓄積することが分かった。この変異株の切断葉リプログラミングは、野生株で見られるような切断面に面した細胞のみからではなく、切断葉全体から起こることが観察された。このことは、PpCSP1がリプログラミング過程において促進的な因子であることを示唆している。PpCSP1には遺伝的に保存されたRNA結合ドメインがあることから、PpCSP1タンパク質のターゲットRNAがリプログラミング過程において重要な役割を担っている可能性がある。
  • 栗原 志夫, 松井 章浩, 花田 耕介, 神沼 英里, 川嶋 真貴子, 諸澤 妙子, Ishida Junko, 田中 真帆, 望月 芳樹, ...
    p. 0062
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    未成熟終止コドンを持つmRNAや非常に長い3'UTRをもつmRNAは、nonsense-mediated mRNA decay (NMD) と呼ばれる品質管理機構によって選択的に分解される。正常なNMDの働きにはUPF1、UPF2、UPF3の3つの因子が必須である。mRNA様非コードRNA (mlncRNA) の多くが、NMDの標的になり易い構造をとることに気づいた。そこで、シロイヌナズナのupf1、upf3 変異体に対して、タイリングアレイ解析を行った。その結果、少なくとも36個の既知mlncRNAと97個の新規mlncRNAの蓄積が増加することがわかった。以上のように、NMD機構が多くのmlncRNAを抑制していることを明らかにした(PNAS, 106:2453-2458, 2009)。
    NMDの標的RNAの5'→3'方向の分解は、ヌクレアーゼであるXRNによって行われると考えられる。そこで、3つのXRN遺伝子の変異体xrn2、xrn3、xrn4に対してタイリングアレイ解析を行ったが、顕著なmlncRNAの蓄積増加はみられなかった。XRNとの関連が示唆されているFIERY遺伝子の変異体において、いくつかのmlncRNAの蓄積を調べたところ、かすかな蓄積増加が確認された。以上の結果から、3つのXRNが重複してmlncRNAの分解に関与することが示唆される。
  • 千葉 由佳子, 峯田 克彦, 平井(横田) 優美, 内藤 哲, 山口 淳二, Green Pamela J.
    p. 0063
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    移動という逃避手段を持たない植物にとって,急激な環境の変化は大きなストレスであり,随時,適応していかなくてはならない。その中でも低温は,迅速に対応しなくてはならない主要な環境ストレスのひとつである。温帯域や亜寒帯域に生育する植物の多くは、“低温馴化”と呼ばれる機構を持ち、あるレベルの低温ストレスに晒されると、より強い耐冷性、時には耐凍性をも獲得する。我々は低温ストレスに応答したmRNA分解による遺伝子発現制御に注目した研究を進めている。マイクロアレイと転写阻害剤を組み合わせた網羅的解析により、低温ストレス応答において、mRNA分解の段階で制御されている遺伝子を見出すことができる。我々は、低温馴化の分子レベルの解析のため,植物体をより単純化した系としてシロイヌナズナの培養細胞株(T87)を用いることを検討した。T87細胞では生育段階によって低温馴化応答が異なっており、生育初期の培養細胞の方が低温に対して感受性が強く、それゆえに低温馴化による耐凍性の増加が顕著にみられる。この生育初期の培養細胞を用いた網羅的解析から、いくつかの遺伝子において、mRNA分解制御がそのmRNA量の調節に大きく関わっていることが明らかとなった。
  • 田中 真幸, 藤原 徹
    p. 0064
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    NIP遺伝子の一つであるNIP5;1は低ホウ素条件でのホウ素の効率的な輸送に必須なチャネルであり、その転写産物の蓄積はホウ素欠乏で高まる。NIP5;1のホウ素栄養応答の解明のため、NIP5;1プロモーター領域と5’非翻訳領域(5’UTR)のホウ素欠乏応答における役割について調べたところ、低ホウ素条件における根の発現に、NIP5;1プロモーター内の3つの異なる領域が関与し、一方5’UTRがNIP5;1転写産物のホウ素栄養に応じた蓄積に重要であることを前年回で報告した。
    本年回では、NIP5;1の5’UTR内に存在するホウ素欠乏応答領域に関してさらに検討を加えた。NIP5;1の5’UTRの断片の下流にGUS遺伝子を連結させ、カリフラワーモザイクウィルス35SRNAプロモーター制御下で発現させた形質転換植物を作製し、ホウ素欠乏および十分条件におけるGUS活性を調べた。その結果、5’UTR、312 bpを挿入した形質転換植物では、高ホウ素条件に比べて低ホウ素条件でそのGUS活性が高くなった。しかしながら312bp内の+184-+197(13bp)を欠損させると、ホウ素の応答がみられなくなり、低・高ホウ素条件ともにそのGUS活性が高くなった。以上のことから、5’UTRの少なくとも+184-+197の配列がNIP5;1転写産物のホウ素栄養に応じた蓄積に重要であることが示唆された。
  • Wanke Dierk
    p. 0065
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    BBR/BPC proteins comprise a class of transcription factors that are confined to the plant kingdom. They have been identified due to their specific binding to a conserved simple di-nucleotide sequence repeat DNA-element (GA/TC)n.
    Three distinct domain structures could be identified common to most BBR/BPC proteins: A N-terminal putative activation/interaction domain, a nuclear localization sequence (NLS) and a highly conserved basic DNA-binding domain, which is structured as a typical zinc-finger-like motif at its C-terminus.
    Based on their differing N-terminal domains, the BBR/BPC family can be subdivided into distinct groups. Phylogenetic analysis on the DNA-binding domain sequence strongly supports this division.
    BBR/BPC proteins exhibit group-wise expression patterns that are indicative of a high degree of functional redundancy between the group members.
    Group II proteins form homo-/hetero-oligomeric structures in the nucleus and the nucleolus, which are mediated by a novel type of coiled coil-interaction domain. Target site analyses of putative binding motifs suggest a role for BBR/BPC proteins in regulating other transcription factor or hormone signalling related genes.
  • 吉田 久美, 三木 直子
    p. 0066
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    我々は、空色西洋アサガオ(Ipomoea tricolor cv. Heavenly Blue)の花弁の開花における花色変化と液胞pHのアルカリ化の機構の研究を行ってきた。着色細胞のイオン分析、晩秋に見られる花弁中に赤色のスポットやセクター部分が出現したキメラ花弁のイオン分析やタンパク質解析の結果から、アサガオ花弁においてItNHX1は、Na<+>+</+>/ H<+>+</+>ではなくK<+>+</+>/ H<+>+</+>対向輸送体として機能すること、さらにこのシステムは花弁表層の着色細胞の液胞内の浸透圧物質として機能し、細胞が伸長成長して開花にいたるために重要であることを明らかにした。今回、他のアサガオ花弁においてもこのシステムが働いて開花に至るのではないかと考え、白色アサガオ(Ipomoea tricolor cv. Pearly Gate)および赤色アサガオ(Ipomoea nil cv. Scarlet O’Hara)を用いて実験を行った。開花の24時間前から経時的に液胞pHの変化、着色細胞のイオン分析および細胞の伸長成長を調べた。いずれも開花時には液胞pHが上昇しK<+>+</+>量も細胞の体積増加にともない上昇することが明らかになった。ItNHX1のアサガオの開花における普遍的な役割についての考察も報告する。
    K. Yoshida et al. Proc. Jpn. Acad. Ser. B, 85, 187 (2009).
  • 澤木 宣忠, 井内 聖, 小林 安文, 櫻井 望, 小林 佑理子, 柴田 大輔, 小林 正智, 小山 博之
    p. 0067
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    シロイヌナズナのジンクフィンガー転写因子STOP1は、根の酸感受性変異体の原因遺伝子として特定された。この変異体は、アルミニウムにも感受性を示すが、これはAtALMT1の発現とリンゴ酸放出能力を喪失していることで説明できた。この研究では、マイクロアレイ解析とメタボローム解析により、STOP1が関わる遺伝子発現・代謝システムの変化を調べるとともに、未解明な点が多い酸感受性のモデルを構築した。アルミニウム処理下ではSTOP1変異体では、アルミニウム耐性遺伝子として報告されているAtALMT1に加えて、AtMATE及びALS3の転写レベルが下がることがわかった。これは、AtALMT1遺伝子を組換えたSTOP1変異体のAl耐性が部分的に相補できる事実と一致していた。一方、低pH条件下では、1)カリウムトランスポーターAKT1の活性化に関わるCIPK23や硫酸トランスポーター遺伝子などの、イオン恒常性に関わる遺伝子、2)細胞壁のPGA領域に結合しペクチンを安定化させる役割を持つPGIP1及び、3)共にpH調節機能を持つ代謝経路である、リンゴ酸酵素から始まるBiochemical pH Stat経路とGABA-shuntが、STOP1変異体で抑制されていることがわかった。尚、酸性土壌を用いた土耕試験から、酸感受性は酸性土壌での生育不良の原因となる形質であることが示された。
  • 森田 恵理子, 今泉 隆次郎, 綾部 真一, 青木 俊夫
    p. 0068
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    我々はマメ科植物を用いた酸性土壌の修復技術を開発するために、ダイズcDNAライブラリーの大腸菌機能発現スクリーニングによって23個の耐酸性遺伝子を単離し、PROTON TOLERANCEPTO)と命名した。それらの遺伝子の機能解析を進めるために、ダイズ遺伝子の推定アミノ酸配列を問い合わせ配列としてBRASTP検索を行い、シロイヌナズナのオルソログ遺伝子を同定した。PTO49のシロイヌナズナオルソログには、共通モチーフを持つタンパク質をコードする3つのパラログ遺伝子が存在するため、それらをAtPTO49aAtPTO49bAtPTO49cと命名した。AtPTO49aとAtPTO49bは推定アミノ酸配列の同一性が83%と高く、またダイズのPTO49と近縁であることが系統樹解析から分かった。RT-PCRによって器官別の各遺伝子の転写物の蓄積を確認したところ、3遺伝子ともほぼ全ての器官で発現していた。またT-DNA挿入破壊株の表現型を解析した結果、AtPTO49b破壊株は、酸性ストレスに対する耐性が大きく低下し、さらに葉の形態形成異常を示した。一方、AtPTO49a破壊株の耐酸性は野生型と比べてわずかに低下した。こうしたことから、これらのパラログは異なる機能を分担していることが示唆された。
  • 野副 朋子, 長坂 征治, 高橋 美智子, 中西 啓仁, 西澤 直子
    p. 0069
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    イネ科植物は土壌中の不溶態の三価鉄を吸収するために三価鉄のキレーターであるムギネ酸類を根で合成して根圏に分泌する。イネを用いてムギネ酸類分泌の分子機構の解明を目指している。イネはムギネ酸類としてデオキシムギネ酸(DMA)を分泌する。08年度北海道大会では、ムギネ酸類の合成の場として提唱されているムギネ酸顆粒が鉄欠乏イネの根においても存在すること、ムギネ酸類生合成経路で働くニコチアナミン合成酵素OsNAS2と蛍光タンパク質sGFPとの融合タンパク質がイネの根において小胞に局在し、細胞内を活発に動いていることを報告した。これまで同定されている全てのニコチアナミン合成酵素には細胞内極性輸送モチーフと推定されているチロシンモチーフ及びダイロイシンモチーフが保存されている。ニコチアナミン合成酵素の局在する小胞の細胞内輸送機構を調べるために、これらの細胞内極性輸送モチーフに変異を導入したOsNAS2にsGFPを連結したコンストラクトをOsNAS2プロモーターの制御下で発現させた組換えイネを作出して解析を行った。チロシンモチーフに変異を導入したOsNAS2が局在する小胞は凝集し、動きが見られなくなった。一方、ダブルロイシンモチーフに変異を導入すると、小胞の形成が見られなくなった。ムギネ酸顆粒の小胞輸送にはチロシンモチーフ及びロイシンモチーフの関与する機構が関与していると考えられる。
  • 野田 祐作, 玉置 雅紀, 中嶋 信美
    p. 0070
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    土壌中の汚染物質を浄化する技術の一つとして、植物を用いた土壌浄化技術(ファイトレメディエーション)がある。この方法による汚染物質の浄化には汚染物質の吸収が必要であるが、その前提として植物が対象汚染物質に対して耐性を持つことが必要となる。本研究は、水や土壌の汚染物質の一つである金属セレンに着目し、異なるセレン耐性を示す2種類のシロイヌナズナ生態型(セレン耐性Col-0、セレン感受性Ws-2)を用いてRIL系統を作製し、これを用いたQTL解析により植物のセレン耐性に関与する遺伝子の同定を試みた。まずシロイヌナズナ生態型Col-0とWs-2を掛け合わせたF1を獲得し、さらに自殖後代系統(F7)を205系統得ることが出来た。これらのうち99系統を用いてセレン存在下、非存在下における根の伸長量を測定した。また53個のSSLP及びCAPSマーカーを用いて遺伝子型の決定を行った。これらのデータを用いてQTL解析を行ったところ、染色体4上のciw7マーカーの近傍にセレン耐性に有為に関与する領域があることが確認できた。更にこのマーカーを中心にセミファインマッピングを行ったところ、染色体4上のF13C5マーカー付近にセレン耐性に関与する遺伝子が存在することを示唆する結果が見られた。現在この領域には、約450個の候補遺伝子が含まれているため、更にマーカーを増やしてファインマッピングを行う予定である。
  • 小川 大輔, 阿部 清美, 宮尾 安藝雄, 小嶋 美紀子, 榊原 均, 水谷 恵, 森田 悠, 戸田 陽介, 保浦 徳昇, 服部 束穂, 廣 ...
    p. 0071
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    我々は植物の環境ストレス耐性機構を明らかにするため、イネの塩ストレス高感受性変異体rss1の解析を進めている。RSS1は、APCを介したタンパク質分解に関わるD-box配列を持つ新奇タンパク質をコードする。RSS1の発現は、根端や葉原基等の分裂の盛んな組織で顕著であり、細胞分裂周期依存性を示す。今回は、細胞分裂におけるRSS1の役割について報告する。シュート基部を用いたマイクロアレイ解析や核相解析から、rss1では塩ストレス依存的な細胞分裂関連遺伝子の発現低下や細胞分裂活性の低下が起こることが示された。一方、根端の形態観察により、rss1においてメリステム領域と伸長領域の双方の著しい縮小が塩ストレスに依存して見られた。野生型イネを塩ストレスおよびDNA合成阻害剤の存在下で生育させると、根のメリステム領域と伸長領域の両方が縮小した。このことは、rss1によるメリステム細胞の分裂活性低下が伸長領域の縮小をも引き起こすことを示唆した。植物では、器官分化のほぼ全てが胚発生段階で完了する動物とは異なり、胚発生後にメリステムから新しく器官を作り続ける。RSS1は、ストレス条件下において、未分化細胞の分裂を保ちメリステム活性を維持することにより、植物体の恒常的な成長を支持していると考えられる。発表では、RSS1とサイトカイニンの関係性や植物の進化系統におけるRSS1の保存性についても議論する。
  • 藤原 崇志, 三屋 史朗, 服部 侑, 高倍 鉄子
    p. 0072
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    グリシンベタイン(ベタイン)やプロリンは細胞内浸透圧の調節、酵素や膜の保護といった機能を有する優れた適合溶質であり、植物の耐塩性、耐乾性獲得に非常に有効であることが示されている。ベタイン蓄積植物であるオオムギでは、ベタインが器官間でダイナミックに輸送されることが報告されているが、ベタイン輸送機構に関する分子機構は未解明のままである。我々はこれまでに、オオムギからベタイン/プロリン輸送体遺伝子HvGB/ProT1を単離することに成功している。そこで本稿では、その機能を明らかにするために、HvGB/ProT1の輸送解析および発現解析を行った。
    酵母を宿主細胞として輸送活性を検討した結果、HvGB/ProT1はベタインやプロリンを輸送し、H+との共輸送体として機能することが明らかとなった。HvGB/ProT1-GFP融合タンパク質をタマネギの表皮細胞で発現させたところ、細胞膜においてGFP蛍光が検出された。また、半定量的RT-PCRから、HvGB/ProT1遺伝子は古い葉において発現レベルが高いことが示された。さらに、in situハイブリダイゼーションを行ったところ、HvGB/ProT1遺伝子は葉では木部柔細胞やメストム鞘細胞、根では側部根冠において発現することが示された。これらの結果を基にHvGB/ProT1の生理的役割を考察する。
  • 原田 英美子, 保倉 明子, 高田 沙織, 馬場 啓一, 寺田 靖子, 中井 泉, 矢崎 一史
    p. 0073
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では重金属蓄積性樹木のヤナギを研究材料に用い、その金属蓄積機構を解明し、土壌の浄化技術を開発する。重金属蓄積性が報告されているイヌコリヤナギ(Salix integra)を比較対照に、初期成長の早いカワヤナギ(S. gilgiana)、ジャヤナギ(S.eriocarpa)の重金属耐性を調べた。その結果、カワヤナギはイヌコリヤナギよりもCd耐性が強く、葉でのCd濃度も高いことが判明した。Cd処理した植物体を部位別にサンプリングし、Cdの蓄積部位を調べた。ICP-AES分析の結果、木化した枝の樹皮において、最もCd濃度が高かった。重金属の蓄積部位とその化学形態をさらに詳しく調べるため、シンクロトロン放射光を用いた分析を行った。葉のμ-XRF(マイクロ蛍光X線)イメージングを測定し解析したところ、鋸歯先端にCdが高濃度に蓄積していることが判明した。木化した枝での重金属分布を同様にμ-XRFイメージングで調べたところ、樹皮のコルク皮層もしくはコルク形成層にCdの蓄積が確認された。また、μ-XANES(X線吸収端近傍構造)を測定して、この細胞でのCdの化学形態について検討したところ、Cdの解毒に働くとされる硫黄化合物との結合で観察されるCd-Sのスペクトルとは一致せず、Cd-Oもしくはイオン状態のCdと近いことが判明し、樹木に特異的な重金属解毒機構の存在が示唆された。
  • 吉原 利一, 藤巻 秀, 後藤 文之, 伊藤 小百合, 鈴井 伸郎, 河地 有木, 庄子 和博, 橋田 慎之介
    p. 0074
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Positron-emitting Tracer Imaging System(PETIS)を用いて、我が国の代表的なCd超耐性植物で、ハイパーアキュームレーターでもあるシダ植物「ヘビノネゴザ」の不定胚由来成植物体におけるCdの吸収動態を解析した。まず、ヘビノネゴザにおけるCdの吸収・移行をタバコやイネなどと比較したところ、ヘビノネゴザ以外では、根への取り込みにある程度時間がかかるものの、取り込まれたCdは速やかに地上部の各組織に移行するのに対し、ヘビノネゴザではCdを暴露した直後から非常に速い速度で根に取り込まれて地際部に蓄積され、その後羽葉部に移行する割合は非常に少なかった。次に、1/2MSあるいは1/4MS培地における異なるCd濃度条件(0.1~100μM)がCdの吸収速度(mol h-1 plant-1)に及ぼす影響を調べたところ、少なくともこの濃度範囲においてCdは濃度にほぼ比例した速度で吸収された。また、Cdの吸収において競合すると考えられる二価の金属のうちFe、Cu、Znの濃度(各々0~100 μM、0.025 or 25 μM、15 or 40 μM)がCdの吸収速度に及ぼす影響を調べたところ、いずれの条件にも影響を受けず、Cdはほぼ同じ速度で吸収された。これらの結果は、ヘビノネゴザにおけるCd超耐性や超蓄積能と強く関連していると考えられた。
  • 坂本 光, 坂田 桂子, 射場 厚
    p. 0075
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    細胞膜局在型アンキリンリピート蛋白質ITN1を欠損したシロイヌナズナ変異体では耐塩性が向上し、アブシジン酸(ABA)応答性が低下している。それゆえ、ITN1は植物のABAシグナル伝達に関与すると考えられる。ITN1と相互作用する蛋白質を探索した結果、転写調節因子VRN1と相同性の高いRTV1が候補として同定された。植物表皮細胞での一過的発現系を用いた局在解析からRTV1の核局在性が確認されたが、ITN1と共発現させた場合その局在は細胞膜でも認められた。さらにBiFC実験から、RTV1がITN1と細胞膜上で相互作用することが確かめられた。RTV1がABAシグナル伝達に関与する可能性を検討するために、RTV1を欠損したシロイヌナズナ変異体において様々なストレス関連遺伝子のABA応答性を調べた。この変異体では病害応答性遺伝子PR1のABAによる発現誘導が野生株より早く起こることがわかった。この結果は、ABA応答初期においてRTV1がPR1の発現を抑制することを示唆する。対照的に、itn1変異体ではPR1の発現のABA誘導性が野生株より顕著に低下していた。PR1は病害応答において特徴的に発現する遺伝子であり、その発現はABAや他の植物ホルモンを介したシグナルにより協調/拮抗的に制御される。ABAシグナルを介したPR1の発現制御におけるITN1とRTV1の相互作用の役割を考察する。
  • 石川 和也, 小川 貴央, 吉村 和也, 重岡 成
    p. 0076
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナ細胞質型ADP-ribose/NADH pyrophosphatase (AtNUDX2, 6, 7)の中で、AtNUDX6はNADHのみを生理的基質とし、その発現は病原菌感染時に誘導されることが明らかになっている。そこで本研究では、AtNUDX6によるNADH代謝制御が植物の病原菌感染応答に果たす役割について解析を行った。種々のストレスやホルモン処理に対する発現応答性解析の結果、AtNUDX6の発現はサリチル酸(SA)処理下でのみ顕著に誘導され、本酵素はSAシグナリングに関与していることが示唆された。AtNUDX6過剰発現株(Pro35S:AtNUDX6)および破壊株(KO-nudx6)におけるSAシグナリング経路の鍵因子NPR1に依存的なSA誘導性遺伝子およびNPR1の活性化に関与するチオレドキシン(TRX-h5)の発現は、通常およびSA処理下でそれぞれ顕著に促進および抑制されていた。一方、NPR1非依存的SA誘導性遺伝子の発現量に差は認められなかった。また、NPR1によりフィードバック制御されるSA生合成酵素、ICS1の発現量はPro35S:AtNUDX6およびKO-nudx6においてそれぞれ減少および増加していた。以上のことから、AtNUDX6によるNADH代謝は、TRX-h5の発現制御を介したNPR1依存的SAシグナリングの制御に関与することが示された。
  • 吉田 理一郎, 姜 昌杰, 井上 晴彦, 高辻 博志
    p. 0077
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネWRKY45はサリチル酸(SA)を介した耐病性シグナル伝達経路のキーとなる転写因子であり、その翻訳後制御にタンパク質リン酸化が関与していることが示唆されている。これまでの解析によりイネMAPキナーゼの一つOsMPK6がSAにより活性化されることが確認されている。しかしながら、OsMPK6は複数のシグナル伝達経路への関与が示唆されていることなどから、上流のMAPKKとの組み合わせによって各シグナル伝達経路の特異性が規定されていると推測される。そこで、MAPKK からのアプローチにより、SA経路特異的でWRKY45の活性発現に関わるMAPキナーゼカスケードの同定を試みた。
    大腸菌で発現させた4種のMAPKKタンパク質を用い、in vitroでOsMPK6リン酸化のアッセイを行った結果、OsMKK10-2に最も強い活性が認められた。また、GST-pulldown実験によりOsMKK10-2はOsMPK6と強く結合することが明らかとなった。さらに、dexamethazone誘導系のイネ形質転換体を用いた解析により、恒常的活性型OsMKK10-2の発現誘導により、OsMPK6の特異的リン酸化/活性化が誘導されるとともに、WRKY45の転写が促進されることを確認した。OsMKK10-2-OsMPK6カスケードのシグナル特異性および耐病性付与に関しても議論する。
  • 浅田 裕, 高橋 和馬, 田中 莉夏子, 勝又 邦明, 山本 宏子, 上中 弘典, 長根 智洋, 田中 亮一, 田中 歩, 山口 淳二
    p. 0078
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物の免疫活性化は、防御関連遺伝子の発現のみならず細胞死を伴うことがある。この細胞死には、病原体の全身感染を抑制する働きがあり戦略的細胞死と考えられている。このような細胞死形質を恒常的に示すシロイヌナズナ突然変異体nsl2necrotic spotted lesion 2; cad1を改名)を単離した。NSL2はMACPと呼ばれる、ヒトの補体やパーフォリンなど免疫機構を担うタンパク質に保存されているドメインを有しており、ヒトとシロイヌナズナの免疫機構の共通性が示唆された(Plant Cell Physiol. 2005, 46: 902-912)。
    NSL2と相互作用するタンパク質の探索の結果、NAP1nonintrinsic ABC protein 1)が同定された。NAP1はヒトにはホモログが確認されておらず、また、葉緑体に局在することが報告されているため、NSL2が植物特有の機能を有していることが示唆された。NAP1の欠損変異体とnsl2との二重変異体では、防御応答遺伝子の減少や、細胞死の部分的な抑制が確認された。本大会では、この二重変異体の表現型解析の進捗状況について報告する。
  • 浅野 智哉, 水野 宏美, 山田 桂子, 山口 和男, 西内 巧
    p. 0079
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Fusarium sporotrichioidesによって産生されるトリコテセン系カビ毒は、エリシター活性及び細胞死誘導活性を持ち、トリコテセンの1種であるT-2 toxinによってMPK3及びMPK6が活性化されることを明らかにしている。一方で、T-2 toxinによる防御応答制御因子としてAtNFXL1を同定しており、さらに、AtNFXL1タンパク質複合体の構成因子の一つとして、新規MAPKKKであるMKD1を同定している。MKD1タンパク質の構造は、病害抵抗性に関与することが示唆されているEDR1に似ていた。mkd1変異体は、野生型に比べてFusarium sporotrichioides に対する病害抵抗性が低下し、そしてT-2 toxinの蓄積量も増加していた。次に、MKD1の標的MAPKKを同定するために、シロイヌナズナの全てのMAPKKについて、酵母two-hybrid解析を行った。その結果、MKD1は3種類のMAPKKと相互作用することが示唆され、さらにそれらの中で2種類のMAPKKがMKD1によって直接リン酸化することを明らかにした。また、mkd1変異体においてMPK3とMPK6の活性が約半分に減少していた。これらのことから、MKD1はFusarium に対して病害抵抗性因子として機能する因子であることが示唆された。
  • 松井 英譲, 山崎 宗郎, 加星(岸) 光子, 宮尾 安藝雄, 高橋 章, 廣近 洋彦
    p. 0080
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネの病害抵抗性シグナルを負に制御するOsPti1aの生理機能を明らかにするため、細胞内局在について解析した。OsPti1aは、主に細胞膜上のシグナル伝達に重要な足場として知られるdetergent resistant membrane (DRM) 画分に存在し、さらにリン酸化されていることが明らかとなった。このことから、OsPti1aは細胞膜上でリン酸化による制御を受けて機能している可能性が示唆された。OsPti1aのN末端にHA-strepIIタグを付加した場合、ospti1a変異体の表現型を相補しない。OsPti1aのN末端には脂質修飾を受けうる保存されたアミノ酸配列が存在していることから、この領域がOsPti1aの細胞内での局在に影響を与えている可能性が考えられた。そこで、N末端配列が局在に及ぼす影響ついて解析した結果、N末端を欠損させたOsPti1aは細胞膜ではなくCytosolに存在することが確認された。このことから、OsPti1aの膜局在にはN末側配列が必須であり、膜に存在することが抵抗性シグナルの制御に重要であることが示唆された。さらに、粗ミクロソーム画分に存在するOsPti1aは、250-450kDaの分子量にシグナルが検出された。OsPti1aの予測分子質量は約40kDaであることから、細胞膜上において複合体を形成していることが示唆された。
  • 八丈野 孝, Li Hua, 門田 康弘, 瀧澤 香, 大沢 登, 寺田 貴帆, 半田 徳子, 小柴 生造, 渡部 暁, 白水 美香子, 横 ...
    p. 0081
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    病原菌はエフェクタータンパク質を植物の細胞内に多数注入し、抵抗性反応を撹乱し抑制する。それに対して、ある植物はエフェクターを認識し、より強い抵抗性反応を誘導し防御する。このような植物-病原菌相互作用に関与する遺伝子は数多く単離されているが、エフェクターとそれを認識する抵抗性タンパク質(Rタンパク質)の作用機作およびそのシグナル伝達様式はあまりわかっていない。特にエフェクターについてはアミノ酸配列からその機能を推測できないことが多く、抵抗性反応を抑制するメカニズムを解析することは困難である。そこで、エフェクターとRタンパク質の作用機作およびエフェクターの抵抗性抑制メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的として、タンパク質の立体構造解析を行った。立体構造解析にはタンパク質の可溶性が不可欠であるため、可溶化条件の改善が可能な無細胞タンパク質発現系をベースにしたハイスループット発現系を用いて、約260種類のエフェクターおよび抵抗性関連タンパク質をスクリーニングした。その結果、約90種のタンパク質が可溶性として得られた。さらに我々は、ジャガイモ疫病菌由来のエフェクターの立体構造解析に成功した。本発表では、このエフェクターの立体構造とそこから見えてきた機能について報告する。
  • 門田 康弘, Zhang Minghao, 竹林 有理佳, Prodromou Chrisostomos, Guerois Raphael, ...
    p. 0082
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物の抵抗性(Resistance;R)蛋白質は病原菌由来のエフェクターを認識し、過敏感反応と称される強い抵抗性反応を誘導する。一方、動物の自然免疫においてもR蛋白質のホモログであるNod like proteins(NLPs)が病原菌の認識を担っている。これまでの研究によって、RAR1-SGT1-HSP90複合体がR蛋白質の安定化に必須な役割を果たすこと、さらにSGT1-HSP90複合体が動物のNLPsの安定化と活性化に必須であることが示された。我々はこの複合体の立体構造解析及び機能解析を行い、RAR1及びHSP90と結合するSGT1のCSドメインの立体構造とSGT1-HSP90複合体の部分立体構造を解明した。さらに最近、RAR1、SGT1及びHSP90の各ドメインを含む複合体の立体構造解明に成功した。立体構造情報をもとに生化学、分子生物学的解析を行ったところ、(1)RAR1はSGT1及びHSP90と直接結合することにより複合体形成を促進すること、(2) SGT1はRAR1と結合することにより、R蛋白質との結合親和性を増大することが分かった。また、部位特異的変異導入により、RAR1とSGT1の結合を阻害すると上記の変化が起こらないだけでなく、病原体に対する抵抗性も低下した。このことから、RAR1とSGT1の結合が複合体形成、及び抵抗性反応の誘導に必須であることが明らかとなった。
  • 小杉 真貴子, 菓子野 康浩, 佐藤 和彦, 三宅 博久, 小村 理行, 柴田 穣, 伊藤 繁
    p. 0083
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    地衣の共生光合成生物が真菌との共生によって得ている利益を乾燥耐性の面から明らかにし、地衣の優れた乾燥耐性機構について解明するため緑藻共生地衣、Ramalina yasudaeとその共生藻であるTrebouxiaの乾燥応答について比較したところ、以下のような違いが見られた。(1)R. yasudaeでは乾燥時に光化学系II(PSII)反応中心が完全に停止しているのに対し、Trebouxiaでは活性が一部残存する。(2)乾燥によって誘導されるPSIIにおける蛍光消光が、TrebouxiaではR. yasudaeに比べ小さい。(3)Trebouxiaは地衣に比べ乾燥時の光感受性が高く、光阻害を受けやすい。これらの違いはTrebouxiaの乾燥時における過剰光エネルギーの熱散逸機構が地衣体内で強化されていることを示している。そこで、地衣成分中に乾燥時の蛍光消光を促進する物質があるかを調べたところ、地衣の水溶性成分中に多量に含まれるアラビトールにその効果があることが分かった。アラビトール添加による乾燥時の蛍光減衰速度の増加は、ストリークカメラを用いたピコ秒時間分解蛍光スペクトル解析によって確かめられた。これらのことから、地衣体内に蓄積されたアラビトールがTrebouxiaの乾燥耐性に大きな役割を果たしていることが示唆された。
  • Sugiyama Akifumi, Badri Dayakar, Vivanco Jorge
    p. 0084
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Root exudates influence the surrounding soil microbial community. Recent evidence shows the involvement of ATP binding cassette (ABC) transporters in root secretion of phytochemicals. In this study, we analyzed the effects of ABC transporter mutants of Arabidopsis on the microbial community in their native soils. After two generations, we observed by using automated ribosomal intergenic spacer analysis that the abcg30 (pdr2) mutant significantly altered the soil microbial communities compared with the wild type. The profile of root exudates of abcg30 significantly differed from those of the wild type. Microbial taxa in soils were determined by pyrosequencing, and revealed that abcg30 mutant cultivated a microbial community with a relatively greater abundance of potentially beneficial bacteria and enriched in bacteria involved in heavy metal remediation. Whole genome expression analyses of abcg30 roots revealed that some genes involved in biosynthesis and transport of secondary metabolites were up-regulated while some sugar transporters were down-regulated in roots. Some transporter and transcription factor genes were further analyzed in RT-PCR. (Badri et al. 2009 Plant Physiol)
  • 中野 雄司, 山上 あゆみ, 小松 知之, 川出 洋, 夏目 雅裕, 中澤 美紀, 松井 南, Joanne Chory, 浅見 忠男
    p. 0085
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    ブラシノステロイドは発生・成長・生殖などの植物生長の様々な過程で重要な生理機能を発現している。本研究は、ブラシノステロイド生合成阻害剤Brzを用いた化学遺伝学(ケミカルジェネティクス)により、ブラシノステロイド情報伝達機構の解明を試みている。
    暗所Brz存在下発芽において、胚軸が矮化し子葉が開く、暗所光形態形成を示さない胚軸徒長形質bil (Brz-insensitive-long hypocotyl)変異体として、細矮性slender dwarf様の特徴的な矮性形質を示す半優性形質のbil5を単離した。このbil5変異体では形態形成異常に加え、低緑化傾向が認められ、マイクロアレイ解析によってbil5においては主要葉緑体遺伝子の発現が総じて低下している結果が得られた。一方、明所Brz存在下の野生型植物において緑化促進が観察される条件下においてBrz耐性を示す低緑化形質のbpg2 (Brz-insensitive-pale green)変異体を単離し、原因遺伝子として新規な葉緑体局在型GTP結合タンパク質遺伝子を同定した。その分子機能ついて、葉緑体rRNAスプライシングの促進活性、それを通じた葉緑体タンパク質合成制御について明らかにした。今年度は、これらの変異体を通して、ブラシノステロイド情報伝達による葉緑体機能制御機構に関して得られつつある知見について報告する。
  • 山上 あゆみ, 齊藤 知恵子, 中澤 美紀, 松井 南, 作田 正明, 中野 明彦, 藤岡 昭三, 辻本 雅文, 浅見 忠男, 中野 雄司
    p. 0086
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    ブラシノステロイド (BR)は植物生長の様々な局面で重要な機能を果たしている植物ホルモンである。我々はBR情報伝達機構の解明を目指し、BR生合成阻害剤Brz存在下での胚軸伸長を選抜条件にして、ArabidopsisのアクティベーションタグラインからBR情報伝達活性型変異体bil4 (Brz-insensitive-long hypocotyl 4)を選抜し、解析を行なっている。
    明所下で生育したbil4はロゼット葉の細小化と花茎の短化に基づく細矮性slender dwarf様の形態を示し、bil4変異原因遺伝子として7回膜貫通ドメインを持つ新規遺伝子を同定した。BIL4プロモーター::GUS形質転換体の解析によりBIL4は器官レベルでは幼葉や根の初期細胞伸長帯で発現していること、BIL4::GFP形質転換体の解析によりBIL4タンパク質は細胞レベルでは液胞膜、TGN、初期エンドソームに局在していることが明らかになった。続いて、BIL4高発現株ではBR応答性遺伝子であるTCH4などの発現が上昇していたこと、BIL4::RNAiによる低発現株では胚軸の短化が観察された。以上の結果より、BIL4はTGNや初期エンドソームに局在して、BRのシグナルを促進的に制御し伝達することによって、初期細胞伸長の制御に関わっていると考察された。
  • 嶋田 勢津子, 小松 知之, 中澤 美紀, 松井 南, 川出 洋, 安部 浩, 夏目 雅裕, 浅見 忠男, 中野 雄司
    p. 0087
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    細胞伸長や分裂、光形態形成、葉緑体制御などの生理活性を持つ植物ステロイドホルモンであるブラシノステロイド情報伝達機構の解明を目指し、暗所、ブラシノステロイド生合成阻害剤Brz存在下での胚軸徒長を指標として、アクチベーションタグラインより野生型の約半分の胚軸短化を示すBrz高感受性変異体bss1(Brz-sensitive-short1)を単離した。bss1では、タグの挿入部位の前後の遺伝子の発現上昇が観察され、下流側の新規細胞質局在性タンパク質の遺伝子の高発現型形質転換体が胚軸短化の形態を再現したことから、この遺伝子をbss1変異原因候補遺伝子と同定した。
    一方、タグの上流遺伝子の高発現形質転換体は、暗所Brz存在下で胚軸徒長するbil形態を示し、成熟個体は細矮性の形態を示したことから、この遺伝子をBIL6と命名した。ゲノム上で隣接する遺伝子がブラシノステロイドのシグナル伝達において正負の逆の制御機構を持っている可能性が示唆された。生合成酵素においては、ゲノム上で遺伝子クラスターを構成している例が幾つか知られているが、情報伝達遺伝子においての報告例はなく、シグナル伝達の進化を考察する上で興味深い。現在、BSS1とBIL6について、GFPによる細胞内局在性解析などにより機能解析を進めている。
  • 中村 郁子, 藤岡 昭三, 辻本 雅文, 松岡 信, 吉田 茂男, 木下 俊則, 瀬戸 秀春, 中野 雄司
    p. 0088
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    ブラシノステロイド(BR)は植物ホルモンの中で唯一のステロイドホルモンである。これまでの研究からBRの活性にはA環、B環および側鎖の構造の影響が大きいことが示されてきた。本研究ではBRのB環構造を変化させた誘導体の中からバイオアッセイによりシロイヌナズナとイネでBRとしての活性が大きく異なるIso-carbaBLおよび6-deoxoBLに着目し、これらの化合物のシロイヌナズナとイネにおける挙動を解析した。Iso-carbaBLはシロイヌナズナで天然のBRであるカスタステロン(CS)よりも高いBR活性を示すが、イネでは活性が全く見られなかった。6-deoxoBLはシロイヌナズナでは天然で最も活性の高いブラシノライド(BL)よりも高いBR活性を示す一方でイネではCSよりも低い活性を示した。これらの化合物とシロイヌナズナ及びイネのBR受容体BRI1のBRとの結合のコア領域の結合を調べたところ、いずれの化合物も両方のBRI1に結合した。また、これらの化合物を投与した際のBR生合成遺伝子のフィードバック制御はBR活性を反映した傾向を示した。Iso-carbaBLはイネでBLと同時に投与したところ阻害的な作用を示したことから、イネにおいては競争阻害剤として作用している可能性が示された。以上の結果からシロイヌナズナとイネにおけるこれらの化合物の作用機構について考察する。
  • 田中 惇訓, 中川 仁, 大武 美樹, Dubouzet Joseph G, 野村 崇人, 横田 孝雄, 浅見 忠男, 鎌倉 高志, 森 昌 ...
    p. 0089
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    我々はブラシノステロイド(BR)によって誘導されるbHLHタンパク質遺伝子BRASSINOSTEROID UPREGULATED1 (BU1、旧称OsBU3)とBU17について解析している。BU1は、その過剰発現イネ(BU1:OX)や発現を抑制したRNAiイネの表現型から、ラミナジョイントの屈曲に関与し、BRシグナルを正に制御する因子であることを示している。一方で、BU17:OXの形態は葉身が立つ表現型を示し、BRの負の制御因子であると考えられる。今回は、BU1とBU17のBRシグナル伝達系での詳細な位置づけを検討した。
    BU1はシクロヘキシミド存在下でもブラシノライドにより発現誘導されることが示された。また、BR受容体(OsBRI1)及びGタンパク質(RGA1)の変異体では、BLによるBU1の発現誘導が低下していた。以上より、BU1はOsBRI1とRGA1の2つのBRシグナル伝達因子を介してBRにより初期に発現誘導されることが示された。更に発現分析から、BU1はラミナジョイント、生殖組織や葉身の篩管、胚の柵状細胞で発現していることが示された。
    BU17の発現は、BU1:OXにおいて上昇しBU1遺伝子ファミリーのRNAiイネでは低下した。よってBU1やそのホモログの下流に存在することが示唆された。しかし、BU17:OXの葉身が立つことから、BU1とは逆の機能をもつことが考えられた。
  • 坂本 知昭, 藤岡 昭三
    p. 0090
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネ葉身屈曲テストはオーキシンの検定法として開発されたが、ブラシノステロイドはオーキシンと比べはるかに低濃度で葉身屈曲を促進する。このことから、イネ葉身屈曲テストはブラシノステロイドの代表的な微量生物検定法となっている。さらにオーキシン処理はブラシノステロイドによる葉身屈曲作用を高める働きがあることが知られている。しかし葉身屈曲現象におけるブラシノステロイドとオーキシンの共力作用については、その詳細は明らかにされていない。我々はイネ植物体に対するオーキシン処理がブラシノステロイド受容体遺伝子OsBRI1の発現を一過的に高め、受容体タンパク質OsBRI1を増加させていることを見出した。ジベレリン、サイトカイニン、ジャスモン酸処理はOsBRI1の発現量に影響せず、ブラシノステロイド処理はOsBRI1の発現量を低下させた。一方、ブラシノステロイドの生合成および不活性化に関わる酵素遺伝子の発現量は、オーキシン処理によって変化を示さなかった。これらの結果から、オーキシン処理はブラシノステロイド受容体OsBRI1の発現量を一過的に高めることによって、ブラシノライドに対する感受性を高めていると考えられた。
  • 野々村 麻衣子, 石崎 公庸, 大和 勝幸, 河内 孝之
    p. 0091
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    近年シロイヌナズナを用いた分子遺伝学の進展により、オーキシンの機能と応答メカニズムの一端が明らかになってきた。しかし、被子植物以外の植物種においてはオーキシン応答が確認されているものの、機能と応答メカニズムに関する知見は少ない。そこで本研究は、植物の形態形成におけるオーキシン機能の原型に関する知見を得ることを目的とし、陸上植物進化の基部に位置する苔類ゼニゴケにおけるオーキシン応答を解析した。まず、ゼニゴケに人工オーキシンnaphthaleneacetic acid (NAA) 1 μM処理を行うと本来葉状体の下面からのみ発生する仮根が上面からも発生することが観察された。また、オーキシン極性輸送阻害剤2,3,5-triiodobenzoic acid (TIBA) 10 μM処理により葉状体発生において背腹軸の逆転が観察された。これらの結果から葉状体の背腹性決定におけるオーキシンの関与が示唆された。次に、ゼニゴケ形態形成におけるオーキシン応答場所を可視化する目的で、ダイズ由来のオーキシン誘導性プロモーターGH3にβグルクロニダーゼ遺伝子(GUS)を連結したコンストラクトを導入した形質転換体を作製した。得られた形質転換体において、ゼニゴケ体内のオーキシン応答をGUS活性として定量化できることを確認し、ゼニゴケ形態形成においてオーキシンに応答する組織を特定した。
  • 加藤 大貴, 石崎 公庸, 大和 勝幸, 河内 孝之
    p. 0092
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    オーキシンは植物の発生と生長の多くを調節している。近年の研究によって、F-boxタンパク質TIR1/AFBがオーキシンを介して転写抑制因子AUX/IAAと結合、分解することにより、DNA結合転写因子ARFの働きを制御するというメカニズムが明らかにされた。しかし、種子植物におけるオーキシンの信号伝達は複雑化しており、遺伝子重複の多さから全容の解明は困難なものになっている。陸上植物進化の基部に位置する苔類ゼニゴケは、単純な体制をもち、一般的に遺伝子重複が少ないことから、解析に適したオーキシン信号伝達機構をもつと予想される。我々はゼニゴケから、オーキシン信号伝達因子としてMpTIR1、MpIAA、MpARF1、MpARF2の4つの遺伝子を同定した。このことはゼニゴケのオーキシン信号伝達機構が基本的には種子植物と共通であることを示している。cDNA配列の解析から、MpARF1はシロイヌナズナのARF6、ARF8と同じくmiR167の制御を受ける可能性が示された。MpIAAは他植物種のAUX/IAAには存在しないグルタミンに富む領域をもつが、重要な4つのドメインを保存していた。また予測分解調節領域を改変したMpIAAをゼニゴケで発現させると、オーキシンに対する感受性が低下した。このオーキシン低感受性株を用いた、ゼニゴケ形態形成におけるオーキシン機能の解析についても報告する。
  • 大野 豊, 中曽根 光, 内宮 博文, 鳴海 一成
    p. 0093
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Small Acidic Protein 1 (SMAP1)遺伝子は、アンチオーキシン抵抗性変異体aar1の原因遺伝子で、合成オーキシン2,4-Dの応答機構にも関わる因子として同定された遺伝子である。これまでの研究から、SMAP1は、2,4-D情報伝達系においてAUX/IAAタンパク質の分解より上流のステップで機能すると推定されていた。そこで、SMAP1の機能を解明する為に、aar1変異体と既知のオーキシン関連変異体との間で交配を行い、二重変異体の作出をおこなった。その結果、aar1-1 tir1-1aar1-1 ecr1-1aar1-1 aar3-2といった二重変異体では、根において相加的な2,4-D感受性の低下を示した。一方、axr1 aar1二重変異体では、根端分裂組織が形成されないなど著しい形態異常がみられた。同様の形態異常は、axr1-12変異体にSMAP1の発現をRNAiで抑制した形質転換体を掛け合わせたときも観察された。またaxr1-12変異体にSMAP1-GFP融合タンパク質を35Sプロモーターで過剰発現させると、矮化、多分枝、花の形態異常、稔性の低下、オーキシン感受性の低下などの、axr1-12変異体の特性が、緩和されることがわかった。以上の結果より、SMAP1の機能はAXR1の機能と密接に関係している可能性が示唆された。
  • 田中 慧太, 菅原 聡子, 増口 潔, 軸丸 祐介, 夏目 雅裕, 川出 洋, 酒井 達也, 林 謙一郎, 神谷 勇治, 笠原 博幸
    p. 0094
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    インドール-3-酢酸(IAA)は植物の生長に不可欠な天然型オーキシンであるが、その生合成経路は未だ全容解明されていない。シロイヌナズナには少なくとも4つのIAA生合成経路が存在する可能性が高く、このうち2経路の鍵遺伝子であるYUCCA (YUC)とTAA1の各多重欠損変異体は顕著なIAA欠乏性の表現型を示す。CYP79B欠損変異体も土壌でやや矮性を示す。これらIAA生合成遺伝子の変異体ではIAA内生量も減少すると予想されるが、実際には生重量当たりで野生型との大きな差は見られない。従ってIAA内生量を指標とした解析では各生合成遺伝子のIAA生合成に対する寄与は明確に示されていない。我々はこれらの変異体においてIAA代謝経路の抑制によりIAA量が補償されている可能性が高いと予想し、IAAとIAA代謝物の内生量をLC-ESI-MS/MSにて分析した。その結果、CYP79B欠損変異体でIAA-アミノ酸結合体がIAAよりも顕著に減少していることを確認した。また、エストラジオール誘導型のYUC2過剰発現体ではIAAに比べてIAA-アミノ酸結合体の内生量が著しく増加した。これにより、シロイヌナズナは生合成遺伝子の欠損や過剰発現によるIAAの量的変化に対応して弾力的に代謝経路を調節していることが明らかになった。また、IAA代謝物の分析によりYUC遺伝子のIAA生合成に対する寄与が明確に示された。
  • 増口 潔, 菅原 聡子, 田中 慧太, 軸丸 裕介, 花田 篤志, 小柴 共一, 夏目 雅裕, 川出 洋, 酒井 達也, 神谷 勇治, 林 ...
    p. 0095
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    オーキシンは植物細胞の伸長や維管束の形成、屈性など、植物の生長や環境応答において中心的な役割を果たすホルモンである。インドール-3-酢酸(IAA)は古くから研究されている天然型オーキシンであるが植物における生合成経路は未だ不明な点が多い。我々はIAA生合成中間体の分析を基盤としてIAA生合成経路の全容解明に向けた研究を進めている。インドール-3-アセトアルデヒド(IAAld)はIAA生合成中間体の一つと予想されているが、化学的に不安定であるため、これまで植物から検出することが困難であった。今回、我々はこれまでのHPLCと固相抽出カラムを用いた迅速な精製過程を改良し、新たにLC-ESI-MS/MSによるIAAld分析法を確立した。この方法によりシロイヌナズナの野生型から誘導体化することなく直接IAAldを検出することに成功した。また、安定同位体標識化したインドールやトリプトファンを投与したシロイヌナズナにおいてIAAldが高効率で標識化されることも確認した。これまでにシロイヌナズナでは4つの独立したIAA生合成経路が存在する可能性が示唆されているが、IAAldを含む経路は未だ特定されていない。現在、シロイヌナズナのYUCCA遺伝子やTAA1遺伝子などの過剰発現体および欠損変異体を用いてIAAldを介する経路の解析を進めており、これらの結果について報告する。
  • 平野 恒, 浅野 賢治, 上口(田中) 美弥子, 辻 寛之, 香村 敏郎, 佐藤 光, 北野 英巳, 芦苅 基行, 松岡 信
    p. 0096
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネのMNU変異原処理後代から半優性を示す半矮性変異体を4系統選抜し、解析したところ、すべての変異体においてジベレリン(GA) 信号伝達の抑制因子であるDELLAタンパク質をコードするSLR1に変異が入っていた。今回はこれら変異体 (Slr1-dと命名) が矮性の表現型を示す分子機構について解析した。
    選抜した4つのSlr1-d変異体の内、3つはN末側のDELLA/TVHYNP domainをコードする領域に、残り1つはSLR1のC末端に存在するGRAS domainをコードする領域に、それぞれ1塩基置換が起きていた。これら変異体は野生型に比べGAによる草丈の伸長が抑制されると共に、SLR1-dタンパク質の分解がSLR1に比べ遅滞した。また、SLR1の分解にはGA受容体GID1とSLR1の結合が必須であるためGID1とSlr1-dの相互作用についてYeast two hybrid法により解析した。その結果、Slr1-dとGID1の相互作用はSLR1とGID1の相互作用よりも低下していた。これらの結果から、Slr1-d変異体はSLR1とGID1の相互作用が低下し、GA信号伝達因子であるSLR1の分解が遅延するため矮性の表現型を示すと考えられた。
    本研究は、文科省「ターゲットタンパク研究プログラム」および科研費(18107001)の助成を受けたものである。
  • 平井 貴章, 山本 優子, 佐藤 友美, 北野 英己, 上口(田中) 美弥子, 松岡 信
    p. 0097
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    GAの受容は、受容体GID1がGAと結合することで、シグナル抑制因子であるDELLAと相互作用し、DELLAの分解が起こり、抑制状態が脱抑制されることにより引き起こされると考えられている。今回我々はこの機構の詳細を検討するために、gid1のweak alleleの矮性形質が復帰した変異体Sgd-1を選抜しその機能解析を行った。その結果、SGD-1はGID1座上の復帰突然変異であり、1アミノ酸置換(P99S)によりGA非存在下でDELLAと相互作用し背丈が回復したことが分かった。Y2Hアッセイ、また表面プラズモン共鳴利用による相互作用の分析の結果、変異型GID1タンパク質はそのリッド部分がGA非存在下でも閉じた状態となり、そこにDELLAが結合することによると推察された。
    Arabidopsis GID1b (AtGID1b)も、DELLAとのGA非依存的な相互作用が報告されている。解析の結果、この原因もSGD-1変異と類似な機構に因ることが示され、双子葉植物においてはこのような変異を持ったGID1を積極的に固定することにより、GA非依存的なDELLA結合活性を有するGID1出現させたと考えられた。
    本研究の一部は新農業プロジェクト(IPG0003)、基盤研究(S)、ターゲットタンパク、により支援を受けた。
  • 梅原 三貴久, 花田 篤志, 菱山 正二郎, 神谷 勇治, 笠原 博幸, 山口 信次郎
    p. 0098
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    ストリゴラクトンは、植物の枝分かれを制御するホルモンとして働くとともに、根から分泌されて共生・寄生の化学シグナルとしても機能する。ストリゴラクトンは、その化学構造からテルペノイドと考えられ、またカロテノイド生合成阻害剤や突然変異体を用いた実験から、色素体のカロテノイド開裂産物から生合成されると推定されている。しかしながら、ストリゴラクトン生合成がイソプレン単位に由来することは直接的には証明されていない。また、その炭素骨格がイソプレン単位のどのような組み合わせによって形成されているのかも明確でない。そこで、我々はイソプレン単位合成経路であるメバロン酸(MVA)経路とメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路にそれぞれ選択的な13C標識基質を用いて、ストリゴラクトンへの13Cの取り込みを質量分析計(LC/MS-MS)で調べた。ミヤコグサの培養根にMVA経路を阻害するメバスタチン存在下、基質の13C-メバロノラクトンを添加したところ、13C標識は5デオキシストリゴールにほとんど取り込まれなかった。一方、MEP経路を阻害する5ケトクロマゾン存在下、基質の13C-デオキシキシルロースを投与したところ、5デオキシストリゴールが高いラベル率で検出された。したがって、ストリゴラクトンは主にMEP経路由来のイソプレンユニットから生合成されると考えられる。
  • 武田(神谷) 紀子, 梅原 三貴久, 有手 友嗣, 李 偉強, 経塚 淳子, 山口 信次郎
    p. 0099
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    私たちはこれまでにカロテノイド由来のテルペノイドであるストリゴラクトンが、植物の腋芽成長を抑制するホルモンまたはその前駆物質として働くことを明らかにした。最近、イネの分げつ矮性突然変異体の解析から、ストリゴラクトン経路で働く新たな遺伝子DWARF14D14)を明らかにした。D14はα/β-ヒドロラーゼスーパーファミリーに属する新規タンパク質をコードする。d14変異体の分げつ過剰性はストリゴラクトン処理によって相補されないこと、またd14変異体においてはストリゴラクトン内生量が高まっていることから、D14はストリゴラクトン生合成以降のステップで腋芽成長を抑制しているものと推定される。D14関連遺伝子が他の植物においてもストリゴラクトンを介した腋芽成長抑制に関わるかどうかを明らかにするため、シロイヌナズナのD14類似遺伝子の解析を行った。D14と最も高い相同性を示すAtD14遺伝子の機能低下型変異体は、more axillary growth (max)変異体と類似の枝分かれ過剰性を示したことから、シロイヌナズナにおいてもD14関連遺伝子がストリゴラクトン依存的な枝分かれの制御に関与することが示唆された。また、AtD14類似遺伝子であるAtD14LIKEの解析も進めているのでその結果についても報告する。
  • 水口 皓介, 安野 奈緒子, ルオ ル, 亀岡 啓, 小林 薫, 梅原 三貴久, 花田 篤志, 上野 琴巳, 浅見 忠男, 山口 信次郎, ...
    p. 0100
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    腋芽の伸長制御に対する植物ホルモンの作用は古くから解析されており、特に、オーキシンとサイトカイニンの関与がよく知られていた。一方、変異体を用いた遺伝学的解析や接木実験から腋芽の伸長を抑制する新規ホルモンの存在が示唆されるようになり、最近、そのホルモンの実体がストリゴラクトンであることが示された。植物ホルモンとしてのストリゴラクトンの作用は、腋芽の伸長抑制だけではなく、発芽、老化、光形態形成など多岐にわたると考えられるが、詳細の解明は今後の課題である。腋芽の伸長抑制作用についても、その作用の実体は分かっていない。
    イネの5つのわい性変異体(d3、d10、d14、d17、d27 )では、ストリゴラクトン合成あるいは受容や信号伝達が正常に行なわれないために腋芽の伸長が抑制されない。また、イネfinculm1(fc1) 変異体でも、d 変異体と同様に腋芽が過剰に伸長する。FC1はトウモロコシteosinte branched1 (tb1) のオーソログであり、TCPドメインを持つ転写調節因子をコードする。
    ストリゴラクトンの腋芽伸長抑制作用を明らかにするために、まず、これら変異体の表現型を詳細に解析した。さらに、FC1 とストリゴラクトンの関係についても解析を行った。
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