日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2434-3056
Print ISSN : 1882-0115
最新号
41巻2号(通巻114号)
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
学会総会報告
学会賞報告
学会総会:会長賞・座長選出優秀演題賞
歴史に学ぶ:先達の回想録 第8回
学会参加報告
文献紹介
特集 ストーマ合併症の治療と対策 脱出・ヘルニア
  • 赤木 由人, 二宮 友子
    2025 年 41 巻 2 号 p. 25
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
  • 升森 宏次, 大塚 幸喜, 花井 恒一, 前田 耕太郎
    原稿種別: 総説
    2025 年 41 巻 2 号 p. 26-33
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
     ストーマ脱出は、ストーマ関連晩期合併症の1つで比較的多くみられ、管理困難なストーマの原因となり、しばしば治療に難渋する。まずは、脱出腸管の用手的還納方法を患者に指導するとともに、ストーマ装具の変更やストーマヘルニア用ベルトなどで保存的治療を行う。それでも対応困難で、患者が不安や苦痛を訴えてさらなる治療を希望すれば、手術を行う場合もある。様々なストーマ脱出の程度・状態に加え、全身状態不良や緩和ケア中など患者の状態も様々であるため、当科では各々の患者に応じて様々な対症療法や手術における術式選択を行っている。
     ストーマ脱出に対する処置・手術としては、①用手的還納法、②グラニュー糖による還納法、③Gant‒三輪法、④ボタン固定術、⑤自動縫合器による腸管切除・吻合法、⑥自動縫合器による腸管切除・肛門側ストーマ口閉鎖などがある。患者の状態に合わせた個別化治療が重要であり、本総説では、自施設での経験を含めて、ストーマ脱出における様々な治療と対策を解説した。
  • 横溝 肇
    原稿種別: 総説
    2025 年 41 巻 2 号 p. 34-40
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
     ストーマ造設後の合併症は、患者にとって生活の質の低下を招く。本総説では、ストーマ脱出・傍ストーマヘルニアの予防対策と治療について解説する。
     ストーマ脱出のリスク因子として、大き過ぎる腹壁ストーマ孔、挙上腸管のたるみ、大き過ぎるストーマ傍腔(腹壁とストーマとの間隙)、経腹直筋経路以外での腸管挙上、腹腔内経路でのストーマ誘導、腸間膜の腹壁への無固定などがある。手術療法としてストーマ脱出の修復方法に応じた分類があるが、どの症例にどの術式が適切かという明確な基準は示されていない。
     傍ストーマヘルニアのリスク因子として、大き過ぎる腹壁ストーマ孔、大き過ぎるストーマ傍腔、経腹直筋経路以外での腸管挙上、腹腔内経路でのストーマ誘導などがある。手術療法はメッシュ使用の有無に大別されるが、近年はメッシュを用いた修復術が普及しつつある。
     ストーマ合併症には適切な対応が必要であるが、合併症の少ないストーマを造設するよう心がけることも重要と考える。
  • 下村 貴司, 熊坂 綾乃, 児玉 操, 花田 正子, 小川 真平, 山口 茂樹, 板橋 道朗
    原稿種別: 研究報告
    2025 年 41 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】傍ストーマヘルニアとストーマ脱出の重症度に関連する患者側要因を明らかにする。
    【方法】2010~2020年にストーマ造設後、ストーマ外来を受診した症例のうち傍ストーマヘルニアやストーマ脱出が発生した患者を対象に、消化管ストーマ重症度分類案のGrade別解析によって、その重症度に関連する患者側要因を後方視的に検討した。
    【結果】解析対象295例中、12例(4.1%)に傍ストーマヘルニアが、11例(3.7%)にストーマ脱出が発生し、うち3例(1.0%)は両者が合併していた。Grade(1/2/3/4/5)別症例数は、傍ストーマヘルニアが4/7/0/1/0例、ストーマ脱出が0/6/2/3/0例であった。傍ストーマヘルニアでは、高齢者の占める割合と悪性疾患・腹腔内腫瘍が占める割合が、ともに重症度が高くなるにつれて高かった。ストーマ脱出では、全例がループ式結腸ストーマであった以外は、重症度に関連する要因は同定できなかった。
    【結論】傍ストーマヘルニアの重症化要因として高齢者と悪性疾患・腹腔内腫瘍が示唆された。ストーマ脱出の発生要因がループ式結腸ストーマである可能性があるが、重症化要因は同定できなかった。
  • 明石 奈緒子, 浅田 祐介
    原稿種別: 研究報告
    2025 年 41 巻 2 号 p. 50-59
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】晩期合併症であるストーマ脱出と傍ストーマヘルニアに関して、当院でのケア方法から管理上の課題について検討する。
    【方法】2014年4月~2021年3月に実施した消化管ストーマ造設を伴う手術症例のうち、ストーマ脱出と傍ストーマヘルニア発症例に関して、診療録を用いて後方視的に調査・検討した。
    【結果】解析対象263例中、ストーマ脱出5例(1.9%)、傍ストーマヘルニア20例(7.6%)であった。発症時期中央値(範囲)は、ストーマ脱出で3ヵ月(12日~2年4ヵ月)、傍ストーマヘルニアで5ヵ月(1ヵ月~6年)であった。発症時のBody Mass Index中央値は、ストーマ脱出で20.1、傍ストーマヘルニアで24.0と肥満状態ではなく、25例中15例で発症時に体重減少を認めた。補助ベルトやストーマヘルニア用ベルトなどの使用率は32%であった。ストーマサイトマーキングは25例中21例(84%)で実施されており、未実施4例は全例が緊急手術であった。両合併症とも全例が保存的に管理されていた。
    【考察・結論】晩期合併症対策としてストーマヘルニア用ベルトなどの術後早期かつ継続的な使用を促す指導力、確実なストーマサイトマーキング、合併症に対する対応力強化のための看護師の教育が必要であると考える。保存的に管理することが多い晩期合併症のケア方法を見出し、管理できるように整えることが看護師に課せられた使命であると考える。
原著
  • 福永 光子, 後藤 万記子, 横田 香織, 甲斐 由美, 松本 朝子, 伊禮 靖苗, 山田 一隆
    2025 年 41 巻 2 号 p. 60-75
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】平時および熊本地震発生時(2016年4月)のオストメイトの実態を明らかにするとともに、今後の災害発生時に役立つオストメイト支援アプリを開発すること。
    【方法】熊本県在住オストメイト2,265人を対象に、2018年8月末時点の現況および熊本地震の経験について郵送法にてアンケート調査を実施した。その結果を踏まえて支援アプリを開発した。
    【結果】1,022人(45.1%)から回答を得た。平均年齢73.8歳、ストーマ保有平均期間9.4年であった。平時にはセルフケアが68.6%、医療従事者によるケアが14.4%で、35.0%がストーマに関するトラブルを抱えていた。22.1%はトラブル時の相談先を有さず、相談先を有さなくなる時期の目安は術後6年であった。熊本地震では21.1%が自宅外に避難し、27.8%がストーマに関するトラブルを経験していた。緊急支援物資などの情報は不足し、装具交換場所の確保が困難であった。これらの結果を踏まえて、オストメイト支援アプリ「オストメイトまもるモン」を開発し、熊本県内で2024年1月より本格運用を開始した。
    【結論】万が一の災害発生時に、支援側とオストメイトを繋ぐツールとして「オストメイトまもるモン」が活用され、ストーマケアに役立つことを期待する。
  • 岩井 潤, 齋藤 武, 中江 絵美, 鈴木 香織
    2025 年 41 巻 2 号 p. 76-89
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】二分脊椎症に対する経肛門的洗腸療法(TAI)の導入実態、長期成績、手技自立達成度を明らかにする。
    【方法】1988年10月~2021年12月に二分脊椎症にて当科を受診した患者を対象に、カルテ記載情報を用いて、TAIの導入実態、長期成績、手技自立達成度を後方視的に検討した。また、排便障害症状をneurogenic bowel dysfunction(NBD)スコア(最善:0点~最悪:47点)で、患者満足度をVisual Analogue Scale(VAS、最悪:0点~最善:10点)で評価し、TAI導入前後で比較検討した。
    【結果】解析対象は313例で、年齢中央値15歳(範囲:0~45歳)、男性146例(46.6%)であった。TAIを導入されたのは124例(39.6%)で、そのうち本検討時点でTAIを継続していたのは115例(92.7%)であった。TAI導入年齢は5歳が22例と最も多く、また5歳以下での導入割合は年代とともに増加し、2010年以降は37.8%を占めた。TAI継続年数中央値は7年(0~21年)で、5年以上の長期継続例が67%を占めた。洗腸手技の自立は、13歳以降の83.3%で達成していた。またTAI施行前後で、NBDスコア中央値は17点から7点と有意に改善し(p=0.00006、n=21)、VAS中央値も1点から9点と有意に改善した(p=0.0001、n=19)。
    【結論】TAIは、保存的治療が困難な二分脊椎症に対して有用で、長期に継続が可能な排便管理方法である。
  • 中野 香織, 城丸 瑞恵
    2025 年 41 巻 2 号 p. 90-103
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】ストーマ閉鎖術後に受けたバイオフィードバック療法(以下、BF)によって低位前方切除後症候群(以下、LARS)患者が抱く日常生活に対する思い(以下、「思い」)について明らかにする。
    【方法】直腸癌に対する肛門温存術の際に造設された一時的ストーマの閉鎖術を受けた患者5名を対象に、術後に生じたLARS症状に対して月に1回、3ヵ月間BFを実施した。BF前後に、半構成的面接によって「思い」などのデータ収集を行い、肛門括約筋機能は肛門内圧で、LARS症状はLARSスコアで、生活の質はmFIQLで評価した。
    【結果】「思い」では、排便、運動、他者との関係、更衣、外出、食事、睡眠に分類され、「BFにより可視化された筋収縮によって生じた思い」などが生成された。BF後の肛門括約筋機能、LARSスコア、mFIQLに一定の傾向はみられなかった。
    【結論】BFがもたらす視覚化は、肛門括約筋の収縮状況への気付きだけではなく、行動変容のきっかけや自己効力感を高めることが示唆された。
症例報告
  • 村井 麻衣, 仕垣 隆浩, 原田 藍, 高木 孝実, 海田 真治子, 島村 智, 吉田 直裕, 合志 健一, 藤田 文彦
    2025 年 41 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【背景】筋ジストロフィーにスピーゲルヘルニアを合併した切除不能上行結腸癌に対して腹腔鏡下回腸ストーマ造設術を施行した際の工夫や注意点に関して報告する。
    【症例】80歳代、男性。食欲不振、便秘を主訴に受診。術前検査より上行結腸癌、多発肝転移の疑いで、腹腔鏡下腫瘍切除または回腸ストーマ造設術の方針とした。筋ジストロフィーによる腹直筋萎縮と両側スピーゲルヘルニアを認めたため、術前に臍尾側の腹直筋が広い平面部分にストーマサイトマーキングを施行した。術中所見で腹膜播種のために腫瘍は切除不能と判断し、双孔式回腸ストーマ造設術のみ施行したが、腹壁脆弱性に起因する傍ストーマヘルニアやストーマ脱出の予防を念頭に置いてストーマ造設術を行った。術後経過良好で24日目に退院し、ストーマ関連合併症を生じることなく、術後4ヵ月目に原病死した。
    【考察・結論】腹直筋萎縮を伴う筋ジストロフィーにスピーゲルヘルニアが合併した患者では、ストーマ関連合併症の発生リスクが高いため、綿密なストーマサイトマーキングと丁寧なストーマ造設術が重要である。本症例では、術前より外科医と皮膚・排泄ケア認定看護師が協力して計画的に取り組むことで、患者のQOLを低下させないストーマケアが実現可能であった。
  • 持田 智江美
    2025 年 41 巻 2 号 p. 112-121
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】訪問看護ステーションで働く皮膚・排泄ケア認定看護師(以下、在宅WOCN)が、ストーマ造設の退院直後にストーマケア方法の変更を要した症例を経験し、退院支援に考慮すべき視点を再確認したので報告する。
    【症例】A氏:70歳代男性、独居。退院翌日に装具から便が漏れてストーマ周囲皮膚障害が発生した。緊急訪問してストーマケア方法を変更することで皮膚障害は改善した。B氏:50歳代女性、知的障害あり。退院翌日に装具から便が漏れてストーマ周囲皮膚障害が発生した。退院3日後の予定訪問時にケア方法を変更することで皮膚障害は改善した。
    【考察・結語】本2症例におけるストーマ周囲皮膚障害の原因として、ストーマケアに関する退院支援不足および病棟看護師・病院WOCN・退院支援看護師と訪問看護師・在宅WOCNの情報共有不足が考えられる。適切な退院支援のためには、病院では患者であったストーマ保有者が在宅では生活者になるという大きな相違点を認識した上で、在宅の視点をもって早期介入することが重要である。在宅WOCNとして本2症例にかかわった経験から、退院前カンファレンスや電話・オンライン面談などによって退院後の生活を想像しながら情報共有するように働きかけることが、在宅WOCNが果たすべき役割であることを再認識した。さらに、病院から在宅へと必要な看護を一貫して提供することが、装具選択および退院支援において考慮すべき重要な視点であることも再確認した。
研究報告
  • 北川 和男, 小菅 誠, 中嶋 俊介, 梶 睦, 隈本 智卓, 成廣 哲史, 江島 愛, 岩井 明希, 坂本 真紀, 衛藤 謙
    2025 年 41 巻 2 号 p. 122-133
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】当院ではストーマケアに習熟した看護師を育成するため、2018年から希望者に専門的教育を行う院内認定看護師制度を開始し、認定された看護師が2019年から臨床現場で活動を開始した。本研究の目的は、本制度導入による院内認定看護師育成状況とその効果を検討することである。
    【方法】研究Ⅰ:2019~2022年の院内認定看護師育成状況を検討する。研究Ⅱ:本制度導入による効果の評価対象は2018~2022年の間に当院でストーマを造設した患者である。院内認定看護師臨床活動開始前の2018年を対象として、活動開始後の2019~2022年の各年との間で、術前ストーマサイトマーキング実施率と術後在院日数を後方視的に比較検討した。
    【結果】研究Ⅰ:院内認定看護師7人が育成され、認定合格率100%であった。研究Ⅱ:対象患者は384人で、年齢中央値68歳、男性194人(50.5%)であった。ストーマサイトマーキング実施率は、2018年の75.4%から臨床導入2年後の2020年には89.7%と有意に改善した(p =0.02)。術後在院日数中央値も、2018年の28日から2020年には20.5日と有意に短縮した(p =0.02)。いずれの改善・短縮も、その後2022年まで継続していた。
    【結論】本制度によるストーマサイトマーキング実施率上昇および術後在院日数短縮への有用性が示唆された。
地方会抄録(地域研究会記録)
編集後記
feedback
Top