目的 病院屋上森林が医療従事者に及ぼす主観的リラックス効果、および特性不安による影響を明らかにすることを目的とした。
方法 参加者は医療従事者である男性16名(37.1±10.6才)、女性56名(43.5±11.2才・平均±標準偏差)とした。女性を、State Trait Anxiety Inventory-Form JYZ(STAI-Form JYZ)特性不安により中~低不安群32名、および高不安群24名の2群に分けた。実験場所は、医療機関4階屋上に造成した屋上森林122m
2とし、同施設に隣接した屋外駐車場170m
2を対照とした。参加者は1名ずつ前室、屋上森林および屋外駐車場の3カ所において各5分間座観後、STAI-Form JYZ状態不安およびProfile of Mood States(POMS)を3回計測した。同一被験者の屋上森林および対照における測定値を比較した。順番の影響を除外するために、男女別に年齢をマッチさせたA班B班に分け、屋上森林および対照を巡る順番を逆とした。
結果と考察 屋上森林座観後のSTAI-Form JYZ状態不安は、男性34.6±8.1(対照43.4±8.4)点、女性36.3±10.2(45.8±8.8)点となり有意に低下(p<0.01)した。特性不安の中~低不安群は状態不安の「非常に低い」状態へ(対照「低い」)、特性不安の高不安群は状態不安の「低い」状態へ(対照「普通」)、有意に低下(p<0.01)した。屋上森林座観後におけるPOMS T得点は、男性において「疲労」(39.0±7.5:対照41.1±7.0)の低下(p<0.01)、「活気」(43.3±10.4:37.9±8.1)の上昇(p<0.01)が、女性においては「緊張-不安」(39.7±7.7:43.7±8.8)、「抑うつ-落込み」(43.5±6.3:45.4±7.6)および「疲労」(40.7±7.3:43.6±8.5)の低下(p<0.01)、「活気」(46.2±10.8:38.9±8.0)の上昇(p<0.01)が認められた。視覚的に表すと、屋上森林座観後には、高不安群において暗く消極的な心理状態を表す「谷型」が消失し、中~低不安群においては明るく積極的な心理状態を表す「氷山型」が出現した。
結論 病院屋上森林は医療従事者に有意な主観的リラックス効果をもたらし、その効果には、特性不安による影響が認められた。
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