日本温泉気候物理医学会雑誌
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75 巻, 2 号
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Editorial
原著
  • 鈴村 恵理, 出口 晃, 島崎 博也, 前田 一範, 浜口 均, 川村 直人, 川村 憲市, 川村 陽一
    2012 年 75 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    背景:鼻閉はわずらわしい症状である。今回、鼻腔通気度計を利用して温泉入浴(41°Cから42°C)の鼻閉に対する効果を調べた。
    方法:10人の健常成人ボランティア(男性 10名、平均年齢 27.8±4.4才)に 10分間の温泉入浴をさせた。鼻腔通気度計(HI-801)を利用し、入浴前と後に鼻腔抵抗値を測定した。鼻腔通気度検査方法はアクティブ・アンテリオール法で行った。両側鼻腔抵抗は、左右片側抵抗値よりオームの法則の計算式(1/T=1/R+1/L、T:両側抵抗、R:右側抵抗、L;左側抵抗)に従って算出する。評価には ΔP100Pa 点の抵抗値を適用した。
    結果:左右別に測定した鼻腔抵抗値は、入浴前鼻腔抵抗値が0.75 Pa/cm3/s以上の群にて有意に入浴後低下した(吸気 P=0.0117、呼気 P=0.0277;Wilcoxon T-test)。入浴前鼻腔抵抗値が 0.75 未満の群では有意な変化は認められなかった。
     入浴後両側鼻腔抵抗値は、入浴前鼻腔抵抗値が 0.5Pa/cm3/s以上の群で有意に低下を認めた(P=0.0115;Wilcoxon T-test)。
    結果:鼻閉は温泉入浴後改善することが示された。温泉入浴により鼻閉症状は改善すると考えられる。
  • 中村 満
    2012 年 75 巻 2 号 p. 95-111
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では高齢者における長期の運動プログラム・トレーニングの効果、および継続的にトレーニングを行っている高齢者に対する円皮鍼施鍼の併用が、高齢者のコンディショニング及び包括的 QOL にどのような影響を及ぼすかを検証した。
    方法:対象者は 65歳以上の高齢者 40名で、本学の機能訓練教室にてトレーニングを 3年以上継続している者とした。この中で 3年間以上にわたり運動機能評価のできた 16名については、長期トレーニングプログラムの運動機能に及ぼす効果について検討した。
     トレーニングは、毎週 2回、3ヵ月を 1クールとし、3年間実施した。評価は、膝伸展力、開眼片足立ちを含む 10項目とし、これらの評価を1クール前後毎に行った。咀嚼力の評価は咀嚼力判定ガムを使用し、栄養摂取状況は連続3日間の食事内容をもとに計算した。
     円皮鍼は、28名を対象に足三里(ST36)と三陰交(SP6)の 2穴に貼付し、2週間継続した。評価は、唾液中コルチゾールとクロモグラニン A(CgA)濃度および SF-8TM とし、円皮鍼2週間施鍼前後で行った。
    結果と考察:膝伸展力と開眼片足立ちの平均持続時間は有意な増加を示し、他の項目は変化しなかった。また、膝伸展力と咀嚼力および栄養摂取状況は正の相関を示した。一方、唾液中コルチゾールは円皮鍼2週間施鍼終了後でトレーニング前に比してトレーニング後で有意に減少した。しかし、唾液中CgAは変化しなかった。SF-8TM では身体的 QOL は向上し、精神的 QOL は上昇傾向を示し、「身体の日常役割機能」、「活力」、「全体的健康感」は改善した。
     以上のことから長期トレーニングプログラムは、高齢者の歩行能力とバランス能力を改善するとともに他の運動機能の低下を予防し、加えて咀嚼力と良好な栄養摂取状態を維持するうえで効果的である可能性が示されたことから、介護予防の有効な方法であることが示唆された。また、トレーニングに円皮鍼療法を併用することで心身の QOL 向上と主観的な健康指標の向上にも繋がったことから、長期にわたるトレーニングを継続させる有効な方法になり得ることが示された。
  • 大井 優紀, 井上 基浩, 中島 美和, 糸井 恵, 北小路 博司
    2012 年 75 巻 2 号 p. 112-123
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:鍼通電刺激の腱修復能に及ぼす影響について調査する目的で、アキレス腱断裂モデルラットを用いて、組織学的、および力学的に検討した。
    方法:Wistar系ラット(雄性、12週齢)60匹を用いて、アキレス腱断裂モデルを作成し、無作為に鍼通電刺激群(EA群)と無処置群(Control群)の 2群に分けた。EA 群は、軽度麻酔拘束下にアキレス腱断裂部の内外側に先端部が腱断裂部に接触するようにそれぞれ鍼を刺入し、内側部を陰極、外側部を陽極として間欠的直流鍼通電刺激(刺激条件:刺激幅 5 ms、刺激頻度 50 Hz、刺激強度 20 μA、刺激時間 20分間)をモデル作成日の翌日から各評価日まで連日行った。Control群は麻酔拘束処置のみ行った。評価として、モデル作成後 7日と 10日に修復腱を採取し、設定した関心領域内の全細胞数(HE染色)、TGF-β1、および b-FGF の陽性細胞数(免疫組織化学染色)の計測とそれぞれの染色による組織像の観察を行った。また、モデル作成後 10日には、引張試験による修復腱の最大破断強度を測定した。
    結果:HE染色では、各評価日とも群間に有意差を認め、EA群で明らかな細胞数の増加を認めた(7日:p<0.05、10日:p<0.001)。免疫染色においては、TGF-β1、b-FGFともにモデル作成後7日のEA群で最も強い発現を認め、他との間に有意差を認めた[(TGF-β1:7日 EA群vs. 10日 EA群:p<0.001、vs. 7日 Control群:p<0.0001、vs. 10日 Control群:p<0.0001)(b-FGF:7日 EA群vs. 10日 EA群:p<0.001、vs. 7日 Control群:p<0.0001、vs. 10日 Control群:p<0.0001)]。モデル作成後 10日における修復腱の最大破断強度は EA群で有意に高い値を示した(pp<0.01)。
    考察・結語:アキレス腱断裂後早期の検討において、EA群では細胞数の増加と成長因子の発現量増加、さらに腱強度の増大を認めた。これらの結果から、直流鍼通電刺激は腱修復部における細胞増殖と成長因子の発現に有益に作用し、修復腱の力学的強度を高めることが示唆され、腱修復能に促進的に作用する有用な方法となる可能性が考えられた。
  • 竹田 太郎, 坂口 俊二, 久下 浩史, 宮嵜 潤二, 小島 賢久, 佐々木 和郎, 森 英俊
    2012 年 75 巻 2 号 p. 124-137
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:若年女性の冷え症に対し、体位変換負荷試験で血管運動神経障害の有無を判定し、低周波鍼通電療法(EAT)の効果を比較検討した。
    方法:対象は冷え症の自覚がある女性 43名(平均年齢 21.2歳)とした。負荷試験は、仰臥安静 10分後に起立負荷5分間とし、負荷前後に下肢皮膚温を測定した。鍼治療は、左右三陰交(SP6)に長さ 40 mm・直径 0.2 mmのステンレス鍼を約 15 mm 刺入して鍼電極とし、下腿前面に不関電極を貼付し、周波数 1Hz で 20分間とした。週 1回、計 5回の鍼治療後に再度負荷試験を行った。熱画像は、サーモグラフにて左右下腿から足趾内側全体を撮影し、足趾、下腿内側に領域を設定して平均皮膚温を算出した。評価には、冷え症に関する問診票、冷えを含む 14症状の 6件法と冷えの程度を横型 100 mm の Visual Analogue Scale(VAS)で回答する独自の評価票(冷え日記)および健康関連 QOL としてSF-8 スタンダード版を用いた。
    結果:対象者を起立負荷により足趾皮膚温が低下する群(血管反応正常群:23名)と、皮膚温が上昇もしくは左右で異なるものを合わせた群(血管反応異常群:20名)に分類した。血管反応異常群は血管反応正常群に比べて、自覚的な冷えの程度が大きい傾向で、14症状の合計得点が有意に高かった(愁訴の程度が強かった)。SF-8 の BP 得点は血管反応異常群で国民標準値よりも有意に低かった。治療後、負荷終了 20分後の下腿内側部皮膚温は血管反応異常群で順応時に比べて有意に上昇した。また、両群で、VAS 値および SF-8 の得点に有意な変化はみられなかったが、14症状の合計得点は血管反応異常群で有意に減少した。
    結語:体位変換試験で分類した自覚的な冷え症者について、血管運動障害を伴う者は三陰交への EAT によって下肢血管反応を正常化にシフトさせることで全身症状の改善が見られたが、血管運動障害を伴わない者では、病態および治療法の再検討の必要性が示唆された。
レポート
  • Balt SUVDANTSETSEG, Hiromichi FUKUI, Yan WANGLIN, Lkhamsuren JAVZMAA
    2012 年 75 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     In this paper, we present the results based on people’s experiences of sand sauna therapy at the Tavan Els Kidney Sanatorium in Mongolia. The sanatorium offers a type of balneotherapy through the application of thermally warmed sand and a combination of a healthy micro-bioclimate, a pure natural environment, and the preparation of fresh and healthy local foods. It’s function is to treat patients with chronic kidney glomerulonephrits through natural heated sand baths and other therapies. Sand sauna therapy involves an individual lying in a heated sand bath 8 to 20 minutes for adults and 7 to 15 minutes for child, and is performed twice a day (morning and afternoon) for 2 or 3 weeks once a year. The sand sauna treatment most likely affects the body by means of the sand’s high temperature and the presence of important biological and chemical elements. Our study was limited to the sand therapy and local conditions at Tavan Els kidney sanatorium. We recommend more collaborative scientific research on the effectiveness of balneotherapy for the treatment of chronic kidney disease (CKD).
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