老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
43 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著論文
  • ―― JAGES 横断研究 ――
    井手 一茂, 辻 大士, 渡邉 良太, 横山 芽衣子, 飯塚 玄明, 近藤 克則
    2021 年 43 巻 3 号 p. 239-251
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     サロン,スポーツ,趣味,ボランティアグループ参加は,どの社会経済階層に多いのか明らかにすることを目的とした.2016年度の日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用い,38市町の65歳以上の高齢者20,972人を対象とした.目的変数は各グループへの参加有無とした.説明変数は,教育歴,等価所得,最長職,調整変数は,人口統計学的要因など計11要因とした.変数の欠損値は多重代入法で補完し,男女別にポアソン回帰分析を実施した.サロンはどの社会経済階層とも有意な関連を示さなかった.スポーツは,男性で低所得層の参加が少なく(出現割合比0.90),趣味は,男女とも低学歴層の参加が少なかった(男0.92,女0.81).最長職は,スポーツ・趣味で,管理職以外の社会経済階層が低い人たちの参加が少なかったが,ボランティアで参加が多かった.介護予防事業の評価では,社会経済階層に着目した評価も重要と考えられる.

  • 深瀬 裕子, 上出 直人, 村上 健, 市倉 加奈子, 村瀬 華子, 坂本 美喜, 柴 喜崇, 田ヶ谷 浩邦
    2021 年 43 巻 3 号 p. 252-261
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     高齢者の抑うつに関連する因子について,とくに口腔機能を,反復唾液嚥下テストと舌圧による客観的評価と,基本チェックリストの口腔機能の項目を用いた主観的評価の両側面を用いて検討することを目的とした.分析対象者は271人(平均年齢73.42±4.71歳)で,Geriatric Depression Scale-5のカットオフ得点に基づき46人(17.0%)を抑うつ群に分類した.年齢と性別の影響を調整したロジスティック回帰分析の結果,主観的評価による口腔機能の低下は,社会的ネットワークや運動機能と独立して有意に抑うつと関連していた.また,主観的健康状態の影響を考慮しても主観的評価による口腔機能は抑うつと関連を示した.以上の結果から,高齢者における抑うつには,社会的機能,運動機能,主観的健康状態とは独立して,主観的な口腔機能低下が影響していることが示唆された.とくに,基本チェックリストにおける口腔機能の項目が,幅広い機能のスクリーニングとして利用できる可能性が示された.

  • 大片 久, 澤田 陽一, 大形 篤, 矢嶋 裕樹, 坂野 純子
    2021 年 43 巻 3 号 p. 262-273
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢期の精神的健康のポジティブな側面を評価するために,日本語版MHC-SF尺度(MHC-SF-J)の妥当性と信頼性の検証を行うことを目的とした.60歳以上の地域在住の協力者567人に対して,MHC-SF-Jおよびその他の尺度・指標に回答してもらい,欠損のない547人の回答を使用して分析を行った.確証的因子分析(3因子2次因子モデル)の結果,MHC-SF-Jは原版と同様,3因子構造でおおむね良好な適合度指標を有することが確認された.信頼性に関しては,MHC-SF-Jの合計得点および3つの各下位因子得点のCronbach’s α係数は0.84〜0.94で高い内的整合性が担保されており,また,当該尺度の下位尺度の得点パターンから分類されるもっとも精神的健康が良好なflourishing(フラリッシュ)の割合が23.6%であったことはおおむね先行知見と一致していた.また,ポジティブな精神的健康と関連が想定された尺度や指標との相関関係を検討した仮説検証においても,おおむね有意な関連が認められ,MHC-SF-Jの構成概念妥当性は確認された.

資料論文
  • 須加 美明
    2021 年 43 巻 3 号 p. 274-286
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     目的:訪問介護員が,訪問看護師と連携するための行動をどの程度行っているかを評価する尺度の開発を目的とした.

     方法:訪問介護員503人を対象に質問紙調査を行い,有効回答286件(57%)を分析した.先行研究から構成概念の枠組みは情報提供と情報収集になること,双方の情報交換の内容の調査から構成概念は,排泄の情報提供,服薬の情報提供,看護からの情報収集になると仮定した.聞き取り調査から作成した16項目を因子分析した.尺度の外的基準にヘルパー援助力,業務能力向上,地域連携尺度を用いた.

     結果:探索的因子分析により3因子6項目の尺度が得られ,構成概念にした仮説モデルの適合度を確認的因子分析で調べた結果,尺度の適合度はよく,外的基準は有意な関連を示し,一定の妥当性が認められた.信頼性はα係数.874であった.

     考察:訪問介護員が訪問看護師と連携する基礎となる情報提供と情報収集を評価する尺度の可能性が示唆された.

feedback
Top