高齢者のインターネット利用と健康や幸福との関連を分析した.要介護認定のない高齢者約2.2万人対象の調査(JAGES[日本老年学的評価研究]2016年)を用い,インターネット利用有無や利用目的が健康感や幸福感と関連があるのかを,性,年齢,学歴,所得,IADL(手段的日常生活動作),人口密度,家族構成,就労状態,友人と会う頻度を調整して,多項ロジスティック回帰分析した.その結果,インターネットを利用しない人と比べ,インターネットを友人や家族とのコミュニケーションに利用する人は健康度自己評価(オッズ比1.64, 95%信頼区間1.37〜1.97),幸福感(1.38, 1.09〜1.74)ともに高かった.一方,コミュニケーション利用のない人では有意差はなかった.以上から,障害や感染症対策等で他者との接触が困難になった場合でも,インターネットによる他者とのつながりを保つことが高齢者の健康や幸福の保持に資する可能性を示唆した.
本研究は,介護老人福祉施設における介護ロボット導入の実態を明らかにすることを目的とした.東京都内の介護老人福祉施設478か所を対象とした郵送調査(回収率10.7%)と訪問調査(10施設)を実施した.その結果,郵送調査では,「見守り・コミュニケーションロボット」の導入率が高かった.介護ロボット導入の有無は施設の規模や情報環境との関連はなく,同じ機種のロボットでも現在継続的に使用している施設がある一方,中止した施設もあった.課題として,費用面や適合性,職員教育,精神的抵抗等が挙げられた.訪問調査では,施設環境と職員や利用者の状態・状況により必ずしも継続的に有効利用されるとは限らないという実態が明らかとなった.介護ロボットの導入に際しては,利用者の状態と使用目的,職員および施設の状況をアセスメントし,適合する介護ロボットを選定することが重要であり,費用面の問題解決や職員教育などの使用体制の構築も求められる.