老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
41 巻 , 3 号
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原著論文
  • ――― 疾患罹患・死別イベントに対する緩衝効果に注目して ――
    増井 幸恵, 権藤 恭之, 中川 威, 小川 まどか, 石岡 良子, 稲垣 宏樹, 蔡 羽淳, 安元 佐織, 栗延 孟, 小野口 航, 髙山 ...
    2019 年 41 巻 3 号 p. 247-258
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     地域在住の前期および後期高齢者に3〜4年間隔で実施した2時点の縦断データを用いて,老年的超越が精神的健康に対して縦断的な影響を与えるか,大きな疾患や死別を経験した際の精神的健康の低下を緩和するか,またその年齢差について検討を行った.

     分析の結果,ベースライン時の老年的超越が高いと,ベースライン時の精神的健康やその他の変数を調整しても,フォローアップ時の精神的健康が有意に高かった.また後期高齢者では「きょうだいとの死別」経験時の精神的健康の低下が老年的超越により緩衝されることが有意に示された.

     これらの結果から,前期および後期高齢者では,老年的超越が高いとその後の精神的健康がよくなることが示された.また,老年的超越の緩衝効果は限られたイベントのみで確認された.このことは,老年的超越は前期および後期高齢者の精神的健康に対して状況特異的に機能するのではなく,全般的に高める働きをもつことが示唆された.

  • 田中 克恵, 舞谷 邦代, 山根 淳子, 新口 春美
    2019 年 41 巻 3 号 p. 259-269
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     特別養護老人ホームの終末期ケアにおいて職員が必要と考える「多職種が連携・協働するためのチームの行動」を明らかにし,「特養の終末期ケアにおける多職種チームプロセスモデル」を検討することを目的に取り組んだ.先行研究を基に検討した結果,チームの行動は36項目となった.次に,特養の職員を対象にコンセンサスメソッドであるデルファイ法を用いて,チームの行動36項目を基に2回の調査を実施した.コンセンサスを示す基準は,平均値,中央値,最頻値においてすべて4以上の項目とした.その結果,チームの行動は40項目となった.さらに40項目を用いて多職種チームプロセスを検討した.検討したモデルは,地域や施設の規模に関係なく多職種で使用することが可能であり,使用することでチームの機能を促進し,終末期ケアの質の向上につながると示唆された.

  • 中川 威, 安元 佐織
    2019 年 41 巻 3 号 p. 270-277
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     社会的に構成された加齢に対するステレオタイプは,高齢者に内在化され,個人の行動や経験に影響する傾向がある.本研究では,19年間の縦断データを用いて,加齢に対してポジティブなステレオタイプをもつことが高齢者において長寿を予測するか検討した.加齢ステレオタイプがポジティブな者は,ポジティブではない者に比べて,4年間長生きだったことが示された.年齢,性別,教育歴,日常生活基本動作,疾患数,配偶者有無,同居子有無,主観的健康感を統制しても,加齢ステレオタイプと生存に有意な関連が認められた.ポジティブな加齢ステレオタイプが高齢者において長寿を予測するという仮説を支持する結果が得られた.今後,加齢ステレオタイプと生存の関連の背景にあるメカニズムを検討すべきである.

  • ―― 日韓比較研究 ――
    金 貞任
    2019 年 41 巻 3 号 p. 278-291
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     本研究では,在宅の要介護高齢者を介護している日韓の家族介護者を対象に,医療サービスと在宅介護サービスが看取りケアの場所選択意識の関連要因であるか否かを明らかにすることを目的とした.

     日本では留置調査,韓国では面接調査の質問紙調査を用いて調査を実施し,日本の946ケース,韓国の584ケースが分析の対象となった.

     ロジスティック回帰分析の結果,日本の訪問看護サービス利用群(OR=2.11)は, 看取りケアの場所として在宅選択意識が高く,韓国の訪問看護サービス利用群(OR=0.37)は,看取りケアの場所として在宅選択意識が低いことが示唆された. 韓国のみ介護職員のサービス受領の種類が多い群(OR=0.92)は,要介護高齢者の在宅での看取りケアの選択意識が低かった. 日本の短期入所サービスの利用群(OR=0.68)と,韓国の介護專門員からの情緒的サポートの受領が多い群(OR=0.69)は,要介護高齢者の看取りケアの場所として在宅選択意識が低い傾向にあった.

     以上の日韓の家族介護者の比較研究により,家族介護者による要介護高齢者の看取りケアの在宅選択意識には,日韓の医療サービスの利用が正と負の関連,日韓の在宅介護サービスの利用が負の関連要因であった. これらのことから,日韓の家族介護者による要介護高齢者の看取りケアの場所選択意識には,日韓の皆保険制度と介護保険制度の相違が関連する可能性が示唆された.

  • 牛 嘯塵, 杉澤 秀博
    2019 年 41 巻 3 号 p. 292-305
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,中国都市部に居住する60歳以上の高齢者とその子どものペアを対象に,両者の介護サービスの利用希望の一致の割合と世代間連帯モデルに基づきその関連要因を解明することである.調査対象は,高齢者については山東省済南市Z区に在住し,かつ日常生活に支障がある者とし,子どもについては高齢者を主に援助している者とし,ペア数は97であった.要因分析には,ロジスティック回帰分析を用いた.高齢者とその子どもの間で利用希望が一致した割合は44.3%であった.情緒的連帯・交流的連帯の影響については,高齢者が子どもとコミュニケーションを頻回に取っている,あるいは子どもとの親密度が低い場合,一致する割合が有意に高かった.高齢者との親密度が高いという子どもでは,一致する割合が有意に高かった.合意的連帯の影響については,高齢者が子どもの介護の社会化に対する意識を正確に理解している場合,子どもが高齢者の介護サービスの対人的抵抗感に対する意識を正確に理解している場合,一致する割合が有意に高かった.以上,高齢者とその子どもの間では介護サービスの利用希望が一致する割合が低いこと,一致の関連要因を検討すると,情緒的連帯が有意な関連を示していることが示唆された.

  • ―― 媒介変数としての職場満足度 ――
    原田 謙, 小林 江里香
    2019 年 41 巻 3 号 p. 306-313
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     本研究は,職場における世代間関係が精神的健康に及ぼす影響を,職場満足度を媒介変数として検討することを目的とした.データは,無作為抽出された首都圏の60〜69歳の男女285人から得た.世代間関係は,職場でのエイジズム,若年世代へのサポートの提供,若年世代との否定的相互作用で測定した.

     媒介分析の結果,職場でのエイジズムが抑うつに与える直接効果は有意でなく,職場満足度を介して抑うつに与える間接効果が有意であった.つまり,職場でエイジズムを経験している者ほど職場満足度が低く,その職場満足度の低さが抑うつ傾向の高さにつながっていた.若年世代へのサポートの提供は,職場満足度の高さをもたらしていたが,抑うつに対する直接効果・間接効果ともに有意でなかった.さらに,若年世代との否定的相互作用が多い者ほど,抑うつ傾向が高いという直接効果が確認された.

資料論文
  • 荒居 康子
    2019 年 41 巻 3 号 p. 314-321
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     現在,さまざまな制度下で外国人が介護職として就労するために来日し,今後外国人労働者の受け入れは拡大することが予想される.しかし,彼らの認識に焦点を当てた研究は少ない.本研究では,経済連携協定(EPA),在留資格「介護」で来日する外国人の就労継続意向の認識とそれにかかわる要因を明らかにする事を目的に文献検討を行った.結果は該当23件.就労期間についてはインドネシア人・フィリピン人では平均5年程度の滞在を考えていた.就労継続意向に影響する要因に関しては<対象者の属性><宗教実践・文化的な考えの違い><アイデンティティの葛藤><日本人との関係性>がテーマとして明らかとなった.考察として,就労継続意向は介護の場での日本人との関係性を通して変化し得ること,また継続意欲を高めるため,彼らを積極的に知ろうとする姿勢や日本における介護とはなにか,どのように介護の概念を発展させるかを共に考えていく必要性が示唆された.

  • 田渕 恵, 三浦 麻子
    2019 年 41 巻 3 号 p. 322-330
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/10/23
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者と若年者という異世代が創造的課題に共同で取り組む際の,世代間相互作用の特徴を明らかにすることを目的としたものである.創造的課題として積み木課題を用い,同世代間・異世代間の相互作用場面の会話内容に着目した.高齢者同士・若年者同士・高齢者と若年者の3群の2名集団により実験を行った.先行研究に従い課題遂行中の会話を4つのカテゴリ(「提案の要求」「新しい提案」「提案に対する反応」「相手の行動に対する評価」)に分類し,各カテゴリに関する発話比率が条件間でどのように異なるかを検討した.その結果,高齢者では相手が若年者である場合のほうが同世代よりも,「提案の要求(相手に提案を促す発話)」の比率が高く,若年者同士ではそのような傾向は認められなかった.異世代間の特徴として,高齢者が若年者に対して目的遂行のための新奇な行動を促す役割を担うという,世代による役割分担が明確に行われている可能性が考えられた.

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