本研究では,在宅の要介護高齢者を介護している日韓の家族介護者を対象に,医療サービスと在宅介護サービスが看取りケアの場所選択意識の関連要因であるか否かを明らかにすることを目的とした.
日本では留置調査,韓国では面接調査の質問紙調査を用いて調査を実施し,日本の946ケース,韓国の584ケースが分析の対象となった.
ロジスティック回帰分析の結果,日本の訪問看護サービス利用群(OR=2.11)は, 看取りケアの場所として在宅選択意識が高く,韓国の訪問看護サービス利用群(OR=0.37)は,看取りケアの場所として在宅選択意識が低いことが示唆された. 韓国のみ介護職員のサービス受領の種類が多い群(OR=0.92)は,要介護高齢者の在宅での看取りケアの選択意識が低かった. 日本の短期入所サービスの利用群(OR=0.68)と,韓国の介護專門員からの情緒的サポートの受領が多い群(OR=0.69)は,要介護高齢者の看取りケアの場所として在宅選択意識が低い傾向にあった.
以上の日韓の家族介護者の比較研究により,家族介護者による要介護高齢者の看取りケアの在宅選択意識には,日韓の医療サービスの利用が正と負の関連,日韓の在宅介護サービスの利用が負の関連要因であった. これらのことから,日韓の家族介護者による要介護高齢者の看取りケアの場所選択意識には,日韓の皆保険制度と介護保険制度の相違が関連する可能性が示唆された.
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