本研究は,特別養護老人ホームの介護職が苛立ち感情の生起を抑制するためのプロセスを明らかにすることを研究目的とした.特養の介護職員11人にインタビュー調査を実施し,修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った.その結果,35の概念から6カテゴリー,8サブカテゴリーが生成された.
介護職は,《苛立ちが生起する直接要因》と《苛立ちにつながる背景要因》が影響し合うことで苛立ち感情が生起した場合に,《自己努力で抑制》《職場サポートで抑制》の相互影響関係によって,一時的には苛立ち感情が生起したとしても,支え合うことで虐待行動を及ぼす状態にまで感情をエスカレートさせないよう《冷静に考え直す専門職としての自分》という意識を取り戻していた.一方で,苛立ち感情の抑制における課題として,“国のストレスチェック体制不備”と“上司の指導・教育力不足への不満”が浮き彫りとなった.
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