老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
33 巻 , 1 号
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原著論文
  • ―― 臨床動作法の観点から ――
    足立 匡基
    2011 年 33 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,臨床動作法の観点から,高齢者の立位バランスと心理的適応との関係性を,バランス測定装置と質問紙を用いて検討し,その関係性について仮説的モデルを示すことである.測定する心理的特性としては,臨床動作法の先行研究から,ADL,Locus of Control(LOC),状態不安,主観的幸福感を採用した.

     高齢者100人をバランス測定装置の測定結果から,バランス良好群と不良群に分け,上述の尺度得点を群間で比較したところ,バランス良好群は不良群に比べ,ADL,LOCにおける内的統制傾向,主観的幸福感が高く,状態不安が低いという結果が得られた.さらに,相関分析および偏相関分析,重回帰分析,構造方程式モデリングの結果から,高齢者の主観的幸福感に直接的な影響を与えているのはLOCと状態不安といった心理的特性であるが,ADLや立位バランスといった身体的制御機能はLOCや状態不安に影響を与えており,主観的幸福感に対し間接的な影響を与えている可能性が示唆された.

  • ―― AGESプロジェクト ――
    村田 千代栄, 斎藤 嘉孝, 近藤 克則, 平井 寛
    2011 年 33 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     社会的サポートは,日常的な手助け,悩みの相談など人間同士がやりとりする支援であり,これらのサポートの授受は,健康に良好な影響を与えることがわかっている.しかし,サポート授受の相手によりその影響が異なるか否かについては必ずしも明確ではない.本研究では,2003年に一般高齢者を対象に行ったAGESプロジェクトのデータ(n=32,891)を用い,サポート授受の相手と抑うつの関連について検討を行った.サポート授受の相手として,同居家族,別居の子や親族,近隣・知人・友人の3種類を用いた.うつ(GDS15項目版で5点以上)の有無を目的変数,年齢,疾患の有無,配偶者の有無,独居の有無を共変量に,性別にロジスティック回帰分析を行ったところ,サポート授受の相手にかかわらず,相手がいる高齢者は抑うつが少なく,独居など同居家族からのサポートが得られない状況であっても,それ以外の人々とのサポートの授受が高齢者の抑うつを防ぐ可能性が示唆された.

  • ―― 年代および老性自覚と転倒の脅威との関連についての検討 ――
    梅田 奈歩, 山田 紀代美
    2011 年 33 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     地域高齢者が抱く転倒恐怖感(fear of falling)に対してLazarusの認知的・動機的・関係的情動理論を参考に仮説モデルを示した.

     筆者らの先行研究では地域高齢者の転倒に対する脅威としての評価(appraisal)は転倒により生じる身体的影響に加えて生活の変化や人間関係の変化,アイデンティティの変容に関する内容を含んでいることを明らかにした.本研究ではこの結果に基づき転倒に対する脅威評価項目を作成し地域高齢者289人を対象に質問紙調査を実施した.287人を有効回答とし妥当性と信頼性を検討した.調査結果に対して項目分析および探索的因子分析を行い最終的に24項目5因子を抽出した.5因子は「QOL低下の引き金」「自己の自立性の喪失」「身体的苦痛」「他者依存に対する心理的負担」「重篤な末期へのきっかけ」と命名した.測定概念の妥当性は年代および老性自覚との関連により確認した.また信頼性はクロンバックα係数(α≧0.7)により内的整合性を確認した.

  • 白石 旬子, 藤井 賢一郎, 大塚 武則, 影山 優子, 今井 幸充
    2011 年 33 巻 1 号 p. 34-46
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,個性が尊重されない「組織風土」における「キャリア・コミットメント」の高い介護職員の離職意向と「介護観」との関連を検証することであった.全国の介護老人福祉施設に勤務する介護職員を対象として,層化二段無作為抽出法により12,000人を抽出し,質問紙調査を行った.分析に用いた項目に回答不備があるもの等を除いた2,520票が有効回答であった(有効回答率21.0%).

     ロジスティック回帰分析を行ったところ,「低個性重視組織」において「高キャリア・コミットメント」群の離職意向は,「考え,振り返る実践重視」という「介護観」(オッズ比=1.167, p=0.044,95%信頼区間1.004-1.355),年齢「40歳以上」(オッズ比=0.443, p=0.009,95%信頼区間0.230-0.853)と有意な関連がある結果が示された.

     本結果より, 個性が尊重されない「組織風土」の下においては,「キャリア・コミットメント」の高い介護職員の離職意向が「介護観」によって高まる可能性が示唆された.

資料論文
  • ── 日本の高齢者を対象とした最近の量的実証研究のレビュー ──
    澤岡 詩野, 古谷野 亘
    2011 年 33 巻 1 号 p. 47-59
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     1995〜2009年までに国内で発表された高齢者の社会関係周縁部に関する量的実証研究をレビューし,社会関係の測定に用いられている指標について検討した.文献検索には社会老年学文献データベースDiaLを用い,77件の論文を取り上げた.

     検討の結果,①社会関係そのものの分析を主たる目的とした論文ではタイ単位の測定が多く行われていること,②他者の続柄の区分は厳密さを欠き,交流の指標もまちまちであること,③タイ単位の測定では,他者を選定する際の基準と選定する他者の人数がとくに重要で,さらなる検討を要すること,④最周縁部の他者を分析対象として選定できる基準はいまだ開発されていないこと,が示された.

     周縁部の他者を調査・測定する方法を開発し,高齢者の社会関係そのものに関する研究を重ねることが必要である.

実践・事例報告
  • 内田 勇人, 藤原 佳典, 谷口 和彦, 新開 省二
    2011 年 33 巻 1 号 p. 60-73
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     本研究は,施設入所者のベッド上の体動が把握できるモニタリングシステム(センサー)を介護施設に導入することによって,介護スタッフの活動量,関わり,見守り,心身の機能に何らかの影響がみられるかどうかについて明らかにすることを目的とした.研究参加者として,大阪府S市の特別養護老人ホームAに勤務する介護スタッフ20人を選んだ.2008年の10月上旬に施設にセンサーを導入した.センサーの導入階に勤務する介護スタッフ(介入群,10人)と非導入階に勤務する介護スタッフ(対照群,10人)の間で,センサーの導入前後における各種検討項目値の変化を,反復測定による二要因分散分析により検討した.分析の結果,介護スタッフの「オムツ交換回数」と「ストレッサー評価尺度総得点」において,有意な交互作用がみられた(各p < 0.05).センサーの導入により,介護スタッフの夜間勤務時におけるオムツの交換業務量,および仕事上の心理的ストレス度が軽減する可能性が示唆された.

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