老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
31 巻 , 4 号
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原著論文
  • 岩佐 一, 増井 幸恵, 権藤 恭之, 河合 千恵子, 稲垣 宏樹
    2010 年 31 巻 4 号 p. 449-457
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     地域高齢者における性格特性と高次生活機能低下の関連について,5年間の縦断調査結果から検討した. 分析対象は,ベースライン調査と5年後の追跡調査の両方に参加した65歳以上の地域高齢者716人(男性283人,女性433人,平均年齢71.9±4.9歳)とした. 老研式活動能力指標の下位尺度(手段的自立,知的能動性,社会的役割)による,5年間の高次生活機能低下の有無(自立維持・低下)を目的変数とした. 性格特性は「日本版ネオ性格検査(短縮版)」により測定し説明変数とした. 多重ロジスティック回帰分析を性格特性別に実施したところ,手段的自立の低下には外向性および誠実性が,知的能動性の低下には開放性が,社会的役割の低下には外向性および開放性がそれぞれ負の寄与を示した. 本知見より,外向性の高い高齢者は手段的自立と社会的役割が,開放性の高い高齢者は知的能動性と社会的役割が,誠実性の高い高齢者は手段的自立がそれぞれ維持されやすいことが明らかとなった.

  • ― 子世代からみた老親扶養意識を中心に ―
    杉山 佳菜子
    2010 年 31 巻 4 号 p. 458-469
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     平均年齢40.9歳で介護経験のない既婚者83人(男性37人,女性46人)の実親と義理の親それぞれとの親子関係について,既婚子側からの親へのサポート提供の実態と扶養意識との関連をみた. その結果,親との関係は,実親,義理の親を問わず,性別やきょうだい構成ではほとんど違いがみられなかった.義理の親との関係は「経済的にやっていけなくなったとき」「寝たきりになったとき」に義理の親に対する扶養意識と関連があった. 一方実親との関係は実親への扶養意識と関連はなかった. 実親への扶養意識について,女性では親の居住地への時間的距離と,男性では出生順位と関連があった.実親との親子関係は全般的扶養意識の「老親自立期待」因子「情緒的支援志向」因子「伝統的扶養志向」因子のうち,「老親自立期待」因子と「情緒的支援志向」因子に関連していた.

  • 斉藤 雅茂, 冷水 豊, 武居 幸子, 山口 麻衣
    2010 年 31 巻 4 号 p. 470-480
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,高齢者の一人暮らしに至る経緯と社会的孤立との関連,および孤立のなかでも長期孤立と短期孤立との関連を分析した.調査は,東京都板橋区の選挙人名簿から一人暮らしと思われる65歳以上の高齢者3,500人を対象にした.訪問面接法を用いたところ,面接時点で同居者がいた人を除き,1,391人の有効回答が得られた.分析には,現在と50代時の他者との交流頻度を用いて,孤立のなかでも長期孤立と短期孤立を分類した.また,配偶者や子ども等との別居時期についてクラスター分析を行い,高齢者の一人暮らしに至る主要な経緯を5つに類型化した(核家族移行型,義親同居型,子どもなし型,配偶者・子早期別居型,未婚型).分析の結果,①性別,年齢,就学歴,経済状態,身体的障害の有無を統制したうえでも,「核家族移行型」と比較して,それ以外の経緯はすべて高齢者の社会的孤立に有意な影響を及ぼすこと,②いずれの経緯も長期孤立に対してより高いオッズ比を示すこと,とくに,③「未婚型」と「子どもなし型」の経緯は,長期孤立と短期孤立のいずれにも高いオッズ比を示すことが確認された.

  • ―― もう1つのストーリー構築に向けて ――
    広瀬 美千代
    2010 年 31 巻 4 号 p. 481-491
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では夜間介護があるような困難な介護状況においても介護に肯定的な評価をしている介護者の精神的側面を「アンビバレントな世界」とし,その本質に焦点を当て,その世界を本人の視点から記述していくことを目的とした.家族介護者を対象に半構造化面接を実施し,現象学的心理学の視点から質的分析を行った.

     介護者の語りを意味ある単位ごとに分類した結果,「役割規範の受容と介護役割に対する疑念」「夜間に感じる憔悴感と自分自身の納得」「無力な要介護者に対する悲憤と悲哀」「身体的開放感の欲求と社会への奉仕欲求」「要介護者を預けることによる休息感と虚無感や気づかい」が浮かび上がった.これらは「役割アイデンティティ獲得の交渉」「報恩・感謝の実践」「生活充足感の探求」の3つの基本軸に構造化された.また,これらは「行為を通じて価値を獲得していく過程」ととらえなおすことが可能であると解釈された.

資料論文
  • 島貫 秀樹, 梅津 梢恵, 本田 春彦, 伊藤 常久, 河西 敏幸, 高戸 仁郎, 荒山 直子, 坂本 譲, 植木 章三, 芳賀 博
    2010 年 31 巻 4 号 p. 492-500
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,地域の集会所を利用したミニ・ディサービスが地域在宅高齢者の健康およびQOLに与える影響について,4年間の縦断データを基に参加継続者と不参加者との比較によって明らかにすることを目的とした.

     宮城県三本木町に在住する75歳以上の地域在宅高齢者にアンケート調査を実施した.分析対象者は,初回調査(2000年)および追跡調査(2003年)のアンケート完了者において,2000〜2003年度のミニ・ディサービスに,各年度少なくとも5回参加した者を「継続参加者(87人)」,各年度1回も参加しなかった者を「不参加者(90人)」として分析した.継続参加による健康およびQOL指標への影響をみる目的で一般線形モデルを用いて分析を行った.その結果,身体機能の維持・向上に対する効果はみられなかったが,健康度自己評価(p=0.017),日常生活動作に対する自己効力感(p=0.085)は,ミニ・ディサービス継続参加者が向上し,不参加者が低下するパターンが示された.地域の集会所を利用したミニ・ディサービスへの継続参加は地域在宅高齢者の主観的健康に好影響を与えることが示唆された.

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