老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
44 巻, 3 号
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原著論文
  • 新田 真悟
    2022 年 44 巻 3 号 p. 231-241
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では65歳以上高齢男性の妻および子どもとの経済的・時間的資源の配分と高齢男性の就業行動との関連を,「家族についての全国調査」の個票データを用いて検証した.線形確率モデルに基づいた多変量解析の結果,学歴・健康状態などの社会人口学的属性を考慮してもなお,夫婦に占める妻の家事時間が高齢男性の就業確率と正の関連を,子どもへの非経済的援助の提供が負の関連をそれぞれ生じさせることが明らかになった.以上の結果からは,高齢者の就業選択には経済状況や就業機会だけでなく家族内の資源配分を考慮する必要があることを示唆した.

  • 北島 洋美, 杉澤 秀博
    2022 年 44 巻 3 号 p. 242-255
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,性的マイノリティ高齢者の主観的な生活上の課題・不安の構造とその背景について,ライフコース上の経験も含め質的調査に基づき明らかにすることである.

     分析対象者はレズビアン(L)・ゲイ(G)・バイセクシュアル(B)を自認する22人で,平均年齢は67.1歳であった.インタビュー調査を2017年5月〜2019年2月までの間に行い,質的データ分析法によって分析を行った.

     分析の結果,【否定的な価値観の影響】【頼らない/頼りにくい状況】【心配なく過ごせる場所を求める】【自助・互助で備える】の4つのカテゴリーが抽出された.そこから,差別・偏見の経験がさまざまな影響を及ぼしてきたことや,支えになる人間関係があると自己否定につながらないこと,自己を律する意識と行動が強調されていること等が明らかになった.地域社会でのつながりや安心できるフォーマルサービスの構築等の課題が示唆された.

実践・事例報告
  • ― 3か月の体験就労による変化 ―
    安里 知陽, 片桐 恵子
    2022 年 44 巻 3 号 p. 256-268
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,介護施設での生きがい就労における高齢者自身の効果と実践における課題について検討することを目的とした.介護施設の介護助手として3か月間の生きがい就労の体験プログラムに参加した,60〜80歳代までの男女52人(男性9人,女性43人)を対象として,質問紙調査およびインタビュー調査を実施した.質問紙調査は就労開始時と3か月後の終了時に実施,インタビューは終了時に参加者10人を対象に行った.その結果,他者や組織に対する「貢献に関する満足度」が3か月で有意に高くなり,「生活の充実感」も上昇傾向が示された.また中年期以降の発達課題である「世代性」も有意に高まり,上の世代との交流や介護助手の仕事と「世代性」との関連が示唆された.生きがい就労では,募集時の年齢や雇用条件を高齢者に合わせて設定することで,高齢者の就労機会を保証すること,また仲間同士の交流が雇用の継続につながることが示唆された.

資料論文
  • 島田 千穂, 平山 亮
    2022 年 44 巻 3 号 p. 269-275
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,介護者家族が12か月間毎月把握した,要介護高齢者の全身状態の軌跡を類型化し,得られた類型の妥当性を確認することである.対象は,要介護3以上の人を介護する家族を,Web調査会社のモニターから募集し,210人を対象とした.12か月間の状態を把握するための指標は,Palliative Performance Scale(PPS)を参考にして独自に開発して得点化し,この得点の経時的変化を,潜在クラス分析を用いて分類した.その結果,高程度維持群,中程度維持群,漸次低下群の3類型が得られた.類型別に,健康状態の主観的悪化,入院有,および死亡の割合を算出して比較したところ,健康状態の悪化や入院の有無と有意に関連した.介護者家族の状態評価によるデータの活用可能性と類型化の妥当性を示唆したと考える.

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