本研究の目的は,性的マイノリティ高齢者の主観的な生活上の課題・不安の構造とその背景について,ライフコース上の経験も含め質的調査に基づき明らかにすることである.
分析対象者はレズビアン(L)・ゲイ(G)・バイセクシュアル(B)を自認する22人で,平均年齢は67.1歳であった.インタビュー調査を2017年5月〜2019年2月までの間に行い,質的データ分析法によって分析を行った.
分析の結果,【否定的な価値観の影響】【頼らない/頼りにくい状況】【心配なく過ごせる場所を求める】【自助・互助で備える】の4つのカテゴリーが抽出された.そこから,差別・偏見の経験がさまざまな影響を及ぼしてきたことや,支えになる人間関係があると自己否定につながらないこと,自己を律する意識と行動が強調されていること等が明らかになった.地域社会でのつながりや安心できるフォーマルサービスの構築等の課題が示唆された.
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