老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
43 巻, 4 号
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原著論文
  • 塩﨑 麻里子, 濱崎 洋嗣, 森口 ゆたか, 佐藤 望, 田中 晃代
    2022 年 43 巻 4 号 p. 349-359
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,介護福祉士が,老いや死と向き合うことによって経験する否定的感情に対して,どのように対処しているのかを質的に明らかにしたうえで,レジリエンスとの関係を検討することであった.特別養護老人ホームの常勤介護福祉士13人(男性6人,女性7人;平均年齢29.5歳)を対象に,質問紙を併用した面接調査を実施した.内容分析によって,対処方略は,5つの大カテゴリー(今を大切にする・ひとつの視点に固執しない・感情に振り回されない・心理的離脱・巨視的視点をもつ),16サブカテゴリーに分類された.コレスポンデンス分析によって,対処方略を,自己統制の仕方(コントロール感焦点型‐調和焦点型)と物事をとらえる視点(具体的視点‐大局的視点)の2軸で説明することができた.また,レジリエンス高群は,大局的視点で物事をとらえる傾向があることが示唆された.日本人の老いや死との向き合い方に関する今後の展望について考察した.

実践・事例報告
  • ― 介護職・医療職間の連携を目指した実践報告 ―
    馬来 秀行, 柳 奈津代, 佐藤 宏樹, 三木 晶子, 石坂 優奈, 岡本 勝樹, 澤田 康文
    2022 年 43 巻 4 号 p. 360-370
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

     介護施設の介護職・看護職と担当薬剤師が,薬の情報と介護・看護情報をおのおの時系列で可視化して見比べられるような情報共有シートを用いて,利用者に関する困りごとと薬のかかわりを検討する「お薬検討会」を11施設,38人を対象に実施した.施設によって4〜11回開催され,1回あたりの参加者は7人程度であった.これまで情報交換体制の構築がむずかしかった介護職と薬剤師による情報共有が可能となり,医師とも連携することによって,処方薬の見直しや,必要な薬であることの確認等が行われた.お薬検討会に参加した介護職へのアンケートでは,「前に比べて利用者の状況をよく観察している」「前に比べて利用者の状況とお薬の関連を考えている」と8割以上が回答し,医療職に日常の様子を伝える介護職の重要性を認識した等,意識の変化がみられた.今後は,このような機会をより多くの利用者に提供するため,効率のよい取り組みの開発が期待される.

資料論文
  • 飯田 みなみ, 平野 美千代
    2022 年 43 巻 4 号 p. 371-381
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

     目的:自立高齢者を対象に,基本的心理欲求,他者との交流,社会活動への参加と社会活動満足度の関連を明らかにする.

     方法:介護予防教室に参加する要支援・要介護認定を受けていない高齢者(以下,自立高齢者)472人を対象に,自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,基本的心理欲求,他者との交流,社会活動,社会活動満足度尺度等で構成した.分析は重回帰分析を用いた.

     結果:調査票は回収数468部,有効回答数441部であり,女性が399人であった.関係性の欲求,有能さの欲求,友人との付き合い,近所との付き合い,家族との付き合い,自治会・町内会活動,ボランティア活動,学習・自己啓発・訓練と社会活動満足度との間に有意な関連が認められた.

     考察:自立高齢者の社会活動満足度には,関係性,有能さの欲求が重要であり,また,安心できる地域生活の構築,貢献感および自己成長につながる活動の重要性が示唆された.

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