高齢者大学の機能の変化を明らかにするために,兵庫県西宮市高齢者大学の1998年度受講者753人および2008年度受講者1,247人に対して,同様の内容の質問紙調査を実施し,両調査結果の比較を試みた.2つの時期の受講者の基本的属性,受講のきっかけ,受講後の感想の単純集計ののちに,受講への意識を構造化するために,受講のきっかけと受講後の感想に関する共通の項目群を数量化Ⅲ類によって構造化して基本軸を析出したのちに,とくに規定力の大きい第Ⅰ軸の項目の並び方の分析を行った.
その結果,1998年度受講者の基本軸が「健康生活-人間関係/学習内容」の軸として命名されたのに対し,2008年度受講者の基本軸は「生活性-人間関係/社会性」の軸と命名された.両者ともに「人間関係」が注目されるが,1998年度受講者ではこれが学習内容や教養などと近い位置にあったのに対し,2008年度受講者の場合は,学習内容や教養とは近い距離にはなかった.ここから,1998年度受講者では, 学習内容・教養と結びつきつつ人間関係が構築されていたのに対し,2008年度受講者の場合は,学習内容・教養とは切り離されたかたちで人間関係が編まれており,この10年間に高齢者大学の機能は変容したものと解釈された.
抄録全体を表示