老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
32 巻 , 3 号
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原著論文
  • 須加 美明
    2010 年 32 巻 3 号 p. 307-316
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     利用者が受けとめる訪問介護の質は,ヘルパーとの人間関係の質以外に,要望への対応や説明の親切さ,サービスの継続性など事業所の対応の違いによっても左右される.「事業所の対応」評価尺度は,この質を測るためにつくられた5因子のモデルであるが,妥当性は一地域のデータでしか確認されていなかったため,他の地域に尺度を適用して交差妥当性を検討した.

     訪問介護を利用する高齢者を対象に調査を行い,欠損値のない回答(520件)を基に探索的因子分析を行ったところ仮説のモデルと同じ因子が抽出された.確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度指標のうちRMSEAは不良であったがCFIとTLIは良好であったため,多母集団分析を用いて尺度の因子構造の不変性を検討した.因子負荷量と因子の共分散と項目の残差を等値に制約した条件でのモデルの適合度は,ほぼ許容範囲にあったことから,本尺度は一定の交差妥当性をもつものと思われた.

  • ── 介護職員の体験を探索的にモデル化する試み ──
    堀 恭子
    2010 年 32 巻 3 号 p. 317-327
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     高齢化が急速に進むわが国において認知症高齢者の介護は大きな問題となりつつある.本稿は,介護職員の体験構造を相互作用の視点をもって明らかにする研究のひとつであり,認知症デイサービス職員が意識することについてインタビューを行い,参与観察から得たサブデータをガイドに探索的に分析,構造モデル化して検討を加えた.

     職員は,介護を「利用者を受け止め支える」ことであると,精神的側面に重きをおき,また支えることの双方向性を感じつつ,意識していた.職員は,認知症の利用者や同じ利用者を介護する同僚,利用者家族に対して共感を覚え,同時に認知症の利用者に対する介護職員としての無力感や「わからなさ」感,同僚や利用者家族への疑問からジレンマを意識していていた.利用者を統合的にとらえることやジレンマの軽減が,介護職員の利用者理解や自己肯定につながり,介護の質や職員のメンタルヘルス向上へつながることが予見された.

  • 北川 慶子, 宮本 英揮, 橋本 芳
    2010 年 32 巻 3 号 p. 328-337
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     介護保険施設は,要介護高齢者にとっては生活の場である生活施設であり,災害時には地域の災害時要援護者の避難受け入れや被災後の生活復興,地域の要援護者への支援機能をもつ地域にとって強力な機能を有する施設となる.介護施設における被災時の避難には要介護高齢者の介助避難が必要であるため,避難の安全性を重視した安全確保態勢をとっておくべきである.

     本論では,介護保険施設を対象にした防災・減災に関する意識調査により,施設の被災経験がその後の防災にどのように生かされるかの分析を試みた.その結果,被災経験のある施設は被災の危惧が強い傾向がみられた.被災経験は避難や防災への意識を喚起し,それを災害への備えに反映させることが期待されるといえよう.施設の被災経験は1割程度であり,施設は安全であるといえるかもしれないが,利用者・家族に対しては,災害時の対処の方法を過半数の施設が説明していないという実態もまた明らかになった.

資料論文
  • ── 西宮市高齢者大学における10年間の受講者層の変化 ──
    堀 薫夫
    2010 年 32 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     高齢者大学の機能の変化を明らかにするために,兵庫県西宮市高齢者大学の1998年度受講者753人および2008年度受講者1,247人に対して,同様の内容の質問紙調査を実施し,両調査結果の比較を試みた.2つの時期の受講者の基本的属性,受講のきっかけ,受講後の感想の単純集計ののちに,受講への意識を構造化するために,受講のきっかけと受講後の感想に関する共通の項目群を数量化Ⅲ類によって構造化して基本軸を析出したのちに,とくに規定力の大きい第Ⅰ軸の項目の並び方の分析を行った.

     その結果,1998年度受講者の基本軸が「健康生活-人間関係/学習内容」の軸として命名されたのに対し,2008年度受講者の基本軸は「生活性-人間関係/社会性」の軸と命名された.両者ともに「人間関係」が注目されるが,1998年度受講者ではこれが学習内容や教養などと近い位置にあったのに対し,2008年度受講者の場合は,学習内容や教養とは近い距離にはなかった.ここから,1998年度受講者では, 学習内容・教養と結びつきつつ人間関係が構築されていたのに対し,2008年度受講者の場合は,学習内容・教養とは切り離されたかたちで人間関係が編まれており,この10年間に高齢者大学の機能は変容したものと解釈された.

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