生産研究
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64 巻, 4 号
選択された号の論文の42件中1~42を表示しています
特集1 持続可能な都市システムの構築をめざして(ICUS)
特集に際して
研究速報
  • 加藤 孝明
    2012 年 64 巻 4 号 p. 429-432
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    2012年1月大手新聞社は科学的知見をもとに「マグニチュード (M) 7級の首都直下地震が今後4年以内に約70%の確率で発生する」と報道した. その後追随したマスコミは, 「東京湾北部地震」を「首都直下地震」として取り扱って報道した. 明らかな誤解である.
    ここでいう「首都直下地震」は, 首都圏のどこかで起こる直下型地震のことをいう. 一般に直下地震の強震範囲は限定され, 首都圏全体が強震するわけではない. したがって, ある場所から十分に遠くで地震が起こっても被害は生じない. 4年で70%の発生確率の地震は, そういう地震をすべて含んだものである. 「東京湾北部地震」の発生確率ではないし, ある特定の場所が強震する確率ではない.
    今回の一連の報道は, 一見, 社会全体として防災意識を高め, 防災対策の推進に寄与したと言えそうだが, その一方で, 負の側面がある. 科学的な知識が正しく社会に伝わっていない. 対策推進に寄与したことは免責にならない. 科学的に正しい知識をもって防災意識を啓発し, 同時に防災対策を推進できる状況をつくることが本来の状況である.
    本稿では, 1月23日報道の情報ソースのいう確率とその後の報道の確率の違いが異なることを解説した上で, 「M7級首都直下地震の発生確率」と「首都圏内のある特定の場所 (或いは, 地域) がM7級首都直下地震によって強震する確率」との関係を示し, 地震の発生確率の適切な提示の仕方について論考する.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 藤生 慎, 沼田 宗純, 大原 美保, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 433-437
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    東日本大震災では莫大な数の建物被害が発生し, 被災した住家に対して建物被害認定調査が実施された. そこで, 本研究では, 被災エリアの建物被害認定調査担当者にアンケート調査を実施し, 調査期間, 実施体制, 支援体制, トレーニング体制などを明らかにした. その結果, 様々な形態で建物被害認定調査が実施されていることが明らかとなった. 一方, 内閣府や国土交通省による調査指針・方針の度重なる変更が, 調査現場の混乱を招いたことから, 今後の大規模地震災害に向けた建物被害認定調査体制を構築する要望も各自治体から挙げられた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 近藤 伸也, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    東日本大震災の発生から一年以上が経過し,その間多数の学会による被災地の調査/支援,および提言の発信など様々な支援が行われてきた.これらの活動を振り返り,総合的に俯瞰することで,今後の学会の活動方針と学会間の連携の必要性について検討する必要がある.本稿では,学会がウェブで情報発信している東日本大震災に対する活動成果と日本学術会議が発信している提言の内容の動向を,防災に関連する視点から分析することを試みる.これにより各学会の活動の動向を防災の視点から俯瞰し,今後の活動方針の検討が可能となる.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 腰原 幹雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 445-450
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本報は,2011年東北地方太平洋沖地震における木造校舎の被害を整理した.
    木造校舎の,振動被害としては,古いタイプの木造校舎では,モルタル外壁の亀裂,剥落といった仕上げ材の被害が多く,構造躯体への被害は,土壁の剥落,方杖付き柱などこれまでの地震被害と同様の被害が見られたが,数は少なかった.大断面集成材を用いた新しい木造校舎では,柱脚部や丸鋼ブレースのコンクリート基礎部での損傷が見られたが,構造体への大きな被害は見られなかった.地盤変状に伴う被害は,斜面崩壊によって上部構造が引きずられる傾斜被害や,液状化による建物の大きな傾斜が見られた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 越智 士郎, 古関 潤一, 宮下 千花, 沢田 治雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 451-454
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    2011大震災では広域多所で液状化が発生した.復旧計画を迅速に策定するうえでは,地震後早期に発生箇所を把握する必要がある.本研究では,検出の自動化・標準化のための手法を検討した.クラスター分類と決定木法は最尤法に比べ,ソフトウェア上でのパラメータの調整が煩雑になることが予想された.均一精度で広域を分類するためには,オブジェクト画像を用い,最尤法分類を行うことが最も実用性が高いと考えられた.トレーニングエリアの代表性の確認方法,スクリーニング手法など,作業の自動化・標準化するためには,今後さらなる事例検証が必要である.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 中尾 悠士, 沢田 治雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 455-459
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    災害発生直後の被災状況を把握することが重要でありながら困難である津波被害に関して,リモートセンシング技術を用いて津波災害発生後短時間で高精度の浸水域把握を行う手法を開発した.可視光線および近赤外線によって観測された衛星画像を用いて,津波が到達した範囲にのみ存在する瓦礫に着目し,標高モデルと組み合わせることにより自動で浸水域の抽出を行った.時として国境を超えるほど広範囲に影響がおよぶ津波災害では,リモートセンシング技術を利用することで短時間に被害把握が可能なことが示された.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 大原 美保
    2012 年 64 巻 4 号 p. 461-465
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    災害時の被災生活において,男女には様々なニーズの差があり,災害応急期や復旧・復興期における社会的な問題につながりうる.これらは,1995年阪神・淡路大震災など過去の災害でも指摘されているが,2011年東日本大震災の被災地においても様々な問題が生じた.本報告ではまず,災害応急対応においてジェンダーに配慮する上での課題を整理した上で,東日本大震災における男女のニーズと実際の行政対応に関する調査結果を踏まえ,今後行うべき応急対応の課題を検討した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 澤田 義人, 遠藤 貴宏, 沼田 宗純, 目黒 公郎, 沢田 治雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 467-473
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    災害発生直後のテキストデータについて解析し,可視化を行うことを目的として,一連の解析手法の開発を行った.単語の出現頻度に基づいた分類を行い,各ノードでの単語の出現頻度(Zスコア)からSOM上でのトピックを決定する方法を開発した.山陰豪雪に関連するツイッターデータの解析では,明確なトピックを決定するのは困難であったが,ツイッターに特有なものとして「情報共有」のトピックが得られた.SOMの分類と隠れマルコフモデルによるモデル化を組み合わせることで,発言内容の短時間のゆらぎも含めた5つのトピックが自動抽出された.豪雪の状況が全国ニュースで取り上げられた時には,それ以降のツイート内容が変わったことも明らかになった.[本要旨はPDFには含まれない][本要旨はPDFには含まれない]
  • -東日本大震災関連報道記事の解析-
    澤田 義人, 遠藤 貴宏, 沼田 宗純, 目黒 公郎, 沢田 治雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 475-482
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    災害発生直後のテキストデータについて解析し,可視化を行うことを目的として,一連の解析手法の開発を行った.単語の出現頻度に基づいた分類を行い,各ノードでの単語の出現頻度(Zスコア)からSOM上でのトピックを決定する方法を開発した.
    東日本大震災発生直後の新聞記事の解析では,大きく6つのトピックを抽出でき,事象の推移にしたがって記事数も時間的に変化する様子を捉えることができた.特に,福島第一原発の事故のようにこれまでに類のない事象に関する記事についてもトピックの可視化が可能である結果が得られた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 川崎 昭如, ヘンリー マイケル, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 483-490
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    東日本大震災後,多様な情報源から大量の情報が配信される中,国内と海外のメディアから配信された情報には内容が不一致であったり,矛盾するものが含まれていたことが指摘されている.そのような状況の中,日本人と外国人はどのメディアから情報を収集し,どの情報源を信頼して意思決定をしていたのであろうか?本研究ではオンライン・アンケート調査の分析から,東日本震災後の日本人と在日外国人の災害情報収集過程,および情報のニーズと実際の取得についての共通点と差異を分析した.そして,分析結果をもとに,情報伝達不足や事実誤認を防ぐことを目的とした,在日外国人への災害情報発信の改善を目指した提言を行った.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 川崎 昭如, ヘンリー マイケル, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 491-495
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    東日本大震災後,短期間に大量の外国人が国内外へ退避したことで,日本国内の社会経済活動に広範な影響がでた.本研究では,外国人の退避行動と災害情報収集過程との関係を明らかにすべく,東日本大震災時に関東地域に居住していた外国人を対象としたオンライン・アンケート調査を実施した.75ヶ国860人の災害情報収集過程と退避行動との関係性を分析し,震災後の情報収集過程の違いがその後の退避行動に与えた影響を定量的に示した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • マイケル ヘンリー, 川崎 昭如, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 497-503
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    During the 2011 Thai flood, people searched for information regarding the disaster to better understand the situation and make decisions or preparations regarding whether to evacuate their homes or businesses.
    However, many people experienced information-related difficulties such as incorrect or conflicting reports, false rumors, congestion in networks such as hotlines, and so forth. In order to improve information dissemination in the future, a survey was conducted to understand how people collected their disaster information. This paper analyzes the results from the perspective of income level in order to propose effective information dissemination considering the difference in quality of living-related factors.[This abstract is not included in the PDF]
  • -調査研究の概要-
    川崎 昭如, 近藤 伸也, 大原 美保, 小森 大輔, 小高 暁, KAEWMORACHAROEN Manop, SHRESTHA Sang ...
    2012 年 64 巻 4 号 p. 505-508
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本調査研究は日本で先行的に蓄積される自然災害対策の知見や教訓, 情報通信分野での先端技術を活かし, 急変するアジア各国の現状とニーズに沿ったローカライゼーションを行うことで, 各国政府・自治体の支援が期待できない地域コミュニティレベルでの災害対応力向上を支援する情報伝達システムの設計を目指している. 筆者らは日本とタイ王国の2国間共同プロジェクトとして, 地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS) 特定型課題形成調査【若手FS】の支援を受けて, 2011年11月~2012年3月に共同調査を実施した. 本稿はその全体像を概括する.[本要旨はPDFには含まれない]
  • -行政や住民とのワークショップによる課題抽出-
    川崎 昭如, 近藤 伸也, 大原 美保, 小森 大輔, 小高 暁, KAEWMORACHAROEN Manop, SHRESTHA Sang ...
    2012 年 64 巻 4 号 p. 509-513
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    干ばつや洪水被害,地滑り災害など深刻な風水害に苦しむタイ東北部は,国内の他地域に比べて経済的に立ち遅れており,総じて教育レベルも低い. 従って,例え住民は災害情報を入手できたとしても,その情報を十分に理解・活用できないことも考えられる. そこで,住民の災害情報に対するニーズやリテラシーを把握するために,本研究調査ではルーイ県を対象に災害対応を担当する県と郡の2つのレベルの行政機関,および2つの農村でのワークショップを開催した.本稿ではそこで得られた既存の災害情報伝達システムの実情と課題を整理した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 小高 暁, サンタララック アディソーン, 川崎 昭如, 大原 美保, 近藤 伸也, 小森 大輔
    2012 年 64 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    近年のソーシャルネットワークやウェブマッピングなどの地理空間情報技術の急速な発展により,様々な災害情報が得られるようになったが,経済的に立ち遅れている山間・農村地域では,それらを都市部と同様の手段で得ることは難しい.また,例え得られたとしても,それを十分に理解・活用できない可能性がある.そこで,本報では,山間・農村地域コミュニティで求められる災害情報および住民のリテラシーを把握するため,タイ王国ルーイ県において,複数の農村で300名を対象としたアンケート調査を実施した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 小高 暁, 川崎 昭如, サンタララック アディソーン
    2012 年 64 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    2011年のタイ地震において,クラウドソーシングや,マッシュアップの活用,SNSと連携した災害情報の発信など,ウェブマッピングだけでも相当な量の情報が発信された.本報では,それら災害情報の提供・共有手法の動向について紹介し,SNS利用者の関心を把握することで,求められる情報が実際に受信・共有されているのかを定性的に判断した.また,運輸省道路局での聞き取り調査を通して,マップ作成時の道路情報の収集過程,および今後の課題を示した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 近藤 伸也, 片家 康裕, 太田 和良
    2012 年 64 巻 4 号 p. 527-531
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本稿では,2011年台風12号豪雨水害によって被災した和歌山県紀南地方の三市町の災害対応について担当者へのヒアリング調査を通じて取りまとめた.その結果,ハードによる事前対策により災害の発生の抑止,および災害による被害の影響を軽減させることを目的とした被害抑止力について住民に理解してもらうこと,近年整備されてきた通信インフラを活用した複数のサービスを用いて情報の収集/発信を行う通信系統の多重化,空振りを覚悟した明るい時間帯での早期避難と住民の理解が必要であることが明らかとなった.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 近藤 伸也, 片家 康裕, 太田 和良
    2012 年 64 巻 4 号 p. 533-537
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本稿では,2011年台風12号豪雨水害における紀伊半島の道路復旧について被災した紀伊半島の三県(三重,奈良,和歌山)の道路復旧の考え方に関するヒアリング調査結果から,紀伊半島における道路復旧の優先順位の付け方に関する現状と課題について取りまとめた.その結果,三県がそれぞれ独自の復旧方針を立てていたこと,応急復旧工事だけではなくその後の通行にも影響を与える事象があること,集落/地域の孤立への対応に関する事前からの検討が必要であることが明らかとなった.[本要旨はPDFには含まれない]
  • -日本の事例との比較によるシステム導入の検討-
    近藤 伸也, 川崎 昭如, 大原 美保, Adisorn Sunthararuk, Manop Kaewmoracharoen
    2012 年 64 巻 4 号 p. 539-543
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本稿ではタイ王国東北部にあるルーイ県にて現地調査した結果から得られた現地の災害情報伝達システムの実状と課題を「計画とアウトプットとしての災害情報」,「災害情報生成フロー」,「災害情報伝達フロー」の視点で整理した.そして日本の豪雨水害の事例として,2011年台風12号豪雨水害における和歌山県紀南地方の市町の対応事例と比較し,ルーイ県の災害情報伝達システムで起こりうる課題と改善点を特に「通信系統の多重化」と「明るい時間帯での早期避難」の視点から明らかにした.[本要旨はPDFには含まれない]
  • - Twitterアカウント運用者の視点に立って-
    石川 哲也, 近藤 伸也, 川崎 昭如, 大原 美保, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 545-552
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    災害時の行政機関のソーシャルメディアによる情報発信について,その重要性が調査等で明らかにされているが,その効果的な運用方法や運用の課題が明らかにされていない.そこで本研究では,東日本大震災もしくは紀伊半島水害時にソーシャルメディア上で情報伝播の要として活躍した4つの組織・個人のアカウント運用者に対してヒアリング調査を行い,ソーシャルメディア運用の特徴や課題を整理した.そして災害時の行政機関アカウントの運用指針の提案,そして課題に対して調査から明らかになった知見を踏まえた解決策の提案を行った.[本要旨はPDFには含まれない]
  • -香川県三木町での調査速報-
    大原 美保, 川崎 昭如, 近藤 伸也, 田中 淳
    2012 年 64 巻 4 号 p. 553-556
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    近年,災害情報の伝達手段の一つとして,携帯電話のエリアメールによる情報伝達が普及しつつある.2011年9月に台風12号が通過した際,香川県内ではエリアメールによる住民向けの避難情報の伝達が行われた.本研究ではこの事例に着目し,住民アンケート調査に基づいて情報伝達・受容の実態調査を行った.住民にとってはエリアメールによる災害・避難情報を初めて受け取る機会であったが,否定的な意見は少なく,効果に期待する声が多かった.一方,避難の必要性を伝える文面については課題も見られ,今後の情報発信への示唆が得られた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 牧之段 浩平, 藤生 慎, 大原 美保, 目黒 公郎
    2012 年 64 巻 4 号 p. 557-563
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    東京都内の江東デルタ地帯には海抜ゼロメートル地帯が広がっており,大規模水害の危険性が指摘されている.本研究では,洪水氾濫シミュレーション・人口および建物分布のGISデータを用いて,水害時に江東デルタ地帯において必要とされる避難場所の収容力に関する分析を行った.交通機関の運行条件や歩行可能範囲を踏まえた上で,地域内の域内避難と地域外への広域避難の双方を考慮し避難場所の過不足を評価するとともに,指定避難場所以外の公共・民間建物を活用した場合の収容力増大効果も把握し,適切な避難場所計画に向けた示唆を得た.[本要旨はPDFには含まれない]
  • -メコン川3S支流域でのケーススタディ-
    川崎 昭如, 高松 正嗣
    2012 年 64 巻 4 号 p. 565-570
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,アジア諸国で顕著になりつつある,水資源政策を喫緊に支援するための解析手法とツールを開発し,地域規模での土地利用と水資源管理の問題解決に資することを目的とする.具体的には,利用可能なデータが限られた発展途上国を対象として,急速かつ動的に進行する森林伐採と都市化の将来の拡大傾向を予測する,土地利用変化モデルを開発した.本稿ではアジア最長の国際河川であるメコン川の下流域に位置する3S支流域を研究対象地とした検討を行った.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 近藤 伸也, 永松 伸吾, 川西 勝, 安富 信
    2012 年 64 巻 4 号 p. 571-576
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,危機管理本部運営の関係者が本部運営の課題を解決する危機管理対応の作法として目標管理型災害対応を身につけることをねらいとした目標管理型危機管理本部運営図上訓練(Simulation Exercise of Emergency Response Headquarter Management by Objectives: SEMO)を開発した.目標管理型災害対応とは,「関係者全体で共通の状況認識を持つ」,「目標を明確にした対応計画を構築する」,「戦略的な広報を実施する」の三つの原則からなる.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 徳永 冠哉, 澤田 義人, 遠藤 貴宏, 沢田 治雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 577-580
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    ブラジル・アマゾン川流域で季節変化により発生する浸水林の正確な把握は,森林バイオマスを推定するうえでも重要である.広域にわたるアマゾンの森林を解析するため,澤田らはTerra/MODISデータから雲の影響を除去する独自のプログラムを用いて土地被覆分類図を作製したが,その精度は検証されていない.本研究では,ALOS/PALSARデータにオブジェクトベース分類手法を適用して,浸水林面積を推定し,それをもとに澤田らのTerra/MODISデータから作成された土地被覆分類プロダクトの精度評価を試みた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 中園 悦子, 沢田 治雄, 遠藤 貴宏, 川崎 昭如
    2012 年 64 巻 4 号 p. 581-584
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    カンボジアでの近年の森林減少の状況を捕らえる為に,2002年の森林分布図を基本にし,2001年から2010年のMODIS土地被覆分類図を用いて変化部分を抽出した.常緑林と常緑・落葉混交林についてはMODIS分類図を用いて森林被覆の変化を追うことができた.2002年の分布図完成とその為のデータ取得の間には時差があるため,その間に変化したと考えられる部分を除いて常緑・常緑混交林の面積変化を求めたところ,対象となる森林の5.75%,国土全体の1.67%の森林が減少していることがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 遠藤 貴宏, 中村 裕幸, 澤田 義人, 沢田 治雄
    2012 年 64 巻 4 号 p. 585-589
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    林業の生産性を向上させるための一つの解決策として,効率的に森林の現状を管理することがあげられる.具体的には,単木ごと材として質を調査・管理することで原木コストの削減が見込まれる.そこで,本研究では,新たな森林調査手法として地上 LiDARを利用して森林を面的かつ短時間に計測することで原木コストを削減する方法を提案する.具体的には,地上 LiDARで計測された点群から単木の質に関する任意の高さの樹幹太さを取得する手法を開発するとともに,誰でも結果を理解できるようにDEMと樹幹形状とを可視化して出力する仕組みを構築した.まず,地上 LiDARで計測した点群からDEMを作成した.次に,地上13. mから1 mごとの樹幹太さを真円を用いて推定した.そして,近似結果を3 Dデータとして可視化した.形状に関する結果は,樹冠下までの樹幹太さに関してほほ点群の形状通りに推定でき,形状の再現は成功した.ただし,樹冠下から樹冠内の樹幹太さの推定は,枝葉の点群の影響により誤差が大きくなっていたことが分かった.しかしながら,樹冠内の樹幹太さの推定誤差を低減する解決策に関する知見は得られた.本研究の結論として,樹冠下から樹冠内の樹幹太さの推定する手法を改良する必要があるが,提案した樹幹太さの推定手法は有効であることが示された.さらに,原木コストを削減するためには,DEMを広範囲に作成できる場所に地上 LiDARを設置することが重要であることが示された.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 加藤 絵万, 川端 雄一郎, 西田 孝弘, 岩波 光保
    2012 年 64 巻 4 号 p. 591-595
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    港湾施設の代表的な構造形式である桟橋では,下部工である鋼管杭の腐食防止を目的として,干満帯から飛沫帯にかけて被覆防食工が施される.著者らは,高耐久かつ耐衝撃性に優れた超高強度ひずみ硬化型セメント系材料(UHP-SHCC)を用いた被覆防食工の開発に向けた検討を行っており,本稿では,衝撃荷重を受けるUHP-SHCC試験体の破壊性状,およびそれに及ぼす載荷速度と繊維混入率の影響に関して,実験的な検討を行った結果を報告する.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 横田 弘, 古谷 宏一, 橋本 勝文
    2012 年 64 巻 4 号 p. 597-600
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    無筋コンクリート胸壁を対象とした現地調査から胸壁に生じたひび割れ性状に関する情報を収集し,確率統計手法に基づいて,目視により簡易に測定できる鉛直方向のひび割れ幅から施設の耐力低下に大きな影響を及ぼすと考えられるひび割れ深さを推定する式を提案した.また,得られた知見に基づき,ひび割れの生じた胸壁を対象に,ひび割れ深さ,ひび割れ本数,構造部材の寸法を変化させた非線形有限要素解析を行い,ひび割れの発生に伴う構造性能の低下を評価した.その結果,ひび割れ状態と構造性能(耐力)との関係を定量的に明らかとした.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 横田 弘, 豊田 昂史, 橋本 勝文
    2012 年 64 巻 4 号 p. 601-605
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    超高強度繊維補強コンクリート(UFC)は,ひび割れ発生後においても引張力を十分に負担できる優れた力学特性を有している.しかし,塩分環境下でひび割れが発生した場合,鋼繊維が腐食することが懸念され,その状態で引張力をどの程度負担できるかは不明確である.本研究ではひび割れを有するUFCを海水に浸漬し,一定の浸漬期間後の内部の鋼繊維の腐食状況および引張軟化特性を把握することにより,ひび割れ発生後にUFCが保有する耐引張性能を評価した.その結果,海水浸漬による内部の鋼繊維の腐食がひび割れを有するUFCの引張応力負担に影響を与えることが確認された.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 桑野 玲子, インディケティヤヘワゲ サマンティレヌカ
    2012 年 64 巻 4 号 p. 607-611
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    地盤からの土砂流出に伴い形成される地盤内空洞の周辺には,密度が低下したゆるみ部分を伴う.このゆるみの度合(密度低下)やその範囲は土の種類によって異なる.また,均等な砂では空洞部分を周辺から埋めるように体積膨張する結果,周辺部に間隙が生成しゆるみが発達するのに対して,細粒分混じり砂では細粒分が粗粒の間をすり抜けて流出し,ゆるみが発達する.
    本研究では,均等な砂に生成するパターンの蜂の巣状のゆるみについて,その変形・強度特性を定量的に評価する目的で,豊浦砂供試体内に人工的にゆるみ生成させ三軸試験を実施した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 佐藤 真理, 桑野 玲子
    2012 年 64 巻 4 号 p. 613-617
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    地中の水の急激な浸透に伴い,場合によっては土粒子が部分的に流出しパイピングや内部浸食を起こす.粒度の良い地盤においては,まず細粒分が卓越して流出すると推測され,細粒分流出による排水の濁りは地すべり等の地盤災害の前兆現象とされることもある.本研究では,一次元円筒カラム内に模型地盤を作成し,地中への水の浸透による土砂流出を排水の濁度を測定するにより評価した.さらに,試験後の供試体に貫入試験を実施し,土砂流出量と強度の関係を調べた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 佐藤 真理, 桑野 玲子
    2012 年 64 巻 4 号 p. 619-622
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    ゲリラ豪雨等により短時間のうちに表層地盤の飽和と地下水位上昇が急激に発生した場合,地盤内の空気が閉じ込められて空気圧が上昇し,周囲の地盤の局所破壊を起こす可能性がある.本研究では,地表部が飽和した供試体で,上部飽和地盤重量に相当する空気圧の上昇が発生した際に上部飽和地盤が持ち上げられる局所破壊が起こることを,一次元円筒供試体を用いて確認した.閉塞部の空気圧の実測値は,空気の体積減少から計算した理論値とよく一致した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 福王 翔, 桑野 玲子
    2012 年 64 巻 4 号 p. 623-627
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    移動床土槽内でベンダーエレメントを用いた多点送信多点受信のせん断波測定を実施し,トモグラフィ解析を施すことにより内部の応力分布の推定を試みた.ベンダーエレメント法は要素試験装置内への適用は多く報告されている.模型実験に適用する際,一般に応力レベルが低いので受信信号が微弱でノイズの除去などの信号処理が不可欠である.また,素子の配置の仕方によっては土槽壁の拘束の影響を受けるので,配慮が必要であった.移動床実験時の模型地盤内の応力分布をせん断波速度測定のトモグラフィによる逆解析により推定したところ,密詰め地盤において,土槽底版分で測定した境界部の応力とせん断により生成するすべり面と矛盾しない結果が得られた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 林 大輔, 長井 宏平
    2012 年 64 巻 4 号 p. 629-632
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    施工性に優れた機械式定着具の柱梁接合部への適用が望まれているが,かぶりが薄い個所での挙動が明らかではないため,その使用は制限されている.既往の研究で,かぶりが薄い個所に配置された機械式定着具の引抜き試験が行われ,定着性能の検討が行われた.本研究では,既往の研究を対象に離散解析手法を用いて再現を行い,定着性能の検討を行った.その結果,実験で確認されたひび割れパターンを解析で再現することができた.加えて,横方向筋が減少すると,定着具が負担する応力レベルが高くなり,定着具周辺でより局所的にひび割れが集中することを示した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 髙野 芳行, SURYANTO Benny, 長井 宏平
    2012 年 64 巻 4 号 p. 633-636
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    複数ひび割れ型セメント系複合材料のひとつであるPVA-ECCの主応力軸回転下におけるせん断性を向上させるために,骨材を一定量混入した梁のせん断載荷試験を実施した.主応力軸の回転を模擬するために,梁に初期損傷を導入したうえで載荷を行い,初期ひび割れの影響を検証した.実験結果から骨材の混入により,静的載荷においては初期損傷がない場合では耐力の向上がみられた.疲労試験においては,初期損傷がある場合に梁の疲労寿命が骨材を混入した場合の方が長く,ひび割れ面での開きとずれの計測からも骨材のせん断ずれへの抵抗が高いことが確認された.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 菅田 寛, 平野 亜希子
    2012 年 64 巻 4 号 p. 637-641
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    火災報告データから63,179件の屋外放火火災を抽出し,放火センサの覚知時間短縮効果を推計した.火災種別・年次・国勢調査に基づく5つの自治体区分により,事件ごとの覚知時間を分類し,各区分について,ブートストラップ法により中央値の90%信頼区間を推定した.その結果,放火センサの設置により覚知時間は表4のように減少すること,自治体の規模と覚知時間の長短は相反する傾向にあることが予測された.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 塩崎 由人, 加藤 孝明
    2012 年 64 巻 4 号 p. 643-646
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    近年,気候変動や自然災害等の環境変化に関して,「レジリエンス」,「脆弱性」という用語が頻繁に使われている.これらの用語は環境変化に対するシステムの変化や挙動を表す概念であるが,その定義が多様であるため混乱をまねく恐れがある.本論では,英語圏の自然災害などの学術分野において発達してきたこれらの概念について,その発達の経緯と多様な定義の整理を行った.そして,「曝露」や「感応性」など,レジリエンス,脆弱性の概念に関する要素によって,環境変化に対するシステムの変化や挙動を説明できることを示した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 中村 仁, 塩崎 由人, 加藤 孝明
    2012 年 64 巻 4 号 p. 647-649
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    欧州連合(EU)が2007年に採択した「洪水リスク評価と管理」に関する新しいディレクティブ(政策指令)を受けて、ヨーロッパ諸国は2013年末までに洪水マップ(洪水ハザードマップ、洪水リスクマップ)を策定することが要請されている. 本研究速報は、今後の本格調査の予備的調査として、’EXCIMAP” (European Exchange Circle on Flood Mapping)がウェブサイトで公開している情報をもとに、ヨーロッパ諸国ですでに策定されている洪水マップの典型事例を、洪水マップの類型に即して提示するものである[本要旨はPDFには含まれない]
研究解説
  • 藤森 嵩央, 簗場 豊, 森田 一樹, 望月 和博, 小倉 賢
    2012 年 64 巻 4 号 p. 651-657
    発行日: 2012/07/01
    公開日: 2013/02/23
    ジャーナル フリー
    シリカ骨格へ多価イオン種であるリンを同型置換することで,陰イオン交換特性の発現を試みた.ゼオライトやメソポーラスシリカなどで一般的に使われる水熱合成法では,広範囲なpH,反応性の高いリン源,種々の界面活性剤などを使用しても,リンはシリカ骨格上にほとんどリン酸塩として,最大でもP/Siモル比0.1未満までしか含まれなかった.しかし,無溶媒重縮合法を用いることで,ケイ素とほぼ等量のリンが結合手をすべてシリカとするSi-O-P結合を有し,シリカ骨格に取り込まれることを見出した.この配位構造をもつリン酸種は,50°C以上の水に対して加水分解を受け結合が切断されるなど,水熱安定性に乏しいことがわかった.一方でこの構造は,フッ素イオンや亜硝酸イオンに対して特異的な吸着・イオン交換,酸化特性を示すことが明らかとなった.
特集2 生研産学共同研究の歴史を振り返る懇談会(生研アーカイバル懇談会)
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