膵臓
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27 巻, 1 号
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会長講演:2011年膵臓学会
委員会報告
  • 山雄 健次, 柳澤 昭夫, 高橋 邦幸, 木村 理, 土井 隆一郎, 福島 敬宜, 大池 信之, 清水 道生, 羽鳥 隆, 信川 文誠, 一 ...
    2012 年 27 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    目的:本研究はMCNの臨床病理学的特徴と長期予後について明らかにすることを目的とした.
    対象と方法:多施設共同,後ろ向き試験で,病理学的に卵巣型間質を有すると判断された膵嚢胞性疾患のみをMCNと定義して集計し,その臨床病理学的所見と長期予後を検討した.
    成績:156例がMCNと診断され集計された.156例の組織型の内訳は,腺腫129例(82.7%),非浸潤癌21例(13.4%),浸潤癌6例(3.9%)であった.平均年齢は48.1歳で,殆どの症例(98.1%)が女性であった.腫瘍は1例を除き全例が体尾部にあり,平均嚢胞径は65.3mmであった.主膵管との交通は18.1%(25/138)に認められた.MCNの術後3年,5年,10年生存率は各々,97.6%,96.6%,96.6%であった.腺腫と腺癌,微少浸潤と(高度)浸潤癌では生存率に有意差を認めた.癌と非癌の間に有意差が認められたのは,嚢胞径と結節の有無であった.
ガイドライン
  • 日本膵臓学会 ・ 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班
    2012 年 27 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    新しい自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)の概念として, lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)を1型(type1 AIP),idiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)を2型(type2 AIP)とする国際コンセンサス診断基準(International Consensus Diagnostic Criteria:ICDC)が提唱され,それぞれ臨床的に診断可能になるとともに,初めて国際的な比較検討ができるようになった.しかしながら,ICDCは専門家が使用するには極めて有用と思われるものの,専門家だけでなく一般医も使用することを前提とするわが国の診断基準にはやや煩雑であること,またわが国では極めてまれな2型AIPの実態が不明であることより,日本膵臓学会と厚生労働省難治性膵疾患調査研究班では,ICDCの精神を尊重しつつ,わが国の実状に即して1型AIPを対象とする改定診断基準を作成した.
原著
  • 日置 勝義, 後藤田 直人, 加藤 祐一郎, 木下 敬弘, 高橋 進一郎, 小西 大, 木下 平
    2012 年 27 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    遠隔転移を有する膵癌に対する標準的治療は化学療法であるが,膵癌根治的切除後,肝に限局性再発を来たし,切除の是非に迷う症例が稀に存在する.国立がん研究センター東病院で過去に切除した膵癌肝転移症例7例を分析し,その是非について検討した.同時性3例,異時性4例,原発部位は膵頭部2例,体尾部5例,転移個数は単発6例,2個1例,全例に中等度以上の脈管侵襲を認めた.肝転移切除後無再発生存期間は4.7月(同時性1.1月,異時性9.4月)で,肝転移再発が5例であった.肝転移切除後生存期間中央値(MST)は8.7月(同時性7.5月,異時性20.7月),原発巣切除後MSTは32.6月(同時性7.5月,異時性41.3月)であった.同時性転移に対する切除適応は無く,異時性転移に対しては検討の余地があり,癌薬物療法継続困難となった限局性肝転移症例に対する切除は増加する可能性があり,症例を集積し予後延長効果については慎重に見極めていく必要がある.
症例報告
  • 水内 祐介, 中村 雅史, 中島 陽平, 小田 康徳, 大塚 隆生, 高畑 俊一, 相島 慎一, 田中 雅夫
    2012 年 27 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    本例は56歳女性,誘因なく突然の左上腹部痛を自覚し近医で白血球数とCRPの上昇を指摘された.CTで膵周辺に2つの嚢胞(膵尾部;13cm単房性,噴門部左後方;7cm多房性)と左側に胸水を認めた.2ヶ月後のCTで膵尾部嚢胞は変化なかったが,後腹膜多房性嚢胞は縮小し炎症反応も軽減した.また,腫瘍マーカーはCA19-9が200867U/ml と569.7U/ml の間を1ヶ月毎に大きく増減した.膵炎の可能性もあったが,CA19-9と共に一時的にCEAも240.6ng/ml と上昇し,膵尾部の大きな嚢胞には変化がないことから,膵炎を伴う膵粘液性嚢胞腺癌の可能性も考え,膵体尾部切除術を行った.病理診断では異型を示す粘液産生性の腫瘍細胞が間質浸潤をきたし,嚢胞周囲に卵巣様間質を認めることから浸潤性粘液性嚢胞腺癌であった.粘液性嚢胞腺癌でも膵管への浸潤により膵炎で発症することがあり注意が必要である.
  • 浦上 淳, 平林 葉子, 富山 恭行, 河瀬 智哉, 吉田 浩司, 岡 保夫, 平井 敏弘, 角田 司
    2012 年 27 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性で糖尿病,慢性膵炎の既往がある.第12胸椎の圧迫骨折のため脊椎短縮術,後方固定,後側方固定術を施行された.腹臥位で,手術時間6時間20分であった.麻酔覚醒後から腹痛が出現し,術後1日目も腹痛は強く,膵酵素,WBC,CRPの上昇を認め,予後因子スコア5点で重症急性膵炎と診断.造影CTでは膵頭部の腫大および膵頭部内の造影不良域を認め,右腎下極以遠までの滲出液貯留を認めたため,造影CT grade 2と診断.蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法などの治療を行った.術後16日目の造影CTでは膵頭部の造影不領域が増大し,右後腹膜膿瘍も増大した.十二指腸の壁構造は消失し,十二指腸壁の壊死と考えられた.術後18日目に膵頭十二指腸切除術(PD)を行った.手術では十二指腸は広範に壊死に陥り,後腹膜膿瘍を形成していた.術後は縫合不全など大きな合併症はなく,PD術後101日に退院した.
  • 伊藤 謙, 五十嵐 良典, 三村 享彦, 菊池 由宣, 鎌田 至, 岸本 有為, 岡野 直樹, 住野 泰清
    2012 年 27 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性.切除不能膵癌に対して胆管ステント留置後に化学療法が施行されていた.第441病日に嘔吐のため入院した.上部消化管造影検査と内視鏡検査にて膵癌十二指腸浸潤による十二指腸閉塞と診断した.外科的手術に同意を得られず第457病日に十二指腸ステント留置術が行われた.早期閉塞のため第464病日に追加ステント留置を施行した.低残渣食摂取可能となったが,胆管炎併発したため,第485病日に経皮胆道ドレナージチューブを留置し退院した.第519病日にステント再閉塞のため再入院した.第535病日に追加十二指腸ステントを留置した.その際偶発症なく,水分摂取可能となったが,初診から第553病日に原病死した.末期膵癌患者十二指腸閉塞に対しても複数本の十二指腸ステント留置することによって,一時的に経口摂取が可能となった.患者のQOLに寄与でき,有用と考えられた.
  • 西 健, 川畑 康成, 百留 亮治, 門馬 浩行, 矢野 誠司, 田中 恒夫, 今岡 大, 石川 典由
    2012 年 27 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    膵癌診断時に皮膚転移を認め,その後筋転移を来たした稀な一例を経験した.症例は74歳,男性.早期大腸癌にてEMR施行され,2年後の定期受診で,膵尾部腫瘍を指摘され,精査となった.腹部造影CTにて膵尾部に約5cm大の造影効果の乏しい腫瘍を認め,肝に多発する小さな低吸収結節影を認めた.EUS下針生検にて膵管癌と診断した.入院時,左腋窩に圧痛を伴う皮下腫瘤があり,切除生検にて膵癌皮膚転移と診断した.膵癌T4N1M1 Stage IVに対し,gemcitabineとS-1による化学療法を開始した.治療初期より左大腿外側の痛みがあり,画像検査にて膵癌筋転移が強く示唆された.化学療法への反応は悪く,腫瘍は進行し,治療開始200日後に永眠された.皮膚転移・筋転移が膵癌の発見契機となることもあり,皮下腫瘤や持続する原因不明の筋肉痛などは注意すべき所見と考えられた.
  • 西山 亮, 相浦 浩一, 北郷 実, 篠田 昌宏, 板野 理, 河地 茂行, 田辺 稔, 上田 政和, 真杉 洋平, 坂元 亨宇, 北川 雄 ...
    2012 年 27 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.膵頭部癌(TS2,PV(+),T4N0M0,Stage IVa)の診断にて術前化学放射線療法(5-FU,MMC,CDDP+Radiation 40Gy)施行後,膵頭十二指腸切除術を行った.病理組織診断は高分化型管状腺癌T4N0M1(PER;omentum),Stage IVbであり,病理上,腫瘍本体に加え腹膜結節にも術前化学放射線療法の組織学的効果を認めた.術後Gemcitabineを開始したが,5年2カ月後右肺転移を認め,右肺S9-10切除術を施行.その後,胸膜播種を認め初回手術から6年7カ月後に死亡した.腹膜播種によるStage IVbにもかかわらず術後長期生存した1例を経験した.
  • 田中 秀紀, 直江 秀昭, 横峰 和典, 永濱 裕康, 桜井 宏一, 田中 基彦, 尾上 公浩, 田村 文雄, 岡島 英明, 猪股 裕紀洋, ...
    2012 年 27 巻 1 号 p. 69-79
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性.膵体部に径40mmの造影効果のある腫瘍とびまん性に多発肝腫瘍を認め,肝腫瘍生検で非機能性高分化型膵内分泌癌と診断した.全身化学療法施行するも奏効が得られなかったため,当院移植外科にてインフォームドコンセントの上,脾合併膵体尾部切除同時生体肝移植を行った.約半年後腹部リンパ節再発に伴う再手術後,組織標本によるSSTR2免疫染色が陽性であったため酢酸オクトレオチドを開始した.手術後,一旦症状は軽減し通院加療を継続していた.その後腹部リンパ節・骨・肺転移が徐々に増大し,S-1も追加投与していたが,当院加療開始より約4年4ヶ月目に永眠された.若年発症の膵内分泌癌で切除不能多発肝転移に対して,肝移植は治療の選択肢となり得ることが示唆された.
  • 小林 慎二郎, 上原 悠也, 野田 顕義, 佐々木 貴浩, 櫻井 丈, 小泉 哲, 朝倉 武士, 中野 浩, 小池 淳樹, 大坪 毅人
    2012 年 27 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル フリー
    76歳の男性.皮膚黄染を主訴に近医受診,膵頭部腫瘍が疑われ紹介となった.腹部CT,造影MRIで膵頭部に内部が不均一に造影される充実性腫瘍と,膵内に数個の嚢胞性腫瘍を認めた.また肝S8に径8mmの腫瘍を認めた.FDG-PETで膵頭部腫瘍はSUVmax 15.6,肝腫瘍はSUVmax 7.56と高値であった.IPMNに併存した膵癌及び肝転移と診断し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術と肝S8部分切除術を施行した.病理所見で膵頭部腫瘍は腺癌細胞と扁平上皮癌細胞が混在しており,扁平上皮癌細胞が全体の40%を占めていた.膵鈎部の分枝膵管上皮は乳頭状構造を形成しており,IPMNと癌部との連続性は認めなかった.また,主膵管上皮には乳頭状増殖変化は認めなかった.以上から分枝型IPMNに併存した膵腺扁平上皮癌と診断した.
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