日本画像学会誌
Online ISSN : 1880-4675
Print ISSN : 1344-4425
ISSN-L : 1344-4425
39 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
論文
  • 本庄 知
    2000 年39 巻2 号 p. 66-74
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/06/26
    ジャーナル フリー
    画質を向上させた多くのデジタル・ハードコピー出力系がいわゆるフォトフィニッシング市場に進出しようとしている.この市場は,人々が自らの視覚的体験を写真プリントの形態で保有しておきたいという素朴な欲求に基づく.
     本論文は最初にこの市場を成立させている三つの要因,光の作用に対する人間の特別な思い入れ,写真は光の直接作用の結果だという直観的な認知,および写真の極端に個人的な価値を論ずる.
     次ぎに,上の二番目の要因に関わる写真プリントがもっている独特のオーラについて考察し,滑らかなハイライト特性と水面を想起させる表面構造がもっとも重要なオーラの源泉であることを述べる.最後に,フォトフィニッシング用のデジタルプリントはこの二つの要因を満足させねばならないことを,経験的に見出されたオーラを死滅させる要因と関連付けて説明する.
  • 斎藤 了一, 小寺 宏曄
    2000 年39 巻2 号 p. 75-83
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/06/26
    ジャーナル フリー
    個々の画像が形成する色立体の外郭表面およびその体積を知ることは色再現問題を論じる上で重要である.色立体のCIELAB空間上での3次元形状を記述できれば,色域を議論するうえで非常に都合がよい.本論文では,体積計算モデルにおいて外郭をなす四面体群の色度点配列の抽出法と計算精度について考察する.特に,自然画像では画素の色空間上での色度点はわかっていても,その配列順を知ることは難しい.そこで,画素の色度を色相角と明度により2次元の扇形部分空間に分割し,各部分空間から抽出した最外郭の3点と色立体の中心点を結ぶ四面体を構成させて体積を計算する手法を考案した.画素の特徴に応じた最外郭点を自動的に求めることができ,体積も算出できるので,対象とする画像の色空間上での色域を把握するうえで有用な方法である.
  • 伊藤 哲也, 坂谷 一臣, 山本 眞司
    2000 年39 巻2 号 p. 84-93
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/06/26
    ジャーナル フリー
    ピクトリアル画像において重視される画質特性の一つである粒状性のモノクロ,カラーを問わない定量化モデルを検討した.粒状性スケールGS(Graininess Scale)における視覚感度補正関数を改良し,画像の明度成分から明度ノイズ値LN(Lightness Noise)を導いた.さらに,色彩 (彩度,色相角)成分から人の視覚特性を考慮した色彩ノイズ値CN(Chromatic Noise)を導き,明度ノイズ値LNへ加重することで,新しい粒状性の尺度となる画像ノイズ尺度GI (Graininess Index)を予測する定量化モデルを開発した.この画像ノイズ尺度GIと主観評価実験によって得られた主観評価値との対比を行った結果,非常に高い相関関係(γ=0.91)を示し,本モデルの有用性を確認した.
  • —キナクリドンならびにピロロピロール顔料との比較—
    水口 仁, 遠藤 彩映, 松本 真哉
    2000 年39 巻2 号 p. 94-102
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/06/26
    ジャーナル フリー
    インジゴには助色団として2対のNH基(ドナー)とC=O基(アクセプター)が存在し,インジゴ分子間にはNH…Oの水素結合が形成されている.この種の水素結合系顔料としてキナクリドン(QA)やピロロピロール(DPP)が知られている.QAとDPPは溶液状態では淡い黄色であるが,固体状態では鮮やかに赤に発色する.つまり,結晶化の際に吸収バンドが大きく長波長にシフトする.これに対し,インジゴは溶液でも青に着色しており,結晶化に伴う吸収バンドの長波長化の程度はQA,DPPに比べると格段に小さい.このメカニズムを解明する目的でインジゴの電子構造を分子構造,結晶構造,分子間相互作用の立場から検討した.光励起により分子上に出現する遷移モーメントの方向は,インジゴでは長軸方向にあり,QAとDPPでは逆に短軸方向にあることが判った.インジゴの長軸方向は光励起に伴う電子の移動が容易で空間的にも広く分布できることから,溶液状態では可視域に吸収バンドを示し青色を呈する.また,固体状態では遷移モーメント間の相互作用(“励起子結合効果”)が重要で,QAやDPPの結晶構造では典型的な“head-to-tail”型の配置が可能となるので大きな長波長化が期待できる.しかし,インジゴ分子はこのような配置をとらず,結晶化に伴う吸収バンドの長波長化が小さいことが明らかになった.
  • 高橋 徳明, 安藤 修, 横竹 一郎, 阿部 由紀, 西本 枝理奈
    2000 年39 巻2 号 p. 103-112
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/06/26
    ジャーナル フリー
    帯電制御剤(CCA),バインダーポリマーおよび着色剤を混練し,得られたフレークを粉砕分級することによりトナーは製造される.トナー製造工程の途中で得られる上記フレークの破断面を電子線で走査し,CCAの構造中にのみ含まれる元素(Cl,Zn)からの特性X線強度を測定する(EPMA)ことによりフレーク破断面におけるCCAの分散状態に関する知見が得られた.
     さらにEPMAにより得られたCCAの分散性データを画像処理することにより,フレーク中に分散されたCCAの体積平均等面積円径を求めたところ,トナーの非磁性一成分帯電量との間に相関が見られ,帯電量を最大にするCCA体積平均径が存在した.
     またXPS測定から,トナー表面のCCA密度はトナー全体のCCA密度より大きいことが判った.トナー粉砕時にCCAの部分で割れたためか,トナー粉砕時に微粉砕されたCCAがトナー表面に再付着したためと考えられる.
     EPMAとXPSがトナー中およびトナー表面におけるCCAの定量的解析に有効であることを示した.
Imaging Today
『ハードコピー機器における品質工学』
feedback
Top