臨床リウマチ
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誌説
総説
  • 竹内 勤
    2023 年 35 巻 4 号 p. 195-204
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

     新規の腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)阻害薬であるオゾラリズマブは,重鎖抗体の可変領域(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody: VHH)を利用したVHH抗体医薬であり,2022年9月に国内で関節リウマチを適応症として承認された.オゾラリズマブは抗ヒトTNFα-VHHと抗ヒト血清アルブミン-VHHからなる3価の二重特異性抗体であり,分子量は38kDaで従来のIgG抗体の約1/4である.このような低分子化と血清アルブミンとの結合能により,皮下投与後,速やかに体循環へ吸収され,炎症組織への効率的な分布が期待される.実際に,オゾラリズマブはコラーゲン誘導関節炎モデルマウスにて,IgG型のTNF阻害薬と比較して,速やかな循環血への移行および炎症を起こした関節組織への分布が確認された.また,メトトレキサート併用下にてオゾラリズマブ30mgを皮下投与した臨床試験では,投与3日目に臨床症状の改善が認められ,52週まで持続的な有効性が確認された.以上のことから,オゾラリズマブは臨床症状の速やかな改善が期待できる新しいタイプのTNF阻害薬であると考えられる.

特集 メトトレキサートを再考する
  • 鈴木 康夫
    2023 年 35 巻 4 号 p. 205-213
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

     葉酸拮抗薬であるメトトレキサート(MTX)が小児白血病に投与されたのは1948年であるが,1950年代に入ると,MTXの筋注投与の関節リウマチ(RA)や尋常性乾癬に対する有効性が示された.その後,12時間毎の間歇的パルス経口投与法の有効性が,多施設無作為化二重盲検試験で示されると,1988年に米国食品医薬品局にRA治療薬として承認された.

     本邦では1999年に,臨床試験の結果を受けて承認され,2011年には公知申請というかたちで,高用量,週16mgまでの使用,第1選択薬としての使用が可能になった.

     近年,長期服用の高齢RA患者の増加に伴い,感染症やリンパ増殖性疾患の増加が問題視されている.本稿では,抗リウマチ薬としてのMTXの開発の歴史を解説する.

  • 中島 亜矢子
    2023 年 35 巻 4 号 p. 214-220
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

     メトトレキサート(MTX)は,開発されてから70年を経ても,生物学的製剤やJAK阻害薬の時代においても,関節リウマチ診療において中心的役割を果たすアンカードラッグである.その理由は,MTXは疾患活動性抑制効果,関節破壊防止効果,心血管障害抑制効果,生命予後改善効果などを有するからである.MTXの基本的作用は,葉酸代謝拮抗作用,すなわち細胞増殖抑制作用である.細胞内でポリグルタメート化されたMTXは,アデノシンを介した抗炎症作用,接着因子や炎症性サイトカイン産生抑制作用,マトリックスメタロプロテイナーゼ抑制作用等,多岐にわたる機序を介して抗リウマチ作用を示す.一方,MTXは腎機能低下により容易に血中濃度が上昇し,骨髄抑制作用をきたす.ほかにもMTXに関連した副作用があるため,MTXの特性や作用機序を知って,適切にリウマチ治療に生かすことが望まれる.

  • 吉永 泰彦, 大橋 敬司, 相田 哲史, 西山 進, 田中 晃代, 松井 利浩
    2023 年 35 巻 4 号 p. 221-233
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

     欧米に遅れること10年,1999年MTXが関節リウマチ(RA)に適応承認された.市販後5年間の全例調査で134名の死亡が明らかになり,日本リウマチ学会は2011年RA治療におけるMTX診療ガイドラインを作成し,MTX投与前に禁忌・慎重投与スクリーニング検査を推奨した.RA診療ガイドライン2020の薬物治療アルゴリズムでも,MTXはRAの診断が付けば,禁忌事項の他,年齢,腎機能,肺合併症を考慮した上で,フェーズⅠで先ず選択される,RA治療の中心となる“アンカードラッグ”と位置付けられている.

     MTXの使用法の実際に関して,当科で行ったMTXの肝障害に対する葉酸投与法の検討,MTXの副作用に対するRA患者の理解度調査,MTXが使えない患者への対応,高齢RA患者に対するMTX投与の注意点など,既に我々が日本臨床リウマチ学会や学会誌「臨床リウマチ」に報告してきた内容を中心に概説し,さらに2022年わが国でもRA患者に承認されたMTX皮下注射製剤の使い方と好適患者像に関しても私見を述べた.

  • 猪熊 茂子, 大出 貴士, 津田 尚法, 増井 良則, 平賀 顕一, 狩野 俊和, 渡邊 荘
    2023 年 35 巻 4 号 p. 234-247
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

    目的・対象・方法)国内に80万例を数える関節リウマチには,疾患修飾性抗リウマチ薬が必須で,メトトレキサート(MTX)が60-70%に使用されている.その一有害事象のリンパ増殖性疾患(LPD)につき,Pubmed,J-STAGE,JADER,および自験例を検索し,知見を纏めた.

    結果・結論)代表的DMARD5剤の,2014~16のJADERの副作用報告例では,MTX以外(TAC,ADA,TCZ,ABT)で最多は感染性肺炎である一方,MTXではLPDであって,副作用報告の36.4%に及んだ.他4剤でのLPD報告73例でも,MTX併用は50例(68.5%)に及び,DMARDとして投与の場合,LPD発症の背景となるのは確実とされる.この報告後も,LPD掲載例は増加している.Bリンパ球,時にT,NK細胞へのEBVの感染(終生,再活性化あり)によるとされるが,全世界人口の90%が既感染であって,免疫不全,免疫回避の関与があって生じると考えられる.組織型は,diffuse large B-cell lymphomaが最多で半数以上,Hodgikin lymphomaが続き,節外が多い.高用量(>8mg/週),奏効,sIL-2R上昇,IgE上昇,末梢血リンパ球減少が指摘されている.中止後は退縮が多いが,再増悪もある.自然退縮しないB細胞系ではリツキシマブ加CHOPが採用される.チェックポイント阻害剤は今後注目される.MTX下のRA例では,節内外の変化に注意を要する.

  • 小池 竜司
    2023 年 35 巻 4 号 p. 248-255
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

     メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ治療に不可欠な薬剤であり,薬剤の特徴を十分に理解することはリウマチ医にとって重要なスキルである.特にRA患者は長期間にわたってMTXを服用していくことになるため,副作用のプロファイルや回避方法を理解することが特に重要である.日本におけるMTXの市販後調査では,現在も副作用に関する情報が収集されており,特に重要な副作用として血液・骨髄障害,間質性肺疾患,感染症,肝障害およびLPDを含めた悪性腫瘍が抽出されて解析されている.RA患者におけるMTX治療管理を行う上では,特にこれらの重要な副作用の特徴を理解し,リスク要因や発生早期のシグナルを意識していく必要がある.また,MTXの特殊な内服方法に関連する誤投与や過剰投与事例は継続して発生しており,RA診療に関わる多職種の情報共有やコミュニケーションも重視すべきである.

原著
  • 小池 達也, 小山 朋子, 興田 大地, 田中 美代, 尾崎 伸次, 神山 敦子
    2023 年 35 巻 4 号 p. 256-264
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

    目的:SARS(severe acute respiratory syndrome)-CoV2が2019年暮れに新規発生し,瞬く間に全世界へと感染が拡大した.未知の感染症に対して,驚くべき早さでmRNAワクチンが開発され,我が国においても国民に対して積極的に接種が推進された.しかし,関節リウマチ(RA)患者は免疫抑制系薬剤を使用していることも多く,ワクチンの効果のみならず,身体への悪影響や副反応への不安を抱いていた.この期待と不安を具体的に明らかにするために,RA患者のワクチン接種に対する意識調査を行うとともに有害事象発現に対するリスク因子の同定を試みた.

    対象と方法:白浜はまゆう病院に通院するRA患者のうち,調査に同意した479名に対して,2022.2.4-2022.5.31の間にアンケート調査を行うとともに身体計測値・疾患活動性・使用薬剤の調査を行った.局所および全身性の有害事象発現をエンドポイントとした 多変量ロジスティック解析も実施した.

    結果:年齢中央値71.2歳の集団において,90%近い患者が2回以上のワクチン接種を受けていた.投与部位反応としては疼痛が,全身反応としては倦怠感が最も多く,要因解析ではいずれも年齢が有意な有害事象発現抑制因子として抽出された.

    結論:RA患者は政府の指示に従って一般住民と同様のワクチン接種を受けており,有害事象発現に関しては,使用薬剤や疾患活動性は影響しておらず,年齢だけが有意な影響因子であった.

  • 青木 昭子, 小林 弘
    2023 年 35 巻 4 号 p. 265-271
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/04/09
    ジャーナル フリー

    【目的】近年,関節リウマチ(RA)患者の死因の第一位は悪性腫瘍となった.リウマチ科外来では治療開始時および治療中に定期的に採血や尿検査を実施しているが,それでも癌が進行した状態で見つかることがある.固形癌を合併したRA患者の臨床情報を解析し,発見の契機をまとめた.

    【対象・方法】単施設における後ろ向き観察研究.対象は2011年4月~2023年6月に当科を受診し,半年以上通院したRA患者のうち,RA診断後に固形癌と診断された41人(女33人;80%),48癌.癌診断時の年齢,癌の種類,癌発見の契機,RA罹病期間,癌診断時および診断後のRA治療についての情報を収集した.

    【結果】癌の発生臓器は乳腺,肺,大腸,子宮,胃,皮膚,前立腺,膵,その他の順であった.RA診断の平均年齢は54.1歳で,癌診断の平均年齢は67.5歳であり,癌診断までのRAの罹病期間は中央値で9.0年であった.癌発見の契機は乳癌では自己触知が最も多く,肺癌や大腸癌は外来や入院時の検査で発見されることが多かった.RA治療については,癌診断後にメトトレキサート(MTX)とTNF阻害薬が中止されることが多く,グルココルチコイド(GC)の使用率が増加していた.

    【結論】リウマチ外来の定期的な検査だけでは固形癌の早期発見が困難であることが明らかとなった.

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