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三歩一 孝, 角皆 潤, 中川 書子
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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202-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
リン酸は、脊椎動物の歯や骨を構成するバイオアパタイトの主成分である。生物体内に取り込まれたリン酸は、細胞内酵素(PPase)の作用によって体液H2Oと温度依存の酸素同位体交換平衡に達することが知られている。そのため、バイオアパタイト中リン酸の酸素同位体組成からその生物の体温が推定可能である。ただし、体液H2Oは、生物が生息する環境水と生体内反応によって大気O2から生成した代謝H2Oの混合物であるため、代謝H2Oの影響を評価・補正する必要がある。そこで本研究では、海棲爬虫類の歯化石に含まれるバイオアパタイト中リン酸の三酸素同位体組成(D’17OAP)定量し、同位体平衡リン酸のD’17Oと比較することで代謝H2Oの影響を評価した。その結果、海生爬虫類の体液H2Oは海水そのものである可能性が高いことが明らかになった。D’17OAPを指標に用いることで、いかなる仮定も必要としない高確度な体温推定が可能であると結論付けられた。
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井上 裕貴, 荒川 雅, 白井 厚太朗, 山本 順司
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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203-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
カルサイトのラマンスペクトルに観測される1086 cm-1と1065 cm-1ピークは,12C16O3, 12C16O16O18Oであると報告された。これらのピークを用いたカルサイトの酸素同位体比測定の精度の向上に伴い, 1075 cm-1付近にピークが存在することが確認され, 12C16O16O17O由来であると推察される。本研究では, 1075 cm-1のピークについて密度汎関数理論を用いてCO32-の対称伸縮振動の振動数の計算とピーク強度比から得られた酸素同位体比値を用いて同定した。その結果, 1075 cm-1のピークは12C16O16O17Oである結論された。
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吉元 史, 岡野 真理, 伊藤 正一
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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204-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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同位体は物質の化学的・物理的プロセスのトレーサーとして有用である.同位体イメージング手法には高ダイナミックレンジ,高感度,高精度に加えて,短時間計測が重要である.本研究では,MCP /FS /qCMOSによる高感度二次元検出システムを開発した.酸素同位体比が既知である試料を用いて誤差評価を行った結果,分析手法の最適化に成功した.
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金 範植, 上野 雄一郎
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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205-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
多環芳香族炭化水素(PAH)は、大気・環境化学における重要な研究対象である。PAHは超高熟成度ケロジェンの水素熱分解でも抽出でき、その安定同位体計測は有機地球化学的に有用な情報を与える。PAHの同位体計測には一般的に連続フロー型のGC-C-IRMSが用いられる。しかし、従来法を多重置換同位体分子計測や分子内同位体分布の高精度計測に応用・拡張するには限界がある。測定精度を向上するには標準試料との交互分析が必要だが、PAHはガス化が難しくDual Inletによる注入が適用できない。本研究では有機溶媒中のPAHをDual Syringeで注入し、ESIでイオン化、Orbitrap高質量分解能質量分析計で精密質量を見分ける高精度同位体分子計測法を新たに開発した。最適化した分析条件の下、和光製薬、Sigma-Aldrich二社試薬の交互分析を行い、アントラセンでδ13C = +1.2±0.7‰、δ13C13C = -1.1±0.9‰、フェナントレンでδ13C = -1.1±0.3‰、δ13C13C = +4.7±0.9‰、と同位体比に有意な差が見られた。各分析の試料量は14nmolと極微少量で高精度の分析が実現した。
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平田 岳史, 趙 馨雅, 韓 子欣, 鈴木 敏弘, 松岡 友樹, クー フィ−シン, 松川 岳久
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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206-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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LA-ICP-MSでは,金属元素の存在形態に関する情報が失われるため,元素の動態や生体内機能の解明が困難であるなどの問題があった.そこで本研究では,レーザーアブレーション法で生成した試料エアロゾルをソフトイオン源とハードイオン源を有する2基の質量分析計に導入することで,金属元素の存在形態分析と分布分析の同時イメージング分析を試みた.予察的な結果ではあるが,リンに関しては,リン脂質,ATP,ADP,AMP等の分布が可視化できた。白金製剤に関しては,白金製剤(シスプラチン)や,その加水分解物を区別した分布解析が可能となった.さらに、本イメージング手法を深さ方向に繰り返すことで、構成成分の3次元分布解析も可能となった。本講演では,微量成分の存在形態別イメージング分析やケンドリック解析等を用いた高質量分子分析への応用汎用性を議論する。
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Marsden Ruby, Martin Laure, Aleshin Matvei, Guagliardo Paul
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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207-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
Secondary ion mass spectrometry measurements of stable isotopes have been used in the geosciences since the 1980s. Underlying these stable isotopes results is the data reduction process used to calculate δ, and sometimes Δ values, from raw measurement data. This data reduction process, usually entailing a set of well-established corrections, is often carried out using excel spreadsheets, in-house programs or programs which do only partial corrections. CSIDRS is the first open-source software which performs all the following corrections: detector background, yield and dead-time corrections, a drift correction, and instrumental mass fractionation using a reference material as well as presenting the results in an easy to visualise manner. CSIDRS presents a series of quality check graphs of the final data as well as visualising raw cycle data. Additionally, CSIDRS uses Monte Carlo uncertainty propagation increasing the accuracy of uncertainty propagation and uses an updated method for the automatic removal of outliers in order to account for skew in the count data.<BR>CSIDRS is designed as an open-source program to be both used by the community and developed by the community.
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若木 重行, 岡田 文男, 南 雅代, 大谷 育恵, 高畠 考宗, 谷口 陽子
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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208-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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本研究では、考古遺物としての漆器の漆塗膜に対して、塗膜が漆とさまざまな無機物質との混合体であるという認識のもと、その漆成分を正確に分離・分解し、漆成分の正確なSr同位体分析を行うための分析手法を新たに構築した。また、分析で得られた同位体比の解析方法についても、先行研究における「日中の判別」における問題点を指摘するとともに、Sr同位体比の地球化学図を利用したより正確な「原産地推定」法を提唱する。発表では、本研究で新たに構築された手法の応用例として、オホーツク文化後期に相当する遺跡である北海道枝幸町の目梨泊遺跡より出土した金銅装直刀の外装の蒔絵に由来する漆塗膜資料の分析を紹介する。
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覚張 隆史
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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209-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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今日の考古学研究は、過去の人類の営みについて、様々な分析技術を適切に応用して復元することが一般化してきている。中でもライフサイエンスの先端技術をいち早く考古学に応用することで、今までには復元が困難であったヒトの起源・移動・混血などの生物学的背景をとらえることができる。本発表では、近年特に研究が加速しているパレオゲノミクスに関連した研究の現場について紹介する。
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加藤 湧也, 土屋 範芳, Mindaleva Diana, 松野 哲士
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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210-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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本研究では、鉱石鉱物と製品材料の微量元素および希土類元素(REE)パターンに対して機械学習による次元圧縮によって、含有量パターンの可視化と類型化を 行い、トレーサビリティ技術の開発を目指す。W, Co, Niを対象に、それぞれの鉱石鉱物と最終製品に含まれる微量元素ならびにREE含有量をLA-ICP-MSにより測定し、さまざまな機械学習による次元圧縮によって、含有量パターンの特徴を抽出した。ScheeliteとWolframiteの2つのタングステン鉱物のREEパターンは類似しており、明瞭な差異を見いだせないが、機械学習による次元圧縮(LASSO-UMAP法)によって、 2つの鉱物のREEパターンは区別される。一方、最終製品の微量元素は、機械学習を用いても優位な差異なくほぼ一定のクラスターを構成する。これは多様な採掘地の多様なREEパターンを示す鉱石鉱物が、最終的にはUMAP上の一定の位置に収斂することを示し、初生鉱石鉱物から最終製品へのUMAP上の軌跡は金属トレーサビリティとして応用できる可能性がある。
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小玉 泰聖, 薮田 ひかる, Vitale Suzy, 菅 大暉, 山下 翔平, 高橋 嘉夫, 為則 雄祐
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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211-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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走査型透過X線顕微鏡(STXM)と結像型X線顕微鏡(TXM)を相補的に利用し、Orgueil CI 炭素質コンドライト隕石の C, O, Fe, Mg-,X 線吸収端近傍構造(XANES)分析を行った。試料中のフランボイダル磁鉄鉱周辺と層状珪酸塩マトリックスとの間でC-XANESスペクトルに違いはなかったが、一部の磁鉄鉱粒子の外縁に存在する有機物は芳香族炭素に乏しくカルボキシル基に富み、磁鉄鉱表面で固体有機物の酸化分解が起こっている可能性が示唆される。また、試料中の有機物の芳香族炭素と芳香族ケトンの割合に正の相関が見られた。磁鉄鉱の割合が異なる2種の試料間で有機官能基組成に不均一性が見られた。STXMとTXMとで取得したXANESスペクトルを比較すると幾つかの相違点があり、TXM改良の余地はあるが、両手法の相補利用により試料中の物質分布の全容を把握できる可能性を示すことができた。
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西 蒼生, 眞塩 麻彩実, 黄 国宏, 長谷川 浩
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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212-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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原子番号45番であるロジウムは白金族元素(PGEs)の1つであり、高い触媒性能から自動車触媒としての需要が高い。しかし、自動車からの排気ガスによる粒子態ロジウムの環境中への蓄積が懸念されている。そのため、ロジウムの濃度分布の解明は重要である。PGEs分析には、前濃縮法として陰イオン交換樹脂を用いた固相抽出法がよく用いられている。定量には、同位体比を利用した同位体希釈法が使われるが、ロジウム は安定同位体を1つしか持たないため、同位体希釈法を適用できない。そのため、95%以上の回収率を必要とする検量線法での定量が求められるが、水圏環境中のロジウムに有効な前濃縮法は確立されていない。そこで本研究では溶媒条件の選定を行い、前濃縮法の確立を目指した。
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板野 敬太
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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213-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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二次イオン質量分析法(SIMS)において, 化学組成や結晶構造などが二次イオンの生成とその収率に影響を与えるマトリックス効果は分析確度の向上の障害となる. 鉱物やガラスの分析の場合は, 類似の化学組成を持つ標準試料を用いた経験則的な較正が有効である. しかし, 分析対象によっては単純な線型回帰や多項式回帰による推定が難しく, 外挿部分では推定の不確実性を十分に評価できないなどの問題が生じる.本研究はカンラン石Mg同位体比測定時の装置内同位体分別効果をガウス過程回帰により評価する. Mg同位体比が既知の17種のカンラン石標準試料において, FeO/MgO, CaO/MgOの2変数を訓練データとして用いて, カーネル関数には放射基底関数(RBF)を選択した. 先行研究でイオン化効率の指標として用いられる24Mg/28Si信号比を加えて学習させた予測モデルでは, 標準試料の組成空間においてO−ビームではR2=0.98, O2−ビームではR2=0.97と高い予測精度を達成した.
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横山 隆臣, 村野 孝訓, 山崎 陽生, 昆 慶明
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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214-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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軟X線自己吸収構造(SX-SAS)分析法は,軟X線発光分光器(SXES)を用いて異なる電子ビーム加速電圧下で測定された複数の特性X線スペクトルから自己吸収効果をスペクトル化し,吸収端近傍の構造を解析することで,X線吸収端近傍構造(XANES),及び電子エネルギー損失吸収端近傍構造(ELNES)に類似する化学結合状態分析を行う手法である.本研究では,SX-SASを地球惑星科学に有用な分析ツールとして活用すべく,鉱物試料中のFeの酸化数変化に伴う吸収端のシフトおよび構造の変化を観察した結果について報告する.
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仁木 創太, 宮嶋 佑典, 平田 岳史
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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炭酸塩は生体鉱物、鍾乳石、断層の鉱物脈などといった形態で産し、その年代情報は古環境や構造運動履歴の復元など地球史の解読に重要な知見を提供する。炭酸塩試料の正確な年代測定には、内部組織を区別した局所同位体比測定が必要である。また固体試料の溶液化を経ない直接的な測定により、分析スループットの向上を図ることもできる。これらの特徴を満たすことができる分析法として、レーザーアブレーションICP質量分析法 (LA-ICP-MS) がある。 本研究では、若い炭酸塩試料に対するLA-ICP-MSを用いたウラン-トリウム放射非平衡年代測定の実施に向けて、大容量のルーツポンプを用いてICP-MSのインターフェイス部における真空度を改善し、さらなる高感度化を図ったLA-ICP-MSを用いて炭酸塩試料に含まれる230Thの検出を試みた。
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金子 沙椰, 島田 愛斗, 高橋 真里花, 山本 伸次, 大野 剛, 深海 雄介
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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地球が誕生した46億年前から40億年前までの期間を冥王代と呼び、この期間に大気や海洋が誕生し、大陸の形成が始まったとされている。しかし、現在見つかっている地球最古の岩石は40億年前のアカスタ片麻岩であるため、大気や海洋の起源について地球物質からアプローチするのは難しい。そこで、風化・変成作用に強いジルコンという鉱物については冥王代の年代を示す試料が見つかっているため、これらを調べることが冥王代を物質学的に研究する上で重要となる。地球の起源物質について様々な元素の同位体より議論されており、冥王代ジルコンの同位体を調べることで冥王代の環境変動を議論できると考えている。本研究では、冥王代ジルコンが多く含むとされているオーストラリアのJack Hills角礫岩を用いて200 ㎛以上の鉱物からLA-ICP-MS/MSより冥王代ジルコンの探索を行い、特徴を調査した。
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柴 裕太朗, 上田 修裕, 深海 雄介, 大野 剛
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
海洋環境中の236U、233Uは人為起源の放射性核種として知られている。236Uは大気圏内核兵器実験だけでなく、原子力発電所における235U(n,γ)236U反応によって恒常的に生成される。一方、233Uは大気圏内核兵器実験による235U(n,3n)233U反応のみであるため、近年、233Uを用いた233U/236Uが海洋環境中の人為的発生源を解明する有用な指標として注目されている。本研究では迅速分析が可能なICP-MS/MSを用いた海水及び海藻中の人為起源U同位体比測定を試みた。2022年に小笠原諸島で採取された海水、2023年に千葉県、三重県、浙江省で採取された乾燥ヒジキを測定したところ、236U/238Uは10-9レベルの値であり、それぞれの地点で採取されたヒジキは誤差範囲内で一致した。これらの同位体比より、ヒジキは海水中のUを有意に取り込んでいると判明した。海藻は海水よりも238U濃度が約100倍高いため、海洋トレーサーとして用いられるU同位体比を調べるための新たな環境試料として期待できる。また、ヒジキ中の233U/238U(×10-11レベル)の測定に成功した。
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福山 繭子, Tichomirowa Marion, Käßner Alexandra, Ogasawara Masatsugu
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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218-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
ジルコンU-Pb年代測定用のジルコン標準物質は、91500といった単粒子標準試料とPlesoviceのようにマルチグレインの標準試料がある。年代測定では、一次標準試料として91500、二次標準試料としてマルチグレインの標準試料を用いることが一般的である。二次標準試料では、未知試料に合わせた標準試料を用いることが望ましい。ジルコンは比較的多くの標準物質があるものの、白亜紀に適用できる二次標準物質がない現状がある。白亜紀は日本列島とアジア大陸東縁部の火成活動を議論する上で重要な時期にあたり、適切な二次標準物質があることが望ましい。 そこで、本研究では、過去白亜紀二次標準物質の候補として挙げられたことのある沢入花崗閃緑岩からジルコンを分離し、ジルコンの特徴を明らかにし、LA-ICP-MSとCA-ID-TIMSでU-Pb年代測定を行なった。その結果、LA-ICP-MSによる206Pb/238U年代は93.92 ± 0.62 Ma 、CA-ID-TIMSの206Pb/238U年代は94.15 ± 0.06 Maと得られた。SoriZジルコンは後期白亜紀の二次標準物質としての利用が可能である。
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森本 貴裕, 谷水 雅治
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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生体内や環境中のヒ素(As)、セレン(Se)濃度の監視は、その潜在的毒性から重要といえる。誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)はこの用途で最も優れた手法のひとつだが、75As+に対する40Ar35Cl+, 150Sm++や、80Se+に対する40Ar2+, 160Gd++などの干渉が問題となる。これを回避すべく、最新のトリプル四重極ICP-MS(ICP-MS/MS)を用いたO2あるいはO2/H2混合ガスリアクションモードによる16Oマスシフト法が提案されている。しかし本手法では、反応セル内でSmO2++やGdO2++などの新たな干渉イオン(REEO2++)を副次的に生成する可能性がある。そこで本研究では、干渉影響の最小化を目的とし、REEO2++干渉生成率と装置条件の関係を系統的に調査した。その結果、As, Seの同位体全てにREEO2++が干渉しうることが確認された。またREEO2++生成率はH2流量と概ね正の相関関係にあり、その生成経路へのH2の関与が示唆された。一方で、H2の存在はAsO+, SeO+生成率を増加させるため、As, Se感度を優先してH2流量を決定した場合、重大な干渉を生じる可能性がある。
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中野 有紗, 深井 稜汰, 人見 勇矢, 西村 征洋
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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JAXA地球外試料キュレーションセンターの運用するCRでは、ステンレス製CC内の大気圧高純度窒素環境にて帰還試料の保管管理・記載作業をおこなっている。従来実施してきた外部企業への委託分析に代わりキュレーションセンター内で環境モニタリングを実施するため分析機器の導入と整備を進めてきた。本講演では現在の環境モニタリング実施状況と、Bennu試料受け入れに向けて新設されたCRおよびCCの環境モニタリング結果を報告する。インピンジャー捕集法およびシャーレを用いた表面堆積粒子の捕集をおこない、定量分析にはトリプル四重極型ICP-MS (Agilent 8900) を用いた。CRの雰囲気からBなどの元素が、CRの表面堆積粒子からはCuおよびNiといった、従来のCR環境モニタリングと同様の元素が検出されている。今後はGEDを用いCC内の浮遊微粒子の分析をおこなう予定である。
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玉手 茉凜, 伊地知 雄太, 深海 雄介, 大野 剛
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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生体内金属元素の安定同位体存在比は生体内や動物間で変動することが知られている。しかし、生体内金属元素の各同位体が生体でどのように作用し、どのような影響を与えるかについては不明な点が多い。本では研究では、ミドリムシの培養速度と生体内Mg同位体分別の関係性を調べるとともに、分光光度計を用いた葉緑体濃度とMg同位体分別の関係性も明らかにする。また、従来法より高精度なMg同位体比測定法を開発し、磁気同位体効果の有無を調べる予定である。
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下森 陽道, 石津 恵吾, 石野 咲子, 飯塚 芳徳, Savarino Joel, 服部 祥平
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
フリー
対流圏オゾン(O3)は、光化学スモッグや温室効果ガスとして働くため大気環境の管理において重要な削減対象となっている。今後のO3の削減策を設定・評価する上で、産業革命前から現在までのO3増加量と変動要因を把握することが重要である。しかしO3の観測データは1957年以降しかないことに加え、反応性が高くアイスコアなどの古環境試料には保存されないため、過去の変遷を直接定量することはできず、なんらかの代替指標が必要である。そのような代替指標の一案として、本研究ではアイスコア中の過酸化水素(H2O2)の三酸素同位体組成(Δ17O = δ17O-0.52×δ18O)に注目し、アイスコアにも適用可能な少ない試料量でのΔ17O(H2O2)値の分析手法の開発に取り組んだ。
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服部 祥平, Hong Yihang
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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海洋プランクトンが排出する硫化ジメチルは、硫黄を含む大気エアロゾルの主要な供給源の一つであり、DMSから生成されるメタンスルホン酸は、海洋生物活動と大気エアロゾルの関連を追跡する有効な指標である。本研究では、MSAの三酸素同位体組成の分析により、DMSの大気中の酸化反応を追跡する手法の開発した。
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横山 立憲, 鏡味 沙耶, 丹羽 正和, 三澤 啓司, 可児 智美, 米田 成一
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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224-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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繰り返し生じうる断層活動の履歴を解読し、さらに、最新の活動時期を制約する上では、いくつかの年代学的手法を利用することが最も効果的と考えられる。これまでに断層の活動性評価に対しては、放射年代測定として40K-40Ar法による年代測定が広く利用されてきた。本研究では、断層活動年代を制約する年代測定法として、断層試料中に含まれる自生イライトに新しい40K-40Ca法を適用する。本手法により得られる40K-40Ca年代と40K-40Ar年代との年代値の比較により、断層運動の規模と熱履歴への制約が期待される。イライト40K-40Ca年代測定の試験試料として米国ウェストバージニア州のシルル系のRochester shaleを用いた。さらに、自生イライトを模した細粒フラクションについて、表面電離型質量分析装置を用いて予察的にCa同位体分析を行ったところ、同時に測定した標準物質NIST SRM 915aの40Ca/44Ca比を基準として+6-9 epsilon-unitsに及ぶ放射壊変起源の40Caが検出された。今後は、同位体希釈法によるカリウム及びカルシウムの定量を実施し、Rochester shaleの40K-40Ca年代を取得する。また、モデル年代の算出に必要な初生Ca同位体比の仮定では、断層帯で自生イライトと共沈しうるカルサイトの同位体組成を用いるなど検討し、断層運動を制約する新たな年代学的アプローチとして本手法の確立を目指す。
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遠山 知亜紀
専門分野: G9 地球化学の最先端計測法の開発と挑戦
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225-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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ハロゲンは揮発性・液相濃集性が高く、その性質から地球表層のリザーバー(海水・海底堆積物・地殻)に高濃度で存在している。一方で、ハロゲンの中でもフッ素はメルトに強く分配され、またヨウ素は有機物中に高濃度に含まれるなど挙動の違いから、地球における各リザーバーで特徴的なハロゲン元素比を示す。これらの点から、ハロゲンは地球表層とマントル間での物質循環(特に沈み込み帯の水)のトレーサーとして期待されている。一方で、火成岩中のハロゲン濃度(特に臭素とヨウ素)は数十ppb程度と低く分析が難しいため、各国の地質調査所の配布する標準物質でさえハロゲン濃度は十分に揃っていない。そこで本研究では、標準物質のハロゲンデータセットの構築を目的とし、GSJ地球化学標準物質のハロゲン元素濃度の分析とその均質性の評価を行った。
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南 雅代, Wang Zhenzhen, Abudushalamu Aili, 丸山 一平
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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226-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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セメントと水が反応してできるものはセメントペーストと呼ばれ、カルシウムシリケート水和物を主成分とし、コンクリートの結合剤の役割を果たしている。セメントの主成分のCaOは、CaCO3の分解から得られており、この時にCO2が発生する。一方、コンクリートは大気中のCO2と反応して炭酸カルシウムが生成する(炭酸化反応)。このことを利用し、コンクリート関連分野では、大気中のCO2を無機炭酸塩の形でセメント系材料に固定化し、カーボンニュートラルの達成を目指している。Wang et al. (2023)は、セメントペーストを空気中に暴露し、その前後のペースト中の放射性炭素(14C)濃度を求めることによって、大気CO2を固定した量が評価できることを明らかにした。この評価方法を今後、実際のコンクリートに適用するためには、コンクリート全体の14C初期値が明らかになっている必要がある。そこで、本研究では、コンクリートに含まれるセメント、骨材、混和剤などの原材料の14C測定を行ったので、その結果を報告する。
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寺門 寛, 鈴村 明政, 浅沼 尚, 瀬戸 陽一, 鈴木 大智, 宮原 一, 薄 光憲, 加藤 慶樹, 石村 豊穂
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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227-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
会議録・要旨集
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スルメイカの平衡石は,個体が経験した水温を酸素安定同位体比(δ18O)として時系列で記録する.この特性を活用すると,平衡石δ18O履歴をもとに温度勾配が大きい南北の回遊履歴を復元することはできるものの,等水温帯は東西に広く分布するために東西の回遊海域識別は難しい.一方,海水中の微量元素組成は海域毎に濃度が異なる場合があるため,東西方向の回遊海域識別指標を構築できる可能性がある.本研究では,日本海及び太平洋で生育したと考えられる小型スルメイカの平衡石のδ18O履歴と微量元素組成の複合解析による回遊海域識別指標構築の検討を行った.δ18O履歴からは日本海・太平洋で明確な違いは見いだせなかったものの,Ba濃度は日本海側個体の方が太平洋側個体よりも高い傾向が示され,先行研究での海水Ba濃度とも整合性があった。以上の結果から,δ18O履歴と微量元素濃度との複合分析によって,スルメイカの回遊海域識別指標の高精度化が期待される.
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豊田 和弘
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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228-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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環境中の希土類元素パターンの中でランタン(La)の異常についてはその原因などについて不明な点が多い。本研究では札幌市の下水汚泥とその焼却灰中の希土類元素パターンを分析した。札幌市の2ヶ所の汚泥焼却場から採取した焼却灰と脱水汚泥サンプルを分別逐次抽出と分解を行い、希土類元素を測定した。その結果、残渣中にはLaの異常はないが、他の成分には顕著なLaの正の異常が見られた。汚泥焼却灰の希土類元素濃度は脱水汚泥に比べて一桁高く、最初の酢酸抽出液の希土類元素濃度はクエン酸や塩酸の抽出液よりも一桁低かった。残渣にLa異常が見られないことから、La含有ゼオライトに起因する可能性は否定された。このLaの異常は、腎不全や透析患者に投与されるリン酸結合剤である炭酸ランタン錠剤(ホスレノールなど)に起因すると結論付けた。また、この研究は、炭酸ランタンの使用が自然の希土類元素パターンを乱す可能性を示唆している。
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宮嶋 佑典, 片山 泰樹, 荒岡 大輔
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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229-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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エネルギーに乏しい海底下深部堆積物では、生体必須な重金属が微生物活動の重要な活動因子の1つである可能性がある。本研究は、海底下微生物による重金属の生体利用を検証するため、メタン生成菌の活動に必須なニッケル(Ni)に着目し、メタン生成菌によるNi同位体分別を培養試験で調べた。実験室での培養条件と実際の海底下環境の違いを考慮し、モデルメタン生成菌Methanosarcina barkeriを1)メタン生成経路、2)培地中Ni濃度、3)生育速度(温度)を変えた複数条件で培養し、培養前後の培地および培養後の菌体のNi同位体比を測定した。
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長谷川 卓
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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230-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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炭素数40のアルケノンは白亜系からも知られているが,2不飽和分子と3不飽和分子の同時検出は例がなかった.講演者らは白亜系約94Maから初めてそれらを連続検出し海洋無酸素事変2の有機炭素埋没に伴う寒冷化を議論した.地質試料では生産時は全てZの不飽和部位のうち1つがEになった異性体が存在することがあり,GC上で2不飽和分子の異性体が3不飽和分子に重複し,含有量評価や認識そのものさえ困難だが,中極性カラム適用で解決できることが判った.またGCMSを用いる微量分析の有用性が浮上した. SIMモード分析では従来検出できなかった微量アルケノンを検出でき,白亜紀サントニアン,暁新世からの世界初検出を含む成果を得た.今後化学イオン化やGCMSMSを用いて試行錯誤を進め定量化法を構築したい.従来の1/100で分析可能になればアルケノン古水温計の応用範囲は飛躍的に高まり,古海洋科学に革命をもたらす可能性がある.
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荒岡 大輔, 板野 敬太, Simandl George, Paradis Suzanne, 吉村 寿紘
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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231-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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需要が急増しているレアアースは主にカーボナタイトに伴う鉱床から、市場価格が上昇している亜鉛および鉛は主にミシシッピバレー型の鉱床から供給されている。これらの鉱床タイプでは脈石鉱物の組み合わせが類似しており、潜頭性鉱床も多いため、限られた露頭試料やボーリングコアから鉱床タイプを判別したり、鉱化の徴候を検出するような新しい手法が求められている。そこで本研究では、2つの鉱床タイプに共通する主要な脈石鉱物であるドロマイトに着目し、その微量元素組成およびマグネシウム同位体比から、これらの鉱床タイプが区別できるかを検証した。特に、鉱床から産出したドロマイト中の全ての元素・同位体比組成を説明変数として用いて、部分的最小二乗回帰と判別分析を実施することで、ドロマイトの化学組成から鉱床タイプの正確な判別が可能か、さらにどの化学組成が鉱床タイプの判別に有効となるかを定量的に評価した。
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沢田 輝
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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232-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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アクセサリー鉱物は岩石種の定義に関与しない鉱物を指し、通常は岩石中に微小かつ微量に含まれる。アクセサリー鉱物は微量成分キャリアとして母岩が形成から進化の間に経験した地質環境の情報を記録しうるほか、放射性元素キャリアとして年代測定可能なものもしばしばある。本発表では、近年理解の進みつつある超苦鉄質岩中ジルコンを例に挙げる。超苦鉄質岩中ジルコンには火成起源のもの以外に、変成・変質作用によって晶出したもの、機械的混合で取り込まれたもの、それらがさらに超苦鉄質岩中で変成・変質したものなど、多様な起源を持つことが分かってきた。このため、超苦鉄質岩中ジルコンの分析を通じて単なる火成作用だけでなく地殻マントル間の化学的相互作用を解読できるとも言える。多様な起源をもつアクセサリー鉱物の分析から地質体の進化史を解読する場合、境界部や脈部などの不均質性に積極的に注目する必要が生じ、可能な限り母岩に着いた状態でアクセサリー鉱物の分析を行うのが望ましい。従来の薄片観察だけでなく、マイクロXRFなど迅速かつ大面積の元素イメージングの活用により効率的なアクセサリー鉱物の探索が重要になるであろう。
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Daneshvar Narges, 南 雅代, Azizi Hossein, 淺原 良浩, 壷井 基裕, Mohammad Yosif
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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233-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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Here we focus on the Ebrahim-Attar beryl-bearing granitic pegmatite in NW Iran. The granitic pegmatite is highly peraluminous and contains small prismatic beryl crystals. Pale green to white beryl minerals are crystallized in the rim and central parts of the granitic body. In order to reveal the source and genesis of the beryl minerals, we carried out the chemical and Sr isotopic analyses of the beryl minerals. The result of beryl geochemistry indicates low contents of alkali oxides (Na2O = 0.24-0.41 wt.%, K2O = 0.05-0.17 wt.%, Li2O = 0.03-0.04 wt.%, and Cs2O = 0.01-0.03 wt.%) and high value of Be2O (10.0 to 11.9 wt.%). The REE abundances are low (total REE= 1.21 to 5.41 ppm). The beryl chemical formula was calculated based on 18O, as ch(Na0.054,K0.014,Cs0.001)T2(Be2.412,Li0.013)2.412O(Al2.145,Fe0.04,Mn0.0004,Mg0.003)2.188T1Si6.372O18. The low ratio of Na/Li (apfu) (2.94 to 5.75) and the high variation of FeO (0.28-1.18 wt.%) suggest that the beryl minerals originated from the less evolved granites. The high 87Sr/86Sr(i) ratios (0.739 ±0.036) for the beryl grains indicate that partial melting of the upper continental crust (UCC) is the source of the magma and sufficiently support.
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若山 知真, 折橋 裕二, 淺原 良浩, 佐々木 実, 新正 裕尚, 大澤 崇人
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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234-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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岩木山は青森県西部に位置する活火山で,東北日本弧第四紀火山の帯状配列において森吉火山列に属する(中川ほか, 1986).その活動史は噴出年代と活動様式の違いにより0.35~0.2 Maの第1期,0.2~0.03 Maの第2期,0.03 Ma~現在の第3期に分けられる (佐々木ほか, 1996).第1期および第2期の火山噴出物と第3期の火山噴出物との間には主要元素のTiO2やP2O5の組成に顕著な違いが見られ,また,第3期の組成変化は苦鉄質と珪長質マグマの混合であることが指摘されている(佐々木, 2015; 佐々木ほか, 2009).一方,マグマ成因の詳細な考察には,現在報告されている主要元素や放射年代のデータ以外にも微量元素および同位体のデータが必要である。本研究では,佐々木ほか (1996)においてK-Ar年代値が報告されている火山岩試料を中心に,岩木山の3つの活動期から得た計17試料に対し,主要元素およびホウ素を含む微量元素組成とSr・Nd同位体組成(87Sr/86Sr,143Nd/144Nd)の分析を行い,岩木山の活動ステージを通したマグマ成因とその変遷史について考察を行った.
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水上 知行
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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235-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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上部マントルのレオロジーを支配するかんらん石の変形特性は、温度、圧力、差応力、含水量、微細構造により変化する4つのメカニズムで記述される。中でも粒界すべり(GBS)クリープは沈み込み境界のような低温かつ高差応力条件で優勢となり、粒径に応じて変形強度を変化させる性質を持つ。発表では、天然の含水かんらん岩の解析に基づいて、様々な動的再結晶過程がかんらん石の細粒化を引き起こし、変形メカニズムが粒径非依存型から粒径依存型へ遷移し、競合した実態を紹介する。歪みエネルギーによる動的再結晶による弱化と粒成長による硬化を引き起こす条件では、非定常的な挙動が本質かもしれない。その支配要因となる新粒子形成メカニズムを速度論的に記述する実験研究や、天然での複合的産状の解析は、マントルウェッジ先端部の歪み解消過程の理解に重要であろう。
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森田 旭, 薮田 ひかる, 網本 智子, 松尾 光一
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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236-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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生命起源に至る前生物的化学進化において、ヒドロキシ酸とアミノ酸とが加熱重合したデプシペプチドが重要な役割を担った可能性が新たに提案されている。本研究では、アミノ酸(アラニン、ロイシン)の光学異性体比を変化させた条件で、デプシペプチドの前生物的合成を行い、その立体構造と化学組成を高分解能質量分析装置と真空紫外円二色性分散計で測定した。その結果、最大5量体までのデプシペプチド約30種を同定した。アミノ酸の光学異性体比を変化させてもデプシペプチドの相対分布に違いは見られなかった。しかし、アミノ酸の光学異性体が同じ組み合わせからは、末端にヒドロキシ基を含みペプチド結合のみを含むデプシペプチドが多く、アミノ酸の光学異性体が異なる組み合わせからは、末端にアミノ基を含みエステル結合とペプチド結合を含むデプシペプチドが多いという相違点が明らかとなった。
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垣内田 滉, 南 雅代, 高橋 浩
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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237-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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天然水試料に含まれる溶存無機炭素(DIC)の炭素同位体比(δ13C、14C濃度)は、採取後の保存中に微生物によって変化するので、天然水試料には殺菌処理が必要である。安全で扱いやすい殺菌剤として塩化ベンザルコニウム(BAC)が利用できる可能性を筆者らは評価してきたが、BACは海水では効果が小さくなることが報告されている。本研究では、海水でBACの殺菌効果が低下する理由を明らかにするため、名古屋市藤前干潟で採取した海水と茨城県つくば市で採取した地下水を用いて水試料の塩濃度とBAC添加量による殺菌効果の違いを評価し、水試料でBACが作用する過程や相互の影響について考察したので、これを報告する。
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吉田 健太, 石橋 秀巳, 奥村 聡
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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238-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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マグマの酸素雰囲気はメルトや鉱物の化学組成を支配する重要な要素の一つであり,火山ガラス中の鉄の価数比を用いて制約することが出来る.高エネルギー加速器研究機構のBL-4Aで利用できるμ-XANESを用いることで,数μmの空間分解能で鉄の価数比を決定することが可能だが,微小なメルト包有物の分析の場合,表面露出の包有物を分析していても奥行き方向に存在する母相由来の信号を検出する場合がしばしばある.この問題を解決するため,本研究では集束イオンビーム(FIB)を用いて,分析対象領域を予め微小切片として切り出しての分析法を検討した.福徳岡ノ場軽石から3-5μm厚の切片を切り出してCuのホルダーに取り付けてXANES分析を行ったところ,鉄の価数比は既報の値とよく一致しており,イオンビーム加工の火山ガラスへのダメージは無視できるものと考えられる.
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田村 明弘, 水上 知行, 海野 進, 進論 学生, 森下 知晃
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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能登半島西部,門前町剱地のトトロ岩周辺から北方の藤浜までの海岸及び内陸部には,玄武岩,両輝石安山岩,デイサイト,トラカイト質安山岩(粗面岩),流紋岩が分布する.流紋岩には月長石が認められ,化学組成,年代ともに加賀地域の月長石流紋岩と同様である.ここでは,火山岩の全岩主要・微量元素組成をもとに,29 Maの玄武岩から22 Maの流紋岩までのマグマの成因を検討した.これらのマグマの進化における中部・下部地殻物質の寄与とその改変を解明することで,能登半島地震の震源域における岩石学的な重要な情報を与える.
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Daneshvar Narges, Azizi Hossein, 壷井 基裕, 南 雅代, 淺原 良浩
専門分野: G10 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
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240-
発行日: 2024年
公開日: 2024/11/30
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Indirect estimation of magma crystallization temperature is a challenging subject in geological studies. One of the most useful thermometric methods using whole-rock geochemistry is zircon saturation thermometry (TZr). TZr depends on the concentration of Zr in the felsic melts, as introduced by Watson and Harrison (1983) (WandH83) [1]. The WandH83 TZr formula was revised by Boehnke et al. (2013) (B13) [2] and used for rich aluminous magma. TZr was revised and updated by Gervasoni et al. (2016) [3] for the calculation of intermediate to felsic alkaline melts above 800°C, which we refer to as the G16 equation. High field strength elements (HFSE) such as Th, U, Zr, Ti, Nb, Ta, and Hf are immobile during the various types of geological processes and play an essential role in geochemical discussions. Here, we investigated the relationship between HFSE abundances in different types of igneous rocks and magma crystallization temperatures, using a wide range of whole rock compositions from http://georoc.mpch-mainz.gwdg.de/georoc/. We propose two new equations to estimate the magma crystallization temperature based on the concentration of HFSEs in the different magma types. The first equat
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