日本地球化学会年会要旨集
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G5 古気候・古環境解析
  • 三宅 芙沙
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 101-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    地球に降り注ぐ宇宙線は、大気原子核と核反応を起こし、様々な種類の宇宙線生成核種を生成する。宇宙線生成核種の中で14C、10Be、36Clはその寿命が、5730年、1.4 × 10^6 年、3×10^5 年程度と長く、年輪や氷床コアといった天然アーカイブ試料に保存された宇宙線生成核種濃度を調べることで、過去の宇宙線変動が推定されている。これらの宇宙線生成核種は、通常は太陽系の外に起源をもつ銀河宇宙線によって生成されるが、太陽の突発的な太陽面爆発現象(太陽フレア、コロナ質量放出)によって放出される太陽高エネルギー粒子(Solar Energetic Partcle:SEP)もその生成に寄与している。したがって、過去に極めて規模の大きい極端SEPイベントが生じていた場合、 宇宙線生成核種濃度の急増(スパイク)として記録される。これまでに、樹木の14Cや氷床コアの10Be、36Clの高時間分解能の分析から、極端SEPイベントによって生じたと考えられる宇宙線生成核種スパイクが複数報告されている(e.g., 774年、993年、紀元前660年、紀元前7176年など)。核種増加量から、元のSEPイベントの規模は、過去約70年間の現代観測で検知されている最大のSEPイベント(1956年)の数十倍と見積もられている。このような極端太陽イベントが、仮に今日生じると、現代社会に対して、人工衛星の故障や通信障害といった宇宙天気に関する甚大な影響があると考えられている。将来生じる恐れのある極端太陽イベントのリスク評価を行うためには、宇宙線生成核種データから過去に生じた極端太陽イベントの発生頻度など発生特性を調査することが重要である。また、宇宙線生成核種スパイクは、過去の太陽活動の調査だけではなく、タイムマーカーとして超高精度な年代測定「スパイクマッチング」に適用することが可能であり、近年、年代測定分野への応用が進んでいる。このような背景から、樹木の14Cや氷床コアの10Be、36Clの高時間分解能データ取得が近年大幅に進展している。本講演では、宇宙線生成核種を用いた過去のSEPイベントの最新の探索状況について紹介する。

  • 藤見 唯衣, 堀川 恵司, 池原 実, 岡崎 裕典, 久保田 好美, 小林 英貴
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 102-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    海洋堆積物コア中の浮遊性有孔虫殻Mg/Ca比を有孔虫個別個体分析(Individual Foraminifera Analysis:IFA)を用いて分析し、過去に発生した黒潮大蛇行の発生頻度解析を行う。非大蛇行時と大蛇行時で水温差が生じる東海沖で採集されたコア試料を対象とした。IFAは、1層準から約100個体の浮遊性有孔虫を拾い出し、1個体ずつMg/Ca比水温を分析する手法である。100個体の水温から、およそ100年程度の堆積期間中に記録された水温の頻度分布を復元し、2峰性をもつ水温分布の高水温側の分布特性から大蛇行の発生頻度を解析する。

  • 木田 福香, 落合 伸也, 渡邊 隆広, 松中 哲也, 橋野 虎太郎, 山崎 慎一, 山岸 裕幸, 土屋 範芳, 奈良 郁子
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 103-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    海水中の臭素(Br)濃度は、河川や淡水中と比べ相対的に高く、過去の海水準変動等を解明する上で重要な指標である。本研究では、蛍光エックス線分析装置を用いて、石川県小松市の木場潟から採取した堆積物試料(コア長: 444 cm)のBr等の分析を行った。堆積物深度約300-260 cmでBr濃度が約5 mg/kgから15 mg/kgまで急激に増加した。深度約300-260 cmの較正年代は約7,300 cal BPでありBr濃度の増加時期はこれまでに報告されている海進時期と一致した。

  • 植村 立, Azharuddin Syed, 大嶺 佳菜子, 眞坂 昴佑, 浅海 竜司, Lone Mahjoor, Chou Yu-Che ...
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 104-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    完新世において気候の外部強制力(火山活動・太陽活動)が数十年スケールの気候変動に及ぼした影響については不明な点が多い.本研究では,亜熱帯北西太平洋地域における外部強制力に対する気候応答を明らかにするために,沖縄の鍾乳石の流体包有物の同位体比測定と解析を行った.石筍の流体包有物同位体比から復元した気温変動は大西洋数十年規模振動(AMO)と類似した66年周期があった.平均的には,この数十年スケールの気温変動は,大規模噴火と同調しており,主要な噴火イベントの後に数十年間にわたって気温が低下するパターンを示した.また,石筍から復元した気温は,グリーンランドの気温変動と有意な相関があった.これらの結果は,現代気候と同様にAMOを介して北大西洋と西部太平洋地域との間にテレコネクションが存在したことを示唆している.

  • 佐野 貴司, 石本 光憲, 佐藤 峰南, 石川 晃
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 105-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    我々はアメリカ合衆国のコロラド州とノースダコタ州の6地点の陸成層から採取したK-Pg層を対象として研究を行っている。本研究では、この中で、Pyramid Butte (PB)と名付けられたノースダコタ州の地層を主な対象とした。この地点のK-Pg層は球晶を含む厚さ約5 cmの泥炭層であり、これよりも下位には総厚が約1 mの泥炭層、上位には総厚が約1 mのシルト層が堆積している。シルト層は泥炭層に比べてSiO2、Sc, Ce, Nd, Th等の濃度が有意に高いことが確認された。K-Pg層でのIrスパイク(>>1ppb)は確認できなかったが、Niについては、下位5-10 cm部分で有意に高い定量値が得られた。また、Crについては、K-Pg層とこれよりも上位10 cm程度までは、他の地層に比べて高い値が得られた。

  • 藤枝 菜央, 丸岡 照幸, 西尾 嘉朗
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 106-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    白亜紀末の大量絶滅を引き起こした巨大隕石衝突後の環境変動として何がどの程度で起きたのか現在でも明確になっていない。予想されている環境変動のいくつかは海洋における硫酸硫黄濃度やその同位体組成に影響を与えるため、K-Pg境界層の硫黄同位体組成をもとに隕石衝突直後に起きた環境変動に関して制約を加えることができる。デンマーク・Stevns Klintに露出する石灰岩試料の炭酸塩置換態硫酸、パイライトの硫黄同位体比をもとに巨大隕石衝突後の環境変動を議論する。

  • 冬月 世馬, Tran Thi Ngoc Trieu
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 107-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    本研究ではは非還元条件下でのアイソトピック分画を研究するための光化学モデルを構築した。

  • TRAN THI NGOC TRIEU, FUYUTSUKI SEBA
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 108-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    Formaldehyde (HCHO) was a significant precursor for forming atmospheric organic molecules in the early Earth. And HCHO could have been produced by photochemical reactions[1]. Besides, the atmosphere in the Archean era was weakly reducing with less sunlight intensity than the present atmosphere. To understand the evolution of our Earth, in this study, we investigated the atmospheric formation of HCHO in the Archean using a 1D photochemical model. The model named PATMO[2] consists of 56 chemical species and 412 chemical reactions which simulated the atmosphere from surface to 100 km in 100 years. This model considered the attenuation of sunlight and the photodissociation reaction rate over time which helps estimate the photochemical HCHO concentration in the Archean. The results show that photochemical HCHO in Archean atmosphere ranging from 0.0002 to 0.017 ppm. The maximum HCHO concentration occurred at an altitude of 61 km corresponding to the maximum level of H2O in the Archean atmosphere.

  • 梶田 展人, 関 宰, 山本 正伸, 大河内 直彦, 岡田 誠, 羽田 裕貴, 菅沼 悠介
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 109-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    地磁気逆転時には、地球に入射する高エネルギー粒子(銀河宇宙線)が大幅に増加する。銀河宇宙線は、大気のイオン化を促進して雲量を増加させ、気候に影響を与えるという仮説がある(スベンスマルク効果)。本研究では、松山―ブルン境界を含み海洋酸素同位体比ステージ20から18をカバーする、房総半島の千葉複合セクションの堆積岩試料から抽出した、n-アルカンの水素安定同位体比(δD)を分析した。n-アルカンのδDは、氷期間氷期サイクルとは同調せず、地磁気逆転の前後でのみ高い値(約-160‰)をとり、それ以外の期間は低い値(約-200‰)を示した。n-アルカンのδDは、植物の生理学的な効果(蒸散)に加えて、降水のδDを反映しやすいとされている。地磁気逆転前後の期間において、植物をとりまく温度条件は大きく変化していないと推定されることから、東アジアモンスーンの変調によって集水域にもたらされた降雨のδDが高くなったと考えられる。

  • 浜本 佐彩, 川上 薫, 捧 茉優, 松本 真依, Bong Hayoung, 芳村 圭, 岡崎 淳史, 的場 澄人, 飯塚 芳徳, 植村 ...
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 110-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    アイスコアから気候を高時間分解能で復元する研究では、季節周期を持つ複数の化学成分が用いられてきた。しかし一般的な極域アイスコアは、涵養量の低さによって拡散等の影響を受けるため、年代決定の時間分解能は夏と冬の二点が限界であった。本研究では季節スケールでの気候変動の解析を可能にすることを目的とし、グリーンランド南東部の高涵養地域で掘削されたSE-Dome II (SE2)アイスコアの酸素同位体比(δ18O) 記録を用いて数カ月分解能の年代軸を構築した。アイスコアと大気循環モデルの降水同位体のδ18Oパターンをマッチすることで年代決定し、新たに20世紀気象再解析データを用いた。年代決定に用いたδ18Oの1年内の複数ピーク(4.0, 2.9カ月の卓越周期)の解析結果から、夏にδ18O値が低い日にグリーンランド南西に低気圧が発生していたことが明らかになった。また、H2O2濃度に本研究の年代軸を適用したところ、濃度の極大・極小は夏至・冬至から15~30日程度遅れていることが分かった。

  • 長島 佳菜, 東 久美子, 伊藤 彰記
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 111-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    カソードルミネッセンス(CL)は、物質に電子線を照射した際に発生する発光現象で、不純物元素や格子欠陥などを検出する手段として地球化学や材料化学などに利用されている。特に、電子顕微鏡と組み合わせたSEM-CLは高い空間解像度を持ち、微小領域から結晶学的特性に応じたCLスペクトルを取得できる。鉱物粒子中の不純物元素や格子欠陥は、生成環境やその後に受けた変成作用に応じて形成されるため、供給源地域独自の情報を持つ。そこで鉱物(ここでは地殻の主要構成鉱物である石英)の個別粒子SEM-CL測定により、その供給源を推定するという着想を得た。本発表では、東アジアの砂漠域の石英粒子のCL特性を基に、北太平洋や北米といった遠方に輸送されるダストを海水や雪氷コアに含まれるナノグラムオーダーの石英粒子から識別した研究を紹介する。特にカナダのMt.Loganで採取された雪氷コア中の石英粒子の分析結果を中心に紹介し、CL分析の今後の展望についても述べる。

  • 長谷部 徳子
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 112-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    古気候・古環境変動の理解には,それらを記録しているアーカイブの分析が重要な一翼を担う。全地球で考える際に必要になるのがアーカイブにage modelを与えることである。age modelを与えるには大きく分けて2つの方法がある。一つはプロキシの変動パターンをage modelが確立しているものと比較することによって年代を得る方法である。もう一つの手法は放射年代測定を行うことである。また確立された手法では,企業への依頼分析も可能であるが,手法の理解が十分でないと結果を得ても正しく解釈できないため(あるいは分析に適切な試料を選べないため),分析を自分で行わないとしてもそれぞれが手法に対して理解を深めることが必須である。それぞれの手法の利点・欠点をみながら,環境科学で利用される放射年代学測定法と,その最近の話題について紹介する。

  • 橋野 虎太郎, 落合 伸也, 丹保 俊哉, 長尾 誠也
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 113-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    近年、豪雨の頻度の増加とともに、河川流域における土砂災害も増加しており、今後発生し得る同様の豪雨災害(イベント)についての対策として、その発生頻度を知ることが重要である。本研究では富山県立山町の泥鰌池において採取した湖沼堆積物の放射性核種、物理特性を用いて過去の豪雨イベントの推定を試みた。堆積物コアの137Cs濃度の鉛直分布から、泥鰌池の堆積物コアの最下部の年代は約114年前と推定された。また過剰210Pb濃度の鉛直分布には深度16-20 cmと24-27 cm、45-60 cmに濃度の異常層が見られ、これらの層準で土砂の大量流入イベントが起きたと認められた。今後、210Pbに基づいて各イベント層の年代を推定し、立山カルデラでの豪雨イベント史の検討を行う予定である。

  • 金子 夏樹, 戸丸 仁, 小河原 快杜
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 114-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    日本海は4つの浅い海峡に囲まれた縁海であり,完新世の最終氷期最寒冷期には海水準が低下して, 閉鎖的な環境となるなど, 大きな海洋環境の変化を経験してきた. 海洋堆積物の全有機炭素濃度(TOC)と全窒素(TN)の変化はその海域に供給される有機物の種類や堆積時の海底の環境,周辺の陸域環境を反映すると同時に, その変動が詳細に記録されるため,陸に近く浅い,相対的に大きな海洋環境の変遷を高精度に復元できる. 本研究では,最近3万年程度の温暖化が進行する時期に,暖流の入口となる対馬海盆の海底環境がどのように変動したのかを,有機物の堆積過程の変化から解明することを目的とし,表層堆積物中のTOCおよびTN分析し, 他のプロキシーや海域から得られた結果との比較を行った. 本研究より, 高精度なTOC・TN分析は詳細な古環境の変動だけでなく, 斜面崩壊のような局地的な現象も捉えることができ,様々なスケールでの古環境復元に有効であることが明らかになった.

  • 弓場 茉裕, 中村 政裕, 米田 道夫, 樋口 富彦, 石村 豊穂, 西田 梢, 伊藤 進一, 白井 厚太朗
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 115-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    本研究では、生物起源炭酸塩の酸素同位体比を用いた水温推定の高精度化のため、酸素同位体比に働く生体効果の補正手法確立を目指す。そのために、アカガイ、アサリ、カタクチイワシの酸素同位体比に働く生体効果の影響を生物種ごとに定量的に評価した。この結果、これらの3種の生物起源炭酸塩の酸素同位体比には、温度の影響を排除したとしても、種ごとに有意な差が見られ、生物起源炭酸塩の酸素同位体比に種特異的な生体効果が影響していることが示唆された。また酸素同位体比と炭酸塩への代謝由来炭素の寄与率を比較すると、二枚貝類ではこれらの間に有意な相関が見られ、生物の代謝に伴う生理環境の変化が酸素同位体比に生体効果として現れている可能性も示唆された。発表時には、ホウ素、硫黄、マグネシウム、ストロンチウムなどの微量元素濃度分析を行い、その結果を含めて報告する予定である。

  • 平川 史也, 松崎 琢也, 池原 実, 川合 達也, 石川 剛志, 奥村 知世
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 116-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    本研究では、宝石サンゴ骨格の炭素酸素安定同位体比を用い、生息環境変遷史の解読を目的とし、必要な前処理法を検討した。研究対象は、小笠原諸島母島沖で採取されたシロサンゴ(Corallium konojoi)である。薄片画像とEPMAによる元素分布画像を用いて年代モデルを作成し、年輪組織に沿った粉末サブサンプルを削り出した。有機物除去の検証には先行研究を参考にし、10%過酸化水素水溶液による前処理を実施したのち、炭素酸素安定同位体分析を行った。未処理サンプル及び、小片のまま前処理を行なった試料では有機物などの不純物によるコンタミネーションのため、正常な分析値が得られなかった。一方、前処理を行った粉末試料からは、同様の影響は認められなかった。正常に分析ができた未処理サンプル前処理を実施したサンプル間の分析値に大きな違いはなく、前処理による分析値への影響は少ないといえる。

  • 有村 悠汰, 植村 立, Syed Azharuddin, 阿部 理, 浅海 竜司, Yuan Shufeng, Chin Hahjung, ...
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 117-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    ダンスガード・オシュガーイベント(D-Oイベント)と呼ばれる急激な気候変動が最終氷期に起こっていたことが,グリーンランドアイスコアの分析により明らかになっている.D-Oイベントは北半球の広範囲に影響を及ぼし,対応した変動が中国や西ヨーロッパの鍾乳石の炭酸カルシウム酸素安定同位体比(δ18Oca)にもみられる.しかし,日本の鍾乳石からはこのような変動は明確には確認されていない.こうした地域による変動パターンの差異について検証するため,本研究では沖縄県南大東島にて採取した2本の鍾乳石コアのU-Th年代とδ18Ocaを測定した.成長が連続的な部分の成長期間は 49.2-91.6 kyr BP(誤差は平均±330年)であり,最深部は現時点で日本最古のU-Th年代であった.δ18Ocaは,グリーンランドアイスコアのD-Oイベント14-22と明確に対応した変動がみられた.また,50-70 kyr BPの期間において数千年スケールの変動パタ-ンは中国鍾乳石とも類似していた.

  • 宮崎 隆, 桑原 佑典, 安川 和孝, 田中 えりか, ヴァグラロフ ボグダン, 吉田 健太
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 118-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    海洋上層のδ138/134Ba値は海洋上層でのBa収支バランスに規制される。古第三紀前期に繰り返し発生した超温暖化(Hyperthremals)の際には、海洋環境が大きく変化し、Baの収支バランスは大きく変動したと考えられる。このとき海底に堆積したバライトにはその変動が記録されていると期待される。掘削コアバルク堆積物試料のδ138/134Ba値から古海洋環境変動を定量的に解明するためには、バライトや古海水のδ138/134Ba値を正確に推定する必要がある。本発表では、Ba安定同位体比を信頼性のある古海洋環境指標とするために必要な課題について議論を行う。

  • 小島 吉貴, 堀 真子, 松崎 琢也, 白井 厚太朗
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 119-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    マレーシのビドゥン島で採集した現世のシャコガイ殻(Tridacna maxima)2個体(L3、S3)を対象に、Sr/Ca比に基づく日輪解析と酸素安定同位体比による季節水温復元を行った。試料L3の成長速度は3~48 μm/日で明瞭な年周期変化を示し、δ18O値は−1.12から−2.54‰の間で変動した。一方、試料S3の成長速度は5~58 μm /日で、δ18O値は−1.42から−2.82‰となった。いずれも同位体比の振幅は水温で2.8~4.3 °Cを示し、年間の表層水温変化(約3 °C)とほぼ一致した。

  • 羅 銘浩, 渡邊 裕美子, Zhen Li, 中塚 武
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 120-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    Tree-ring width, density, and isotopic data can be used for paleoclimate reconstruction. Recently, due to the advantage of being less affected by tree physiological factors, the use of tree-ring cellulose isotope ratios in paleoclimate reconstruction has become a new research focus. Specifically, intra-annual isotope ratios have shown high-resolution potential for paleoclimate reconstruction, with feasibility demonstrated in multiple studies in central Japan. However, such high-resolution paleoclimate reconstruction studies in the relatively high-latitude region of northern Japan are still relatively scarce. Therefore, in this study, we collected tree-ring samples from northern Japan to explore whether the same reconstruction methods are applicable to this colder climate region.

  • 渡邊 裕美子, 片山 喜登, 李 貞, 中塚 武
    専門分野: G5 古気候・古環境解析
    p. 121-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    アジアモンスーン地域において、樹木年輪の年輪幅や同位体比などを用いて、過去の水文気候を復元する研究が盛んに行われている。そのなかでもセルロース酸素同位体比は異なる樹種であっても個体間相関が良く、降水量や相対湿度と有意な相関を示すため、優れた水文プロキシとされている。それらのほとんどは年層毎に同位体比を測定した研究であり、より高い時間分解能で降水情報をえるため、年層内同位体比に注目が集まっている。本研究では、広葉樹であるサワグルミの年層を6分割して同位体比分析し、気象観測データと精密に対比することにより、高時間分解能な水文プロキシとしての可能性を検証した

G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
  • 奈良岡 浩
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 122-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    はやぶさ2探査機によって地球に持ち帰られたC型炭素質小惑星リュウグウの物質は太陽系で最も始原的であるCIタイプ炭素質コンドライト隕石の化学・鉱物学特徴に最も一致していた。リュウグウ試料の初期分析において可溶性有機物 (Soluble Organic Matter, SOM) チームは集合体試料A0106, C0107について種々の溶媒抽出を行い、高感度・高質量分解能で含まれる有機化合物を分析し、さらに1個の粒子試料A0080をその場分析した。有機分子分析の現状の結果から見えてきたことと課題を議論する。

  • 高野 淑識, ドワーキン ジェイソン, 奈良岡 浩
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 123-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    はやぶさ2探査機によって地球帰還した炭素質小惑星リュウグウの試料は、太陽系物質科学や初生的な化学進化を明らかにできる貴重な機会である[1]。はやぶさ2可溶性有機物(SOM)チームは、2つのタッチダウン地点の試料(A0106 & C0107)を用いて、炭素(C)、窒素(N)、水素(H)、熱分解性酸素(O)、硫黄(S)の元素存在度(wt%)とその同位体組成、リュウグウの有機宇宙化学的性状について包括的な評価を行った[2,3]。また、SOMチームは、アミノ酸とその分子キラル特性[4]、核酸塩基と窒素複素環の特徴[5]、有機―無機複合体および初生的な塩(Salt)を含む有機硫黄化合物群 [6]、多環芳香族炭化水素群[7]について、定性的かつ定量的評価を行った。さらに、有機物の均質性/不均質性を示したイメージング解析[8]、低温熱水プロセスに関する分子アトラス解析[9]を報告した。 著者らは、リュウグウの特徴である水との親和性を深く理解するために、高分解能質量分析法による有機分子レベルのターゲット解析およびノンターゲット解析による分子探索を行った[3]。リュウグウ表面の平均試料(A0106)および地下試料(C0107)の解析において、親水性有機分子群の多様性と存在度を評価したところ、水に対して敏感に応答する互変異性の履歴を同定した[3]。ここでは、小惑星リュウグウにおける水-有機物相互作用による「水質変成」と分子指標性について考察し、これからの展望[10]を併せて議論する。References: [1] Tachibana et al. (2022) Science; Yada et al. (2022) Nature Astron. [2] Naraoka et al. (2023) Science. [3] Takano et al. (2024) Nature Commun. [4] Parker et al. (2023) Geochim. Cosmochim. Acta. [5] Oba et al. (2023) Nature Commun. [6] Yoshimura et al. (2023) Nature Commun. [7] Aponte et al. (2023) Earth Planet Space.; Zeichner et al. (2023) Science. [8] Hashiguchi et al. (2023) Earth Planet Space. [9] Schmitt-Kopplin et al. (2023) Nature Commun. [10] Oba et al. (2023) Nature Commun.; Lauretta et al. (2024) Meteorit. & Planet. Sci.

  • 三村 耕一, 山田 莉緒, 前島 夏季, 河村 公隆, Bhagawati Kunwar, 橋口 未奈子
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 124-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    数多くの研究により、隕石に含まれる有機物の起源や進化過程が明らかにされてきた。しかし、この隕石の有機物については、少なからず未解決の問題が残っている。例えば、隕石中の全有機炭素のうち約40%もの未同定炭素(missing C)の存在場所、隕石中の有機物の不溶性有機物(IOM)と可溶性有機物(SOM)の関係などである。本研究では、SOM中に最も多く含まれるモノカルボン酸(MCAs)に着目し、溶媒の極性と抽出手法を変えることにより、マーチソン隕石からMCAsを3画分(F1からF3)に分けて回収した。F1には隕石中に分散しているMCAsが、F2には水に可溶な鉱物中に取り込まれたMCAsまたはIOMに吸着されたMCAsが、F3にはIOMの加水分解で生成したMCAsが含まれると予想される。画分ごとに、抽出されたMCAsの化学組成と炭素同位体比を測定し、MCAsのmissing Cに対する貢献度と、MCAsとIOMの関係を検討した。

  • 平川 祐太, 古賀 俊貴, 大河内 直彦, 高野 淑識
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 125-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    リンは地球の生命にとって最も重要な元素の一つであり、リンを含んだ有機分子は化学進化研究においても注目されている。これまで太陽系物質から数多くの有機分子が発見されている一方で、リンを含んだ有機化合物の報告例は乏しく、その分布や起源、初期地球への供給可能性については議論が進んでいない。本研究は、イオンクロマトグラフとオービトラップ質量分析計を組み合わせたイオンクロマトグラフィー/高分解能質量分析法による有機リン化合物の分析手法の開発を目的とした。分析条件の最適化の結果、~10 femto molスケールの有機リン化合物の検出を可能にした。本研究で開発した手法をもとに小惑星試料を含む太陽系物質を分析することで有機リン化合物を検出・定量し、太陽系における有機リン化合物の化学的な多様性、定量的な評価と分子進化、そして初期地球への供給について議論できる可能性が示された。

  • 古賀 俊貴, 高野 淑識, 平川 祐太, 大場 康弘, 大河内 直彦
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 126-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    ヌクレオシドの形成は原始地球上での遺伝物質の誕生に向けた重要なステップであると考えられる。そのため、地球外物質中のヌクレオシドの有無を調査することで,太陽系形成過程の化学進化においてどの程度の複雑な分子が生じたのか,また,地球外起源のヌクレオシドが原始地球へ供給されていた可能性があるかを明らかにすることができる。高速液体クロマトグラフィー/高分解能質量分析法(HPLC/HRMS)は微量な有機分子を検出しつつ,精密質量の測定によって標的イオンの組成式を決定することが可能であるため,存在量が極微量だと予想される地球外物質中のヌクレオシド化合物の探索に最も適した分析法である。本研究では,HPLC/HRMSによるヌクレオシド化合物の微量分析法を開発し,7種類のヌクレオシドを10-100 fmolオーダーで検出することが可能となった。本講演では,開発した分析法をマーチソン隕石抽出物に適用し,ヌクレオシドの有無を調査した結果について議論したい。

  • 角南 沙己, 古川 善博
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 127-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    炭素質コンドライトは前生物的化学反応を記録し、生命の材料を初期地球に供給したとして注目されている。RNA構成要素のリボースを含む糖は隕石から検出されているが、限られた試料でしか分析されておらず水質変質が糖に与える影響は不明である。本研究では、LON 94101(CM2.2-2.3)中の糖の含有量を分析した。また母天体内部の模擬反応としてホルモース型反応実験を行い、生成物の糖組成を隕石と比較した。隕石分析の結果、リボースを含む4種類の五炭糖と3種類の六炭糖を同定した。五炭糖総含有量は、水質変質度のより低いマーチソン隕石(CM2.5)の値よりも低かった。模擬実験では炭素数に応じた糖の減少傾向が見られ、長時間反応後の生成物の組成が隕石結果と類似していた。このことは、小惑星内の水質変質の初期段階でホルモース型反応により糖が形成され、徐々に糖の組成が変化することを示す。また、水質変質程度の低い隕石や彗星塵が初期地球に糖を供給した主要なキャリアであったことを示唆している。

  • 安部 隼平, 癸生川 陽子, 依田 功, 小林 憲正
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 128-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    糖類はアミノ酸や核酸塩基とともに生命に必須である。先行研究により、小天体内部の水質変質を模擬した系へのγ線や鉱物種の触媒作用によるアミノ酸や糖生成への影響が示唆されている。本研究では小天体内部の水質変質を模擬した系(HCHO, CH3OH, (NH3), H2O)にオリビン約3 mg を加え(F(A)OWと呼称)、これにγ線を照射し、糖の生成を検証した。対照実験としてオリビンを加えない試料(F(A)Wと呼称)も同様に実験した。GC/MSを用いて3C-6Cまでのアルドースを分析した。FAOWとFAWからのアルドースの生成量に大きな差は生じなかったことから、アンモニアはオリビンよりも触媒としての働きが強いことが示された。FOWはFWよりも多量のアルドースを生成した。生成した五炭糖に注目すると、リボースの生成量が特に多い結果であった。つまり、オリビンはガンマ線照射実験においても触媒としての働きを持ち、リボースの生成または安定化に有利に働くことが示唆された。

  • 吉岡 美香, 小林 大輝, 鍵 裕之
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 129-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    隕石に含まれるアミノ酸にはわずかなL体過剰が報告され、宇宙空間での円偏光紫外線などがその起源とされているが、ホモキラリティーの起源は未解明である。L体アミノ酸がどのように濃縮されホモキラリティーが実現したかを解明することを目標に、本研究では氷惑星内部での高圧条件下でのL体アミノ酸濃縮の可能性を調べた。L-アラニンとD-アラニンを異なる体積比で混合した水溶液をダイヤモンドアンビルセルを用いて3GPaまで加圧し、X線回折パターンによってアラニン結晶と氷高圧相VI, VIIが析出する様子をその場観察した。L:Dが7:3、6:4、5:5 の溶液からは DL-アラニンのみが析出した。L体が過剰に含まれているにも関わらず、余剰なL-アラニンの結晶は確認されなかった。この研究によって、氷高圧相に伴うDL-アラニンの析出によって、L-アラニンの濃縮が生じる可能性が示唆された。

  • 癸生川 陽子, 富永 宇, 鈴木 政紀, 小林 憲正, 高橋 嘉夫, 山下 翔平, Zolensky Michael
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 130-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    STXMを用いたC-XANES分析は,高空間分解能で有機官能基イメージングが可能であり炭素質コンドライト隕石や小惑星サンプルの分析に活用されている。しかし,スタックイメージからのスペクトル抽出には恣意性があり,官能基分布の定量的な比較には限界がある。本研究では,主成分分析(PCA)を用いたスタックイメージ解析やC-XANESの各官能基ピークの定量化法を用いたデータ解析の検討を行った。そして,CI,CMコンドライトおよび比較的最近回収された未分類(Ungrouped)炭素質コンドライトであるChwichiya 002隕石およびTarda隕石の分析を行った。

  • 甘利 幸子
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 131-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    大きなプレソーラーSiC粒子の炭素、窒素、酸素、およびケイ素の同位体比を測定した。全ての粒子はmainstream粒子であることがわかった。29Si/28Siは 太陽系の値に比べて7%から14%、30Si/28Siは8%から12%ほど高くなっており、より小さいSiC粒子に比べるとより29Siと30Siに富んでいることがわかった。更なる測定が必要であるが大きいSiC粒子は金属量の多いAGB星で生成された可能性がある。

  • 栗原 かのこ, 平田 岳史
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 132-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    隕石中の微粒子から元素合成過程などの宇宙化学的な情報を引き出すには、マトリックスからの微粒子のサンプリングと、粒子個別の元素・同位体分析が必要となる。こうした背景から講演者らは、液中レーザーアブレーション法(LAL)による微粒子サンプリングとICP質量分析法(ICP-MS)を組み合わせた、隕石微粒子の個別元素組成・同位体組成分析を行ってきた。これまでの研究を通じて、LALの溶媒に水を用いた場合、試料由来の成分の溶出が問題となることが明らかとなった。そこで本研究では、水溶性成分の溶出と、溶媒との反応に起因する溶解を低減する目的で、極性の低い有機溶媒を用いたLALを検討した。本発表では、超純水と極性の異なる有機溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン)を用いたLALを2種類の隕石試料に適用し、溶媒による元素溶出の変化と隕石種による元素溶出の違いについて議論を行う。

  • 前田 凌雅, Van Acker Thibaut, 金丸 礼, Frank Vanhaecke, 山口 亮, Goderis Steven
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 133-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では水質変成作用における元素の再分配を解明することを目的とし、変成度の異なるCMコンドライトにLA-ICP-TOF-MS定量マッピングを適用して構成鉱物中の元素存在度、元素主要相、そして鉱物相間の分布を決定することを試みた。

  • 櫻井 拓海, 吉元 史, 仁木 創太, 平田 岳史, 野口 高明, 伊藤 正一
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 134-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    NWA7678 reduced CV3コンドライトは,2 cm × 4 cmの大型の暗色クラストを含む。クラストは、硫黄の欠乏とCa炭酸塩の過剰な存在という既知の隕石と比較して異質な特徴を持つ。クラストに存在するCa炭酸塩とその周囲の鉱物の岩石学的,同位体化学的研究から,クラストは母天体上で水質変質後に約700℃の熱変成を経験したことが示唆された。しかし,このような熱変成作用を経験したにもかかわらず,オリビン斑晶の鉄含有量の分布や,マトリクスオリビンの粒径サイズは,既知の熱を受けた隕石にみられる岩石学的特徴とは大きく異なり,また,斑晶全体の組成が均質化していない。そこで本研究では,酸素フガシティー(Quartz-Fayalite-Magnetite (QFM))を加味したオリビンのFe-Mg相互拡散プロファイルを用いた解析により、このクラストが経験した特異な熱変成プロセスを定量的に評価した。その結果,クラストは初期温度700℃の条件下において約1℃/年で冷却されたと見積もられた。

  • LOPEZ GARCIA KARINA, 横山 哲也, GAUTAM IKSHU, 羽場 麻希子, 中西 奈央, 飯塚 毅, 深井 稜汰
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 135-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    Since small bodies like asteroids preserved important clues to elucidate the planetary processes within the protoplanetary disk, sample return missions represent a valuable opportunity to study pristine materials. Samples returned from asteroid Ryugu have been reported to exhibit small-scale chemical heterogeneity which likely stems from secondary processes in the parent body, such as aqueous alteration. Therefore, this study aims to investigate the small-scale variation in the elemental abundance of Ryugu to gain better insights into the history of its parent body. For this purpose, the abundance of 54 elements were measured in eight Ryugu grains from the first touchdown. The bulk chemical compositions of the eight grains show a wide variation for most elements. In particular, P, Ca, Mn, Sr, Y, and rare earth elements exhibit broader ranges compared to the average CI composition. The enrichment or depletion in these elements can be attributed to the presence of secondary minerals, such as carbonates and phosphates, formed during aqueous alteration in the parent body.

  • 横山 哲也, Lopez Garcia Karina, Gautam Ikshu, 飯塚 毅, 羽場 麻希子, 中西 奈央, 深井 稜汰
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 136-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    探査機はやぶさ2が採取した小惑星リュウグウ試料は、鉱物学的、化学的、同位体的にCIコンドライトと類似している。一方で、個々の試料(< 25 mg)を見ると、ε54Cr値はCIの文献値の範囲を超える変動を示すのに対し、ε50Ti値は比較的均一であった。我々はJAXAの公募分析で提供された1.6-4.3 mgのリュウグウ粒子8個を対象に、CrおよびTi同位体分析を行った。試料のε54Cr値は+0.89±0.11から+2.24±0.13の範囲であり、その変動は先行研究よりも大きかった。一方、先行研究とは対照的に、リュウグウ粒子のε50Ti値も+0.75±0.20から2.18±0.16まで大きく変動した。この結果は、リュウグウ試料に微小スケールのε54Crとε50Tiの不均質、すなわち、54Crや50Tiに富むプレソーラー粒子の局所的濃集が存在することを示唆する。この不均質分布は、低いε54Cr・ε50Ti値を持つ化学的に不安定な相が母天体水質変成により選択的に破壊され、流体によって低ε54Cr・ε50Ti成分が取り去られたためと考えられる。

  • 河合 敬宏, 大野 智洋, 福士 圭介, 菅 大輝, 竹本 亜優, 上椙 真之, 吉田 英人, 松本 恵, 中村 智樹, 大浦 正樹, 高橋 ...
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 137-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    はやぶさ2リターンサンプルについて、X線吸収端近傍構造(XANES)分析により、各元素がどのような化学種として存在しているかを分析した。また、EPMAによる元素分析により、リュウグウの主要鉱物の分析や、層状ケイ酸塩の組成分析を行った。これらの結果をもとに、層状ケイ酸塩層間の陽イオン選択係数及び溶解度の化学平衡計算を行い、リュウグウ母天体の水環境、特に酸化還元電位(Eh)やpHを推定した。その結果、リュウグウの水は非常に還元的(Eh=-0.5~-0.6V)で塩基性(pH=10~11)であると推定された。またバナジウムやクロムなどの微量元素の価数なども測定したところ、これらの結果と整合的な化学種であることが分かった。推定されたEhは、それぞれのpHで水が分解し水素ガスが発生する程度に還元的な値を示しており、リュウグウの水が氷の昇華や鉱物の水和だけではなく、水還元反応によっても失われた可能性を示唆している。

  • 竹本 亜優, 大野 智洋, 河合 敬宏, 山口 瑛子, 高橋 嘉夫
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 138-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    現在の海洋は海底沈殿酸化物への吸着が微量元素の溶存濃度を支配している”酸化物ワールド”であるが、古海洋は硫化物との反応が元素の水溶解性を支配していた”硫化物ワールド”であったと考えられている。本研究では、太陽系初期物質中の元素の水への溶解性を支配する要因を検討し、硫化物ワールドにおいてどの元素が硫化物の影響を受けるか明らかにすることで、生命進化や元素の挙動、金属濃集過程の解明に貢献することを目的とする。特に、微量元素であるマンガン、ニッケル、亜鉛、鉄などに着目し、C型小惑星リュウグウ試料およびOrgueil隕石の樹脂包埋試料を用いてこれら元素のホスト相をX線吸収微細構造(XAFS)で同定し、各元素の水溶解性を支配する因子を特定することを試みた。測定結果からさらに、様々な条件下での硫化物(主にpyrrhotite)に対する吸着実験を実施し、分配係数の決定やXAFS法によるホスト相の決定を行い、硫化物が固液分配を支配する系での元素の水溶解性のシステマティクスを検討する。

  • 伊藤 健吾, 仁木 創太, 栗原 かのこ, 諸星 暁之, 三河内 岳, 平田 岳史, 飯塚 毅
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 139-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    ブラチナイトは鉄に富むカンラン石から成る始源的エコンドライトで、部分融解残渣として形成されたと考えられている。本研究では、ブラチナイト隕石Northwest Africa 10932中のカルシウムリン酸塩鉱物であるアパタイトとメリール石についての鉱物組織観察、希土類元素(REE)の拡散プロファイル、およびU-Pb年代測定を実施した。観察結果は、熱変成作用中にアパタイトがメリール石に置換されることを支持し、REE拡散モデリングにより熱変成の持続期間を約10^4年と制約した。この持続時間は衝撃変成の時間スケールよりも長く、内部熱源が必要であることを示唆する。アパタイトとメリール石のU-Pb年代は4482 ± 29 Maで、これは母天体の長期熱活動を示す。さらに、この年代は安山岩質隕石Graves Nunataks 06128/29のアパタイトU-Pb年代と一致し、交代作用による塩素に富む流体の放出を示唆している。

  • 山下 勝行, 原 湧樹, 米田 成一, 澤田 順弘
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 140-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    ユークライトJuvinasは、小惑星Vestaの火成活動のタイムスケールを理解する上で重要な試料である。しかしLugmair and Shukolyukov (1998)によって報告されたMn-Cr年代は、クロマイトのCr同位体比によってほぼ決まっているにもかかわらず、その詳細な鉱物学的記載がなされていない。本研究では、Lugmair and Shukolyukov (1998)と同様の方法でJuvinasからクロマイトを分離し、他の鉱物相とともにCr同位体比を測定した結果、Lugmair and Shukolyukov (1998)とは大きく異なる年代を得た。この年代差の要因を明らかにするために、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)と電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を使った鉱物記載を進めている。本発表ではその結果について報告する。

  • 日高 洋, 西泉 邦彦, Caffee Marc, 米田 成一
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 141-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    大気に覆われていない地球外の惑星物質中のいくつかの元素の同位体は宇宙線照射に伴う中性子捕獲反応によって存在度が変動することがある。演者らはYbに着目している。Ybの同位体のうち、168Ybと170Ybについては宇宙線照射に伴う中性子捕獲反応として、前者は同位体存在度の減少、後者は増加が期待できる。現在、14種類の月隕石を対象として同位体を継続中であるが、分析を終えた8試料のうち3試料について168Ybの同位体存在度減少が確認された。本講演では、他元素の中性子捕獲反応に伴う同位体組成変動との整合性等について言及する。

  • 齊藤 天晴, 日高 洋, 李 承求
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 142-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    月などの大気の無い岩石天体の表層数メートルでは、銀河宇宙線が引き起こす核破砕反応により中性子が発生する。発生した中性子のエネルギー分布(中性子スペクトル)は周囲の原子核との相互作用によって変化するため、149Sm(n,γ)150Sm, 157Gd(n,γ)158Gdなどの中性子捕獲反応に伴う同位体変動として記録されている中性子スペクトルの情報から惑星物質の宇宙線照射環境の履歴を推定することができる。この中性子スペクトルの復元は、熱エネルギー領域(<0.5 eV)に関してはSm, Gd同位体を利用する方法が確立され様々な惑星物質に応用されているが、熱外エネルギー領域(0.5 eV-0.5 MeV)についてはEr, Yb, Hf同位体による先行研究が数例あるのみで、そのスペクトルの復元方法は未確立である。本研究では、熱外領域を含む中性子スペクトルの復元を目的として、それぞれ1.10, 2.39 eVと7.78 eVに顕著な中性子捕獲断面積の共鳴を示す177Hfと178Hfを同位体に持つHfについて、月隕石試料の同位体分析を行った。

  • 山本 大貴, 川﨑 教行, 橘 省吾, 石﨑 梨理, 櫻井 亮輔, 圦本 尚義
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 143-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    太陽系の始原的固体物質における酸素同位体組成の非質量依存型の多様性は、原始太陽系円盤での始原的物質と円盤ガスとの酸素同位体交換反応に起因する。本講演では、酸素同位体組成分布を解釈するための基礎データ取得を目的としておこなった、フォルステライト組成の非晶質ケイ酸塩と低圧H2O、COガスとの酸素同位体交換実験の結果と、それから見えてきた原始太陽系円盤でのケイ酸塩ダスト酸素同位体進化の描像に関して紹介する。講演者のおこなった上記速度論的研究から、非晶質ケイ酸塩とCO、H2Oガスとの酸素同位体交換は、CO-H2Oガス間の同位体交換速度よりも圧倒的に速く進行することがわかった。このことは、非晶質ケイ酸塩ダストの両ガスとの効果的な同位体交換反応により、従来考えられてきたよりも低温でケイ酸塩ダスト-CO-H2O間の同位体平衡が達成される可能性を示す。上記3体間の酸素同位体平衡が達成される温度は、~600-700 Kと推定される。太陽系の多くのケイ酸塩の16Oに乏しい同位体組成は、大部分のケイ酸塩が、円盤で~600-700 Kよりも高温を経験した可能性を示唆する

  • 福田 航平, Zhang Mingming, Hertwig Andreas, Chaumard Noel, Tenner Travis, ...
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 144-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    コンドルールは、ケイ酸塩鉱物のMg# (= Mg/[Mg+Fe] molar %) によりtype I (Mg# > 90) とtype II (Mg# < 90) に分類され、type Iはtype IIに比べて還元的環境下で形成したと考えられている。Type IとType IIコンドルールの存在は、酸化還元度の異なる環境が原始太陽系円盤に存在していたことを示唆する。しかし、このような環境が、いつ、どこで、どの程度継続して円盤に存在したのかは未解明である。円盤の酸化還元度は、ダストや水氷の存在量に関連すると考えられるため、円盤内における酸化還元環境の変遷を明らかにすることで、原始太陽系円盤の物質分布を制約できると期待される。本発表では、DOM 08006 (CO3.00-3.01) およびAsuka 12236 (CM2.9) に含まれる16個のtype Iおよび12個のtype II コンドルールのAl-Mg年代測定結果に基づき、コンドルール形成期間と酸化還元度の関連を議論する。

  • 中嶋 大輔, 吉田 英人, 中村 智樹
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 145-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    Yamato(Y)-980115 CIコンドライトの研磨片中にコンドリュール、オリビン、パイロキシン、スピネル、コランダム、合わせて541個を発見した。コンドリュールと無水鉱物のサイズ分布のピークは1-3umにあり、他の隕石のコンドリュールや無水鉱物より小さい。オリビンの大部分はFeO-richな組成を持ち、他の炭素質コンドライトと大きく異なる。コンドリュールの多くは斑状組織を持つtype IIであり、オリビン斑晶にはFe-Mgゾーニングがみられた。CIコンドライトと小惑星リュウグウの母天体は原始惑星系円盤外側領域で集積したと考えられている。一方、コンドリュール、CAI、無水鉱物は内側領域で形成したと考えられている。発表では、内側領域から外側領域への輸送機構、Y-980115、リュウグウ試料、Wild2彗星試料のオリビンMg#分布の比較に基づく議論を行う。

  • 正木 駿兵, 羽場 麻希子, 横山 哲也, 鏡味 沙耶
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 146-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    近年、炭素質(CC)隕石とその他の非炭素質(NC)隕石の間で同位体組成が異なる「同位体二分性」が発見された。この二分性は隕石母天体形成位置の違いを反映しており、CCとNCの母天体はそれぞれ太陽系の外縁部と内縁部に由来すると考えられている。多くの分化隕石はNC隕石に属するが、未分類エコンドライトの中にはCC的同位体組成を持つものが存在する。Northwest Africa(NWA)6693/6704はCC的エコンドライトであり、CRコンドライトとの同位体親和性を示す。146Smは半減期103 Maの消滅核種であり142Ndへα壊変する。太陽系の146Sm/144Sm初生比は、初期太陽系における惑星物質の進化を理解する上で重要である。146Sm/144Sm初生比は、アエンデ隕石のCAIや、最古の安山岩質隕石である Erg Chech 002から得られているが、CC領域におけるデータは未だに得られていない。本研究ではNWA 6693/6704に対して、TIMSによる高精度 Nd同位体比分析を行った。その結果、146Sm/144Sm初生比はNC領域やCAIの146Sm/144Sm初生比と整合的な結果となった。

  • 佐野 凌, 飯塚 毅, 鈴木 充
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 147-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    会議録・要旨集 フリー

    初期太陽系における同位体不均質性の起源として、超新星爆発放出物の不均質分布が提唱されている。長寿命放射性核種138Laは超新星爆発でのみ合成されるため、そのような超新星爆発放出物の良いトレーサーとなる。138Laを超新星爆発放出物のトレーサーとして用いるためには太陽系内側および外側に由来する種々隕石の全岩La同位体比を求める必要がある。Laは同位体が二つしかないため、実際の岩石試料分析時にはLa単離時の同位体分別効果をはじめとした非核合成起源の同位体分別をあらかじめ評価しておく必要がある。本発表ではLa単離時の同位体分別効果を評価した上で、多重検出器型ICP質量分析計を用いた測定による様々な隕石グループのLa同位体比を報告し、La同位体不均質性について議論したい。

  • 橋口 未奈子, 青木 弾, 福島 和彦, 薮田 ひかる, 圦本 尚義, 中村 智樹, 野口 高明, 岡崎 隆司, 奈良岡 浩, 坂本 佳奈子 ...
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 148-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    本研究では,リュウグウ試料に含まれる固体有機物の分子構造を調べるため,飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いたその場分析を行なった.検出されたフラグメントイオンの特徴から,リュウグウとCCsでは固体有機物の化学構造が異なることが示された.本結果は,リュウグウ有機物の始原的な性質,あるいはリュウグウ有機物とCCs有機物の本質的な形成・分子進化過程の違い, 地球風化の影響の有無を示していると考えられる.

  • 篠崎 裕夢, 福田 航平, 大西 亮, 藤谷 渉, 高畑 直人, 槇納 好岐, 平田 岳史, 佐野 有司, 寺田 健太郎
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 149-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    短寿命放射性核種10Be (半減期139万年) は、宇宙線などの高エネルギー粒子による核破砕反応によって生成する核種である。太陽系最古の固体物質である CAI (Ca-Al-rich Inclusion)の分析から初期太陽系に10Beが存在したことが明らかとなっている(McKeegan et al., 2000)。10Beの生成に寄与した宇宙線源として銀河宇宙線と太陽高エネルギー粒子 (Solar Energetic Particles: SEP) の2つが考えられるが、CAI間に見出された初生10Be/9Beの変動から、後者による10Be生成(太陽宇宙線起源説)が有力視されている (Gounelle et al., 2013)。この説が正しい場合、初期太陽系における10Beの存在度はSEP量の指標となるため、原始太陽活動度を推定する上で重要な情報となる。本発表ではCAI形成後約390万年に形成 (Ameline et al., 2008) したアングライト隕石の10Be/9Be比を決定し、CAIの10Be/9Be比 [= (7.1 ± 0.2) × 10−4; Dunham et al., 2022] との比較に基いた、アングライト隕石集積時の太陽活動度の推定結果を報告する。

  • 炭谷 拓真, 福田 航平, Barosh Jens, 日比谷 由紀, 寺田 健太郎, 木多 紀子
    専門分野: G6 宇宙化学:ダストから惑星、生命へ
    p. 150-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
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    隕石全岩の各種元素同位体分析から、太陽系天体の材料物質は同位体的に二分される特徴を持つことが明らかとなった (e.g., Warren, 2011)。同位体二分性(Isotope Dichotomy)と呼ばれるこの特徴から、太陽系天体の材料物質は空間的に分断された二つの円盤領域(原始木星軌道よりも内側および外側領域)で形成されたと考えられている (Kleine et al., 2020)。先行研究ではCV・CKコンドライトに含まれるコンドルールのCr-Ti-O同位体比分析を行い、CV・CKコンドライト中に内側太陽系物質の同位体的特徴を示すコンドルールを発見した (Williams et al., 2020)。このことは、円盤内側領域で形成した物質が分断機構形成以前に円盤外側領域に輸送された、もしくは分断による物質混合の遮断が不完全であったことを示唆する。原始太陽系円盤における物質輸送効率の制約は、天体材料物質の多様性を明らかにする上で重要であるが、コンドルールのようなmmサイズの固体物質がいつ・どの程度・どのように輸送されたのかは未解明である。本発表では、コンドルールの形成・輸送・母天体集積過程の理解に向けてRBT04143の酸素同位体分析の議論について報告する。

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