園芸学研究
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3 巻, 3 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 黄 建成, 田辺 賢二, 板井 章浩
    2004 年 3 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    アジアハス種内交雑の4品種,アジアハスとアメリカハスとの種間交雑の3品種,ならびにその種子親品種と花粉親品種候補合わせて70品種,合計77品種を対象に解析を行った.11種類のISSRプライマーで合計103本の多型マーカーが得られ,アジア種内の品種間における58本のマーカーで品種が識別でき,また種間に大きな遺伝的差異の存在することを示した.これらのマーカーを用いて,交雑育種によって育成された種内雑種‘中日友誼蓮’と種間雑種‘舞妃蓮’について検討し,親子間にそれぞれ16,81本の有効多型性を示したマーカーが得られ,遺伝的に矛盾がない親子関係を明らかにした.また,種内雑種‘白光蓮’は‘白君子小蓮’と‘金輪蓮’,または‘アメリカ白蓮’と‘清月蓮’の2組合せの親子間で不一致が認められ,親子関係は認められなかった.さらに,種間雑種‘美中紅’と‘小舞妃’および自然交雑によって育成した種内雑種‘紛碗蓮’と‘玫紅川台’の合計4品種では,種子親との間にそれぞれ13,16,12,4本の有効な多型マーカーが得られた.これをもとに花粉親候補69品種を対象に検討した結果,‘美中紅’では‘寿星桃’が,‘小舞妃’では‘紛千葉’が,‘紛碗蓮’では‘寿星桃’が,‘玫紅川台’では‘盧山白蓮’がそれぞれ親子間で遺伝的に矛盾がないことから花粉親であると考えられた.
    以上の結果から,ISSRマーカーを用いた分析はハスの種内雑種と種間雑種の親子鑑定および花粉親の推定に有効であることが示唆された.
  • 沖村 誠, 野口 裕司, 望月 龍也, 曽根 一純, 北谷 恵美
    2004 年 3 巻 3 号 p. 257-260
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    ‘いちご中間母本農2号’は,炭そ病抵抗性の育成系統‘83118-41’と抵抗性品種‘Dover’の交配から育生された育種素材である.この炭そ病抵抗性は抵抗性品種‘宝交早生’や‘Dover’と 同程度以上であり,また羅病性品種との交配実生集団において,高度抵抗性個体の出現率が高く,イチゴ炭そ病抵抗性品種育成への利用が期待される.
  • 小泉 丈晴, 池田 洋, 工藤 暢宏
    2004 年 3 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    1.フローサイトメトリーによる相対的核DNA量の測定から栽培フキの倍数性を推定すると,群馬県在来‘水ブキ’(雌株),‘八ツ頭’,‘系統4’は2倍体,徳島県在来‘水ブキ’,‘吉備路’は3倍体であると考えられた.
    2.群馬県在来‘水ブキ’,‘八ツ頭’および‘系統4’の花粉稔性は高く,群馬県在来‘水ブキ’の種子発芽率についても比較的高かった.
    3.群馬県在来‘水ブキ’ב八ツ頭’および群馬県在来‘水ブキ’ב系統4’の交雑は可能であった.
    4.群馬県在来‘水ブキ’ב八ツ頭’で得られた実生から,花穂収穫量の多い,品質の優れた個体が出現した.したがって,この組み合わせ交配から得られた実生個体の選抜によって花穂収穫用品種が育成できる可能性は高いと考えられた.
土壌管理・施肥・潅水
  • 遠藤 昌伸, 切岩 祥和, 糠谷 明
    2004 年 3 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    牛ふん尿処理液の液肥としての可能性を検討するため,培地に砂,山土を用いて,4作(2000年春,秋,2001年春,秋)の連作におけるトマトの生育,収量への影響を調査した.処理培養液は,対照区(市販培養液),希釈牛ふん尿処理液+リン酸区(リン添加区),希釈牛ふん尿処理液+多量要素区(多量添加区)とし,2001年春,秋には希釈牛ふん尿処理液のみの区(希釈牛ふん尿区,山土のみ)を加えた.その結果,植物体の生育は対照区に比べ牛ふん尿処理を用いた区で劣り,可販果収量は対照区の約7割であった.牛ふん尿処理液を用いた区の処理培養液は,ECやCl,K濃度が高く,これらが塩類ストレスとして作用したため,生育の抑制,収量の減少が生じたと考えられた.牛ふん尿処理液を用いた区では,葉身中Ca含有率が対照区に比べ低く,また尻腐れ果が多発した.また,牛ふん尿処理液の連用による塩類の過剰集積害はみられなかった.以上の結果,牛ふん尿処理液は緩衝能を有する土壌を培地とするかん水同時施肥栽培であれば,トマトの栽培に利用可能であることが示唆された.
栽培管理・作型
  • 稲葉 善太郎, 大城 美由紀
    2004 年 3 巻 3 号 p. 273-276
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    キンギョソウ2品種‘メリーランドピンク’および‘ライトピンクバタフライII’を育苗方法と夜温とを組み合わせて摘心栽培を行った.育苗方法では,いずれの品種も無仮植で育苗して定植後に摘心することで第2節分枝の開花が早くなるとともに採花本数が増加した.夜温は,‘メリーランドピンク’では11月中旬からの夜温11℃が適していた.‘ライトピンクバタフライII’では11月中旬から夜温11℃以上,12月中旬から夜温16℃とすることで採花本数は増加するが,切り花長は減少した.
  • 福地 信彦, 本居 聡子, 宇田川 雄二
    2004 年 3 巻 3 号 p. 277-281
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    トマトにおける摘果処理と摘葉や葉面積を増やすための側枝利用などの整枝が,果実糖度と収量に与える影響を検討した.1果房当たりの着果個数を制限しても,総収量,上物収量は増えず,果実糖度の向上には結びつかなかった.摘葉や葉面積を増やすための側枝利用などの整枝を異にしても,総収量,上物収量に差はみられなかった.摘はは果実糖度を低くし,各果房直下の側枝を利用し1果房当たりの葉数を増やすと,糖度の向上が図られた.
  • 米田 和夫, 小森 照彦, 長谷川 茂人
    2004 年 3 巻 3 号 p. 283-286
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    Phalaenopsis ‘Ensyu’ × Phal. ‘White Dream’(実験1と2)とPhal. ‘Miki Saito’ × Phal. ‘Jenco Arctic Mass’(実験3)を供試して,花茎上のつぼみが大豆大になった時の摘らいとその摘らい花茎の切除時期が,新花茎の発生と開花に及ぼす影響について検討した.
    摘らい処理を継続した花茎を株元から切除した時,新花茎は確実に発生し,約3.5か月後には開花した.摘らい処理を継続した場合,花茎の発生は約10か月間顕著に抑制された.摘らい処理を続けた花茎を4月上旬と11月上旬に株元から切除しても,新花茎は切除120~130日後に開花した.
    従って,摘らいと摘らい花茎切除時期を組み合わせることによって,確実に良質な花茎が発生・開花することが認められ,本種の計画的な出荷を行うことができる技術が確立される可能性が示された.
  • 平井 剛, 杉山 裕, 中野 雅章
    2004 年 3 巻 3 号 p. 287-290
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    短節間性を有するカボチャ‘つるなしやっこ’に適した畦幅および育苗方式を検討するとともに,その収量性および省力性をつる性の‘えびす’と比較した.
    畦幅は150 cmが収量性,果実品質,作業性などの点で最適であることが明らかとなった.‘つるなしやっこ’は,‘えびす’に比べ着果が安定しており,育苗を省力化した場合でも安定して1株当たり1果の収穫が得られ,密植することが可能であるため,収量を損なわずに省力化が可能であることが明らかとなった.育苗方式としては,72穴セル成型ポットで育苗し,本圃に直接定植することで,‘えびす’を12 cmポリポットで育苗するのに比べ育苗および整枝・誘引作業に要する時間を約75%短縮できる.
発育制御
  • 鄭 成淑, 金 基善, 松井 鋳一郎
    2004 年 3 巻 3 号 p. 291-295
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    軟毛なブラシでアブラカンギクにブラッシング処理を行った.処理回数は1日10回,20回,30回で,処理期間は15日行った実験区,または,処理期間は7日,14日,21日で,1日の処理回数は15回に設定した実験区を設けた.草丈はすべての処理区で処理後26日目,顕著に抑制されたが,処理停止後,時間の経過とともにわい化効果は減少した.草丈は15回21日処理区で最も抑制された.分枝長と葉面積はすべての区で抑制された.分枝数は,15回21日処理区と30回14日処理区で増加した.茎と根の新鮮重と乾物重はブラッシング処理によって減少した.クロロフィル含量は,影響が認められなかった.気孔数は,15回21日処理区で最も多くなった.気孔の幅は小さくなったが,気孔の長さには影響が認められなかった.発蕾開始日は,15回21日処理区で6日早まり,花数は増加した.開花数は30回14日と15回21日処理区で増加した.本実験からは品質の高いアブラカンギクの鉢物を生産するには毎日5回21日のブラッシング処理が適当と思われた.
  • 柳 智博, 松田 典子, 奥田 延幸, 小杉 祐介, 曽根 一純
    2004 年 3 巻 3 号 p. 297-300
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    イチゴ品種‘さちのか’と‘アスカルビー’のピンセットで採取した種子の発芽に及ぼすエチレン処理の影響について検討した.両品種ともに,100~1,000 ppmのエセフォン処理を行った種子は,0 ppm処理に比べて発芽率が高まったが,ほとんど全てのもので異常な幼根の生長が認められた.また,‘アスカルビー’では,1,000 ppm 24時間および48時間エチレン気浴処理したピンセット採取種子の発芽率は,無処理に比べて有意に高まった.
    以上の結果から,短期エチレン気浴処理は,発芽不良のピンセット採取種子の発芽を早める場合に有効な技術になるものと考えた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 李 進才, 前澤 重禮
    2004 年 3 巻 3 号 p. 301-305
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    カキ‘富有’の果実を低温5℃,常温20℃に30日間貯蔵し,果肉硬度の変化と呼吸速度,エチレン生成,減量率および抗酸化レベルの変化の関連性を調べた.常温貯蔵中,果実の軟化に伴い,抗酸化酵素のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),カタラーゼ(CAT),ペルオキシダーゼ(POX)の活性と呼吸速度,エチレン生成および減量率が上昇し,抗酸化物質の還元型アスコルビン酸(AsA)含量は減少した.一方,低温貯蔵中においては,CATおよびPOX活性は10日目までは減少したが,その後増加し,アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)活性は徐々に増加した.またAsAは貯蔵15日目までは大きく減少することはなかった.これらの結果から,カキ‘富有’果実の軟化に抗酸化機能が関与していると考えられるが,活性酸素の軟化過程への関与は常温と低温において異なることが示唆された.
普及・教育・利用
  • 佐藤 百合香, 小沢 聖, 石井 孝典, 由比 進
    2004 年 3 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/03/15
    ジャーナル フリー
    一般家庭でのトマトの加熱調理の実態をふまえ,加工用トマトの加熱調理適性を総合的に評価した.
    1.素材が市販の生食用トマトの場合は,ホールトマトの場合に比べ料理の種類が多岐に及んでいた.加熱調理適性としては,加熱後の水気の少なさ(粘稠度)と赤味が重要と考えられた.
    2.心止まり性の23品種・系統を対象に,栽培特性,貯蔵特性を比較した結果,疫病の発生が少なく,栽培期間中や貯蔵期間中の腐敗果率が少ない点で‘とよこま’,‘なつのこま’,‘にたきこま’が北日本地域での栽培に適していた.特に‘とよこま’は,多収で一挙収穫率も低く,栽培特性と貯蔵特性において総合的に優れていた.
    3.上記3品種のうち,‘なつのこま’と‘にたきこま’は果形が収穫期にかかわらず卵形で,現在一般に流通している生食用品種と区別しやすく,加熱後の粘稠度はいずれの品種も生食用品種より優れていた.加熱後の赤味は‘なつのこま’以外の2品種で生食用品種より強かった.以上の結果から,生食用品種を加熱調理している日本の現状では,これらの品種の導入により,トマトの加熱料理の質の大幅な向上が期待できる.
    4.加熱後の粘稠度と果肉部乾物率には負の相関があり,これが今後加熱調理用品種の品種選定や育種素材の選抜のための簡易な評価法として利用できる可能性がある.
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