日本画像学会誌
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55 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
論文
  • 柴田 博仁, 大村 賢悟
    2016 年 55 巻 3 号 p. 274-282
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,業務で頻繁に生じる答えを探す読みにおいて,異なる文書メディア (紙の書籍,デスクトップPC,タブレット端末) を用いて作業スピードや作業の正確さを比較した実験を報告する.最初の実験では20名の実験参加者にテキストマニュアルから答えを探してもらった.結果として,参加者は紙の書籍で最も速く作業を行うことができた.別の実験では,24名の参加者に写真集から写真を探してもった.最初のうち紙の書籍はデスクトップPCに劣ったが,何度も検索を繰り返すうちに紙の書籍で作業するほうが速くなった.いずれの実験でも,紙の書籍では大胆で柔軟なページアクセスが行われ,これが紙の書籍での作業を効率的にしていた.また,いずれの実験でもタブレット端末では迅速なページアクセスが行えず,必要な情報を探し出すに時間がかかった.実験結果をふまえ,紙の書籍での迅速で柔軟なページアクセスに学び,電子書籍でのページアクセスを向上させるための改善策を考察する.
  • 南光 進, 星野 坦之
    2016 年 55 巻 3 号 p. 283-291
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    電子写真技術を応用し,静電潜像に捕獲されるボールの運動状態を観測し,更に数値シミュレーションと理論解析から求めたボールに作用する静電気力と対比して潜像によるボールの捕獲メカニズムを考察した.具体的には,高速度カメラと高倍率レンズを備えた,ボール現像観測装置を考案した.電子写真で行われるトナー現像に代わり,ボールによる現像を試みその様子を詳細に観測した.併せて感光ドラムでのボール現像に対する数値シミュレーションを行い静電潜像と,ボールとの力関係を明らかにした.
  • Isao KOMATSU, Shuichi MAEDA
    2016 年 55 巻 3 号 p. 292-296
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    We have been studying a color change of a silver plate using sulfide solution. In the present work, we explored the possibility that a toner image which was made by a laser beam printer could be used as a mask for the color change of the silver sulfide. We found that a gloss coated paper and an OHP sheet with a cellophane tape were able to be supporting media for the toner images and show good toner transferring efficiencies to the silver plate surface. In addition, the gloss coated paper, which had small Gurley-type air permeability, had advantages in terms of air voids occurrence at the cellophane taped area.
  • 出町 和之
    2016 年 55 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    近年,動画解析技術が急速に進化している.動画技術の実用化として最も普及しているもののひとつに監視カメラがある.監視カメラの主目的は犯罪行為の証拠記録であるが,もしも監視カメラで撮影される動画の未来を予測することが出来れば,犯罪の未然防止に効果を発揮する可能性がある.そこで本研究では,動画の未来を予測する手法を開発した.まず,主成分分析 (PCA : Principal Component Analysis) により,動画を時間で変化する重み係数と時間で変化しない主成分静止画像とに変数分離した.次に特異スペクトル分析 (SSA:Singular Spectrum Analysis) により重み係数の未来を予測し,さらに未来の重み係数と主成分静止画像とを再結合することにより,動画の未来を予測した.ここではその概要について紹介する.
Imaging Today
  • 黄瀬 浩一
    2016 年 55 巻 3 号 p. 304-313
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    我々は毎日,文字·文書を読むことに長時間を割いている.これは,読むことが,我々にとって情報入力の最も重要な手段だからである.Reading-Life Logとは,読まれる文字·文書と読む行為をセットにして解析し,そこから我々の生活を豊かにする情報を取り出そうとする研究の総称である.文書を対象とした場合,アイトラッカで得られた視線などのデータを解析することで,どれだけ読んだのか (万語計,読む行動の検出),からどれほど理解しているのか (理解度や熟達度の推定) まで,さまざまな情報処理が可能となる.シーン中の文字についても,人が何をどう読んだのかによってその人の行動を推定できる.また,指先に取り付けたカメラで文字を認識することによって,人の作業をサポートできる.これらの情報処理の基礎となるのは,画像として取り込まれる外界を認識·検索する技術である.大規模な認識·検索対象を効率的に扱うため,我々は近似最近傍探索と呼ばれる技術を導入している.本稿では,これらの基盤技術ならびにそれを応用したReading-Life Logの成果について報告する.
  • 斎藤 隆文
    2016 年 55 巻 3 号 p. 314-319
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    大量の動画像中の有益情報を効率的に得ることを目的として,一連の動画像中の情報を静止画として再構成する画像生成処理技術について解説する.自動認識による一般的なアプローチと異なり,人間の視覚認識能力を用いることを前提として,内容を効率的に閲覧し判断できるような静止画を作成する.代表的な例として,監視カメラ画像の階層的集約表示,時空間投影による植物生長過程の可視化と解析,乗り物から見える景観のルートパノラマの生成について,紹介する.
  • 岩元 浩太, 石山 塁
    2016 年 55 巻 3 号 p. 320-329
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    NECでは,スマートフォンのカメラをかざすだけで,実世界の様々な対象物を画像認識し,様々な情報に接続する画像認識サービス 「GAZIRU」 を開発した.本稿では,GAZIRUのラインアップのうち,GAZIRU-RとGAZIRU-Zの2つのサービスについて,その背景,技術·実装,そして実用化例を解説する.GAZIRU-Rは,一般商品·文書·建物などの2D·3D物体の大規模画像検索サービスを提供する.独自に開発したコンパクトなバイナリ局所特徴量であるBRIGHT特徴量により,ユーザが自由に撮影した対象物を撮影環境に対して頑健に検索すると共に,100万件以上のデータベースに対しても1秒未満の高速なレスポンスを実現する.GAZIRU-Zは,工業製品·部品に対して,スマートフォンの汎用カメラで写真を撮るだけで偽造品を判定できる真贋判定ソリューションを提供する.モノの製造時に意図せず発生する個体毎に異なる微細な紋様を,ヒトの指紋のように画像化し,個体認証や製造元の識別を実現する物体指紋認証技術を用いて実現している.
  • 馬場 基文, 小野 真史, 片山 茂樹, 佐々木 久幸, 森 達矢
    2016 年 55 巻 3 号 p. 330-340
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    富士ゼロックスでは 「RealGreen」 というコンセプトを目指す姿として掲げ,省エネなどに代表される地球環境負荷低減と,これと相反する快適性や利便性などとを高い次元で両立する技術やサービスの創出を進めている.2015年に市場導入したApeosPort-V/DocuCentre-V C7775シリーズでは,「思考を止めない」 快適な使用感へのこだわりの追求と,「RealGreen」 に 「おもてなしの心」 を加えた商品価値の提供を狙い,カメラを利用した新たな技術を開発して商品化した.情報機器におけるカメラの画像認識技術の活用に着目して開発した 「Smart WelcomEyes Advance」 技術は,富士ゼロックスと東芝との共同開発による独自技術である.情報機器にもカメラ画像認識技術を導入することによって新たな価値提供が継続的に図れると考え,お客様機器アクセスの使用意図検出による自動起動,及びお客様個人検出による操作レス認証サービスにカメラ画像認識技術を活用している.本稿では,この新たな技術の開発について,経緯を含めて紹介する.
  • 矢野 光太郎, 河合 智明
    2016 年 55 巻 3 号 p. 341-347
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    近年の安全·安心に対する意識の高まりに伴い,監視カメラの設置台数は増え続け,監視システム利用の重要性が増している.しかし,映像の確認は主に人手で行われており,膨大な作業が必要とされていた.そのため映像認識技術を活用して監視カメラ映像を自動的に解析する研究が盛んになり,実用化されるようになってきた.これに伴い,監視カメラの映像を防犯目的だけでなく,市場調査や顧客行動パターンの解析に利用しようとする動きも出てきた.本稿では,監視カメラ映像を利用するユースケースについて概観し,人物の認識を中心にそれを実現するための映像認識技術,および,その動向について述べる.また,関連する筆者らの取り組みについても紹介する.
  • 田中 拓哉, 笠原 亮介
    2016 年 55 巻 3 号 p. 348-354
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    製造品外観の良否判定を,画像を用いた外観検査により自動化したいというニーズがある.近年の撮像技術や画像認識技術の発展に伴い,画像による自動外観検査の利用が広がりつつある.本稿では,リコーの有する画像による自動外観検査技術の内,外観検査の性能を競う国内のコンテストで優秀賞を受賞した2つの手法を紹介する.1つ目の手法は,機械学習の一手法である,「半教師あり異常検知」 を用いた手法で,良品のサンプル画像のみから良否判定を可能とするものである.一般に,機械学習を利用するためには大量の学習用データが必要となるが,製造部品の不良品は良品に比べて数が少ないため,十分な量を用意することが困難である.そこで,良品のサンプル画像のみで学習可能なアルゴリズムを開発した.2つ目の手法は,外れ度を表すZ-scoreを改良した,良品の形状などがばらついていても精度良く欠陥検出を可能にする手法である.この手法は,1次加工段階の部品や食品など,良品の形状ばらつきが大きい対象でも高い精度で外観検査が可能である.
Advanced Technology
  • 矢野 浩之
    2016 年 55 巻 3 号 p. 356-360
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    セルロースナノファイバーは,植物細胞の主要骨格物質として,毎日,太陽の光により,水と二酸化炭素から持続的に生産される幅4-20nmのナノ繊維である.セルロース分子鎖が伸び切り鎖となって結晶化しているため,鋼鉄の1/5の軽さで,その5倍以上の強度を有する.また,線熱膨張係数がガラスの1/50以下 (0.1ppm/K) と極めて小さい.次世代の大型産業資材あるいはグリーンナノ材料としてセルロースナノファイバーの製造と利用に関する研究が,今,世界中で活発化している.本稿では,木材など植物バイオマス資源からのセルロースナノファイバーの製造とその自動車部材や電子デバイス部材への応用,およびセルロースナノファイバーに関する日本の状況について紹介する.
  • 古賀 大尚
    2016 年 55 巻 3 号 p. 361-368
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    樹木から得られる幅3-15nmのナノセルロースでつくる紙 「ナノペーパー」 は,プラスチック並の高透明性,ガラス並みの高熱寸法安定性,紙ならではの軽量柔軟性,極微細なナノ空隙構造といった極めて優れた特性を有している.我々はこれまでに,ナノペーパーと先端電子材料を融合することにより,近未来のフレキシブル·ウエアラブルエレクトロニクスに資する 「電子デバイス機能を持つ紙」 を開発することに成功した.本稿では,ナノセルロース·紙ならではの物性や構造を活かした融合戦略により作製した 「電気を流す透明な紙 (透明導電紙) 」,「無線情報を送受信する紙 (ペーパーアンテナ) 」,「デジタル情報を記憶する紙 (ペーパーメモリ) 」 とそれらの優れた機能について詳細に述べる.
  • 黒木 大輔
    2016 年 55 巻 3 号 p. 369-374
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2016/06/13
    ジャーナル フリー
    セルロースナノファイバー (CNF) は,木材や草本植物などの非食用バイオマスから得られた再生可能な材料であり,軽量,高強度,高弾性,低熱膨張,高比表面積などの優れた特徴を有しており,CNFへの研究開発が国内外で進められてきた.弊社では,製紙用薬品で培った化学修飾技術に基づいたCNFの機能化に取り組んでいる.CNFは前述したような優れた特性を示すが,高度に親水性であるため,容易に水または湿気を吸収し,疎水性を持つ樹脂と均一に混合することができない.したがって,工業材料のような広い用途に使用する場合,最適化が必要である.セルロースへの反応性と疎水性部位の両方を有する変性剤により疎水化されることで,CNFは,高い疎水性を有する高密度ポリエチレン (HDPE) 中の分散性を向上することが可能となった.この結果,複合材料の引張強度,曲げ強度,及び弾性率が向上し,線膨張係数が減少した.本報では,この材料を熱可塑性樹脂と発泡材料に応用した例について紹介する.
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