ヒトの耳をかたどったコラーゲン上に軟骨細胞を培養させ, ヌードマウスに移植する.やがて軟骨は細胞外基質を形成し, 生体の耳の土台が形成される.そして再びヒトへ移植することにより, 失われた器官を再生する.これが今注目されている再生治療, すなわちTissue Engineeringである.いまや耳だけでなくクローンブタを用いた心臓, 指, 脳の一部など様々な器官が一つのパーツとしてヒトに対する治療に利用されはじめている.このように, 組織や細胞の再生機能を応用したTissue Engineeringの技術の発達には, 遺伝子工学の発展とともに発生学の知識がそのバックボーンにある.当然のことながら, われわれの歯科領域でのTissue Engineeringの技術の応用も可能であり, 顎骨や歯の再生を遺伝子操作によって誘導できる技術の確立の可能性も十分考えられる.特に, 歯の発生に関する最近の研究には目覚ましい進展がみられる.そこで, 本稿では歯の発生のメカニズムについてふれ, 歯の再生治療の展望について最近の研究成果とともに概説する.
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