日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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25 巻, 1-2 号
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  • 上濱 正
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 22-34
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    顎堤 (歯槽骨, 顎骨) 吸収により, 下顎偏位を伴う機能障害を呈する無歯顎患者が増加している.このような患者は, 低く (低位咬合) , 小さく (デンチャースペースが不足) , 咬合平面 (角度や排列位置) が乱れた総義歯を装着していることが多い (形態⇔機能の負の循環) .そのため義歯の不安定 (維持, 支持の不足) を生じ, 下顎偏位を起こし (顎関節の偏位と筋緊張) , 咀嚼筋群, 口腔周囲筋や舌の不調和を生じ, 下顎位を不安定にしている.したがって, 筋-顎関節-咬合の機能的咬合系に乱れが生じた機能障害を呈する患者には, 印象・咬合採得のみで総義歯を製作するよりも, 治療用義歯を応用した無歯顎治療を行ったのちに総義歯を製作することが必要と思われる (総義歯製作から, 無歯顎治療へ) .
    治療用義歯の具有すべき条件としては,
    (1) 維持 (印象で4種類+治療用義歯の機能圧で2種類=6種類) , 支持 (顎堤負担+口腔周囲筋・舌による負担) を有する (安定性)
    (2) 適切な咬合平面 (機能を取り込み, 生体に調和させる)
    (3) 筋平衡, 咬合平衡を満たすデンチャースペース (高さ×幅=体積: マウスボリュームの中に, デンチャースペースが存在)
    (4) 粘膜 (咀嚼粘膜, 被覆粘膜の比率, 特性を考慮) に対する適合性
    (5) 義歯の安定性, 摂食・嚥下機能を重視した人工歯選択と排列,
    (6) 安定した下顎位
    これらを満たすことで, 形態を回復させると機能が改善してくる.さらに機能が改善することで形態が完成し, 顎口腔機能は再建されると思われる (形態⇔機能の正の循環) .今回は, 無歯顎治療に治療用義歯を応用したデンチャースペースの回復について, わかりやすく解説したい.
  • 加藤 武彦
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 35-40
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    さまざまな歯科臨床においての患者満足度調査でいつも低位にあるのが総義歯臨床である.ましてや在宅往診においておや.なぜ!大学で教わったことが臨床で役に立っていないから?そこまでの技術を卒業までに教えられない….もっともだと思う.しかし, 問題の一つに「現状にそぐわなくなったGysi歯槽頂間線法則」があるのではないだろうか.
    咬合のことを考える日本顎咬合学会であるからこそ, この問題を正面から取り上げてほしい.
  • 後藤 有志
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 41-44
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大幅な顎堤の吸収を伴う全部床義歯の症例に対する創意工夫の1つの選択肢として「軟質レジン」がある.その中でも比較的長期間の使用に耐えると思われる「Vertex Soft」というマテリアルを選択し, 良好な結果を得ることができた.製作についてのll夫や問題点を含めて紹介したい.
  • 武内 清隆
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 45-52
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    日常臨床において, 臼歯部咬合崩壊によるすれ違い咬合を呈している症例に対しては, インプラント治療及びパーシャルデンチャーによる治療を適用し, 咬合の回復を図るのが一般的である.特にインプラントの予知性が確立されつつある現在では, 予後に不安が残る歯牙は抜歯し, インプラントを植1/するという考え方が主流になりつつある.しかし様々な理由で, すべてのケースにインプラントを適川する事は不可能であることから, できる限り歯牙の保存に努める必要性は今もって不動のものと思われる.
    今回提示させていただく症例は, 臼歯部咬合崩壊の原因によりすれ違い咬合の兆候を呈していたことから, 歯牙保存を最優.先に考えつつ, デンタルインプラントをアンカレッジに用いたマルチブラケット法にて三元的な歯牙移動を行っている.また欠損部においては, 歯牙の遠心移動及び自家歯牙移植を用い, 積極的に咬合再構築を試みた, ここに, 補綴終了後2年の経過を報告したい.
  • 中川 考男, 田村 勝美
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 53-58
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    セレックシステムはオールセラミックスの修復物をチェアサイドで製作する臨床用として実川化された世界初のデンタルCAD/CAMシステムであるが、近年ラボワークのCADICAM化を実現するセレックinLabシステムが開発された。従来から審美的に優れていると評判のインセラムシステム (VlTA社) の問.題点、煩雑で長時間かかるスリップ焼成をCADICAMに任せることにより築盛に専念することで、よりよいオールセラミックス修復物を製作することができるようになった。
  • 土師 幸典
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 59-63
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    補綴修復は, 歯冠修復物の製作技法として1907年に導入された鋳造法によって始まったと言える.これにより, 鋳造歯冠修復は飛躍的な進歩を遂げ, 歯科う蝕治療に大きく貢献した.その後, 審美的な欠点を改善するため金属焼付ポーセレンが開発され, 審美歯科の分野を切り開いた.すなわち, 20世紀は金属及びポーセレンが主体の修復であり, 良い材料とは, 硬く壊れない材料とされていた.しかし, このように生体に比べ硬く壊れない材料は, 長い臨床経験より支台歯や対合歯への影響が懸念されており, 生体の経年的変化に追随できるような材料が望まれている.21世紀に求められる修復材料の条件は生体との同質性であり, こういった時代背景に答えたのがエステニアC&Bである (図1) .
  • 日高 豊彦, 高橋 健
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 64-71
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    修復治療を行う場合, 残存歯質の色調や残存量に問題がなければポーセレンラミネートベニア, インレー, オンレーといったエナメル質に近似した光特性を持ったポーセレン (長石質の材料) による接着修復がもっとも審美的処置であることに異論はないであろう.また, 近年の接着技術の発達により修復歯の形成形態が大きく変化し, 従来の修復処置の分類が適応しづらくなっている.
    Magneは平均的な長石質の材料は残存歯質の支持なしで5.5mmの高さまで使用する上で問題を認めなかったとしている.つまり従来考えられていたよりもフルカバレッジ (全部被覆) の適応症は少ないことが明らかになってきた.もっとも歯冠長の長い中切歯が日本人で平均11.7mmであることを考えると, 歯冠の50%以上を喪失した場合とブリッジの支台歯のみがフルカバレッジクラウンの適応症であると考えられる.
    そこで今回は, 適応症が拡大したポーセレンラミネートベニアについて, 臨床例を提示しながら考察する.
  • ―クリティカルに考える―
    下野 正基
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 72-77
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    これまで報告された結果をクリティカルに考える (疑ってみる) ことによって, 歯周組織再生のメカニズムを検証した.治癒過程を中・長期的に考えると, Melcherの仮説は必ずしも正しくないと考えられた.歯周治療後に生じる長い付着上皮は、その増殖能の経時的変化によって, down growthから結合組織付着に変わることが示唆された。
  • ―人間工学と心理学を応用したシャープニング
    西野 博喜
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 78-83
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回, 提唱するシャープニング法は人間工学ならびに心理学的見地から考案されたものである.
    まず, 実体顕微鏡を用いて視覚による情報を獲得した.微小部分での操作を観察しながら作業できるようになり, 従来の盲目的作業から脱却できる。そして従来法では不可能であった知覚運動学習が実現するのでシャープニングの技能向上につながる.
    次に, 小型の回転砥石と技工用エンジンを使用し作業の効率化を図り, さらに適切な支持を確保することで手の安定性を得た.これよりシャープニング時に生じる手プレ (運動時振戦) は大幅に減少する.
  • 山田 邦晶, 番匠 千津
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 84-89
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    歯牙保存の限界を考える場合, 歯内療法における難症例の一つに歯根吸収症例を思い浮かべ, これらは, 大きく二つに分けている.
    1.外部吸収症例 (病変が大きく歯根吸収も予想されるものも含む)
    2.内部吸収症例
    これらを処置する際, 通常は根管の拡大, 清掃, 形成, 充填を最大限に的確に行うことを目指し, 症例に応じ水酸化カルシウム療法などを行うことを選択肢とするが, これらの方法では, 非常に多くの時間と労力を必要としたりする場合があり, また歯槽骨内にとどまらず, 歯周組織にまで及んでいることも少なくない.その場合の治療法の選択肢として, 再植や移植または, 外科的歯内療法が存在すると考えている.
  • 石幡 伸雄, 野村 義明, 水谷 紘
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 90-104
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    咬合力をコントロールすることが顎口腔系を健全に保つことにつながると言われている.しかしながら, 顎口腔系の如何なる力に対応すべきかがこれまで明確にされていなかった.われわれはかみ癖というもの注目して, かみ癖に由来する咬合力をコントロールすべき力であると考えた.かみ癖による力は生理的な力ではあるが, この力の存在のために健常とされる顎口腔系においても, 歯列上の負荷の加わり方が均等ではなく大きく異なっている.そして, この歯列上における負荷の不均一性を生じさせるかみ癖をコントロールしなければ, 咬合力のコントロールはできない.そのことは, かみ癖側の下顎頭に加わる後上方への力を除去しなければならないということを意味する.すなわち, 蝶番運動を主体とするのではなく, 滑走運動を主体とする下顎の運動を行うことが, 後上方への力を除去することに通じる.
    今回はそれらの事実をふまえて, 咬合力をコントロールするための基本となる考え方, ならびにかみ癖の矯正法について述べた.
  • 正司 喜信
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 105-108
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    歯科医師は, 長年にわたり口腔内の健康維持に関与してきた.しかし, 今後将来の歯科医療は単に歯や歯周組織にとどまらず口腔・顎・顔面に生じる疾患や病変の診断と治療・予防について責任を持つものである1) .それらの疾患のひとつに顎関節症があるが, 口腔顔面領域に疼痛を発生させる病態には, 実にさまざまな可能性がある.歯科の日常臨床における疼痛の訴えは, その多くが歯や口腔粘膜あるいは顎関節や咀嚼筋由来のものであるが, 別の器官も疼痛の発生源となり得る.したがって, まずどの器官から疼痛が生じているのかを見極めること, つまり鑑別診断が重要となる.顎関節症と他の口腔顔面領域に発生した疼痛障害をどのように鑑別すべきかを具体的に解説する.
  • 高木 千訓
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 109-117
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    バイオロジックデンチャーは, ハイドロキャスト材を用いた方法である.この方法で生じる生物学的反応は, 中心位咬合位に向かう反応である.一度で到達しない場合, 習慣性咬合位にとどまることなく, 再び中心咬合位に向かって移動する.中心咬合位に到達すると, 咬合の変化を生じない, しかも後調整のない入れ歯ができる.
  • 武井 賢郎
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 118-123
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    中等度から重度の歯周病患者や歯牙叢生の著しい患者の治療は治療行為の難易度もさることながら治療期間の問題もあり, 受け入れを拒否する患者を経験する.そのような時に治療計画を変更するのではなく疾病の病態を把握し, 最低限その疾病の進行を食い止めるための処置としてSequential Treatmentの第一段階のステージを設定し, そのステージで経過観察をしながら徐々に難度の高い治療を追加し, 最適な治療計画のゴールに結びつける方法をとることがある.当稿では第一ステージでしなければならない処置とは何かを症例を提示し, 報告する.
  • 平場 勝成
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 124-131
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    外側翼突筋上頭と下頭の筋電図を段階的噛みしめ時と段階的開閉口運動時に記録した.上頭は閉口筋的活動を, 一方下頭は開口筋的活動を示した.上頭では伸張反射様筋電図応答が認められた.この伸張反射様応答の機能的意味は, 関節頭を後方に偏位させるような力に対抗して関節を安定した位置に保つスタビライザーのような役割を担うものと考えられた.この考えは, 関節構造の解剖所見からも支持される.また, 上頭は関節頭が関節窩内に存在し, 前後的移動運動を示さない蝶番運動時に下顎回転角度と直線的な反比例の筋活動の変化を示した.このことから, 上頭は関節頭と関節円板の相対的位置関係の調節に深くかかわっていると推測された.
  • 松本 和久
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 132-137
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    臼歯部の崩壊により咬合高径が低下した症例に対する治療は困難で, さまざまな治療方法を組み合わせて治療することが少なくない.
    本症例は, 左側咬合高径の減少に伴い顎偏位を起こした症例に対し, 保存不可能と診断した大臼歯を抜歯前に矯正治療により整直, 咬合高径の回復および顎偏位の改善を行うために利用した.顎位が改善した後に臼歯を抜歯, 確実なボステリアサポートが得られるよう欠損部にはインプラント補綴を選択した.本症例のように矯正治療, 補綴治療, インプラント治療等さまざまな治療法を組み合わせて行う場合, 診断が重要であることは言うまでもないが, 的確な治療計画の立案が治療結果を左右することになる.
  • 阿部 博人
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 138-143
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    上部構造を製作する際, クラウンカントゥア・咬合面形態などさまざまなことに注意が必要であり, このようなことを決定づけていくのがプロビジョナルレストレーションである.
    プロビジョナルレストレーションは一般的には即時重合レジンが使用されるが, インプラント治療においてはプロビジョナルレストレーションを長期間装着する場合があり, 即時重合レジンのプロビジョナルレストレーションでは対応できない場合がある.そこで咬合面をメタルにし, さらに下顎運動を観察するために咬合面にサンドブラスト処理を施したプロビジョナルレストレーションを製作した.
    メタルプロビジョナルレストレーションを用い経過観察をして咬合面形態を探っていく過程を報告する.
  • 神田 省吾, 竹内 宏行, 山上 哲賢
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 144-147
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1991年から臨床応用されたPOI2ピースインプラントは, 良好な臨床成績を収めている.今回著者らは, 予後不良症例について, 臨床的検討を加えて報告する.
    患者は67歳女性で残存インプラントを使用した補綴物作製のため, 某病院歯科より紹介受診となった.傾斜埋入されているため, 上部構造物はアングルポストを使用し, キーアンドキーウェイを使用した固定式補綴物が装着されていた.処置として, まず病院にて不良インプラントの除去と根歯の抜歯, および両側遊離端義歯の作製をしてから当院に受診させるように指示した.8月27日, 当院受診時, パノラマX線写真にて34残根が存在していたので, これを抜歯.前歯部ブリッジ除去後, 両側遊離端義歯を増歯修理, 31, 45部のフィクスチャーにアタッチメントメールを装着し, 即日, 暫間オーバーデンチャーとした.43部のフィクスチャーは平行性から, 37部のフィクスチャーについては, 長期的安定が期待できないため, 使用しなかった.粘膜治癒後, オーバーデンチャーを新調, 現在経過良好である.
    結果
    1) 傾斜埋入法を多用することは補綴処置を複雉にし, 術後管理を困難にする.
    2) 即日補綴処置にはボールアタッチメントが有効であった.
    3) インプラントなどの長期にわたるフォローが必要な症例においては, カンファレンスなどで患者情報の共有化が望まれ, また患者情報の共有化により主治医の交代を円滑にできると, 思われる.
  • 牧野 賢嗣, 松田 哲, 荒木 久生
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 148-158
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    オッセオインテグレーティドインプラントの長期的な予知性が証明され, インプラント治療が予知性の高い治療法として認知されている.特に遊離端欠損症例では, インプラント補綴がもっとも予知性の高い治療法と思われる.今回, 下顎両側臼歯欠損部にインプラント, 上顎はオーバーデンチャーによる咬合再構成を行い, 良好な結果が得られたので, 若干の考察を加え報告する.
    症例は59歳の男性である.義歯作製を主訴として来院.初診時, 33~7, 5~578が残存し, 慢性歯周炎, 根尖性歯周炎およびカリエスを認めた.上顎には義歯, 下顎には適合不良な補綴物が装着され, 右側臼歯部には咬合支持がなく, 咬合は不安定な状態であった.歯周基本治療として, 予後不良と思われる7, 58を抜歯, スケーリング, ルートプレーニング, カリエスコントロール, 根管治療および治療用義歯作製を行った.再評価後, 上顎残存歯に歯周外科処置, 下顎欠損部に自家骨移植とGBR法を併用したインプラント埋入を行った.二次手術時にインプラント周囲角化組織の獲得, プロビジョナルレストレーションにて咬合機能の回復後, 最終補綴へ移行した.また, 上顎は残存歯に磁性アタッチメントを用いたオーバーデンチャーとした.現在, 歯周組織・咬合ともに安定しており, 良好に経過している.
  • 三次 正春
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 159-172
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Vertical bone defects of the atrophic alveolar ridge have a negative impact on function and aesthetics. Horizontal ridge atrophy makes difficult to place dental implants that can be appropriately restored. Guided bone regeneration, bone grafting and distraction osteogenesis are well-accepted options for alveolar ridge augmentation.
    The purpose of this article is to discuss techniques developed for vertical, horizontal and transport distraction of the alveolar ridge and their indications.
    Distraction forces applied to bone also create tension in the surrounding soft tissue, initiating a sequence of adaptive changes turned distraction histogenesis.
    Therefore, this method is considered a type of tissue engineering by which the surrounding soft tissue is simultaneously increased.
    Indications for Alveolar Distraction Osteogenesis:
    * Partial defects of the alveolar ridge
    * Atrophic bone segments in the mandible and maxilla
    * Simultaneous Sinus lift and vertical distraction for maxillary augmentation
    * Vertical correction or replacement of edentulous segments
    * Local open bite (Dentulous Segment Distraction)
    * Assisted eruption of ankylosed impacted tooth (Dentulous Segment Distraction) Repositioning of malpositioned implants
    Limitations of Alveolar Distraction Osteogenesis:
    * Contraindicated in patients with osteoporosis
    * Maximum transport segment width is limited in accord with size of distraction device.
    * Minimum transport segment height is approximately 5 mm
    * Inadequate bone volume in cases of severe mandibular atrophy due to the risk of fracture
    * Patient cooperation Alveolar distraction osteogenesis offers an alternative treatment for three-dimensional ridge augmentation avoiding donor site morbidity. Its indications may be expanded if combined with standard bone grafting techniques.
  • 室木 俊美, 西多 直規
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 173-178
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 口腔インプラント治療は, 基礎および臨床的研究から子知性の高さが証明され, さまざまな顎骨形態に対して行われている.しかし, 上顎臼歯部の場合, その解剖学的特長から予期せぬ失敗に終わる場合も少なくなく, 埋入手術が困難な場合は, 予知性の乏しい部位とされている.
    今回われわれは, 当院開設の平成9年10月から平成15年12月31日の6年2ヵ月に経験した症例から, 特に, 上顎臼歯部に埋入されたインプラントの手術法とその予後について分析した.
    総患者数は, 138名 (22.1名/年間) , 手術件数は166例 (26.6例/年間) , 埋入本数は417本 (5.6本/月間) であった.このうち, 上顎埋入本数は, 148本で全体の約35.5%を占め, 臼歯部本数は77本 (右側43本, 左側34本) で上顎前歯部とほぼ同数であった.
    手術法別での検討は, 非定型的埋入手術が60本で78%を占め, 内訳は, 歯槽頂アプローチによるサイナスフロアエレベーション (Bone Added Osteotome Sinus Floor Elevation: BAOSFE) がもっとも多く30症例47本, 側方アプローチによるサイナスフロアエレベーションは2症例3本, リッジエキスパンジョン法が1症例2本であった.また, 定型的埋入手術は, 7症例17本で22%であった.
    failure症例の検討では, 早期型異常 (early failure) が5本, 遅延型異常 (latefailure) が3本であった.これらは, 定型的埋入手術で行ったものが2本, 非定型的埋入手術が6本であり, これらの原因についても検討した.
    ソケットリフト法 (BAOSFE) が多かったため, 低位上顎洞と超低位上顎洞症例に対する手術法の違いと, それぞれの手術法における移植骨の経時的な変化を術後のCTからも観察した.
  • 武山 治雄
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 179-184
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    矯正治療には, 改善されるべき問題がいくつか存在する.矯正治療中にもっとも大きな不満としてあげられるのは処置直後の痛みである.この痛みを改善するための方法として, 音波歯ブラシによる歯肉マッサージを動的矯正治療患者に対して行った.歯肉マッサージの方法は上下歯肉の齦頬移行部の最深部をブラシで2分間, 合計4分間マッサージすることとした.
    痛みを簡便に評価する方法として食事に関連した質問表 (O~5段階を点数として評価) を作成し, 動的治療が開始直後の患者群および治療がある程度進行していた群に対してアンケート調査を行った.その結果, 音波歯ブラシに歯肉マッサージを行った群は点数が0になるのに要する日数, 治療処置後の点数変化について有意差が認められ, 疼痛緩和効果があることが示唆された.
  • 山添 清文, 山添 佳奈子, 山添 清
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 185-192
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    顔面非対称症例の多くは外科的矯正治療の適応となるが, やむを得ず矯.正単独で治療を行わなければならない場合がある.
    本稿では, 骨格性下顎骨偏位の認められた12歳の女児の矯正治療について報告する.患者はすでに第一小臼歯が抜去され, 矯正装が装着されており, 転居に伴う転医により来院した.骨格性の下顎骨/扁位が著しいため外科的矯正治療の適応と考えられたが, 患者の同意が得られず, 歯の移動のみで校合を改善することとなった.
    動的治療後, 骨格性の問題は解決されなかったが, 容認できる咬合状態が得られ, 保定中もほぼ安定していた.
    本症例のような骨格性偏位症例は, 成長に伴い骨格的な問題が増悪する可能性があり, 治療開始前の診断および慎重な治療.方針の検討が重要と考えられる.
  • 山地 正樹, 山地 良子
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 193-202
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々臨床家が歯科治療において目指すのは, 単に疾病を治療するのみではなく, 治療後の状態を持続させることである.それらは, 結果として患者の健康増進に寄与し, ライフステージにおけるQ.0.L.を高めることにつながる.
    近年成人矯正が増加する中で, 歯周, 審美を考慮した治療が求められる.歯周病や欠損歯列では, 歯牙が移動し, 顎位が偏位しやすくなるため, 咬合崩壊へとつながる場合がある.咬合再構築のためにも歯牙移動が求められる.
    矯正治療を行うにあたり, 形態や審美が改善しただけでは十分とは言えない.そこに機能の裏付けがなされて初めて保定やメインテナンスがしやすくなる.歯周病や咬合崩壊の原因を顎運動や発語等の機能から探り, それらを改善することが咬合の安定につながると考えられる.
    よい形態がよい機能を作り, よい機能がよい形態を作る.それらは顔の表情のみならず患者の精神状態まで変え、全身の健康によい影響を与えQ.0.Lを向上させる.
  • 近藤 隆一
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 203-207
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ホワイトニングが登場して審美的な構成要素のひとつを操作できるようになり, 歯科医療のフィールドは確実に広がった.現時点ではホーム・ホワイトニングが最良の結果を得られるが, 即効性に劣る薬剤を使用するために治療途中で挫折する患者が出現する.あくまでも「仮説」だが, 1.ホワイトニングではプラークやステインが遅延要因として作用するため, トレー装着前にプラーク・コントロールを励行させて外因性因子の分解に薬剤が消耗される無駄を省く.2.薬剤を歯面まで確実にデリバリーしなくてはならないが, バイオフィルムは阻害因子となるためトレー装着前に取り除くことが望ましい.それらの理由により, ソニッケアーの使用はホワイトニングの術前処置という認識が必要かもしれない.
  • 飯田 しのぶ
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 208-214
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    う蝕や歯周病は本来まれな病気と言われているが, 歯科医院に来院される患者さんの多くはう蝕の経験があり, 歯周組織に炎症を持っている.これらの疾病が進行した場合, 治療は困難になり, 歯を喪失する可能性が高くなる.このような臨床経験から, 私は, 疾病予防が必要であると感じている.
    口腔衛生指導, フッ化物塗布およびPMTCのような予防を実行する場合, 患者さんのリスクを把握することが重要である.それにより, 適切な予防を行うことが可能になる.
    現在のところ, 歯科医院へ予防のために来院する患者さんは少なく, 多くは治療のために来院している, そのような患者さんと一緒に予防を行うために, 診療室のスタッフ全員が協力する必要がある.そして, 各々の患者さんに合わせた予防プログラムを計画することが大切である.
    そこで, 景山歯科医院で実際に行っている予防方法についてご紹介したいと思う.
  • 斎藤 一郎
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 215-218
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    涙が減少して目が乾くドライアイと同様, 最近口の中が乾くドライマウス (口腔乾燥症) の症状を訴える人が増えている.ドライアイ研究会によれば, 日本に約800万人存在するとされるドライアイ患者の多くがドライマウスに起因する症状を呈するとの報告や, 欧米の疫学調査では人口の約25%が本症に罹患しているとの結果から算出すると, 本邦では3, 000万人の潜在患者がいることになる.しかしながら, 本症の受け皿となる医療機関は少なく, 患者さんはどの科を受診すれば良いのか分からないのが現状である.本来, ドライマウスは歯科医療従事者が適切な処置を行うことによって症状を緩和し, 進行を止めることができる.本稿では唾液の役割とドライマウスの原因について概説する.
  • ―「勝ち組」になるための10大条件―
    荒井 敬彦
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 219-225
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1.まず, 「診療理念」を明確にすべし.
    2.自医院の現状分析のための「患者さんアンケート」を実施すべし (患者満足度5段階に照らす) .
    3.周辺地域の競争相手に対して, 自医院の「強み」「弱み」を明確にすべし.
    4.「患者さんアンケート」分析に基づき「改善プラン」を策定すべし (KJ法による) .・医療サービス面・医業サービス面
    5.「改善プラン」のPDCAサイクルを廻すべし.
    6.単年度及び3~5年の中・長期事業計画を立て, 毎年, 分析・反省を繰り返すべし.
    7.「投資計画」はハードウエアばかりでなく, 従業員満足度 (ES) の改善も含めたものとすべし.
    8.「コミュニケーション」を意識した行動をとるべし.
    ・対患者さん
    ・対スタッフ従業員
    ・対地域社会 (潜在需要の掘り起こし)
    9.「数値目標」による「目標管理」を徹底すべし.
    10.院長は「問題解決型リーダー」であるべし.人に思いやりと優しさを!
  • ―自由診療を無理なく増加させるために―
    石川 明, 芳賀 浩昭, 田代 香織
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 226-232
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれ臨床医を取り巻く状況は年々厳しさを増している.そのために日々の診療の中に自由診療を取り入れていくことは, 歯科医院収入の増加はもちろんのこと, 保険診療の質を向上させ, 患者さんに選ばれる歯科医院作りをしていくためには避けては通れない道だと思われる.自由診療の増加のために, 知識の獲得やエビデンス・ベイスト・メディスン (Evidence Based Medicine: EBM: 科学的根拠に基づく医療) に基づく治療技術の向上は必要であるが, それらに加え, われわれは, ヒューマン・ベイスト・メディスン (HBM: Human Based Medicine: 人間の人間による人間のための医療) に基づいた自由診療マネージメントを提唱した.これにより歯科医院のブランドイメージを高め, 自由診療化を無理なく進めていくことができると思われる.
  • 角岡 秀昭
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 233-241
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1990年代までの歯科界は技術さえきちんと習得し, 努力さえしていればある程度の患者数は望め, 経営もそこそこやれていた時代であった.厳しい時代になるとは以前から言われていたが, まだ現在のように切羽詰った状態ではなかった.
    患者数からいうと, 15年前くらいのバブルの時代はまだ多かったが, 約10年前より徐々に減り始め, 5年程前からは日に日にどこの歯科医院も激減してきているようだ.
    経営収入も, 国の医療費の削減と国民の財布の紐の堅さが重なり, 15年前より7割近くに落ちている歯科医院が多くなってきた.以前は歯科技工士, 歯科衛生士を雇ってやっているといった院長が多く, 俺についてこい的殿様感覚で自分の医院を経営してきた院長が多かったように思える.
    しかし, この厳しい時代になると, 今度は患者さんが病院を選ぶ時代になり, 院長の力だけではどうしようもなくなった.スタッフとともに頑張るしかない時代になっている.これからの歯科医院は総合力で勝敗が決まるだろう.
    本論文において, これからの時代に生き残るためのスタッフ管理について述べてみたい.
  • 篠原 俊介
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 242-247
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    咬合崩壊した口腔を長期間, 健康に保てる修復処置をするには, さまざまな治療術式を駆使しながら, 段階的に最適なゴールまで到達しなければならない.そのためには患者と歯科医師は治療の方針に対して共通認識を持ち, 疾病への責任を共有することが, これからの医療では不可欠になると考える.症例を通して解説する.
  • 加藤 久子
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 248-254
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    歯周治療を成功させるためには, 歯肉縁下歯石の探知と歯肉縁下歯石のスケーリングテクニックは絶対に必要なものである, このため私が卒業した米国の4年間のデンタルハイジーンプログラムでは, 歯周治療に必要なスケーリング, 歯石探知テクニック等, インストラクターから徹底した指導を受ける.
    歯根面の微細な歯石を識別する能力を身に付けるためには, つねに正しいエキスプローラーの適合が必要とされ, 歯根分岐部, 溝, 隅角部などの解剖学の知識が必要である.これはスケーリングにおいても同じことがいえる, スケーリングを成功させるにはこの解剖学の知識に加え, 到達性, 適合性, 術者の能力が関与する.
    効果的なスケーリングを行うために, 術者のポジション, それに伴う歯科衛生士として必要な知識が必要である.また, 米国では歯科関連企業が新しいタイプのスケーラー, 器具, 器械を毎年新しく考案している.歯科衛生士がスケーリング時に直接使用するハイテク器械等, アメリカの歯科事情について述べたいと思う.
  • 千葉 栄一, 新谷 明喜
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 255-263
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    本稿では, アラビアにおいて歯科を含めた医学が発展した理由, ならびにアラビア医学の具体的な内容について, 医学の歴史から掘り下げた.その結果アラビア医学においては, 歯科治療に関する記録が比較的残存しており, 現在まで応用されている治療法や予防法があることなどを報告した.また西洋医学 (現代医学) 自体もアラビア医学を基礎として発展してきたことを明らかにした.
  • ―“咬合をつくる作業”についてのベーシックな提案―
    川崎 従道
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 264-280
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 小嶋 壽
    2005 年 25 巻 1-2 号 p. 281-284
    発行日: 2005/04/18
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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