日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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総説
  • 永田 和弘
    原稿種別: 総説
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 5-35
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    咬合の学説史は,咬合器の歴史をもって跡づけることができる.とくに下顎運動とりわけ関節顆頭の運動の学問的探求は,咬合の学説史の中核をなす.そこで,顆頭運動の研究と咬合器の顆路機構の変遷について検証する.この総説では,いったん後世の解釈を排し,原典にあたってその時代の視点から考察する.従来の学説史がどれほど原典から乖離していたかを明らかにする.まず,Bonwill が,客観的な観察データをもとに咬合の原理体系を追求し,ヒト顎関節と同様に左右二つの関節を持つ解剖学的咬合器(1864)を残した.Walker は咬合の原理性・法則性よりも,実測を優先させて,ヒト咬合の左右差や個体差を再現すべく,顆路傾斜が調節でき,作業側顆頭の前後運動も再現する生理学的咬合器を開発した(1897).Walker は研究の途上で,Luce の顆頭運動の精緻な実測(1889)研究を知ったが,それを超えて顆頭の運動形態と咬合面形態との関連性を明らかにした.Walker は顆頭間軸上に支点(wippunkt)を置くことによって作業側顆頭の前後調節ができるメカニズムを考案したが,これは今日,等閑視されている(このメカニズムは今日の顆頭間距離の調節にあたる).Gysi はWalker 咬合器を継承かつ改良して Wippunkt 咬合器(1908)を発表した.Wippunkt 咬合器は顆路傾斜度と作業側顆頭の前後調節が可能な咬合器で あったが,同年に発表されたベネット運動の論文により,これが再現できない問題を突き付けられた.苦節4 年,顆頭運動の計測の結果,Gysi はベネット運動が再現できるAdaptable 咬合器を開発し(1912),さらにその顆路調節機構を平均値に固定したGysi Symplex(1914)を世に送り出した. さて,Bennett は顆頭運動について「歯を接触させながら側方運動させた場合と,歯を接触させないで側方運動させた場合とでは顆頭の運動軌跡は異なり.しかも,歯を接触させながら側方運動させた場合は作業側顆頭は外側のみならず下方にも運動する」という事実を見出したが,これは補綴学会において無視され,今日なお単なる運動方向へのシフトという解釈が定着している.また,Gysi Adaptable 咬合器はアメリカでは評価が低く,殆どの文献がAdaptable 咬合器を誤ってWippunkt 咬合器と呼称し,日本でもその影響からWippunkt 咬合器の呼称で定着している.Gysi はその後,コンダイラー型でベネット機構を独立させ,作業側顆頭の前後規定は切歯ガイドに規定させるTRUBYTE 咬合器(1926)を開発した.TRUBYTE 咬合器はHanau university 咬合器やStuart 咬合器に影響を与えた.【顎咬合誌 40(1・2 ):5-35, 2020

  • 福井 和德F, 山野辺 晋也, 川鍋 仁
    原稿種別: 論説
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 36-44
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    子どものからだがどこかおかしいと言われはじめた1960 年代より今日に至るまで,その「からだのおかしさ」は解決されるどころか,次第に多くの子どもにみられるようになってきた.とりわけ,「ストレートネック」の言葉に代表される姿勢の問題は,頭部の重心が前に移動してしまうために,頭を首の筋肉だけで支えなくてはならない.結果,筋肉が緊張し,慢性的な首の痛みや肩こりなどの症状が現れる.姿勢が悪いと見た目がよくないだけでなく,子どもの成長や不正咬合,呼吸機能の低下および学力にまで影響が出ることがわかっている.近年,歯科矯正学の分野では,顎と頭位,睡眠時無呼吸,頭,首,肩に生じるいくつかの症状との関係に関心が高まっている. 頭蓋の骨格は頸椎,胸椎および腰椎によって支えられているため,頭の位置は全身の姿勢とある程度の生体力学的つながりを持っている可能性がある. したがって,顎位,頭位,および姿勢を確認することは重要なことである. 【顎咬合誌 40(1・2):36-44,2020

症例報告
  • 江本 寛, 島田 卓也
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 45-52
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    全顎にわたる補綴治療を行う場合,顔貌などから明らかな垂直顎間距離の短縮がない場合には,歯冠修復の便宜上の咬合挙上は,最少限にすべきだと考えられる.しかし,臨床歯冠長の短い場合には,咬合高径を温存するか,あるいは咬合を挙上するか,判断に苦しむことが多い.本症例(患者:58 歳,女性)は,大臼歯部の咬合支持をほぼ失っていたために全顎的な補綴処置で機能回復を計画したが,診断用ワックスアップにより咬合挙上の得失を慎重に検討し,歯冠長が短かかったにもかかわらず咬合高径を温存したまま全顎的な補綴処置を行った.その結果,歯質・歯髄の保存を重視した,ミニマムインターベンションの全顎的補綴治療を実現することができた. 【顎咬合誌 40(1・2):45-52,2020

  • 菅崎 紳
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 53-59
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    本症例(患者:60 歳,女性)は,前歯部は一部反対咬合でアンテリアガイダンスがなく,臼歯部は両側の咬合支持を喪失に対して,パーシャルデンチャーによる咬合再構成で機能回復した症例である.このような症例では,矯正治療による前歯の被蓋(anterior coupling)の回復とインプラントなどによる確実な咬合支持の回復が望ましいと考えられる.しかし,患者の希望により,次善の対処策として,前歯部は歯冠補綴による形態修正,臼歯部はオルタードキャストテクニックにより,粘膜と維持歯との被圧変位差を補正し,両側遊離端の部分床義歯で咬合再構成を図った.診断用ワックスアップを元に製作したプロビジョナルレストレーションを装着し,適切な下顎位を試行錯誤的に模索した.半調節性咬合器上のセカンドプロビジョナルレストレーションで,前方および側方運動時の臼歯離開(posterior disclusion)が得られたことを確認し,最終補綴に移行した.最終補綴装置装着後,6 年が経過し,上顎前歯部のセラミックスにチッピングを認めたが,歯周組織の状態を含め,概ね経過は良好である. 【顎咬合誌40(1・2):53-59,2020

  • 櫻井 健次, 木村 拓郎
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 60-64
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    若年者の歯肉縁下に及ぶ破折歯の保存に対して,侵襲の少ない保存処置として矯正的挺出が第一選択である.しかし治療に要する期間,歯冠・歯根比などの観点から,意図的再植術を検討すべき症例がある.本症例では破折部や審美性など考慮して意図的再植術を選択した.歯根長を変化させることなく,フェルールが確保でき,またプロビジョナルレストレーションを修正することにより歯肉形態の調和に配慮し,歯冠材料にジルコニアを用いることにより審美的,構造的に安定した歯冠修復ができた.良好な治療結果が得られたので報告する.【顎咬合誌 40 (1・2):60-64,2020

  • 高木 小百合
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 65-70
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    歯周病の治療と予防では,歯科医師と歯科衛生士の共通の見解による互いに連携した的確な処置が,病状の進行の抑制と改善に影響する.そして歯周病の発症と進行は,的確な診査に基づく診断を行うことによって,できる限り早期に対処をすることが望ましい.歯周病は多因子性疾患であるが,その治療においては,細菌因子に重点をおき,プラークのコントロールが優先的に行われている.しかし限局的な歯周組織の異常がみられる場合,筆者の臨床実感では,外傷因子が局所性修飾因子として大きく影響していると考えられるものも少なくない.そのため事例によっては積極的な外傷因子の除去を優先的に行う必要性があると考える.この積極的な介入処置によって,限局的な歯周組織の初期病変は,早期に改善されることが期待できる.ここでは限局的な歯周組織の異常を認めたことから外傷因子(外傷性咬合)が主因であると判断し,歯科医師と連携し,外傷因子の除去を優先的に行い,病状の悪化を抑制し,良好な結果を得られた2 症例について報告する.【顎咬合誌 40(1・2):65-70,2020

技術報告
  • 安澤 美紀, 吉田 明香里, 龍田 恒康, 河津 寛
    原稿種別: 技術報告
    2020 年 40 巻 1-2 号 p. 71-75
    発行日: 2020/05/29
    公開日: 2020/07/02
    ジャーナル フリー

    歯科医療現場は患者・スタッフともに感染リスクの高い環境といえるため,感染対策の徹底が求められる.院内感染の主な原因である接触感染経路を遮断するには,間接接触による微生物の伝播を防ぐ必要がある.それと同時に患者自身に感染リスクから守られていることを認識させることが,患者との信頼関係の確立において重要である.そこで,当院ではバリアフィルムの活用,ディスポーザブル器具の使用などといった感染対策を「患者に見せる」ようにしている.当院での感染対策方法による患者との信頼関係の確立について報告する.【 顎咬合誌 40 (1・2):71-75,2020

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