日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
Online ISSN : 1884-8230
Print ISSN : 1346-8111
ISSN-L : 1346-8111
42 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • ~歯科のデメリットを克服する3 つのアプローチ~
    望月 真衣, 中原 貴
    原稿種別: 総説
    2023 年 42 巻 3 号 p. 323-330
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    我が国の医療において,世界的に見ても先進的に取り組まれているのが再生医療である.一方,歯科医療では,従来の修復・補綴治療に比べると,再生医療は近寄りがたいワードである.興味はあるのに敬遠されてきた理由は,次々と開発される再生医療の急速な発展と,それをとりまく法律の整備であろう.歯学部を卒業した私は,8 年間の歯科臨床を経て,母校の大学院博士課程に進学した.そこで幹細胞に魅せられて基礎研究に没頭し,晴れて博士号を取得した.そして今では,大学に在籍して幹細胞研究を継続するかたわら,組織発生学と再生医学を教授する学生教育,そして変わらず歯科臨床にも携わっている.そのなかで,再生医療を身近にするために心掛けているのは,再生医療の普及に向けた歯科特有ともいえるデメリットの克服である.本稿では,歯科医師として様々な立場で再生医療に関わる私が,再生医療を“当たりまえ”の医療にするために考案した3 つのアプローチについて紹介し,未来の歯科医療のさらなる可能性を提起したい.

原著
  • 洞沢 功子, 都筑 孝也, 北澤 富美, 髙井 智之, 黒岩 博子, 伊比 篤, 黒岩 昭弘
    原稿種別: 原著
    2023 年 42 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,インジェクションタイプの新規連合印象用アルジネート印象材を用いた連合印象による細部再現性を,細線再現性試験にて寒天印象材を用いた場合と比較し,検討した.また連合印象採得後に模型の作製を行い,模型面の細線再現性についても測定を行った.さらに模型面の表面粗さを測定し,模型面の表面荒れについても寒天印象材の場合と比較し,検討した.その結果から寒天とアルジネートによる連合印象では,模型用石膏は硬質石膏を使用しなければならないが,新規連合印象用アルジネート印象材による連合印象においては,超硬質石膏を用いることができ,より精度の高い模型作製が可能であるというメリットを有することが示唆された.

  • ―純金とチタンの生体適合性について―
    洞沢 功子, 井上 義久, 黒岩 昭弘
    原稿種別: 原著
    2023 年 42 巻 3 号 p. 337-348
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,組織と純チタンの界面における反応を明らかにすることであり,その手始めに細胞接着性タンパク質のフィブリノーゲン(HFG)とフィブロネクチン(HFN)の純チタンおよび純金への吸着挙動を比較検討した.金属表面へのタンパク質の吸着量を測定し,吸脱着試験後の金属表面を原子間力顕微鏡にて表面観察した.金属表面に吸着したタンパク質のコンフォメイション変化は,フーリエ変換赤外分光光度計にて測定した.その結果,2種類のタンパク質の吸着量は,純金よりも純チタンの方が多かった.タンパク質は,いくつかのステップで金属表面に吸着し,HFGとHFNは主に物理吸着によって純金に吸着した.しかし純チタンへは化学吸着によって吸着し,チタンと化学結合したと考えられる.さらに両タンパク質のコンフォメイション変化は,純金よりも純チタンの方が大きかった.金属への細胞接着性タンパク質の初期吸着挙動は,口腔内での生体適合性を決定する上で重要な要因である.このデータは,新しい生体活性な歯科用インプラントを開発する上で有用となる.

  • Yuka KATO, Satoshi YOKOSE, Hiroshi KADOKURA, Yuichi HASEGAWA, Eiichi H ...
    2023 年 42 巻 3 号 p. 347-353
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    Wolffʼs law indicated that bone tissues are influenced by mechanical force and adapt bone structure to mechanical usage. According to this law, it is assumed the dental implant body could influence bone metabolism and induce deformation of shape of the jawbone during long term period, because the dental implant bodies locate in the bone matrix and directly connect with mineralized bone tissue. The aim of this study is to ascertain whether dental implant treatments influence deformation of shape of the jawbone or not. For this purpose, we used plaster models belong to 4 patients whose multiple dental implants have been passed at least more than ten years and compared the precise 3D positions of the dental implant bodies in past (old) and present (new) plaster models of the same patient by using the laser 3D measurement technique. The results of the study demonstrate that the multiple dental implants caused deformation of shape of the jawbone for long term period of the dental implant occlusion, and suggest that the phenomenon should be considered carefully on occlusal management of dental implants.

症例報告
  • 阿部 健
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 42 巻 3 号 p. 354-364
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/11/07
    ジャーナル フリー

    本症例(患者:71 歳,女性)は,右側関節突起欠損で20 年以上歯科治療を受けておらず,歯は自然脱落し重度の咬合崩壊を呈していた.上顎は総義歯,下顎は部分床義歯により機能回復を行った.関節突起が欠損しているということは,顎関節による制限が無く,咬合採得が非常に困難である.手技としてゴシックアーチ描記法を選択したが,咬合高径が変化すると誤差が出やすいので,できるだけ変化のないように描記装置を設置した.描記図は非対称で,常に右へ偏位した状態であった.困難な症例のため,診査のみならずリマウント調整を行う際の咬合採得にも採用し,最終義歯作製も同様に行った.最終義歯装着6 カ月経過後も良好な結果が得られた.

連載
feedback
Top