日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
29 巻, 2 号
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特集1
  • 今井 常夫, 松田 公志
    2012 年 29 巻 2 号 p. 93
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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  • 成瀬 光栄, 難波 多挙, 立木 美香, 中尾 佳奈子, 玉那覇 民子, 革嶋 幸子, 臼井 健, 田上 哲也, 広川 侑奨, 黒田 昌志, ...
    2012 年 29 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    原発性アルドステロン症(PA)は治療抵抗性高血圧や標的臓器障害の合併頻度が高い一方,適切な治療により治癒可能であることから,高血圧の日常診療で常に考慮すべき内分泌疾患である。2009年の米国内分泌学会に続き,わが国でも日本高血圧学会,日本内分泌学会から診療ガイドラインが発表された。スクリーニング(case detection),機能確認検査(confirmatory testing),病型・局在診断(subtype testing),治療選択が診療の基本ステップで,PA診断の啓発と医療の標準化の点で大きく貢献したといえる。しかしながら,同時に,診断に用いる指標,検査方法,判定基準などの詳細は十分には標準化されておらず,専門医,施設,国ごとで異なっているのが実情で,治療法選択の観点から,PAの診断,特に非典型例での診断の精度は今後,十分に検証される必要がある。また,実施が必要な機能確認検査の数や局在に必須とされる副腎静脈サンプリングは,common diseaseの診療水準向上における障壁となっており,今後,簡素化と非侵襲化が必須である。PA診療においては,ガイドラインの特色と課題を十分に認識し,個々の患者で適切な診断,治療を選択する必要がある。
  • 磯部 和正, 竹越 一博, 川上 康
    2012 年 29 巻 2 号 p. 101-103
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    血中遊離メタネフリン分画測定の褐色細胞腫診断における有用性について,多施設共同研究による検討を行った。比較検討には尿中メタネフリン分画,尿中カテコールアミン分画を用いた。ROC曲線によるAUC(曲線下面積)では最も良好な判別能を示した。感度においても98%と最も良好な成績を示した。特異度においては85%と良好ではあるが,他の項目よりは低い値を示した。随時の安静採血で測定が可能であり,蓄尿のための入院などの手間の要らない本測定は,褐色細胞腫が疑われる患者に対して,除外診断に最も適している。
  • 竹越 一博, 川上 康
    2012 年 29 巻 2 号 p. 104-112
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    褐色細胞腫は内分泌疾患の中で,その進歩において最も著しく,今世紀になって全く概念が変わってしまった疾患といってもよい。その主な理由は,遺伝的なバックグランドが急速に明らかにされた点に尽きる。すなわち,以下の3点に集約される。①新しい原因遺伝子SDHBおよびSDHDの発見,②臨床的に散発性でも潜在的に遺伝性である可能性があること,③悪性化と関係する遺伝子(SDHB)が判明したこと。さらに最近2〜3年間でもSDHASDHAF2TMEM127MAXと4つの原因遺伝子が同定されており,結果的に主なものでも計10種類の多数の原因遺伝子が知られるようになった。これら遺伝的な原因で引き起こされる褐色細胞腫・パラガングリオーマを遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群(Hereditary pheochromocytoma/ paraganglioma syndrome(「HPPS」))と呼ぶことがある。褐色細胞腫は10%病とも呼ばれるが,殊に「遺伝性の頻度」に関しては,この有名な法則は既に実情に即してない。今後,遺伝子診断がHPPSの診断のみならず,分子標的薬投与などの治療方針決定にも重要な時代が遠からずやってくるはずである(個別化医療)。本稿では,その臨床的な重要性に鑑みてSDHBD変異による「HPPS」に重点を置いて紹介する。
  • 菊森 豊根, 今井 常夫
    2012 年 29 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    【はじめに】他臓器浸潤を伴う副腎腫瘍は内分泌外科においては最もchallengingな外科治療の対象の一つである。最も慎重な対応が必要なものはIVC浸潤を疑う症例である。浸潤の評価方法,術中のIVCに対する処理の方法など検討項目は多岐にわたる。【対象と方法】1998年から2011年の間に行った副腎(副腎原発ではないが,副腎腫瘍と鑑別が困難であった症例も含む)に対する初回手術422例中,術前画像検査で他臓器浸潤を疑われた20例を対象に診断結果,術式,予後などを検討した。【結果】病理診断の結果は褐色細胞腫(傍神経節腫を含む):7,皮質癌:3,平滑筋肉腫:3,脂肪肉腫:2,その他:4であった。右10例,左10例。IVC浸潤診断に対して血管内超音波(IVUS)とCT/MRIの感度はともに100%であったが,特異度は後者が明らかに低かった。合併切除臓器(重複有り)は右では肝:4,IVC:3,右腎:1,左では左腎:4,膵脾:2,脾のみ:1。予後:褐色細胞腫は1例以外無再発,肉腫は1例が術後早期に現病死。皮質癌は2例が遠隔再発。【考察および結語】治癒切除可能であった症例では比較的良好な予後が得られており,周囲臓器の合併切除を含めた積極的な治療方針が重要と考えられた。浸潤が疑われる場合,バイパスなどの準備や血管外科医・消化器外科医との連携など,周到に準備を整えておくことが,手術を安全に行う観点から重要と考えられた。
  • 中川 健, 宮嶋 哲, 菊地 栄次, 大家 基嗣
    2012 年 29 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    腹腔鏡下手術のさらなる進化を求め,単孔式腹腔鏡手術の導入が試みられている。副腎は単孔式手術の比較的良い適応と考えられ,われわれの施設でも最初にその導入を開始した。2009年9月より2011年12月までに66例の単孔式腹腔鏡下副腎摘除術を施行した。対象疾患は原発性アルドステロン症27例,クッシング症候群6例,褐色細胞腫20例,その他13例であった。主に臍部にSILSTMポートを留置し,従来の経腹膜到達法の術式を踏襲した。左褐色細胞腫の初期2例で5mmポートを追加したが,全例で輸血や重篤な合併症なく完遂した。平均手術時間は全症例で133.4±47.0分(55〜308分)で,屈曲型鉗子など専用機器の特性を理解することで,ラーニングカーブの改善は短期間であると思われた。整容性の利点は明らかで,低侵襲性に関しては,少なくとも従来の腹腔鏡手術レベルを維持している。さらなる最適化が進むことで,本術式の普及が期待されるものである。
特集2
  • 岡本 高宏, 北野 博也
    2012 年 29 巻 2 号 p. 122
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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  • 伊藤 康弘, 宮内 昭
    2012 年 29 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    甲状腺乳頭癌は一般に予後良好であるが,中には再発を繰り返すようなハイリスクな症例がある。ハイリスクな症例に対しては全摘を行い,予防的郭清も含めて広範囲なリンパ節郭清が必要である。日本内分泌外科学会および日本甲状腺外科学会が2010年に出版した「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」で定められた全摘の適応は,当院のデータから鑑みても概ね妥当である。中央区域のリンパ節郭清はすべての乳頭癌についてルーチンに行うべきであり,外側区域の予防的郭清は,腫瘍径が3cmを超える症例やEx2の症例といった予後不良とされる症例には施行することが望ましい。あらゆる乳頭癌に対して画一的な手術を行うのではなく,個々の症例の予後をきちんと見極めた上で術式を決定することが大切である。
  • 吉田 明, 松津 賢一, 小島 いずみ, 向橋 知江, 中山 歩, 柳 裕代, 松浦 仁, 稲葉 将陽, 清水 哲
    2012 年 29 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    乳頭癌488例の治療成績をStage別に調べ,日本の現状における乳頭癌の初期治療は如何にあるべきかについて検討した。StageⅠ,Ⅱにおける再発例は21例(7%)であり,原病死したものは1例(0.3%)であった。一方StageⅣではⅣcを除いた84例中44例(52.4%)が再発を起こし,原病死したものはStageⅣ全体で 29例(27.6%)に及んでいた。StageⅢはStageⅠ,ⅡとStageⅣの中間的なものであった。再発例の転帰を調べたところStageⅠ,Ⅱでは再発がみられても再手術などによりsalvageが可能であることが多いのに対し,StageⅣでは再発例の多くは生命予後に直接影響を与えるものと考えられた。以上よりStageⅡ以下では初診時より遠隔転移を認めるもの(M1),明らか周囲臓器へ浸潤しているもの(EX2),大きなリンパ節を触れるものなどを除き(準)全摘は必要なく片葉切除などで十分と考えられた。一方StageⅢ,Ⅳでは(準)全摘は必要と考えられたが,特にStageⅣでは遠隔転移が多く,生命予後も不良であることより131Ⅰアブレーションを可能な限り追加すべきと思われた。
  • 鳥 正幸
    2012 年 29 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    局所進行甲状腺癌ではしばしば周囲臓器への浸潤を伴う。気管浸潤例では,術前評価による術式基準に従って,shaving,wedge reseciton+直接縫合,窓状切除+耳介軟骨DP皮弁再建,環状切除,喉頭全摘を施行する。高齢者には,環状切除を避け,気管切開を併置した安全な術式が好ましい。縦隔への伸展例は一般にハイリスクであり「muscle split法」などの工夫を要する。反回神経浸潤例では,可能な限りshavingか切除後再建を施行する。食道は殆どの場合外膜切除後縫合が可能である。内頸静脈浸潤例は側副血行路を確保しつつ積極的に切除再建を実施する。総頸動脈浸潤例では,可及的に外膜切除可能な場合が多いが,再建が必要な場合は脳血流の評価が重要である。一般に,頸動脈鞘浸潤を認めるような高度進行例では,真に根治性があるのかどうか慎重に考慮すべきである。拡大手術による致命的合併症のリスクを可能な限り避けて,術後補助療法や内照射を考慮した可及的切除が望ましいケースも多いと考えられる。
  • 杉谷 巌
    2012 年 29 巻 2 号 p. 135-138
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会共同編集による『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』では,甲状腺乳頭癌(PTC)に対する甲状腺切除術式について,「甲状腺全摘術が,甲状腺葉切除術に比べて,再発・生命予後を向上させるというエビデンスは弱いが,ハイリスクと評価したPTCに対して甲状腺全摘術を推奨する」と述べ,低危険度癌に対しては甲状腺温存切除を容認している。当科における経験では低危険度群の治療成績は甲状腺切除範囲にかかわらず良好であり,最近では患者のインフォームド・デシジョンを重視して治療方針を決定している。一方,高危険度群の治療成績は甲状腺全摘・放射性ヨード内用療法によっても劇的な改善は見込めそうになく,他臓器合併切除なども含めた局所根治手術に加え,新たな治療法の開発が期待される。PTCのリンパ節郭清については予防的側頸部郭清を行わない方針により良好な治療成績が得られている。
  • 小川 徹也, 池田 篤彦, 西村 邦宏, 土屋 吉正, 岡本 啓希, 植田 広海
    2012 年 29 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    甲状腺癌はその解剖学的位置関係より,癌の進展に伴い様々な隣接臓器に浸潤しうる。甲状腺癌は外科治療が主体であり,その取り扱いには解剖学,組織学,分子生物学的な考えが重要となる。解剖学的な観点では理学所見,画像所見が重要である。これら所見に基づき腫瘍の存在部位,進展様式をより正確に予測することが可能となる。また甲状腺癌には組織型に基づく悪性度の違いが存在する。組織型に基づく臓器浸潤の程度を把握することも重要である。さらに近年,癌関連遺伝子と甲状腺癌の悪性度,浸潤度の関連が報告されている。今後分子生物学的指標に基づく甲状腺癌の隣接臓器浸潤に対する取り扱いも重要となるであろう。甲状腺癌の隣接臓器浸潤に対する取り扱いでは解剖学,組織学,分子生物学的な考えを総合的に判断することで,術前に最善の術式を十分考慮し,さらに術中に最善かつ最適な外科治療を判断,提供するのが我々甲状腺外科医の使命である。
原著
  • 坂東 伸幸, 後藤 孝, 井出 渉, 岡田 豊治
    2012 年 29 巻 2 号 p. 144-147
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    脳ドックは脳疾患をスクリーニングする検診であり,脳MRI,MRAに加え,頸動脈超音波検査を含んでいる。頸動脈超音波施行時に甲状腺を観察した8,514名中181例(2.1%)が甲状腺要精査となった。石灰化病変が認められた症例は112例 (62%),長径2cm以上は62例 (34%),悪性所見は15例(8%),甲状腺周囲病変は9例(5%)などであった。181例中当科で精査した症例は106例であり,106例の中で21例(0.25%)において癌が発見され,甲状腺癌が20例を占めた。頸動脈超音波検査による所見について悪性所見と甲状腺周囲病変が甲状腺良性病変例と比較し,甲状腺癌例で多くみられた。また甲状腺癌20例中1cm以下の微小癌が7例(35%)で,病理診断でpT1aとpT1b合わせて17例(85%)であり,pT4a例はみられなかった。脳ドックにおける頸動脈超音波施行時に甲状腺を観察することによって早期の甲状腺癌が発見される可能性がある。
  • 横山 裕, 坪内 和女, 入江 慎一郎, 田中 正利
    2012 年 29 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    【はじめに】腎癌に合併した副腎腫瘍の臨床的検討を行った。【方法】対象は腎癌と副腎腫瘍を合併し,その両者の病理学的診断のついた12例で,副腎腫瘍の病理学的所見で良性群と悪性群に分類し,腫瘍の大きさ,内分泌活性の有無,原発巣の腎癌の病理学的所見を比較した。【結果】良性6例のうち,内分泌活性を認めたものは褐色細胞腫1例のみで,残りは皮質腺腫4例,囊胞1例であった。悪性6例はすべて腎癌の転移であった。副腎腫瘍の平均腫瘍径は悪性群で大きかった(良性2.2±0.3cm,悪性4.8±1.1cm,p=0.049)。原発巣である腎癌の平均腫瘍径は悪性群で大きかった(良性3.4±0.5cm,悪性9.3±1.8cm,p=0.012)。原発巣である腎癌の細胞型や異形度,浸潤形式には有意差を認めなかった。【考察】腎癌に合併した副腎腫瘍の良性悪性の鑑別は内分泌検査や画像診断の所見により高い診断精度で可能である。
症例報告
  • 黒川 貴則, 室田 千晶, 金井 基錫, 金子 行宏, 高橋 弘, 金原 市郎, 廣田 則彦, 市村 健, 本原 敏司
    2012 年 29 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    症例は56歳,女性。5年前に慢性B型肝炎を指摘されるも未治療であった。上腹部痛を主訴に近医を受診し,肝細胞癌と右副腎転移巣からの出血が疑われ,当院紹介入院となった。腹部造影CTおよびMRIでは,肝S2に充実性腫瘤と右副腎に囊胞性腫瘤を認めた。入院第3病日に動悸・発熱がみられた。高血圧・意識障害も出現し,多臓器不全に至りPheochromocytoma multisystem crisisと診断した。人工呼吸管理下に薬物療法および持続的血液濾過透析を行い,全身状態は改善した。131Ⅰ-MIBIシンチグラフィで,右上腹部に集積像を認め,肝細胞癌および右囊胞性褐色細胞腫瘍の診断で右副腎摘出術を施行した。肝細胞癌に対しては,肝動脈塞栓療法および化学療法を施行したが,術後11カ月目に肝不全のため死亡した。
  • 細田 充主, 松澤 文彦, 山本 貢, 田口 和典, 高橋 弘昌, 久保田 佳奈子
    2012 年 29 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    41歳女性。健康診断で高カルシウム(Ca)血症を指摘され,原発性副甲状腺機能亢進症(pHPT)の診断で当科に紹介された。入院時血清Ca は14.9mg/dl,intact PTH(iPTH)は1,245pg/mlと著明な高値を呈していた。画像上,長径7cmの右副甲状腺腫瘤を認めた。血清Ca値,iPTH値および腫瘤の大きさから副甲状腺癌が疑われたが,画像検査で浸潤傾向が認められないため,右上もしくは右下副甲状腺腺腫によるpHPTとの術前診断で手術を施行した。副甲状腺腫瘤には,周囲組織への浸潤所見は認められず腫瘤のみを摘出した。摘出副甲状腺は14.2gであり,病理学的に副甲状腺腺腫と診断された。
  • 清野 徳彦, 西脇 眞, 伊藤 亮, 代永 和秀, 雨宮 隆介, 奥田 康一, 安見 和彦
    2012 年 29 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    症例は62歳,女性。主訴は頸部腫瘤。現病歴は左頸部に腫瘤を自覚し,当科紹介受診となった。触診にて甲状腺左葉に3cm大の弾性,軟な圧痛を伴う腫瘤を触知した。穿刺吸引細胞診2回施行するも,良悪性の判定は困難であった。血清CEA 56.0ng/ml,カルシトニン6,980pg/mlと高値であった。131Ⅰ-MIBGシンチにて甲状腺左葉に一致して集積を認めた。 甲状腺髄様癌の診断で,甲状腺全摘術および頸部リンパ節郭清術を施行した。病理診断は甲状腺髄様癌であった。術後RET遺伝子を検索したところ,エクソン11(コドン691)の変異を認めたが,われわれの経験した症例は散発例の遺伝子多型と考えられた。一側性に腫瘍が発生する散発性甲状腺髄様癌においては,その手術術式は腺葉峡切除+リンパ節郭清も選択される。甲状腺髄様癌が疑われた場合,術前よりRET遺伝子検査を行い,遺伝性の有無の詳細な検討,術式の検討を行うことが重要であると思われた。
  • 清水 史孝, 稲本 宗, 横田 英介, 今泉 健太郎, 藤田 和彦, 藤目 真, 趙 成済
    2012 年 29 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
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    症例は61歳女性。20年来内科で高血圧にて経過観察されていた。レニン活性低値,アルドステロン高値,および腹部単純CTで1.5cm大の右副腎腫瘍を認め,原発性アルドステロン症疑いのため当科紹介受診。血管情報等を評価するための造影CTで水溶性ヨード造影剤によるアレルギー反応を認めた。水溶性ヨード造影剤使用による重篤なアレルギー反応を危惧し,機能局在診断のための副腎静脈サンプリング時の血管のマッピングに陰性造影剤である炭酸ガスの使用を選択した。左右の副腎静脈用カテーテルから炭酸ガスで両側副腎中心静脈のマッピングを行い,さらにマイクロカテーテルを副腎近傍に挿入しcone beam CTで位置確認を行った。両側副腎中心静脈からの静脈血をサンプリングし,右副腎からのアルドステロン過剰分泌を認めたため,CT所見に一致した右副腎原発性アルドステロン症と診断した。腹腔鏡下右副腎摘除術を施行し,術後1カ月の採血で血漿アルドステロン濃度は正常化,また術後3カ月で降圧剤から離脱可能となった。
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