日本森林学会大会発表データベース
第124回日本森林学会大会
選択された号の論文の840件中1~50を表示しています
口頭
立地
  • 大貫 靖浩, 吉永 秀一郎, 釣田 竜也, 荒木 誠, 伊藤 江利子, 志知 幸治, 松浦 陽次郎, 小野 賢二, 岡本 透
    セッションID: A01
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
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    茨城県北東部に位置する桂試験地において、土壌中の水や溶存物質の移動、広域汚染物質の貯留に寄与すると考えられる、厚い土層の分布様式や火山灰を主要母材とする土壌の物理性について、詳細な調査・分析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。
    1)表層土層厚は、谷頭凹地の上流側~谷頭斜面においては3mを超える厚い土層が線状に分布し、右岸側の遷急線以上に位置する上部谷壁斜面・上部谷壁凹斜面においては、広い範囲で4mを超える厚い土層が分布していた。これに対し、開析の進んだ左岸側の頂部斜面や両岸の下部谷壁斜面においては、表層土層が1m以下であった。 
    2)風化層厚は、流域全体に1m以下の地点が広く分布していた。厚い風化層の分布域は、右岸側の遷急線以上に位置する頂部斜面・上部谷壁斜面・上部谷壁凹斜面であった。
    3)土壌の保水機能に寄与する有効孔隙率は、遷急線以上の土壌で0.10 m3m-3、遷急線以下の土壌で0.07 m3m-3であり、レキ量の大小が有効孔隙率に影響を及ぼしていると考えられた。土壌の浸透能に寄与すると考えられる飽和透水係数は、10-4~10-5 m-1s-1オーダーの値を示した。
  • 大森 禎子, 吉池 雄蔵, 岡村 忍, 岩崎 真理, 安田 勲
    セッションID: A02
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
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    [目的] 樹木の立ち枯れは、環境汚染物の硫酸により土壌が酸性化し、樹木の防御成分の生成が減少し、虫が大発生することを明らかにする。[方法] 樹木の下の土壌のSO2-濃度等を測定し、さらに、関東ロームや岩石成分の酸による成分の溶出状況を検討した。 [結果] 化石燃料の燃焼で生成する硫酸は、雨に溶解し、大気中の硫酸は、風の通過量と樹木の表面積に比例して樹木えの付着量は多くなる。硫酸は雨で根元に落とされて土壌を酸性化する。土壌は金属イオンを溶出し、水と吸収されて樹木の中のリン酸と化合し、不溶性の金属リン酸塩になる。樹木はリン酸不足と同じ現象になり衰退する。マツは樹脂の生成量が減少し、ナラ等は金属によりタンニンが無毒化される。タケ等は土壌の酸性化で、シリカが不溶性のケイ酸になり、吸収できなくなる。樹木の立ち枯れる主原因は、土壌の酸性化である。樹木は生長に必要なNa、 K、 Mg、 Ca、P等を含み、炭化すると炭酸塩や酸化物になって木炭の中に残る。雨水は木炭に掛かるとアルカリ溶液になり、酸性土壌を中和する。残った元素は理想的な割合で含む栄養源になり、木炭は保水剤や土壌微生物の住み家になる。  
  • 三浦 覚, 金森 匡彦, 大萱 直花, 金子 真司, 永目 伊知郎
    セッションID: A03
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
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    土壌は持続可能な森林管理の基盤の1つである。全国スケールの国家森林資源調査と森林土壌調査データを利用して、森林モニタリング調査における土壌侵食調査の有用性について検証した。解析には、2009-2011年度の土壌侵食調査データ(林床被覆率および土壌侵食痕[土柱、リル、ガリー])7427点と2006-2010年度の深度別炭素蓄積量データ1278点を利用した。土壌侵食痕は14%の地点で出現した。土壌侵食痕の出現は、傾斜が急な林分(P<0.001)や林床被覆率が低い林分(P<0.001)で多かった。土壌侵食痕が出現した林分の0~5cm深の土壌炭素蓄積量は、出現しなかった林分より16%少なかった(P<0.001)。15~30cm深ではその違いは28%(P<0.001)とより大きくなった。以上のことから、林床被覆率と土壌侵食痕のモニタリングは、炭素蓄積量などの森林土壌の保全状況を評価する有用なモニタリング指標であることを明らかにした。また、0~5cm深と15~30cm深の土壌炭素蓄積量の違いは、健全な森林資源の育成管理が土壌資源の保全に役立っていることを示唆していると考えられた。
  • 細川 奈々枝, 高橋 一太, 小林 元, 平井 敬三
    セッションID: A04
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
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    人工林において,斜面下方の個体成長が斜面上方よりも優れる現象がしばしば観察されるが,成長差の生じるメカニズムについては不明な点が多い。これまでヒノキ林を対象とした研究で演者らは,成長の優れる斜面下腹部の個体は中腹部と比べ葉の窒素含量が高く光合成速度も大きいが,土壌の窒素無機化速度には差がないことを報告した。樹木への窒素供給には,土壌窒素の無機化の他に無機化の基質となるリターフォールも重要である。本報告ではこれまで調査を行ってきた斜面中腹部(上プロット)と下腹部(下プロット)におけるリターフォール量と窒素還元量を比較する。調査の結果,上プロットと下プロットのリターフォール量と窒素還元量には差が見られなかった。ヒノキの成長が劣る上プロットの窒素還元量が下プロットと同程度に多いのは,広葉樹とササが多く侵入しているためだった。このことから,本調査地において窒素無機化速度がプロット間で変わらないのは,リターフォールによる窒素還元量が同等であるためだといえる。上プロットのヒノキ葉の窒素含量が下プロットより低い原因として,上プロットでは窒素がヒノキ以外の広葉樹とササに多く吸収されている可能性がある。
  • 大貫 真孝, 上村 真由子, 丸山 温
    セッションID: A05
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
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    落葉は定期的に供給される主要な有機物であり、その分解過程で発生するCOは森林の炭素放出を把握する上で重要である。積雪を伴う冷温帯においては、落葉の重量減少過程と菌類群集を調べた先行研究があるが、落葉の無機化に伴うCOの放出(分解呼吸)を調べた研究はほとんどない。そこで、本研究では日本大学水上演習林のブナ林において、リターバック法を用いてブナ落葉の分解実験を行った。月に1度の頻度でブナ落葉の重量減少量を調べた他に、赤外線ガスアナライザーを用いて、分解呼吸量を測定した。環境要因として温度やサンプルの含水比も計測した。また、土壌含水率と地温、気温を測定した。これらの調査は積雪期も行った。2011年の5月にブナの落葉を回収し、6月にリターバッグを設置した。リターバッグの回収と呼吸測定は、2011年8月から2012年の11月の各月に1回行った。落葉の分解呼吸速度は、地温の変化におよそ同調し、夏期に高く、冬期に低くなった傾向がある反面、冬期の積雪下では、温度が低いにも関わらず、リター含水比が高いため、積雪期前後と同等の呼吸速度が観察された。無積雪期では異なる条件で分解が進むと考えられる。
  • 阿部 有希子, 梁 乃申, 佐藤 明, 菅原 泉, 上原 巌
    セッションID: A06
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     土壌呼吸量は地温や土壌含水率、炭素含有量、根量、土壌微生物量といった多くの要因によって支配されていると考えられるが、森林の土壌呼吸は空間変異が大きいため、環境因子のみで推定を行うことは不確実性が高い。そのため、二酸化炭素の放出過程を把握するには、まず土壌呼吸を規定する様々な要因を明らかにする必要がある。そこで本研究では、奥多摩演習林のスギ人工林において、根元に近い測点と根元から2m離れた測点、根元から4m離れた測点の3パターンを設け、計10ヶ所の測点を設置し、土壌呼吸速度を測定した。さらに、根呼吸と微生物呼吸を分離するために、根元から各距離の測点においてそれぞれ1ヶ所ずつ深さ40cm程度の根切り作業を行い、その後アクリル板を深さ約40cmで挿入した。同時に土壌呼吸量を支配すると考えられる様々な環境因子の測定も行った。さらにラガー内からオオイチョウタケの子実体が見つかったことから、土壌微生物との関係についても調査した。本発表では、土壌呼吸量に影響を及ぼすと考えられる様々な要因と土壌呼吸速度との関係、及び2011年6月から現在にかけての根切り処理前後の土壌呼吸速度の変動について報告する。
経営
  • とりふこびっち すたんこ
    セッションID: A07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    Abieto fagetum forests are among the most important natural resources of the Balkan peninsular in Europe. This study compared regeneration patterns in protected and in regularly-harvested stands with similar environmental conditions. Spatial patterns of beech, fir and spruce saplings in the forest managed by a 10-year-cycle selective-cut are not significantly different but fir is the most abundant. Beech juveniles dominate the protected forest while spruce has a low density and the highest degree of clustering. The results support assumptions that: (1) forest regeneration patterns are influenced by a preference given to conifers, (2) fir regeneration likely benefit from overhunting of wild ungulates, (3) the removal of large spruce trees (e.g. resonance wood) from the protected forest may diminish the natural regeneration of spruce trees.
  • モハメド アブドラ  アルファルク, 加藤 正人
    セッションID: A08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    The study was conducted in Bangladesh to focus re-vegetation of Madhupur forest which is important to forest dependent people but last 40 years it decreased a lot. Re-vegetation program was taken on 2010 and a survey was done through personal interview with 67 people of 15 villages over the area. 750 ha depleted forest land has been planted with various species. 88% participants say that the forest is now undisturbed which helps to regenerate the species those are about to lost for 40 years.
  • 高嶋 敦史, 大島 順子, 久高 将和
    セッションID: A09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    沖縄島北部やんばる地域の亜熱帯林は,多様性の高い固有の生態系を育んでいる。その中には,大径木やその樹洞に依存して生息する種も多く,大径木はこの地域の森林生態系を特徴づける存在になっている。しかしながら,この地域の森林の多くは,第二次大戦後の強度伐採などの人為的攪乱を経験している。よって原生的な植生と比べると,現在の林内における大径木の密度は低くなっており,今後は原生的な環境の保全と二次林の遷移進行・再生が地域の森林を管理するうえで重要なテーマになると考えられる。そこで本研究では,第二次大戦後に強度伐採された後に再生した約60年生の二次林の小流域(約4ha)について,大径木の局所的な残存状況と一般的な再生状況をとりまとめた。その結果,胸高直径30cm以上の大径木は1haあたり70~80本程度存在しており,その約3分の2をイタジイが占めていた。立地環境で見ると,大径木は尾根に少なく,斜面中腹から下部にかけて多くみられた。なかでも,種子が大きく重力散布で更新するオキナワウラジロガシは斜面下部に限定的に分布しており,強度伐採後に高標高側へ分布域を広げることが困難になっている様子がうかがえた。
  • 吉田 茂二郎
    セッションID: A10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    現在、間伐が広く行われており、その指標については、収量比数を基準にしたものに加えて、本数や材積を基準にしたものが利用されている。しかし、どの指標も間伐よる林分構造の変化を充分に表しておらず、そのため、本数間伐率と材積間伐率については、併記されている場合が多い。本研究の目的は、人工林で間伐を行う際の効果的な間伐指標を求めることにある。筆者は、過去にスギ人工林において、一林分内の単木の直径と樹冠量の関係に関する研究を行っており、それらをもとに林分内の直径合計を基礎とした間伐指標を発想するに至った。今回は、この間伐指標の意味につい検討を行ったので、それを紹介する。 参考文献 安藤貴ら(1968)スギ林の保育形式に関する研究.林試研報209:1-76. 松井善喜(1967)野幌試験林における各種人工林の構造と成長に関する研究.林試研報207:69-163. 西園朋広(2012)間伐指標の考え方(私信).
  • 米 康充, 小熊 宏之
    セッションID: A11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    林学や林業において、その対象物である林分の胸高直径・立木座標といった情報は最も基本的な情報の一つでる。筆者らはこれまでにデジカメによる写真測量を用いた方法を提唱し、胸高直径・立木座標の計測に成功した。しかし、原理的にカメラ撮影地点から遠い立木は計測精度が悪くなる問題があり、その解決のためには高解像度化が必要であるが光学系が追随しないという課題がある。本研究はこの高解像度化のアプローチに代えて、一般的なビデオカメラで多点からの画像を観測するアプローチを採用することで、写真測量法による胸高直径・立木座標計測の問題点を解決しようとするものである。実験は、約0.03haのスギ人工林において行った。計測の指標となる点を設定し測量用ポールを垂直に設置した。ビデオ撮影は一般的なミラーレス一眼カメラを使用した。撮影動画からフレーム画像を抽出、動画解析ソフトを用いてそれぞれの画像間で同一とみなせるタイポイントを取得、指標となるポールをGCPとしてカメラ解析を行い、それぞれの撮影点の外部標定要素を算出した。時間差のあるフレーム画像間で画像相関法を用いることで点群データを作成し胸高直径・立木座標を算出した。
  • 細田 和男
    セッションID: A12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    筆者らは標準地法における調査区の大きさについて再検討を行ったが(日林誌94巻3号),これは標準地の面積や本数についての基準を提案したものであり,調査対象林分内のどこに何か所の標準地を設定すべきかについて答えを与えるものではなかった。人工林の林分内における立木密度や単木サイズの不均一性は,地形,苗木の形質や植栽位置のばらつき,間伐,被害,他樹種の侵入などに左右されていると考えられ,一般的な議論は難しい。ただし,同一林分内でも,斜面の上部より下部のほうの樹高が高いのは経験的によく知られていることであり,その原因として斜面上部と下部の土壌環境の差異などを調べた研究も行われてきた。もし調査対象林分での斜面上部と下部の樹高差が何らかの方法で予測できれば,単一の標準地でよいか,複数の標準地を設定すべきか,あるいは斜面傾斜方向に長い帯状標準地を設定すべきか,などの判断材料になると考えられる。このような観点から本報告では,関東~中部地方のスギ,ヒノキ,カラマツ人工林を対象にして,同一林分内の斜面位置による樹高差や,その樹種や林齢などによる違いを,固定試験地のデータや既往研究の結果から検討する。
  • 望月 亜希子
    セッションID: A13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    森林資源の持続的利用・管理において、対象とする森林の正確な資源情報を把握していることは必須である。しかし、森林の質、量を計測するための森林調査は、未だ人力による手法で労力、費用がかかり、得られるデータは限定的な項目であったり、調査者により精度にバラツキがあったりと課題が多い。そこで本研究では、移動ロボット分野の環境認識技術を応用し、森林調査の省力化、精度向上を目的とした計測装置の開発を行っている。
    開発した装置は測域センサを搭載し、森林全体をスキャンすることで従来の調査項目の他、立木位置、階層構造等の情報を自動で入手することが可能である。また、林分構造を3D化し、森林の状態を可視化することができる。計測時間は標準地調査であれば2分程度、精度は直径で2cm以内、従来の森林調査に比べ、作業効率や精度は格段に向上する。
    今後、本装置が実用化され普及することで、森林資源現況がより正確に把握されれば、森林の持続的、計画的な管理の一助となると考える。
  • 早川 慶朗
    セッションID: A14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    持続可能な森林管理において、森林資源及び木材流通における情報化(デジタル化)と情報流通連携は、重要な課題である。3次元レーザスキャナを用いた情報化手法、精度問題を研究し、将来の森林資源管理手法について、スキャナでの測定と、実測(サンプルでの毎木調査)との測定精度誤差の評価研究及び技術検討を行った。 検討を行った結果、3次元レーザスキャナによる樹幹直径、樹高、立木位置の計測精度は実用上問題ないことが明らかとなった。また枝葉部全体が単独の3次元レーザスキャナにより計測できる場合、枝葉よりの反射ポイント数と枝葉の重量にはかなり高い相関が確認できた。この場合の回帰式はY = 0.00006 X + 12.707 (Y : 枝葉部重量、X : 反射ポイント数、スキャナの計測条件は全領域で177.7百万ポイントの分解能、毎秒122,000ポイントの速度)である。しかしながら、求めた回帰式の有効性は、実測事例データの少なさ(サンプル数10本)のため、認めることができない。今後継続して実測データを収集することにより回帰式の精度の向上と有効性を確認することが出来ると考えられる。
造林
  • 野宮 治人
    セッションID: A15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    現在、増えすぎたシカによる林業被害が大きな問題となっている。シカが高密度で生息する地域では、新植した苗木が激しい食害を受けることが報告されている。一般的に苗高が120~150cmを超えると主軸先端への食害が減少するとされるが、それより低い苗木でも高さによって食害を受ける危険率は異なると予想される。食害を受けやすい高さ範囲を明らかにするため、シカの推定生息密度が約20頭/km2である熊本県球磨村のスギ新植地で、普通苗(36cm)と大苗(71cm)のそれぞれ200本について苗高と食痕高を継続測定した。シカが一口で採食したと判断された部位を1つの食痕と数えた。苗高を30~100cmまで10cm単位でクラス分けし、食痕数を高さ10cm単位の区画で集計した。その結果、苗高70cmまでは主軸先端を含む最上位区画の食痕数が最も多くなった。しかし、苗高が大きくなると枝葉の量が増えるため苗木あたりの総食痕数が増加する。このことを考慮すると、最も食害されやすい高さは70~90cmの範囲であることが示された。
  • 藤本 浩平, 渡辺 直史
    セッションID: A16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     ポット苗の欠点である根巻きを防ぐために開発されたマルチキャビティコンテナを利用したスギおよびヒノキ挿し木の発根率等について検討した。
     キャビティ数24個・容量各300ccのマルチキャビティコンテナ(JFA300)を育苗容器とし,培土は軽量で保水性が高いココピート(C培土)を風乾重量で約47g/300cc,ココピートとパーライトを体積比2:1で混合した培土(CP培土)を風乾重量で約58g/300cc用いた。スギでは前報でC培土で良好な結果が出ているためCP培土は用いなかった。挿し穂は,スギは高岡4号とヤナセスギを,ヒノキは宿毛4号と須崎2号を供し,挿し穂長を10cmと30cmとし,切り口にインドール酪酸を粉衣し,2012年3月中旬に挿し付けた。発根率は挿し付け後6ヶ月時に確認した。
     スギの発根率は,10cmの穂長で高岡4号(88%)>ヤナセスギ(60%)であったが,30cmの穂長では両方とも100%であった。ヒノキの発根率を比較したところ,穂長は10cmより30cmの方が高かった。品種差は,いずれの条件でも宿毛4号>須崎2号であった。培土による違いは明確ではなかった。
  • 出口 謙一, 佐藤 明, 菅原 泉, 上原 巌
    セッションID: A17
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     2001年に設けた間伐強度の異なるスギ林分試験地にて、間伐より10年経過後の枝の伸長成長量について調査を行った。方法として、本数間伐率でおおよそ20%と60%の間伐区と対照区である無間伐区のそれぞれの試験区から、直径階の分布に従い調査木を大中小3本伐倒し、地際0.2m地点から1mごとに区切り、各層から成長の良い枝を任意で2本ずつ選択し採取した。その後、枝を根元から20㎝間隔に、枝の先端より1.6m地点までは間伐後の成長をより詳細に調査するため、10㎝間隔で裁断した。伸長成長量は、枝を樹幹解析と同様の方法で解析し推定した。その際、先端付近は判別できる範囲で各年の冬芽の位置を計測し,毎年伸長成長量とした。枝の伸長成長は樹冠上端部と下部の方では上端部の方が大きい傾向を示した。間伐によって林冠が疎開されることにより樹冠下部の光環境が改善され、その層の枝の伸長成長が旺盛になると想定されたが、結果は樹冠下部の枝の伸長成長は無間伐区の方が間伐区よりも大きい傾向を示した。また、間伐率が高いほど樹冠部の受光量は多くなるが、今回の調査では間伐率の差異による枝の伸長成長の傾向的違いはあまり見られなかった。
  • 平田 晶子, 恩田 裕一, 加藤 弘亮, 南光 一樹, 五味 高志
    セッションID: A18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    間伐前後の樹冠遮断プロセスや樹冠通過雨の空間分布の変化を明らかにすることを目的とした。栃木県内のヒノキ人工林において、降雨量、樹冠通過雨量、樹幹流量を観測するとともに、林外雨・樹冠通過雨のサンプリングを行い、安定同位体分析を行った。観測期間は2010年7月から2012年11月で、2011年11月に本数で50%の強度列状間伐を行った。
    間伐後には、樹冠遮断率は8%ほど減少し、樹冠通過雨は15%ほど増加した。また、樹冠通過雨のうち、樹冠に触れずに降下してくる直達成分が29%増加した。間伐による林冠面積の減少は、林内に供給される雨量を増加させるとともに、その構成要素も変化させることが示された。また、間伐後には、樹幹から1~1.5mほどの場所で樹幹通過率が1を超えるイベントが多くみられるようになり、間伐後には樹冠縁で集中滴下点が増加する可能性が示唆された。
    多くの雨サンプルで、樹冠通過雨の酸素同位体比は林外雨に比べ大きくなる傾向がみられ、両者の差の平均は間伐後の方が大きかった。しかし、サンプル間のばらつきの方が大きく、樹冠遮断プロセスはイベントごとに異なると考えられた。
  • 正木 隆, 梶本 卓也, 杉田 久志, 金指 達郎, 太田 敬之, 酒井 武, 斉藤 哲
    セッションID: A19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    最近、間伐が遅れている人工林で、列状間伐のような定量間伐がおこなわれる事例が増えている。定量間伐のメリットの1つは、主伐前に価格の高い材を生産できることにある。演者の意見としては、主伐時の林型を考慮すればこのような定量間伐は1回のみとし、それ以降は定性間伐に移行するのが妥当であると考えている。しかし、たとえ1回のみとしても、列状間伐のやり方によって将来の林型が影響されるのではなかろうか。たとえば、同じ33%の間伐率としても、1伐2残とするのか、あるいは2伐4残とするのか、によって主伐時の林分構造が異なると予想される。なぜならば2伐4残の場合、1伐2残に比べて樹木の生育に利用されない空間が生じうるし、また、残存列の内部の個体がより強い個体間競合下に置かれるため、主伐時の直径が相対的に細かったり、あるいは主伐時までの自己間引きによる枯損率が高いことが予想される。すなわち、間伐の列幅が広いほど、主伐時に価格の高い材が少なくなるのではなかろうか。そこで本研究では、個体配置と個体間競争を考慮したモデルで林分の各個体の成長をシミュレートし、列状間伐の列幅と主伐時の林分構造の関係を分析する。
  • 長谷川 直子, 真田 佳居, 大瀧 雅寛
    セッションID: A20
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,独自に考案した隣接個体指数と成長指数の相関関係から,隣接個体が近接で数が多いほどヒノキ個体の成長は阻害されることを示した.研究対象林分は神奈川県相模原市嵐山の北側斜面に位置するヒノキ林である.調査林分から切り出した任意の個体円板の年輪幅を計測し,成長幅の20年積算値や成長断面積の20年積算値等6つの年輪成長に関する値を成長指数と定義した.一方,円板採取個体のa~a+1m(0≦a≦5)における隣接個体数をx,重みづけ値をy=6-aとし,x*yの合計値を隣接個体指数と定義した.任意の5個体に関する隣接個体指数を算出し,各個体の成長指数との相関をとった.その結果,6つの成長指数全てにおいて,相関係数-0.9以上の非常に強い負の相関が算出された.このことから,隣接個体が近接で数が多いほど個体の成長は阻害されることが示されたと考える.隣接個体指数,成長指数を用いて成長予測を行うことで,より効率的で計画的な間伐作業の実現につなげることも可能だと考える.今後の課題としては,ヒノキ林以外の林分に関する追加研究と,個体数を増やした追加調査,本指数を元に間伐予測システムを開発すること等である.
  • 宮本 和樹, 大谷 達也, 酒井 敦, 竹内 郁雄
    セッションID: A21
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    高齢級化が進む国内の針葉樹人工林に対する生産目標やその管理技術を確立するため、高齢人工林に関する基礎データの蓄積が求められている。本研究は、高齢人工林を管理する上で有効な指標となりうる個体の特性を明らかにするため、四国地方におけるスギ・ヒノキ高齢人工林(108~168年生)を対象に、個体の幹サイズ(胸高直径、樹高)および樹冠サイズ(樹冠長、樹冠長率、樹冠投影面積)がその後の成長に及ぼす影響を調べた。期首の幹サイズおよび樹冠サイズとその後の平均胸高直径成長量、および平均材積成長量との関係をみると、樹冠長や樹冠長率といった樹冠サイズの指標よりも胸高直径のような幹サイズの指標の方が高い決定係数を示し、個体間の成長のばらつきを良く説明していた。すなわち、期首の幹サイズが大きい個体ほどその後の成長が良いことが示された。この傾向は最近の間伐の有無に関わらず認められた。したがって、高齢級になってからも定期的に間伐が実施されているような林分であっても、一旦個体間の優劣がつくと、幹サイズの小さい個体は、より大きなサイズの個体ほどの成長が期待できない可能性があると考えられた。
  • 横井 秀一, 早川 幸治
    セッションID: A22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒノキ人工林の長伐期施業や択伐林施業では、個体管理的な視点での施業が必要となる。そのための管理指標を得るため、高齢ヒノキ個体の樹冠サイズと幹の肥大成長量を調査し、両者の関係を検討した。 【方法】段戸国有林(愛知県)で、約100年生のヒノキ人工林2林分に調査区(0.17ha・0.06ha)を設置し、毎木調査と円板採取を行った。毎木調査では、ヒノキの胸高直径・樹高・枝下高・樹冠幅を測定した。樹高と枝下高の差を樹冠長とした。円板は、各調査地内の間伐木の中から計10本を選び、それぞれの元玉の末口部位(地上高2.3~5.1m)で採取した。各円板について、読み取り顕微鏡を使用して、4方向の半径に対して、随から各年輪までの長さを測定した。 【結果】採取した円板の皮なし直径は15.4~32.2cm、その年輪数は69~80であった。樹冠サイズ(樹冠長・樹冠幅など)と直近(最近10年間・20年間・30年間)の平均年輪幅・平均断面積成長量とには、強い正の相関が認められた。この関係を利用すれば、ヒノキの「100年生時において期待する肥大成長量」に対する必要な樹冠サイズを推定することができると考えた。
  • 土田 遼太, 長島 啓子, 高田 研一, 岡本 宏之, 田中 和博
    セッションID: A23
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    平成21年に林野庁が発表した森林・林業再生プランでは、森林の持つ公益的機能を最大限に発揮させるため、各市町村が独自の市町村森林整備計画を策定することが求められている。一方、林業経営の採算性の悪化とシカの食害により、全国各地で消極的な選択として長伐期施業が推進されている。本来、長伐期林は長期的な成長が見込めるとともに、病虫害や災害のリスクが少ない場所で実施すべきである。本研究では、三重県大台町の実態に沿った市町村森林整備計画の策定に貢献すべく、GISを用いて長期的な成長が見込める自然立地を把握し、立地環境に基づく森林ゾーニングを行うことを目的とした。具体的には、樹種本来の適地と考えられる天然林における自然立地の評価とともに、人工林の虫害による立地環境評価を用いて、長伐期施業に適した場所の選定を試みた。また、人工林の成長による立地環境評価と、現存する路網の配置を考慮して、経済性の観点から短伐期施業に適した場所の選定を試みた。さらに、それ以外の場所については広葉樹などへの林相転換の候補地とした。本手法により、市町村森林整備計画策定の指針となるゾーン区分図を作成した。
  • 小池 孝良, 毛 巧芝, 北尾 光俊
    セッションID: A24
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    育成天然林施業では、伐採・収穫時点で更新稚樹が存在すれば更新完了とする。前生稚樹を跡継ぎとして仕立てるには、攪乱発生時期と対象樹種の成長周期・環境応答に関する情報が必要である。しかし、ホオノキ、ブナ、ミズナラで見られるように、葉の柵状組織の層数が前年初夏の更新稚樹の生育光環境によって決まっている樹種があり、また、被陰下におかれると根の発達が悪いため、攪乱直後の光環境に直ちに応答できるとは限らない。 ウダイカンバ若齢林に更新したヤチダモ稚樹を対象に、上層木を除く時期を暴風雨の襲時期である7月上旬と9月上旬に設定し、その後のヤチダモ稚樹の光合成、地上部・地下部の成長量を追跡した。土壌の含水率は7月疎開区で2年目までやや増加した。簡易イン・グロース法を用いて根の成長を追跡した。細根(約2mm<)の旺盛な増加は上木疎開後2年以上経てから明確に認められた。上木疎開の効果は肥大成長で7月処理では9月処理より早く始まり、光合成と連動し、伸長成長は7月処理で翌年、9月処理では翌々年から始まった。ヤチダモの場合、9月の攪乱からの再生には丸2年を要することが解った。
  • 酒井 敦, 野口 麻穂子, 酒井 寿夫
    セッションID: A25
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    高知県香美森林組合では森林・林業再生プラン実践事業で下線系の高性能タワーヤーダを導入し、作業効率の検証を行っている。本研究では高性能タワーヤーダを使った間伐作業(架線を張った主索下は列状間伐、その左右約30mの範囲は定性間伐)が林床植生にどのような影響を与えるのか調べた。調査地は高知県香美市谷相地区の45年生ヒノキ林およびスギ林である。2011年11月に本数当たり約15%の間伐を行い、上げ荷による全木集材を行った。間伐後の開空率はスギ林16.7%、ヒノキ林18.2%、主索直下19.0%で、スギ林で有意に低かった。土壌露出率はスギ林ヒノキ林ともに伐倒・集材時に生じた枝葉により間伐前より減少したが、主索直下では露出率が大きかった。ヒノキ林は間伐前常緑広葉樹(シイ・カシ)が多かったが間伐時の下刈りにより激減した(54%→4%)。スギ林は間伐前から植生が少なく、間伐後の回復も僅かであった(1.4%→1.7%)。一方、主索下は上空の疎開と土壌の撹乱によりベニバナボロギク、クマイチゴ等先駆種が多く発生していた。高性能タワーヤーダを使った全木集材は主索直下を除けば、林床植生に与える影響が小さかった。
  • 水永 博己, 望月 貴治
    セッションID: A26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    林冠内の光の三次元分布は森林生態系のガス代謝を決定する重要な情報である。間伐などの森林施業に伴う光分布のダイナミックな変化を予測できれば生態系のガス交換機能を考えた森林施業デザインの構築に有効で、「間伐は森林生態系の炭素吸収に効果があるのか」の問いにプロセスモデル的にアプローチする足がかりとなる。しかしながら光の三次元分布の再現には林冠内の葉の三次元分布構造の情報がネックとなっているのが現状である。一方で地上レーザを用いた計測は幹の分布構造・サイズ構造の計測に有効であるばかりでなく、葉分布の推定についての試みが行われるようになってきた。本発表では、様々な間伐を実施した場合の光の三次元分布からガス代謝機能に及ぼす影響を評価することを目的として、地上レーザスキャンによる林冠情報の応用を検討する。 山梨県富士吉田市カラマツ人工林50年生林分に設定した調査地について、林冠内の遮光物の3次元座標値を落葉の前後で記録した。このレーザ計測データをもとに計算した小ヴォクセル(50 cm立方)単位の光強度マップを間伐方法別に示しながら、レーザ計測情報の間伐デザイン構築への応用方法を考える。
  • 齋藤 武史
    セッションID: A27
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    様々な条件で撮影した全天空写真を適切に2値化して解析するための手法を開発する目的で、画像編集ソフト(Photoshop CS4)のレベル補正機能を活用した2値化画像の調整手法について検討した。まず画像編集ソフトのプレビュー画面を見ながら、全天空写真の画像の中で最も明るい遮蔽部分(目視で樹冠や幹と識別できる部分で、境界付近の曖昧な中間色域は除く)をピッカーで探索して黒点に指定し、次に最も暗い開空部分(目視で空と識別できる部分)を探索して白点に指定し、黒点より暗い部分が0,白点より明るい部分が255となるように画像全体の輝度のレベルを補正した高コントラストな画像を作成した。得られた画像を、黒点と白点の中間の輝度を閾値として2値化し、樹冠と空とを適正に判別した2値化画像を得た。この方法で2値化した画像を全天空写真解析ソフト(HemiView 2.1)で解析した結果、従来の2値化手法のアルゴリズムでは適正な2値化が困難とされた撮影条件(プログラムオート撮影等)で撮影した全天空写真からでも、完全曇天日の林内で実測した相対日射量、相対光量子量に相当するサイトファクターを算定することができた。
  • 増井 僚, 小林 元, 井手 玲子, 小熊 宏之, 三枝 信子, 山本 一清
    セッションID: A28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では安価かつ簡便な分光モニタリング手法であるフラットベッドスキャナーとデジタルカメラを用いて,カラマツおよびヒノキの個葉と樹冠部のRGB値と2G_RBiの季節変化を測定し,針葉のクロロフィル(以下,chl)濃度および光合成速度の季節変化と比較した。スキャナーによる個葉のRGB値はR,G値がカラマツ,ヒノキともにchl濃度と高い相関を示した。特にヒノキにおいては,植栽斜面位置(斜面の中腹部と下腹部)の違いによるchl濃度の差異を良く反映していた。デジタルカメラによる樹冠部の2G_RBiは,カラマツにおいてはchl濃度との間に相関は見られなかったが,光合成速度との間には相関が見られた。ヒノキにおいては,2G_RBiは植栽斜面位置による違いは反映しておらず,季節変化もchl濃度の季節変化のパターンとは異なっていた。一方,2G_RBiの季節変化のパターンは光合成速度の春先や冬季の低下といった季節的な変化を反映していた。デジタルカメラとスキャナーは,それぞれ樹冠および個葉スケールでchl濃度,光合成能力を評価する有効なツールとなる可能性が示された。
  • 金丸 孔明
    セッションID: A29
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    土壌物理性は樹木の生育に重要な要因である。表土喪失により土壌環境の悪化したフィールドにおける植生回復事業では、土壌物理性を改善するために有機質系土壌改良資材の バーク堆肥(以下、バーク)を鋤込む事がある。本研究では、秋田県森吉山麓高原自然再生事業地内のブナ植栽区を調査対象とし、表土が失われた土壌へのバーク鋤込みによる(1)土壌物理性改善効果と(2)植栽木の生育促進効果について検討する。
    500 mほど離れた2つのエリアで、バーク鋤込有区、無区の各1プロット(計4プロット)で調査を行った。土壌物理性の指標は、土壌硬度と体積含水率を測定した。植栽ブナ稚樹の生育状況の指標は、樹高と当年成長量、個葉面積、最大光合成速度、SPAD値を測定した。  
    その結果、土壌硬度・体積含水率のいずれでもバーク鋤込みによる土壌物理性の改善効果は認められなかった。また、バーク鋤込みによるブナ稚樹生育への有意な促進効果も認められなかった。むしろ、土壌状態・ブナ生育状態の差異は、バーク鋤込みの有無よりも、エリア間での違いの方が大きかった。以上より、土壌環境によってはバーク鋤込の必要性を検討し植林する必要がある。
  • 伊津野 彩子, Indrioko Sapto, Prasetyo Eko, . Widiyatno, . Kasmujiono, 井鷺 裕 ...
    セッションID: A30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    フタバガキ科樹木は東南アジア熱帯地域において生態的・経済的に重要である。熱帯多雨林生態系管理および木材生産を持続的に行うためには、植栽樹木集団における遺伝的多様性の維持や、天然林と植栽林間における遺伝的分化の回避が不可欠である。本研究ではフタバガキ科樹木2種の植栽集団に保持されている遺伝的多様性を天然林のものと比較し、人工更新が及ぼす遺伝的な影響を評価した。
    インドネシアの林業会社PT. Sari Bumi Kusumaが管理する植栽林で、Shorea leprosuaS. parvifoliaの植栽集団5-6集団について1集団あたり約30個体の葉を採取した。また植栽林周辺の天然林より各種40-80個体を採取した。遺伝子型決定にはEST-SSR遺伝子座7座を用いた。両種ともに、植栽集団の遺伝的多様性は天然林の遺伝的多様性と有意な差はなかった。天然林と植栽集団間の比較において、遺伝的分化は見られなかった。この事は、現在の施業方法を用いれば植栽集団の遺伝的多様性を保持し持続的な木材収穫が可能であることを意味しており、著しい減少が懸念される熱帯多雨林の現状に明るい展望をもたらすものといえる。
日本森林学会・日本木材学会 合同シンポジウム 「これからの木材利用と森林施業 ―木質資源のカスケード利用を目指して―」
  • 山内 繁
    セッションID: A31
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     はじめに、最近の国際的なエネルギー動向と日本のエネルギー政策を概説する。化石資源枯渇や人為的気候変動等の諸問題への対応を基本とした政策の流れと、3.11以後の変化を示し、木質バイオマス資源がどのように捉えられているのかを述べる。そのなかで、2012年7月から開始された日本のFIT制度に着目し、木質バイオマスエネルギーに関する内容について検討する。
     次に木質バイオマスエネルギー化形態の全体像を示し、利用法の中で国内で実用化が進んでいるものについて、特長や運営上あるいは技術的課題などについて言及する。各種ボイラー、チップ焚き発電、ガス化発電、液体燃料製造などを実例を挙げながら解説し、木質バイオマスが再生可能エネルギーの中でどのような特徴を持つのかを総括する。
     最後に、木質バイオマスエネルギーの将来的展望、すなわち木質バイオマスエネルギー化事業がどのような形態あるいは規模で発展していくべきかを、地域経済、特に木材産業や林業と関連づけて考察し、まとめとする。
  • 渋沢 龍也
    セッションID: A32
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の成立などを指して、現在、木材産業・木造建築に対して追い風が吹いている、と評価することが多い。しかし、公共建築物はこれまでRC造や鉄骨造であり、材料強度に基づく明快な設計手法が確立している。すなわち、これまで他材料・他工法のみを手がけてきた建築関係者が問題なく自由に扱えるように、木材関係者がこれまで以上の努力を払うことで、設計の手法や材料の性能に関する知識・技術を確立しなければ、やはり木材は使えない、使うに足るだけの材料ではない、という全く逆の結末に達する可能性が高い。先人が築いた今日の木材産業のあり様を、貶めないためにはどうすればよいのかという致命的な問題に対して明確な解決策を提示することは難しいが、大きな命題を構成する個別の要素について検討することであれば可能であろう。本発表は、このような考えを端緒とし、国産材を工業資源として利用するにあたって解決すべき個別の技術的問題について整理する。
  • 久保山 裕史
    セッションID: A33
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    戦後しばらくは、国産丸太供給の資源的制約に対して、旺盛な復興需要があったため、材価は高止まりしていた。住宅の多くで構造材は現しとされたこともあり、製材品は見た目が重視されていた。結果として、林業経営においては無節の尺上丸太を生産することが目標とされてきた。しかし、50年以上の時を経た現在、国産丸太の供給力は高まったのに対し、木材需要の減少や円高が進行したことによって材価は低下している。また、住宅の工法の変化によって、見えがくれ材が主流になり、強度や寸法精度が高く、安価な並材製材品が求められるようになった。つまり、住宅構造材のマス市場は高価な見えがかり材から安価な並材へと変化してきた。今後の国産材需要拡大を考える上では、そうした変化に合わせて、木材のマーケティング戦略を練っていく必要がある。そこで、本発表では、木材の市場をマスとニッチに区分し、マス市場戦略としては国産材加工コストや原料丸太の低コスト安定供給の方向性について提案する。ニッチ市場戦略としては、特化して対応する必要があることや、ニッチ市場をマス市場に変える取り組みの重要性について述べる。
  • 國崎 貴嗣
    セッションID: A34
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    生産年齢人口が減少し,第三次産業への従事者割合が高まる日本では,近い将来での林業従事者の大幅な増加は期待できない。こうした中で森林の公益的機能を持続的に発揮させつつ,黒字を出せる森林経営を展開するには,温故知新(持続可能な森林経営は「森林」,「林業技術」,「人材」があってこそ)が重要である。森林,林業技術,人材を調和させる上で,今こそ森林計画(森林組織化,森林誘導,森林施業の有機的結合)を有効に活用することが求められる。森林組織化では,地域の実状を踏まえつつ,適切な作業級(目標林型と林分配置を明確にした,組織化された森林)を各地に設計する必要がある。このためには,現場を知る林業関係者(所有者,林業事業体,森林組合)はもちろんのこと,地域の森林・林業・木材産業の動向を知る行政関係者,地域の森林造成技術を科学的に評価できる研究者が,「前向き」に連携し続けることが必要不可欠となる。産官学の連携を生み出し,これを継続させる上で,産官学いずれも,膨大な累積債務を抱える政府からの予算(補助金)にあまり頼っていられないことを強く認識すべきである。
特用林産
  • 廣瀬 可恵, 遠藤 良太, 久本 洋子, 山田 利博, 田野井 慶太朗, 中西 友子
    セッションID: B01
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い千葉県内の筍から放射性Csが検出された。そこで、①県中部地域において、文部科学省の航空機モニタリングによる放射性Cs沈着量が多い地域(10-30kBq/m2)の竹林Aと少ない地域(≦10kBq/m2)の竹林Bで筍等の放射性Cs濃度及び空間線量率を比較する。また、②タケの各部位、落葉、土壌の中で放射性Cs存在量が多い部分を特定する。調査は竹林Aで2012年4月上旬、竹林Bで3月上旬に行った。①竹林A、Bにおいて、筍食用部分、葉、落葉の放射性Cs濃度と地上高10cm、1mにおける空間線量率を測定した。②竹林Aにおいて、タケの各部位、落葉、土壌に存在する放射性Cs量を単位面積当たりで比較した。その結果、①竹林A、Bの順に、各部位の放射性Cs濃度(Bq/kg)は、筍食用部分(生重)53.1、30.4、葉(生重)82.9、129.3、落葉(乾重)2,129.4、2,079.5、空間線量率(μSv/hr)は、地上高10cmで0.047、0.072、地上高1mで0.059、0.063であり、必ずしも竹林Aで高くなかった。②放射性Cs量(Bq/m2)は、タケの各部位に比べて落葉および土壌に多く、タケの各部位の中では稈で最も多かった。
風致
  • 斎藤 馨, 中村 和彦, 渡辺 隆一, 藤原 章雄, 岩岡 正博, 中山 雅哉, 大辻 永, 小林 博樹
    セッションID: B02
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    「インターネット森林観察サイト」は、森林の現在の様子、過去の様子をインターネットから提供するサイトで、誰もが、遠隔の森林情報に容易に接しながら、森林の季節や経年変化に気づき、興味を持って森林の観察ができ、しかも観察継続がしやすくなるサイトを目的に開発した。対象の森林は遠隔の天然林で、 かつ長期映像記録のある東京大学秩父演習林(埼玉県奥秩父:過去15 年間記録)と信州大学志賀 自然教育園(長野県志賀高原:過去20 年間記録)とした。森林の様子を映像と音によりリアルタ イム(ライブ)でインターネット上に配信し、同時に配信データを録画・録音・公開し、配信後 にも観察できる森林観察サイトを開発し、継続的な運用試験を可能にした。例えば、フェノロジーに着目すると過去の映像と同じショットの画像が毎日配信されることで、日々や季節の変化を見ることが出来、ふと気づいたときに数年から十数年を遡って確認することが出来る。しかもインターネット上で共有されているため、SNSとの親和性も高いことを確認した。
  • 伊藤 太一, 川端 篤志, 中村 彰宏
    セッションID: B03
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    米国のウィルダネス法(1964)は世界各国の保護地域システムに影響を及ぼし、日本の自然環境保全法(1972)もその一端であると言われる。さらに、IUCNの保護地域カテゴリ(1994)においてもⅠbとしてウィルダネスが位置づけられた。だが、米国のウィルダネスと日本の自然環境保全地域およびIUCNの保護地域カテゴリⅠbの展開過程の比較から2つの課題が明らかになった。第1に、米国では国立公園や国有林という保護地域内のゾーンという位置づけであったのが、独立した保護地域として位置づけられた。第2に、「無車道」で象徴される機械文明のない空間という原則が、曖昧になった。その結果、「世界保護地域データベース(WDPA)」には日本の原生自然環境保全地域5ヶ所がウィルダネスとされているが、IUCNのカテゴリならばⅠaとされるべき空間である。日本において本来のウィルダネスを展開するためには、自然公園などの保護地域から「無車道」の空間を抽出し、スノーモービル規制に類似した利用のゾーニングの導入が必要となろう。
  • 森田 えみ, 内藤 真理子, 若井 建志, 浜島 信之
    セッションID: B04
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     我が国では約2割の人が睡眠に問題を感じているが、不眠症はうつのリスクファクターであるため、睡眠の改善はメンタルヘルスの維持において重要であると考えられる。森林浴による当夜の睡眠の改善が報告されているため、本研究では、森林散策頻度と日常の睡眠充足感等との関連を検討した。
    【方法】
     人間ドッグ受診者を対象とし(4,552人、平均年齢52.1 ± 8.7歳)、自記式質問紙で評価した。従属変数を睡眠不足感、独立変数を年齢、性別、睡眠時間、飲酒、喫煙、BMI、森林散策頻度(年数回以下/月1回以上)として、ロジスティック回帰分析を行った。
     【結果及び考察】
     年齢調整後の平均睡眠時間は、森林散策頻度が年数回以下(6.5時間)の群に比べ、週1回以上(6.8時間)、月2~3回(6.6時間)の群は有意に睡眠時間が長かった。睡眠不足感を有する割合に関して、森林散策が年数回以下の群の調整オッズ比は1.7(95%CI:1.3-2.4)であり、有意に高かった。これらから、習慣的な森林浴は日常の睡眠に良い影響を及ぼす可能性が示唆された。今後、追跡調査にて、因果関係を明らかにする必要がある。
生理
  • 森 茂太
    セッションID: B05
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
      樹木呼吸を単なる消費、支出、損失として理解すべきではない。近年、Metabolic Ecologyが提唱され、呼吸は物質とエネルギーの変換による適応、防御、成長などを左右する生命現象であることが明らかとなりつつある。我々は、実生から巨木まで野外に生育する約500個体を材料に根を含む個体呼吸を正確に実測した1)。その結果、地上、地下呼吸の関係が個体サイズとともに明確に変化することを発見した。一方、個体呼吸は裸子、被子など系統間で差はほとんどなかった3)。この結果は、樹木個体呼吸が重力環境1)2)に適応して物理化学的に自己組織化している可能性を示している。

    (
    参考文献)
    1)Mori S et al. (2010) PNAS 107:1447-1451,2) Atkin O  (2010)  F1000.com/2712970#eval2376070, 3)Mulder C, Boit A, Mori S et al. (2012) Advances in Ecol Res 46:1-88
  • 横田 智, 田原 恒, 西口 満, 古川原 聡, 毛利 武, 掛川 弘一, 楠城 時彦
    セッションID: B06
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は遺伝子組換えによるセイヨウハコヤナギの環境ストレス耐性を向上させる研究に取り組んでいる。本研究の目的は野生型ポプラの耐塩性の閾値を明らかにすることである。【方法】組織培養法によって増殖させたセイヨウハコヤナギの苗を人工気象室(面積240×340 cm2 ,高さ240 cm)において温度25 C˚,日長 16時間,照度 280 μmol m-2 s-1で水耕栽培し,高塩処理を行った。塩処理として,175~300 mM
    塩化ナトリウム水溶液に苗の根を24時間浸した。その後,流水で5分間根を洗い,塩化ナトリウムを含まない水に移した。1週間後,苗の生死を判定した。【結果】5回の塩処理実験を行った結果,175,200 mM
    NaClでの生存率は100%であった。225,250 mM NaClでは60%,275 mM NaClで0%となったが,300 mM NaClでは40%であった。この結果から,野生型のセイヨウハコヤナギは,24時間程度の短期間であれば,200 mM NaClまでの塩処理に対して枯死せず耐えられることが示された。
利用
  • 薗田 登, 池田 潤, 楢崎 達也, 八木 誠司
    セッションID: B07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    11年間行ったことを次の3段階で発表する
    1.木寄・簡易集材技術と生産性:マツ枯の集材は昔の修羅の技術を改良したタケシュラとタケ台車、人工シュラを組み合わせて行った。この生産性に加えこれに使用する孟宗竹を運ぶ際に効果的な方法の生産性も算出した。生産性には移動距離と材の重さが関係するためこの指標も取り入れた。
    2.マツヤマの雑木皆伐実生のマツが生えてきたが雑木で日陰となり生育に支障となるので皆伐して集材している。この作業は手作業が多いが、一部タケシュラ等を使用している。この生産性も算出した。
    3.つるべ式ヤエン:山頂部に発生するマツタケ土壌には環境浄化材が効果的と考え、これの荷揚げ(10~15kg/袋)にはつるべ式ヤエンを設置している。荷揚げのエネルギー源は雑木などの下す力をを利用している。この荷揚げと荷下ろしの荷重関係も調査した。これまで集材した合計の31トンは紙パルプ用のチップ工場に軽トラで運搬している。
    マツタケヤマ再生に向けて:マツタケ発生は初期よりも増加しているが、年毎の気象条件に左右される。発生個所(シロ)を人工的に増加させるためマツタケ種菌づくりを始めた。
  • 近藤 稔, 中西 正直
    セッションID: B08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    布製修羅であるスカイウッドシュートは,シュート両端の4点を立木に固定し,うちどちらかの端2点に取り付けたチェーンブロックでシュートの張りを調整する。このため,4点の張りのバランスが悪いと滑走面にしわが発生して材の滑走を妨げ,最悪,材が滑シュートから転落する原因となる。そこで,4支点の張りの強さと滑走面のしわ発生の関係ついて検討した。実験は,シュート両端の4点にひずみ式ロードセルを取り付け,1点の支点張力を寺井(2012)の報告を参考に1000,1500,2000 kNの3段階に変化させた場合の3点の支点張力を測定し,その時の4支点の位置をセオドライトと光波距離計を用いて測量して行った。また,支点の高さを2段階に変化させて同様の実験も行った。実験の結果,2つの対角線方向の支点張力の和の差が1000kNを超えるとしわの発生がみられ,差が大きくなるにつれてしわが大きくまた深くなる。このしわの発生原因は,張力の和が大きい対角線方向にシュートの繊維が伸びることにより,もう片方の張力の和が小さい対角線方向に繊維が縮むためと考えられる。また,4つの支点がねじれの位置になるとしわが発生しやすくなる。
  • 松本 武
    セッションID: B09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     かかり木を処理する際にはけん引等による処理方法が安全な方法として推奨されている。特に2立木間の樹冠に接触して発生したかかり木はけん引以外の選択肢はないが,かかり木をけん引して処理する際には大きなけん引力が必要であり,人力のみによる処理は難しく,牽引具等の運搬・設置および処理に多大な労力が必要とされることが明らかとなっている(立川・佐々木2000;松本2010;立川ら2011;松本・岩岡2012)。実際の現場ではより簡易な方法として,かかり木の元玉を落とす,かかり木に別の伐倒木を浴びせ倒す,かかられている木を伐倒する,かかり木を放置する等の処理が行われている。いずれも危険な作業として禁止されているが,林業労働死亡災害件数全体の2割がこうした処理作業に起因する(林災防,2012)。これらの危険とされる処理方法のうち,かかり木の元玉を鋸断する方法は現場での実践例も多く,処理のためのガイドラインの策定を望む声もある(広部2010)。 
     そこで,本研究では元玉切りによる安全なかかり木処理の可能性を明らかにするために,人為的に発生させたかかり木の樹幹を元口から段階的に鋸断する試験を行った。
  • 松村 哲也, 中西 弘充, 伊藤 吹夕, 小西 繭, ショードゥリー モハマド シャヒード, 小西 哉
    セッションID: B10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
     森林・林業作業時の防護被服や防護具のデザインの一環として作業者の被視認性を高め,注意や警戒を喚起させる安全色としてのオレンジ(O)・イエロー(Y)・レッド(R)の使用が増えている。これら安全色が発揮する効果は,どんな作業環境であっても有効でありたい。本報告では,我が国の夏季,森林の木々が緑色を呈する時期と,秋季,紅葉期における安全色の視認性について考察を行った。
    2.方法
     長野県駒ヶ根市から伊那市にかけての中央アルプス山域を試験地として,平成24年の夏季緑葉期と秋季紅葉期に撮影した森林樹木の画像を元に,環境を構成する代表的な色彩を抽出し,O・Y・Rの3安全色との間の色差を求めた。二色間の色差が大きい事を「色合いの乖離が大きく,視認性が高い」として評価した。
    3.結果と考察
     森林環境を構成する様々な色彩とOYRの3安全色との間では,夏季には良好な色差を保つ一方,秋季には紅葉した葉や落ち葉に近傍色が多く,色差が小さくなった。そのため,夏季と秋季では別の色彩デザインを用いるか,もしくは筆者らが既報にて提言した,無彩白色と組み合わせる方策が安全色効果の維持に有効だと考えられた。
  • 西島 麻衣, 近藤 稔, 山田 容三
    セッションID: B11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】大型林業機械の普及に伴い、伐出作業の負担は軽減され、女性労働者の進出が可能性となった。しかし、現状は伐出作業に従事する女性労働者の数は非常に少ないままである。今後、女性労働者数をより増加させるために女性労働者の伐出作業の作業強度に着目し、現状について調査することにした。【方法】調査は和歌山県日高郡日高川町と山梨県富士吉田市の2か所の作業現場で行った。被験者は28歳と24歳女性の2名とし、作業中の心拍数を計測しあわせて作業の様子をビデオ撮影した。心拍水準を作業強度の指標として作業内容との関連を考察した。作業はハーベスタによる造材作業とチェーンソーによる伐倒・造材作業を行った。【結果】ハーベスタとチェーンソーによる造材作業の平均心拍水準を比較すると、ハーベスタ作業(50.52%)の方が低い結果となった(チェーンソーでの造材時78.30%)。しかし、ハーベスタ作業時に生じたメンテナンスや燃料補給時の平均心拍水準は63.29%となり、造材作業時よりも高くなった。以上より、大型機械化により作業強度は小さくなっているが、機械に関するメンテナンス等により作業強度が大きくなることがわかった。
  • 鹿島 潤, 都築 伸行, 鹿又 秀聡, 興梠 克久
    セッションID: B12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    チェーンソー用防護服を使用している300超名の林業労働者に対してアンケート調査を行った。その結果、防護服の日常管理が必ずしも正しい方法行われていない現状が明らかになった。メーカーからの使用上の注意事項への認識が十分でなく、誤った使用、管理が行われているため防護性の低下している防護服を使っている作業者が多い可能性が示された。特に洗濯方法を誤っている場合や、破損を自分で修理している場合にその可能性が高い。防護服が破損する理由は様々であるが、チェーンソーで切った、汚れがひどくなった、破れたといった理由が多い。作業者の身体に合っていないサイズの防護服を使用しているために破損している場合も少なからずあると考えられる。防護服の更新期間は約2年と推測されたが、正しい使い方とメンテナンスができれば更新期間の延長が可能なばかりか、更新経費の抑制も可能と考えられる。
  • 下牧 成男, 楢崎 達也, 山口 修司, 美濃島 浩
    セッションID: B13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     林業用路網は日本の林業の基盤。関東ロームやクロボク等の軟弱地での路網の開設と維持には解決策が見いだせてない。日本の林業用路網には、完成度を名人芸的な視点「○○式」から評価するのではなく、土木的な数値指標で評価することが必要である。平成23年度に実施された森林・林業再生プランモデル事業で来日したフォレスターより、ドイツ・オーストリアではすでに実用されているジオテキスタイル使用の提案があった。それに基づき、岐阜県郡上市でジオテキスタイルを用いた路網開設を行った。ジオウエッブ、織布シート、不織布シート、メッシュシートの4種類、他に土壌改良材と無対策の試験区を設定して施工。その後、①簡易コーン貫入試験、②平板載荷試験、③現場密度試験を行った。結果、ジオテキスタイルを施工した路盤は土壌改良材や無対策に比べて良好な結果が得られた。その理由として、①ジオテキスタイルがクロボク路床と山土砂路盤との間あることで水分を排出する分離効果、②ジオテキスタイルにより荷重がかかってもクロボク路床に路盤材(砕石)が混ざらず路盤を効果的に締め固められること等である。これらの結果を踏まえて実用している。
  • 後藤 純一, 吉原 収, 鈴木 保志
    セッションID: B14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】路網整備において、4t以上の積載量のあるトラックの走行を想定した林道や林業専用道の密度が不足する現状にある。本研究では、土質条件に応じてどのような作設方法によれば、林業専用道に準じた規格のトラック道でどれだけの強度と安定性を確保できるかを明らかにしようとした。【方法】既設の高規格作業道5路線および道路規格が異なるフォワーダ用の森林作業道2路線を対象に、衝撃加速度によるCBR試験、現場密度試験、土の粒度試験、簡易貫入試験を実施し、強度特性を評価した。なお、高規格作業道は、路体全体を全切りし下層から締固めて作設する方法と半切・半盛で路体を作設する方法を比較対象とした。【結果】トラックの走行を前提として作設された路線では、CBR値、乾燥密度および貫入試験による深度30㎝未満のNd値ともに高く、路盤は強固に作設されている。一方、礫まじり土からなる路線は強度が高いが、細粒分の割合が多い土からなる路線では路体深部にNd値5程度の締固めが不十分な土層が存在している。また、類似した土質において、森林作業道は高規格作業道より強度が劣り、継続利用には走行車両の制限や盛土のり面の補強が不可欠である。
  • 立川 史郎, 伊藤 樹里, 澤口 勇雄
    セッションID: B15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本では今日でも馬搬が行われている地域がある。馬搬作業は既存の歩道などが利用可能であり、また道路のない傾斜面でも地表を撹乱することなく作業できることがメリットとしてあげられる。本研究では馬搬と機械による搬出作業を行った跡地を対象に、地表の締め固め・撹乱について比較検討した。【方法】調査地は2012年1~4月に間伐を行った岩手県遠野市内の市有林2か所である。調査地内に1×2mの調査プロットをそれぞれ数か所設定し、プロット内で土壌硬度、植生量、有機物含有量について調べた。【結果】土壌硬度は深さ20cmにおいて、機械(平坦地)では4.6~7.6kgf/cm2であったのに対して、馬搬では平坦地で3.0~5.1kgf/cm2、傾斜地で0.9~4.5kgf/cm2といずれも機械と比べて低かった。また機械、馬搬のいずれも道路からの距離が短いほど土壌硬度は高い傾向を示したが、機械の方がより顕著に表れた。植生量と有機物含有量は道路からの距離よりも調査地の違いによる差が大きかったが、ほぼ同一の距離で比較すると、機械よりも馬搬の方が高い値を示した。
  • あはまど ざわうぃ あじいた, 芝 正己, じゃまり のるじゃなとんないむ
    セッションID: B16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    This study presents a method to locate and to map unstable sites prone to erosion in Yambaru Forest Area (YFA) in the northernmost part of Okinawa Island. Topographical factors, forest harvesting activities and road construction on steep slopes are likely to have significant effect on terrain stability. The assessment was performed through the detailed analyses of a DTM (10m x 10m). SAGA GIS Software was used to derive erosion potential related indices such as, slope length-gradient factor (LS factor), topographical wetness index (TWI), stream power index (SPI) and wind effects (WE), respectively. These data were used to build a map describing geographical locations of potential hazardous sites. The approach used in this study highlights important topographical factors contributed to erosion and the map produced provides beneficial information on potentially unstable slopes as a basis guideline for effective forest management planning.
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