本研究では安価かつ簡便な分光モニタリング手法であるフラットベッドスキャナーとデジタルカメラを用いて,カラマツおよびヒノキの個葉と樹冠部のRGB値と2G_RBiの季節変化を測定し,針葉のクロロフィル(以下,chl)濃度および光合成速度の季節変化と比較した。スキャナーによる個葉のRGB値はR,G値がカラマツ,ヒノキともにchl濃度と高い相関を示した。特にヒノキにおいては,植栽斜面位置(斜面の中腹部と下腹部)の違いによるchl濃度の差異を良く反映していた。デジタルカメラによる樹冠部の2G_RBiは,カラマツにおいてはchl濃度との間に相関は見られなかったが,光合成速度との間には相関が見られた。ヒノキにおいては,2G_RBiは植栽斜面位置による違いは反映しておらず,季節変化もchl濃度の季節変化のパターンとは異なっていた。一方,2G_RBiの季節変化のパターンは光合成速度の春先や冬季の低下といった季節的な変化を反映していた。デジタルカメラとスキャナーは,それぞれ樹冠および個葉スケールでchl濃度,光合成能力を評価する有効なツールとなる可能性が示された。
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