冷温水槽など水路回路を備える装置の衛生管理の重要性が指摘され、対策の一つとして、冷温水槽循環水回路に組み込む除菌フィルターが開発された。除菌フィルター装着に伴い、流路抵抗が増加することによる熱交換能への影響について、実験回路を作製し検討を行った。除菌フィルター装着により、循環水流量は38%低下し、それに伴い人工肺入口出口温度較差は最大0.4℃低下し、熱交換係数は最大10%低下した。血流量を考慮した熱移動量では最大14%低下した。したがって、冷温水槽循環水回路への除菌フィルター装着による熱交換能への影響は少なからず発生した。しかし、人工肺入口出口温度較差はどの血流量でも最大0.4℃であり、冷温水槽の温度設定や操作のタイミングを検討することで十分対応が可能な範囲の影響であり、冷温水槽循環水の清浄度を担保するデバイスとしてはとても有用であった。今後は、その他の熱交換器における影響を確認するとともに、メーカーはこの除菌フィルターの使用期間について定めていないが、交換指標や管理方法を検討していきたい。
「体外循環技術」第47巻4号(通巻141号)にて、遮断解除後の心室細動発生率がセボフルラン(SEV)群で有意に低いことから、吸入麻酔薬投与のプレコンディショニング効果の可能性について報告した。今回さらに症例数・検討項目を増やし検討したので報告する。2018年1月から2021年12月に人工心肺を使用した症例でSEVを使用した136例をSEV群、静脈麻酔で施行した124例をProf群に分類し、後方視的に比較検討した。結果、CK-MB massや術後EFなどに有意差を認めず、吸入麻酔のプレコンディショニング効果による心筋保護作用(心筋マーカー、EFの温存、再灌流性心室性不整脈の予防効果)については同定できなかった。今後の研究においては、心筋マーカーの特性上CK-MB massだけでなく、より精度が高く溶血に影響されにくいトロポニンを測定し、またプレコンディショニング効果に影響を与える因子を排除して検討する必要がある。