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森 光晴, 饗庭 了, 加藤木 利行, 四津 良平
2004 年31 巻1 号 p.
1-12
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】先天性心疾患に対する心臓外科の歴史は1938年の動脈管結紮術に始まり,20世紀後半になり急速な発展を遂げてきた。小児心臓外科手術における最大の到達目標は先天性心疾患の患者の発育,および長期予後を正常心である一般人にできるだけ近いものにすることである。その目標に対し,これまで多くの著名な心臓外科医が各疾患に対し様々な術式や治療戦略を立てきた。その結果,手術成績および遠隔予後が向上し安全に行われるようになった手術もあれば,未だ治療成績が不良であり様々な手術手技や治療戦略が現在もなお模索されている疾患や術式も数多く存在する。ここでは,今までの試行錯誤の歴史を経て現在行われている先天性心疾患に対する治療戦略および手術法の中から,今もなお様々な手技や治療戦略が改善,工夫されている疾患や手術法のなかから主なものを取り上げ示す。
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―BABY-RXとα-CUBE2000の比較―
岩城 秀平, 山本 泰伸, 小山 美季, 横田 通夫, 坂本 喜三郎
2004 年31 巻1 号 p.
13-16
発行日: 2004/03/01
公開日: 2011/07/04
ジャーナル
フリー
新生児・乳児用膜型人工肺CAPIOX BABY-RXを臨床使用する機会を得たので臨床評価を行った。2002年5月から2003年3月までの体重8kgから12kgの症例で,CAPIOX BABY-RXを使用した9例(C群)と,従来より使用してきた膜型人工肺α-CUBE2000,静脈リザーバーミディカードD754を使用した9例(α群)を対象とした。ガス交換能の比較において,開始直後のQp/Qt,CO2/PaCO2は有意差を認めなかった。開始時,冷却時,復温時のFiO2,PaO0,V/Qは有意差を認めなかったが,復温時のPaCO2でC群がα群に対して有意に高かった。ヘマトクリットの変化はすべてにおいてC群がα群に対して有意に高かった。血小板保存率,白血球増加率の変化は有意差を認めなかった。充填量,初期充填時リザーバレベルはC群がα群に対して有意に少なかった。ガス交換能において,灌流量1-5L/min以下では,十分な性能があり臨床使用に問題はなかった。BABY-RXは充填量の削減ができ,Htを高く維持できた。
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―Oxia人工肺とQUADROX人工肺の比較―
大内 徳子, 木下 真, 江成 美絵, 高田 裕, 仲田 昌司
2004 年31 巻1 号 p.
17-20
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】JMS社製膜型人工肺Oxia10例とJOSTRA社製模型人工肺QUADROX10例について,ガス交換能,血液学的データ,操作性についての比較検討を行った。ガス交換能については,酸素運搬能と炭酸ガス分圧較差による比較検討を行った。その結果,酸素運搬能に有意差は認められなかった。しかし,炭酸ガス分圧較差でOxiaが開始直後と30分後で有意に高値を示した。GOT, LDH, CPK, FDP, WBC,好中球,PLT, Fib, C4, CH 50では両群間に有意差を認めなかった。C3は体外循環開始前からICU帰室直後までOxiaが有意に高値を示したが,いずれのデータも基準値範囲内であった。操作性については,当施設の人工心肺回路の構成上,Oxiaとリザーバーを分離型にすることにより,QUADROX使用時と同様の充填量で行うことができた。OxiaとQUADROXの臨床的比較検討を行った結果,ガス交換能,血液学的検討にいくつかの有意差を示したが,臨床使用上に問題点は見られなかった。
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北本 憲永, 神谷 典男, 鈴木 政則
2004 年31 巻1 号 p.
21-24
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】人工心肺の初期充填量を軽減するにはチューブの回路径と回路長は重要な要素となる。回路の長さを変更せずに回路径を細い径にすることは,回路内圧が増加し臨床上変更できない。そのため回路内圧の上昇を少なくするためには回路の長さの短縮が必要となる。予定する灌流量に対する回路,人工肺,動脈フィルタ,カニューレの圧力損失はそれぞれの流量によって異なり全体から見る割合も異なる。そのため回路,人工肺,動脈フィルター,カニューレを組み込み,システム全体から回路の圧力損失について検討した。チューブ径5/32インチを主とした送血ポンプからの回路全長は335mmで,流量0.8L/minの圧力損失は13.2mmHg,1.2L/minで27.8mmHg,2.0L/minで59mmHgであった。また,臨床使用例での体重9kg以下用のシステムでは流量は1.02±0.27L/min(0.54~1.60L/min)で,動脈フィルタ入口部回路内圧は188.9±79.3mmHg(80~350mmHg)であり,臨床使用上の許容範囲内であると考えられた。回路径を細くすることは低充填化に有効であり,無輸血手術の可能性と人工心肺中の血液希釈の影響を最小限に抑えることが可能と考える。
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横川 忠一, 阿部 正一, 阿部 弥之, 相川 志都, 金本 真也
2004 年31 巻1 号 p.
25-27
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】人工心肺初期充填用血液に対し,テルモ社製体外循環血液ガスモニターCDI 400(CDI 400)を用いて,血液ガスの調整と血液洗浄の効果を検討した。新生児および乳児体外循環の20例に準備した人全血液CPD「日赤」2単位(全血2単位)の20パックを対象とし,20パックすべてを手術当日に当院で放射線照射を行った。全血2単位の洗浄は血液濾過法を選択した。血液ガスの調整はCDI 400を用いて行った。赤血球製剤用白血球除去フィルターに200mL通した時(洗浄前)と,血液濾過終了後(洗浄後)を比較した。洗浄前と洗浄後のNa, K, Lactate, PCO2, Ht, Cl-,pH, PO2, BEは正常化し,Ca, Mg
++は正常値へ復する傾向を認めた。なおGlucose,HCO-3は有意差がなかった。また,体外循環を開始しても初期血圧低下が起こらず,むしろ血圧が上昇する現象が認められた。血液濾過法による電解質の補正およびCDI 400を用いての血液ガスの調整は有用な手段であると考えられた。
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古垣 達也, 平松 祐司, 高橋 宏, 木原 真一, 中山 凱夫, 榊原 謙
2004 年31 巻1 号 p.
28-30
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】Modified Ultrafiltration(MUF)施行中の患者体温低下予防を目的に,2002年からMUF回路に輸液加温装置を組み込み使用している。今回,小児開心術65症例を対象に,輸液加温装置を使用したH群(n=25)と非使用のN群(n=40)を,体重別にAグループ(<5.0kg),Bグループ(5.0~10.0kg),Cグループ(10.0kg<)に分類し,MUF施行前後の液量バランス,ヘマトクリット値,末梢皮膚温度の変化を比較した。その結果,液量バランス,ヘマトクリット値,末梢皮膚温度の変化に統計学的な有意差はなかった。しかし,液量バランスではH群のすべてのグループで除水量が多かった。ヘマトクリット値の変化はH群のAグループが最も大きく,末梢皮膚温度変化は,H群のBグループが最も大きかった。MUF中の輸液加温装置の使用によってより良好な末梢循環が維持される可能性が示唆され。
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開 正宏, 山鹿 章, 清末 智, 服部 敏之, 伊藤 敏明, 堀田 壽郎
2004 年31 巻1 号 p.
31-34
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
(要旨)近年,冠動脈バイパス術は人工心肺を使用しないOff pump CABGが増加してしいる。その際には出血を回収するために自己血回収法を用いることが多い。今回,Off pump CABG症例において,洗浄式自己血回収装置を用いた方法(C群)と,Auto Transfusion型である非洗浄濾過式自己血回収法(NW群),およびOn pump CABG(CPB群)の3群におけるTP,アルブミン,Plt, Hb, RBC,溶血について比較検討した。その結果,TP,アルブミン,Pltには3群間に有意差なく,HbではC群がNW群・CPB群に比して有意に高値を示し,RBCではC群がCPB群に比して有意に高値を示した。溶血はNW群・CPB群が術後に有意に増加したが,翌日には術前値と有意差なく低下した。また,血液製剤非使用率はC群45%,NW群69%,CPB群38%であった。非洗浄濾過式自己血回収法は,洗浄式自己血回収法やOn pump CABGに比し,血液成分に対して有利な点は認められなかったが,出血とほぼ同時に返血できるため,血液製剤の非使用率は高かった。
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―MPS心筋保護液供給システムを用いて―
吉岡 政美, 飯塚 嗣久, 笹盛 幹文, 扇谷 稔, 山内 良司
2004 年31 巻1 号 p.
35-39
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】当施設では,QUEST Medical社製MPS心筋保護液供給システムを使用し,マイクロプレジャー心筋保護法を行っている。1回注入量は血液量で400mLとし,塩化カリウム,ニコランジル,塩酸ジルチアゼム,硝酸イソソルビド,マグネシウムを添加した。全症例で迅速な心停止が得られた。また,遮断解除後の除細動器使用率は12.5%であった。体外循環離脱時のカテコラミン投与量はDOAが4.0±1.1γ,DOBが3.6±1.5γであり,術後のCPK-MBは,ICU帰室時の9.7±2.31U/Lをピークに翌日には5.4±1.31U/Lに低下した。晶質液を使用しないため薬剤の総注入量は48.1±12.4mLであり,体外循環中の過度の希釈を防止できる。それにより輸血率や輸血量を減らすことができると考えられた。また,カテコラミン投与量が少なく,CPK-MBの過大な上昇も見られず十分に心筋を虚血障害から保護することができていると考えられた。マイクロプレジャーは晶質心筋保護液を使用せず,血液に心停止薬液と添加薬液のみを加えた微量でシンプルな心筋保護法であり,良好な心筋保護効果が得られる有用な心筋保護法と考えられた。
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―CAPIOX RX人工肺を用いた補助循環システム―
百瀬 直樹, 後藤 悟, 山越 理恵, 唐沢 あや子, 中島 逸郎
2004 年31 巻1 号 p.
40-43
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】CABGの補助手段やPCPSにおける補助循環システムでは,即応性と気泡に対する安全性が重要となる。そこで我々は,これらの点に優れた補助循環システム(RX-EBS)を考案した。このRX-EBSは従来のPCPS回路と同様な遠心ポンプを用いた閉鎖回路で,人工肺には気泡の除去能力の高いCAPIOX-RX人工肺を用いている。そして,従来は脱血回路にあった充填液ラインを人工肺流出口に移動し,脱血回路には一切の分岐やルア接続部がない。そして,充填液ラインには逆止弁を取り付けた。充填時の気泡除去に要する時間を気泡検出器CMD-20によって測定するとともに,on-pump beating CABGなど5例に臨床使用し安全性を検証した。その結果RX-EBSでは充填時の気泡除去が平均26秒で終了した。また,充填終了後には逆止弁が機能し充填液ラインが自然に閉鎖するため,充填液ラインを閉め忘れても気泡が回路に流入する危険性がないことが確認できた。考案したRX-EBSはセットアップの即応性と,気泡に対する安全性が高いことが確認でき。
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樋口 浩二, 吉井 新平, 今井 亮, 鈴木 章司, 大澤 宏, 石川 成津矢, 井上 秀範, 福田 尚司, 緒方 孝治, 進藤 俊哉, 松 ...
2004 年31 巻1 号 p.
44-46
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
【要旨】当院で作成した至適灌流量算出式を利用して,体表面積と灌流指数から計算する適正灌流量が示す適正な条件,および灌流指数を使用して適正灌流量が計算できる理由について検討した。その結果,適正灌流量と同じ灌流量を示す条件は,「常温と無希釈」や「中等度低体温と中等度希釈」など複数存在したが,そのすべての条件において体温,Hb, SvO2は異なる数値を示した。このことから,適正灌流量とは体温,Hb, SvO2がある特定条件のときに必要な灌流量であり,灌流指数はその特定条件時に必要な灌流量を体表面積で除算した数値であると考えられた。また施設問で灌流指数値が異なる要因も体温,Hb, SvO2の設定条件が施設間で異なるためであることが示唆された。今までの灌流指数値は,体外循環法の変化により実用性が薄れている可能性が高く,新たな灌流指数値を作成する必要があると考えるが,その際には今までの灌流指数値を単純に加減して臨床結果に合わせるような方法ではなく,各施設の体外循環法や体温,Hb, SvO2の設定条件に沿った灌流指数値を作成することが重要である。
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―マニトール分割投与法―
稲葉 昌道, 舩木 哲也, 仲野 孝, 北條 浩
2004 年31 巻1 号 p.
47-48
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
充填液および体外循環(CPB)中に,マニトールを分割追加投与することにより,良好な結果を得たので報告する。CPBを使用した成人開心術症例(14例)で,当院で従来行われてきた充填液中ヘマニトール4mL/kgを投与したコントロール群7例(A群)と,充填液中へは血漿浸透圧320mOsmを目標としたマニトール量を投与し,CPB開始10分後に浸透圧320mOsmを目標としたマニトール量を追加投与した群7例(B群)に分け,血漿浸透圧,血清総タンパク,アルブミン,尿量,CPBバランスを比較検討した。両群間の血清総タンパク,アルブミン,尿量には有意差がなく,CPBバランスではB群が有意に低値を示した。この結果から,マニトールを分割投与することがCPBバランスにおいて有効であると考えられた。
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松井 孝拓, 鈴木 満則, 藤沢 博, 浅海 宏, 内山 英貴, 舟橋 道雄, 新野 哲也, 瀬在 明, 秦光 賢, 井上 龍也, 塩野 元 ...
2004 年31 巻1 号 p.
49-52
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
当施設では,大動脈瘤手術の補助手段として超低体温循環停止+順行性脳分離体外循環(SCP)を行ってきた。当施設における8年間の大動脈瘤手術におけるSCPの技術および成績について検討を行った。症例は,1995年7月~2003年2月の間に搬送された急性大動脈解離症例113例(DeBakeyI~III型)を対象とした。脳分離回路は,人工肺の出口よりYコネクターと1/4インチチューブを用いて1ポンプ2分枝送血とした。また,2002年3月より3分枝送血に変更した。体外循環はFA送血,RA脱血にて行い,体外循環スタートと同時にIsofluraneを0.3~0.5%人工肺に流し,動脈圧が落ち着いた時点からCoolingを行い,直腸温が20℃ になった時点で循環停止とし,大動脈を切開し腕頭動脈,左総頚動脈に住友循環カニューラ(15Fr,12Fr)を挿入しSCPを開始する(2002年3月より左鎖骨下動脈に12Frのカニューラを挿入し3分枝送血にしている)。Warmingは,人工血管の側枝から順行性送血とし,直腸温が36.5℃ になった時点で体外循環を離脱した。2002年3月に1例合併症が発生した。脳分離方法,復温のしかたに問題があったと考えられた。3分枝送血に変更し,復温時は食道温,膀胱温,直腸温に温度較差が生じないように復温をするようになってからは,脳分離体外循環を施行した患者に対麻痺の合併症もなく,現在は良好な成績を得ている。
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加藤 優, 長谷川 武生, 大江 祥, 河江 忠明, 奈良 理, 伊藤 靖, 森 和久, 浅井 康文
2004 年31 巻1 号 p.
53-56
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
偶発性低体温症に陥り心肺停止を来たした症例に対し,復温および循環維持目的にPCPSを施行した。これらの症例をretrospectiveに検討したので報告する。対象は,2002年10月から2003年10月までの1年間に施行した10例とした。方法は,各症例を生存群と死亡群に分類し比較することとし,両群間の時間経過,搬入時の血液学的パラメーターの比較を行い,各項目の検討を行うこととした。結果は両群間の年齢,身長,体重,搬入時最低鼓膜温で有意差はなかった。経過時間の比較では心肺停止時間が生存群で短い傾向にあった。以上より,時間的関与が重要であることは明らかである。しかし偶発性低体温症の場合,常温での心肺停止例とは異なり,低体温による生理機能減退と潜水反射により,通常より長時間の心肺停止であっても,生存の可能性は延長すると考えられる。そのため判断基準の一選択肢として時間経過を考慮することはできるが,適応基準とすることは難しく,これらは今後の課題であると考える。
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前川 正樹, 三原 幸雄, 東郷 好美, 阿部 顕正, 川野 成夫, 伊藤 浩, 藤井 謙司
2004 年31 巻1 号 p.
57-59
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
高齢でLMT病変の急性心筋梗塞患者にPCPS補助下PCIを行い良好な結果を得た。患者は86歳男性。来院時よりVT/Vfを繰り返しており,諸検査によりLMT病変を含む急性心筋梗塞と診断し,緊急カテーテルを施行した。カテーテル室入室後すぐにPCPSを開始しVT/Vfは消失した。造影検査によりLMTに大量の血栓を認めた。LAD,HL,LCXの三枝に同時Distal Protectionを使用してLMT/LADへのPCIを行った。三枝Distal Protection中には体血圧が著明に低下したが,PCPSの送血量を増加することで血行動態は安定した。PCI施行後にはLCX領域に新たな壁運動低下が出現したが,IABP+PCPSによるサポートを行うことで血行動態の悪化は認めなかった。PCPSは8時間30分後に離脱した。LCX領域の壁運動低下は改善し,IABPは4病日に抜去した。心臓リハビリ後,36病日に独歩退院となった。
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稲岡 秀隆, 赤松 伸朗, 山野 辺基, 福井 威夫, 宮本 覚
2004 年31 巻1 号 p.
60-63
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
妊娠22週に甲状腺機能亢進症を合併した感染性心内膜炎を発症し,僧帽弁に疣贅と逆流を認めたため緊急僧帽弁形成術を施行した。体外循環は胎児への悪影響を極力抑えることを考慮し,常温で高灌流量(灌流指数4.0L/min/m2)にて行ったが,ノルアドレナリンを使用しても灌流圧が60mmHgと低値を示し灌流圧維持に難渋した。しかし,体外循環からの離脱は容易であった。その後,ICU入室後突然胎児心拍聴取できなくなり,胎児の死亡を確認し,翌日,帝王切開手術を施行した。
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―タイマーを利用した吸引コントローラの試作―
倉島 直樹, 竹田 博行, 松村 卓広, 吉田 哲也
2004 年31 巻1 号 p.
64-67
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
自己血回収装置は,心臓・大血管手術,整形外科手術時の出血を回収し,同種血輸血を減少させる点で優れているが,回収血が細菌汚染されている可能性がある。そこで我々は,落下細菌の吸引などを軽減するためフットスイッチとタイマーリレーを利用した吸引コントローラを試作し,自己血回収装置(dideco社製コンパクトA)の貯血槽と吸引装置の間に装置を入れ,通常使用時とコントローラ使用時での吸引時間と,細菌汚染の関連性について検討した。人工心肺を使用した症例22例を対象とし,自己血回収装置を従来どおり使用した群(N群)11例とフットスイッチを使用した群(S群)11例を対象に,回収血の血液培養試験を施行した。その結果,平均吸引時間N群395.8±93.9分,S群96.3±33.9分(p<0.0001)で,有意にS群の吸引時間が短く,細菌検出はN群で11例中7例,S群で11例中5例(p=0,39)と有意差はなかった。平均検出細菌株数ではN群で1.0±1.0株,S群で0.45±0.52株(p=0.12)とS群で低い傾向にあった。本装置は,自己血回収時の吸引時間を有意に短縮でき,平均細菌株数も減少させることが可能であることが示唆された。
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―陰圧・ガス・温度について―
岩田 浩一, 阿部 敬二朗, 宇都宮 精治郎
2004 年31 巻1 号 p.
68-70
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
安全なPCPSを目指すため,PCPSの状態(陰圧・ガス・温度)の違いによる気泡のサイズについて実験的に検討した。牛血5.5Lを用い,回路はテルモEBS回路,血液データ測定は,テルモ社製CDI500,気泡測定器のセンサーを遠心ポンプ手前に設置し気泡のサイズの測定を行った。陰圧の調整はオクルーダを用いた。実験は,(1)陰圧を変化させた場合,(2)PO2を低くした場合,(3)PCO2を高くした場合,(4)温度を変化させた場合について行った。回路内の陰圧が大きいほど大きいサイズの気泡が検出された。溶解係数の高いガス,低い温度の条件の方が大きいサイズの気泡が検出された。
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―経頭蓋超音波装置を使用しての検討―
田高 朋宏, 稲葉 敦彦, 三浦 吉晴, 榛沢 和彦, 森下 篤, 北村 昌也, 小柳 仁
2004 年31 巻1 号 p.
71-73
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
経頭蓋超音波検査(TCD)では脳動脈内の気泡,血栓などの微小栓子がHigh Intensity Transient Signals(HITS)として検出することが可能である。CPB中に脱血回路から空気が混入した症例で,脳動脈内でHITSが多数検出され,術後の覚醒遅延や痙攣などの合併症を経験した。今回,TCDを用いて3種類の静脈貯血槽(VR)の気泡捕捉能力を検討したので報告する。3種類のVRを用いて模擬回路を作製し,静脈回路に設けた空気の注入口から1mLの空気を注入し,VR出口,人工肺出口,動脈Filter出口にてHITSの検出を行った。灌流液には豚血を用い,灌流温36℃,灌流量は4L/minとした。3種類のVRから出る気泡数に有意差は認められなかったが,気泡径はVRのFilterサイズが150μmのA-VRから流出する気泡径が大きい傾向にあった。人工肺前後では気泡数に有意差が認められたが,動脈Filter前後では有意差が認められず,10μm以下のマイクロバブルみら捕捉はできないことが示唆された。マイクロバブルの捕捉には人工肺のほかにVRの除泡能が大きく関与することが示唆された。
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高 寛, 高戸 真紗美, 川崎 広樹, 橋本 祐介, 植田 恵理子, 小木 幸人, 佐藤 昌臣
2004 年31 巻1 号 p.
74-78
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
ジャーナル
フリー
当院では,体外循環中のトラブルやアクシデントに対する対策として,人工心肺回路,カニューレなどの物品点検チェックリストの使用およびプライミング後,術野側回路接続時,人工心肺終了時にそれぞれのチェックリストを使用している。また,各種警報装置の適切な使用と定期的なミーティングを行い,マニュアルの改訂をすることで,トラブルに対する意識の向上と対応技術のレベルアップを行ってきた。当院で経験した主なトラブルは,脱血管の折れ曲がりによる脱血不良,熱交換器のリーク,循環停止解除直後の突然の脱血不良である。これらのトラブルはチェックリスト,マニュアルの活用により対処可能であり,患者の生命に関わる大きな事故とはならなかった。また,トラブル後にはミーティングを行い,実際に行った対応の検証とマニュアル以外で必要であった新たな項目をチェックリストに追加しマニュアルの改訂を行った。今後,更にマニュアルを検討し改訂することでより安全な業務を目指したい。また,医療事故防止のためにチーム医療の一員として,安全な体外循環業務の確立と安全性の向上に努めたい。
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山越 理恵, 百瀬 直樹, 内田 隆行, 後藤 悟, 唐沢 あや子, 安藤 勝信, 中島 逸郎
2004 年31 巻1 号 p.
79-81
発行日: 2004/03/01
公開日: 2010/06/28
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近年,人工心肺の安全性が注目されている。我々は,安全性の高い人工心肺システムを作るために工夫してきたので報告する。安全性の高い人工心肺システムを作るためには,システムや使用物品をシンプルにすることでミスを起こしにくい環境を作ることが必要である。その結果,以前よりフールプルーフやフェールセーフに則した人工心肺システムを作ることができ,安全な体外循環が行えていると考えている。
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