心臓手術では人工肺は広く使用されており、人工肺入口圧は人工心肺回路中のなかで最も圧力が高く、トラブル回避を目的に監視する必要がある。 しかし、様々な要因の影響を受け、人工肺入口圧を予測することは困難である。今回我々は、実際の手術記録から人工肺入口圧を求める重回帰式を導き、これに基づく予測値を実測値と比較検討したので報告する。2018年1月から2019年12月で体重10kg以下、上行大動脈送血単独であった261症例を対象とし、解析には3種類の人工肺を使用した(オキシアNeo、オキシアIC06、Baby-FX)。人工肺入口圧の予測に重回帰分析を用い、人工肺入口圧を目的変数、送血カニューレサイズ、血液流量、灌流圧、Ht、TPを説明変数とした。Adjusted R-squaredはそれぞれ、0.55、0.60、0.44(p<0.01)であった。2020年1月から12月までの158症例の患者を対象に、予測値と実際値の相対誤差とSpearmanの順位相関係数を求めた。相対誤差は11.9%、11.8%、10.3%、相関係数は0.79、0.82、0.84(p<0.01)であり、正の相関関係が得られた。人工肺入口圧は、血液流量、送血カニューレサイズ、Htの影響を受け変化し、使用した3種類の人工肺は、重回帰式から人工肺入口圧を予測できることが示唆された。