体外循環技術
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50 巻, 1 号
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原著
  • 笠井 亮佑, 岡崎 充宏, 田中 裕香子, 安藤 ゆうき, 島峰 徹也, 上條 史記, 川田 尚規, 村田 綾, 井上 将, 川野 宏明, ...
    2023 年 50 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     ELSO General Guidelines for ECLS Cases 2017年度版では、ECMO回路保管期間は回路充填後30日間までが推奨されている。しかし、多孔質ポリプロピレン中空糸を支持体としたシリコーン膜を用いた人工肺を含むECMO回路における検討はなされておらず、日本の基準は存在しない。そこで、多孔質ポリプロピレン中空糸を支持体としたシリコーン膜を用いた人工肺を含むECMO回路30日間保管における無菌性および人工肺性能維持の評価を実施した。ECMO回路を未充填状態で保管するドライ群(n=5)と、プライミング充填状態で保管するウェット群(n=5)に群分けした。細菌検査として、BHI培地による細菌培養評価およびエンドトキシン評価を実施した。また、人工肺性能評価として、酸素移動量、二酸化炭素移動量、圧力損失を評価した。

     その結果、すべての検体に菌の繁殖を示す培地の濁りは認められず、エンドトキシン値は検出限界値以下であった。また、人工肺性能の低下は認められず、人工肺のガス交換能仕様に適合した。

     本研究の結果から、多孔質ポリプロピレン中空糸を支持体としたシリコーン膜を用いた人工肺を含むECMO回路は充填後30日間保管が可能であることが示唆された。

  • 中村 淳史, 木暮 英輝, 井上 将, 桑名 克之
    2023 年 50 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     人工心肺において静脈リザーバ(venous reservoir:VR)内の血液レベルは連続的に測定するべき重要な項目である。本研究ではVRの材質であるポリカーボネートの電気的特性を利用して静電容量(Cs)値からVRの血液レベルを測定する方法を考案し、測定周波数、ヘマトクリット(Ht)、血液量のCs値への影響について検討した。

     実験1はVR壁面に電極を2枚貼り各液面レベルにおける電極間の静電容量Cs[F]を周波数100kHz~1MHzで測定した。VRには生理食塩液と牛血(Ht 20%、25%、30%)をそれぞれ充填した。実験2では円筒状容器に電極を貼り生理食塩水を充填させ周波数1MHzでCs値を測定した。

     実験1の結果は液面レベルが高くなるとCs値が増加し、周波数1MHzでは1.30pF/cm(生理食塩液)、1.26pF/cm(Ht 20%)、1.28pF/cm(Ht 25%)、1.13pF/cm(Ht 30%)の増加となった。実験2では1.41pF/cmとなった周波数800kHz~1MHzが血液の影響は少なく安定した測定が可能であり、様々な形状をしたVRにおいて血液レベルを連続的に測定が可能であることが示唆された。

研究論文
  • ―人工心肺中フロセミドの投与と急性腎障害への影響―
    竹一 知久, 森本 喜久, 山田 章貴, 田中 孝憲, 藤原 邦裕, 栄 敦史, 清水 悠雅, 顔 邦男
    2023 年 50 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

    背景:人工心肺(cardiopulmonary bypass:CPB)における急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は、予後を悪化させる主要な合併症であると報告されている。今回、CPBを用いた心臓血管術後のAKIに関して後方視的に検討した。

    対象と方法:2018年10月から2021年11月に、当院で心臓血管外科手術を受け、人工心肺を使用した100症例を対象とした。AKIの診断にはAcute Kidney Injury Networkを用いて定義した。主要項目としてAKI発生率・挿管時間・ICU滞在日数・術後在院日数を副次項目とした。

    結果:AKIは19例(19.0%)で認めた。Stage 1が15例(78.9%)で最も多く、続いてstage 2が3例(15.7%)、stage 3が1例(5.2%)であった。AKI群で挿管時間・ICU滞在日数が有意に長かった。フロセミドを使用した症例のAKI発症は1例(2.6%)であり、多変量解析の結果、フロセミド使用群でAKIが軽減する結果となった。

    結語:CPBにおけるAKIのリスク因子として、CPB中のフロセミドの使用がAKI発症を軽減させる可能性が示唆された。

  • 古垣 達也
    2023 年 50 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     ローラーポンプによる体外循環が血中vWFおよび血小板数、血小板凝集能に及ぼす影響について検討した。模擬体外循環回路(充填液量100mL)を未分画ヘパリン化全血で充填し、血液流量1.0L/minで30分間循環させた。血液検体の採取は循環開始前、循環開始後5、10、20、30分の5ポイントで行い、全てのポイントにおいてvWF活性、血小板数、血小板凝集能を測定した。vWF活性はいずれのポイントにおいても循環開始前と比較して有意差を認めなかった(p=0.588)。血小板数は循環開始30分後に有意に減少した(p<0.05)。血小板凝集能は循環開始10分後に有意に低下し、その後も低値を維持した(p<0.001)。軸流ポンプや遠心ポンプが発生する高いshear stressと比較して、ローラーポンプが発する程度の低いshear stressは血小板数の減少と凝集能の低下をもたらすものの、vWF活性には影響しない可能性が示された。

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