体外循環技術
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40 巻, 4 号
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原著
  • 百瀬 直樹, 徳嶺 朝子, 岩本 典生, 岡田 ひとみ, 草浦 理恵, 小久保 領, 梅田 千典, 安田 徹, 早坂 秀幸, 山口 敦司
    2013 年 40 巻 4 号 p. 469-477
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     我々は人工心肺の貯血レベルを安定化させるために、開放回路による貯血レベルの制御(open circuit level control:OLC)と閉鎖回路による貯血レベルの自動制御(closed circuit level control:CLC)を考案してきた。今回、双方の特性を測定し、操作性も含め比較検討したので報告する。OLCは貯血量を静水圧で測定し、この値によって自作した装置で送血ポンプを制御する。CLCは市販のレベルセンサーと制御装置を用いた。模擬回路で臨床における体外循環の開始・ボリューム調整・脱血不良・離脱などを模擬した11項目において、貯血レベル・送血流量・脱血流量を測定し、貯血レベルの安定性、送血流量と脱血流量の相関関係を測定した。その結果、OLCでは貯血レベルはOLCコントローラーの設定値の中で安定し、安定する貯血レベルの設定を変更すると送血流量が変化した。一方、CLCでは貯血レベルは貯血槽に取り付けたレベルセンサーの位置で安定し、レベルセンサーの位置を変更すると脱血流量が変化した。今回の模擬実験ではOLC・CLCともに良好な制御が可能であった。
  • ―貯血レベルが精神的作業負荷に及ぼす影響―
    工藤 剛実, 植木 章三
    2013 年 40 巻 4 号 p. 478-486
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     人工心肺シミュレータ実験において、静脈貯血槽の貯血レベルを高(1,000mL)・中(500mL)・低(200mL)の3段階に設定し、貯血レベルが操作者の精神的作業負荷に及ぼす影響について検討した。被験者は臨床工学技士学生6名とし、精神的作業負荷は生理的指標および行動的指標、主観的指標を用いて評価した。
     結果として、生理的指標であるRR間隔変動係数と区間平均心拍数、唾液アミラーゼと、行動的指標である反応時間には有意な変化はみられなかった。主観的指標である日本語版NASA-TLXでは、貯血レベルが低くなると加重平均作業負荷得点と全体的な負荷得点が有意に増加した。また、簡易精神疲労尺度においても、貯血レベルが低くなると精神疲労と全体的疲労感の得点が有意に増加した。
     これらのことから、貯血レベルが低いほど、精神的作業負荷と精神疲労、全体的疲労感が高くなることが示唆された。貯血レベルの設定には、操作者の精神的作業負荷の側面からも検討が必要である。
研究論文
  • 笹山 幸治
    2013 年 40 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     本研究は、人工心肺(cardiopulmonary bypass:CPB)運転中に測定した皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)と、灌流量や灌流圧の変化、体血管抵抗および体温との関係を報告した追加研究である。今回、心不全を合併する症例やCPBの離脱が困難であると推測される重症例において、CPB運転中のSPP測定値が末梢循環評価の有効な指標となり得るかを検討した。結果、CPB離脱時にカテコールアミン製剤を使用したcatecholamine群において、術前から重症な心不全を合併した全身状態が不良な症例では、術前から末梢温が有意に低下し、心不全を呈していた。また、術前やCPB運転中に体血管抵抗が高値であることから、SPP測定値と平均動脈圧が解離し、SPPを指標としたCPB管理が困難であった。しかし、CPB管理中のみならず術後も経時的にSPPの変化を観察することで、末梢循環不全の予測が可能であることが示唆された。
  • 山城 知明, 豊崎 正人, 山内 章弘, 山本 賢, 石田 沙織, 杉浦 美佐子, 藤浦 拓也, 伊藤 康宏, 日比谷 信, 石川 隆志
    2013 年 40 巻 4 号 p. 492-495
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は右心不全や呼吸不全を来す重篤な疾患である。内科的治療は予防的治療にしかならず、根治療法には外科的治療が必要である。当院では超低体温間歇的循環停止(deep hypothermic intermittent circulatory arrest:DHCA)下に肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)を施行している。今回はCTEPHと診断され、DHCA下にPEAを行った112例を対象とし、術前後のNYHA分類、平均肺動脈圧(mPAP)、肺血管抵抗(PVR)、動脈血酸素分圧(PaO2)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の比較と、体外循環時間、心停止時間、循環停止時間、合併症、術後経皮的心肺補助(percutaneous cardio pulmonary support:PCPS)・大動脈内バルーンパンピング(intra aortic balloon pumping:IABP)、挿管日数、集中治療室(ICU)滞在日数、転帰について検討した。結果、術前後のデータは有意に改善され、重篤な脳障害を認めず安全にDHCA下でのPEAが施行できた。また、CTEPHは重症呼吸・心不全症例のためPCPS導入の可能性は高く、速やかな導入に対応できる準備をしておく必要がある。
  • 倉島 直樹, 小堺 昭, 星野 春奈, 佐藤 由利, 荒井 裕国
    2013 年 40 巻 4 号 p. 496-501
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     体外循環(cardio-pulmonary bypass:CPB)中、希釈による膠質浸透圧の低下や人工材料あるいは空気との接触などにより補体が活性化される。補体の活性化は生体防御機構により血管膜透過性を亢進させ、呼吸機能に重大な影響を与える。
     そこで我々は、CPB中の因子がCPB前後での酸素加能に影響を与えるか検討した。対象は2013年3月から8月までの除外症例除く17例で、CPB導入前の動脈血液ガス分析とCPB離脱直後の動脈血液ガス分析結果を用いて、CPB前後での酸素分圧/吸入気酸素濃度(P/F比)の変化率(⊿P/F)と肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の変化率(⊿A-aDO2)を算出した。検討内容は、⊿P/F・⊿A-aDO2とCPB中心筋保護注入後、開始60分後、離脱直前の3点における白血球平均値(WC-AV)、顆粒球平均値(GR-AV)、膠質浸透圧平均値(COP-AV)、液量平衡、浸透圧平均値(OSM-AV)、CPB時間、大動脈遮断時間における関連性について相関係数を用いて検討した。⊿P/Fと⊿A-aDO2に対し相関関係を示したのは、⊿P/F対GR-AV:R=0.746(P<0.05)、A-aDO2対GR-AV:R=0.656(P<0.05)と負の相関関係が得られた。⊿P/F対COP-AV:R=0.469(P<0.05)、A-aDO2対COP-AV:R=0.606(P<0.05)と正の相関関係が得られた。体外循環離脱直後での酸素加能の変化は、CPBによる侵襲が好中球活性とCPBによる希釈後のCOP低下の双方が肺血管外水分量を増大させ肺の透過性亢進による拡散障害が原因であると考えられた。
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