体外循環技術
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39 巻, 4 号
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原著
  • 柏 公一, 西村 隆, 玉井 久義, 久保 仁, 中村 敦, 杉谷 弘文, 山家 智之, 許 俊鋭, 小野 稔
    2012 年 39 巻 4 号 p. 415-421
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
     ニプロ補助人工心臓(VAD)の駆動チューブの外れや屈曲は血液ポンプの駆動停止に直結するが、これらの異常を検知する安全機構がない駆動装置が臨床で用いられているのが現状である。我々は振動センサーを駆動チューブに取り付けて血液ポンプの駆動状態を監視する外付けの検知装置を試作し、モック回路を用いてこの装置の動作について検証した。併せて、離脱目的でオフテストを施行する患者の駆動チューブに振動センサーを取り付け、ポンプ駆動停止中の装置の動作確認を行った。モック回路を使用した実験から、駆動条件や屈曲位置に関係なく、駆動チューブが駆動装置から外れた場合や完全に閉塞した場合はもちろんのこと、駆動チューブの不完全な閉塞も検知させることが可能であることが確認された。オフテスト施行中の患者で装置の動作を確認したところ、自己心の拍動は振動の検知に対してまったく影響を与えないことがわかった。以上のことから、この検知装置はニプロVADの駆動状態を監視する装置として適用できる可能性があることが示唆された。
研究論文
  • 大塚 隆浩, 吉田 譲, 小塚 アユ子, 横山 慎二, 田辺 貴幸, 古賀 悠介, 関口 敦, 新浪 博
    2012 年 39 巻 4 号 p. 422-427
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
     2009~2010年までに当センターにてCPBを用いた成人心臓血管手術773例から術前検査においてeGFR:60mL/min/1.73m2未満の患者(慢性維持透析含む)を除いた278例のうち、術後急性腎障害(AKI:AKIN分類においてstage I 以上と定義)を発症した16例(A群)と、発症しなかった262例(N群)の、術前Cre、BUN、eGFR、手術室入室からCPBまでの尿量、CPB時間、CPB中の体温、水分バランスおよび尿量、血液ガス・電解質などについて比較・検討した。結果、CPB条件では有意差は認めず、CPB開始直後BE値、HCO3値、CPB中の体重当たりの時間尿でA群が有意に低値であったことから、AKIの発症には術前からの循環不全が影響を及ぼしている可能性があり、加えて、術前からの低腎機能や腎障害が疑われる症例においては、CPBの平均的な侵襲が症状の悪化を助長する可能性も示唆された。CPB中は尿量や各種電解質をモニタリングし、至適灌流条件の検討を含めた、侵襲を軽減する取り組みが重要であると考える。
  • ―二心室修復と単心室修復の比較―
    伊藤 英史, 高 寛, 堂口 琢磨, 笠原 真悟, 新井 禎彦, 佐野 俊二
    2012 年 39 巻 4 号 p. 428-431
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
     両大血管右室起始症に対する外科治療法の違いが体外循環法に及ぼす影響について考察した。当院で初回介入手術を行った両大血管右室起始と診断のついた39例を対象として、二心室修復群(n=16)と単心室修復群(n=23)を比較した。二心室修復群で体外循環時間、大動脈遮断時間、挿管時間が有意に長かった。二心室修復群は術後のヘマトクリット値、局所酸素飽和度、拡張期圧、総蛋白量、MUF中の中心静脈圧変化率が有意に高かった。単心室修復群の術前後で中心静脈圧が有意に高かった。無輸血体外循環達成率は二心室修復群44%、単心室修復群78%であった。単心室修復群は無輸血体外循環達成率が高かったが、容量負荷による血行動態の管理を必要としたためMUFの除水効率および血液濃縮効果は低く、局所酸素飽和度も低い傾向にあった。両大血管右室起始に対する単心室修復術は二心室修復術に比べて容量依存型循環エネルギーによる血行動態管理、水分バランス制御による体外循環管理を必要とした。
  • 奥村 高広, 佐伯 将城, 見目 恭一
    2012 年 39 巻 4 号 p. 432-439
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
     陰圧吸引脱血を応用した閉鎖式体外循環回路の開発を目的とした水実験を行った。循環血液量制御用のハードシェルリザーバーをローラーポンプ送血による閉鎖式回路の脱血回路に、リザーバーから脱血回路を順方向としてダックビル型一方向弁を介して設置した。また、本経路に並行するバイパス回路を設けた。リザーバー内に陰圧(PR)を負荷しバイパス回路を遮断すると、PRと脱血回路内圧(PV)の圧較差により、(1)一方向弁が閉じた閉鎖回路の状態、または(2)一方向弁が開きリザーバー内から生体側へ血液が負荷される状態となる。バイパス回路を開放すると、(3)リザーバー内への陰圧吸引脱血の状態となる。リザーバーを大気開放にすると、(4)リザーバーから生体への循環血液の負荷状態となる。脱血不良によりPVが増強しリザーバー内液面が低下する場合、ポンプ回転数を下げPVを弱めるとリザーバー液面は停止する。一方向弁の開閉特性やリザーバー内圧の設定に留意が必要であるが、従来の開放式回路と同様の感覚での操作が可能であり、閉鎖式回路への移行の一助となるシステムとなると期待する。
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