体外循環技術
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25 巻, 1 号
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  • ―腹膜温熱化学灌流療法と温熱化学骨盤内分離灌流療法―
    堀 孝吏
    1998 年25 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 樋口 浩二, 保坂 茂, 笈川 俊彦, 高橋 渉, 吉井 新平
    1998 年25 巻1 号 p. 9-12
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    心停止を起こした小児の劇症型心筋炎症例に対して,経皮的心肺補助を施行し無事に救命した経験から,PCPSを施行する際にはその決定から実際に開始するまでの時間が非常に重要であることを再確認した。この時間を短縮するには,回路組立てからPCPS開始までの時間だけでなく,消耗品の運搬や装置の準備に要する時間も考慮する必要があると考えている。そこで装置の準備が容易であり消耗品の運搬も可能なPCPS専用架台と,回路の組立てや充填作業が容易かつ低充填量の小児用PCPS回路を作製した。その結果,決定から施行までに要する時間の短縮化や準備に費やす労力の削減に有効であった。また,小児用PCPS回路は市販回路と比較して充填量がわずか約1/3しかないため,無血充填によるPCPSの適用体重を下げることができたと考えている。
  • 古垣 達也, 廣瀬 稔, 渡辺 敏, 佐藤 正憲, 稲毛 博, 西川 温
    1998 年25 巻1 号 p. 13-16
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨北里大学病院で, IABP装置(A機種)使用中の患者より装置の駆動音を不快に感じるとの訴えがあり,駆動方式の異なるIABP装置(B機種)と交換する症例を経験したので, IABP装置から発生する騒音の測定および周波数分析を行った。 IABP装置使用中の環境騒音は当院CCU個室で測定した。騒音レベルはA機種では53.2dB, B機種では65.4dBであった。比較対照としてIABP装置未使用時の騒音レベルは,CCUでは48.1dBであった。また,環境騒音の影響を少なくするため,別室で2機種のIABP装置の騒音を測定した結果, A機種では50.4dB, B機種では55.7dBであった。また,周波数分析の結果, A機種は4kHz付近に発生する連続的な騒音および間欠的に大きな騒音が全周波数にわたって発生していた。 B機種では2kHz付近に発生する小さな騒音および間欠的な騒音が全周波数にわたって二連性に発生していた。この両機種の測定結果の差が患者に不快感をもたらせたと考えられる。
  • 塚本 毅, 川田 忠典, 青木 正
    1998 年25 巻1 号 p. 17-20
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨遠心ポンプを用いた左心バイパス法に抗凝固薬として選択的抗トロンビン薬であるアルガトロバンを臨床使用し,その投与方法と活性化凝固時間(ACT)について検討を行った。投与前ACTは平均123秒であり,アルガトロバンをバイパス開始前から2μg/kg/minにて持続投与することにより,投与後約30分にはACTが平均181秒と適正な延長がみられた。バイパス中のACTは平均208秒に延長していたことから,十分な抗凝固作用が得られたと考えられた。更に,バイパス中にアルガトロバンを1~2μg/kg/minで持続投与し,適宜持続量を増減することにより, ACTは異常延長をきたさず, 149秒~283秒の範囲内で推移した。また,投与終了後約30分のACTは平均155秒とACTはすみやかに短縮した。アルガトロバンによる凝固時間のコントロールは容易で,十分な抗凝固作用が得られ,抗凝固薬として今後も検討する価値が十分あることが示唆された。
  • 山田 哲也, 小山 富生, 片山 浩司, 高木 理守, 玉木 修治, 村山 弘臣, 加藤 紀之, 成田 裕司, 横手 淳, 六鹿 雅登
    1998 年25 巻1 号 p. 21-24
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨人工肺,遠心ポンプ,回路チューブに対して,生体適合性処理の施された材料と従来の材料とを比較検討し,生体適合性材料を使用した体外循環の有用性を検討した。対象は,待機的に行われた成人開心術症例17例を,生体適合性材料を使用しなかったもの9例(CABG 7例, DVR2例)をNC群,生体適合性材料を使用したもの8例(CABG 7例,AVR 1例)をHC群とし比較検討した。おのおのの群について麻酔導入後および体外循環開始後10分, 60分,体外循環終了時の, FPA値(fiblinopeptide A), C3a値,顆粒球エラスターゼ値,血小板数,血小板凝集能,β-TG値,血漿ヘモグロビン値を測定し, 2群間の比較を行った。なお血小板数は帰室時,第1病日,第2病日の比較も行った。その結果,比較したすべての検査値において生体適合性材料の優位性を示す統系学的有意差は認めず,生体適合性材料の有用性は確認されなかった。
  • ―脳分離体外循環法を併用した弓部分枝の順次再建法―
    高井 浩司, 高村 明男, 窪 義弘, 澤崎 優, 水谷 真一, 石川 寛, 三浦 あゆ子, 小川 裕
    1998 年25 巻1 号 p. 25-29
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨我々は,弓部分枝をすべて再建する弓部大動脈人工血管置換術に対し, 1996年10月より脳分離体外循環法を併用した弓部分枝の順次再建法を導入した。すなわち,弓部3分枝のうち,吻合中の分枝のみを脳分離体外循環法により灌流し,他の2分枝は常に人工血管の送血用側枝か,大腿動脈,もしくはその両者からの送血で循環を維持することで脳循環をより確実に行う方法である。さらに,脊髄および腹部臓器保護を目的とし,末梢側へはelephant trunk用人工血管内にballoon catheterを用いて順行性に送血した。本法にて行った弓部全置換術11例のうち,解離による腸管壊死で術中死した1例を除く10例では,覚醒遅延もなく,脳障害を認めなかった。本法は,簡便であり,確実な脳循環が期待できる有用な方法であると考えられた。
  • 山本 晋, 小杉 浩一, 石丸 昇, 西谷 泰, 竹井 洋寿
    1998 年25 巻1 号 p. 31-33
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    人工心肺中にJMS社の血液透析用クリットラインモニターを使用し,連続的にヘマトクリット値および静脈側酸素飽和度(SvO2)を測定し,従来からの高速式遠心法,アイ・スタットコーポレーション社製ポータブル血液分析器i-STAT,およびバクスター社製OxySATメーターの測定値と比較し,その有用性を検討した。その結果は,いずれも良い相関を示し,クリットラインモニターは人工心肺中の水分バランスのモニターとして有用であった
  • 又吉 徹, 上田 敏彦, 志水 秀行, 茂呂 勝美, 加島 一郎, 堤 浩二, 川田 志明
    1998 年25 巻1 号 p. 34-37
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腹部大動脈瘤手術の体外循環に伴う合併症として脊髄麻痺,腎機能不全に主点をおき,その原因と対策について検討した。Crawford分類ではI型9例,II型9例,III型9例,IV型3例であった。体外循環回路は前半21例目までは低濃度ヘパリン閉鎖回路,後半9例は高濃度ヘパリン閉鎖回路を用いた。術後脊髄麻痺になった2例はいずれもCrawford II型,大動脈遮断時間2時間以上,瘤内開存肋間動脈8レベル以上,低灌流圧,SEP消失があった。また2例とも低濃度ヘパリン閉鎖回路を用いた症例であった。術後血液透析を行った6例とも術前GFR値は正常値以下で,体外循環中出血による低灌流圧があった。6例中4例がCrawfordII型で,低濃度ヘパリン閉鎖回路を用いた症例であった。この結果,体外循環中に出血が予想され,脊髄障害や腹部臓器障害が発生し易いCrawfordII型の体外循環には,迅速な血液回収が可能な高濃度ヘパリン閉鎖回路が有用であると考えられる。
  • 堀 孝吏, 武田 正則, 山下 好史, 杉山 賢司, 佐藤 正暢, 森田 雅教, 小林 史枝, 渡辺 猛, 鰐渕 康彦
    1998 年25 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当施設では,骨盤内悪性腫瘍に対して温熱化学分離灌流療法を施行し,その有用性をこれまでに報告してきた。今回,より効果のある安全な治療とするために,本法における問題点,特に全身循環に及ぼす影響について検討し,施行に際しての留意点を明確にする。大腸癌6症例,直腸平滑筋肉腫1例,前立腺癌1例の8症例を検討対象とし,骨盤内循環の分離は,大動静脈内に留置した閉塞用バルーンと大腿用の駆血帯により行い,脱血温の維持目標を40~41℃ とし,抗癌剤を投与しながら灌流した。回路内の酸素分圧,二酸化炭素分圧,pH,カリウムイオン濃度は5分毎に,脱血温および送血温,全身血圧と回路内圧は持続測定した。血液温監視用の温度計の不調のため,脱血温が43℃に上昇してしまった1症例で,遮断解除直後に一過性の心室頻拍を認めた。この症例のデータを他の症例と比較すると,回路内血液中のカリウムイオン濃度が8.6mEq/lと上昇していた。これには,過剰な加温による溶血が関与していたと考えられ.正確な温度管理の重要性が再認識させられた。
  • 笹川 繁, 関口 敦, 会田 治男, 森田 高志, 樺澤 寛二, 吉田 譲, 大木 康則, 佐藤 智明, 片倉 健二郎, 見目 恭一
    1998 年25 巻1 号 p. 44-48
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    屍体腎摘出時における体外循環を利用した中心冷却法(Core-Cooling法)について検討した。対象は1987年11月から1998年2月までの19例である。死亡確認後F-Fバイパスにて体外循環を施行し,脱血温度15℃を目標に急速冷却と酸素加を行った。このうち6例にてオクルージョンバルーンで下行大動脈を閉塞し腹部灌流を増加させるよう試みた。温度変化率は灌流量に依存する傾向にあり30分で15℃までの冷却には45ml/min/kg以上の灌流量が望ましいと考えられ,酸素消費最は冷却により1/10以下にまで減少させることができた。オクルージョンバルーンの検討では,灌流量は使用群でやや少ない傾向にあった。脱血温度は非使用群にて15℃まで下がらない症例が多い傾向であった。アシドーシス補正は,温阻血時間とそれまでの低血圧遷延時間を考慮する必要があった。PaCO2は生理的値を目指しV/Qは4以上が望ましいと考えられた。
  • 芦村 浩一, 山田 佳史, 牛島 一男, 宇藤 純一, 國友 隆二, 原 正彦, 北村 信夫
    1998 年25 巻1 号 p. 49-52
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    低侵襲小切開心臓手術は全胸骨縦切開することなく切開部分を最小限に留めて手術を行うため,痛みや感染症の軽減に加え,入院期間の短縮などに有用であると言われている。当施設においても,これまで人工心肺を使用した3例の低侵襲小切開心臓手術を経験した。その際,体外循環は手術視野確保の点から大腿動脈送血・大腿静脈脱血にて開始したが,従来の落差脱血では良好な循環状態を維持できず,やむなく上大静脈にカニュレーションを追加した。しかし,術式によっては大腿静脈脱血のみの体外循環も要求される。そこで我々は,現行の人工心肺回路を変更することなしに,ハードシェル静脈リザーバのみを低圧持続吸引するバキュームアシスト法で,必要な脱血量を大腿静脈脱血のみで確保できるのではないかと考え研究を行った。その結果,落差のみによる方法に比べ,落差に加えバキュームアシストを掛けていく方法は,最大送水量の増加が吸引圧に比例して得られ,症例によっては必要な脱血量を大腿静脈脱血のみで確保できると考えられた。以上より,バキュームアシスト法は低侵襲小切開心臓手術時の脱血量維持法の一つとして,有用であると考えられた。
  • 関口 敦, 曾田 治男, 大木 康則, 樺澤 寛二, 吉田 譲, 森田 高志, 笹川 繁, 佐藤 智明, 見目 恭一
    1998 年25 巻1 号 p. 53-56
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当院における過去4年間の機器トラブル1,409件を検討した。機器は心電図モニター190台,輸液ポンプ140台,シリンジポンプ150台,パルスオキシメータ61台。修理内容の内訳は,非故障が303件(21.5%),院内修理が689件(48.9%),メーカー修理が417件(29.6%)であった。年別のメーカー修理の比率は,1994年度48.6%,1995年度34.2%,1996年度20.0%,1997年度27.6%であった。修理1件当たりの平均ダウンタイム日数は,心電図モニター13.1日,輸液ポンプ37.6日,シリンジポンプ34.4日,パルスオキシメータ17 .4日で,ダウンタイム率2.9%であった。トラブルの約46%が現場スタッフの不適切な使用方法に由来していた。看護婦への機器教育に力を入れているが,不適切な使用方法に由来するトラブルが減少せず,操作未熟が16.0%,破損・紛失が30.5%あった。トラブルを起こさないための対策として,注意喚起だけでなくFool proof的な対策を講じることが今後重要と考えられた。
  • 小林 英知, 朝日 亨, 後藤 和宏, 谷澤 勝, 服部 敏温, 名和 肇, 清水 剛, 石丸 新
    1998 年25 巻1 号 p. 57-59
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    術中自己血回収術を行なった心臓血管疾患20例に対し,洗浄式自己血回収装置CellSaver5®の回収率と洗浄効率を測定し,本装置の有用性について検討した。廃液および回収血を採取し,RBC,Ht,Hb,Plt,ヘパリン,Cr,BUN,T-Bil,T-Pを測定し,回収率と洗浄効率をそれぞれ算出した。その結果赤血球の回収率に良好な結果が得られた。また,ヘパリンおよび血漿成分の洗浄効率も良好であった。本装置は術中洗浄式自己血回収装置として有用であると考えられた。
  • 岩城 秀平, 山本 泰伸, 小山 美季, 横田 通夫, 坂本 喜三郎, 猪飼 秋夫, 長門 久雄, 角三 和子, 西岡 雅彦, 藤本 欣史
    1998 年25 巻1 号 p. 60-64
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Elliottらは,小児の血液希釈および低体温体外循環に伴う組織浮腫を少なくするために,Modified Ultrafiltration(MUF)を行った。我々は組織浮腫が著明に現れる新生児において,その有用性を検討した。1996年12月から1998年7月までの新生児症例のうち,体外循環から離脱した21例を対象とした。MUFはElliottらの方法に準じて行った。その結果,ヘマトクリット値,ヘモグロビン量,総タンパク量,アルブミン量はMUF後有意に上昇し,30分後に有意に低下した。収縮期体血圧,平均血圧はMUF後有意に上昇し,30分後には有意な変化は見られなかった。CVP,LAPは変化しなかった。MUFにより血行動態の改善が得られた。MUFによる急速な血液濃縮は,ヘマトクリット値を上昇させ,膠質浸透圧上昇により,組織間質からの水分移動が起こった可能性が示唆された。
  • 天野 陽一, 藤田 千明, 石川 和彦, 藤田 智一, 城下 朋子, 鈴木 克昌, 石井 利治, 吉富 裕久
    1998 年25 巻1 号 p. 65-68
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Cold blood cardioplegia(CBC)26℃Tapid blood cardioplegia(TBC)を比較し検討した。対象は,CABG手術症例のうちCBCを行った10例(CBC群)とTBCを行った10例(TBC群)とした。同一組成のsolutionを使用し,両群における心肺離脱所要時間,自然心拍再開率,離脱時カテコールアミン使用量,心筋逸脱酵素について検討した。TBC群の心肺離脱所用時間は,CBC群と比べて有意に短く,再灌流後での自然心拍再開率でも100%と有意に高率であった。離脱時カテコールアミン(DOA)使用量は,CBC群7.4±4.7μg/kg/min,TBC群3.5±1.9μg/kg/minとTBC群で有意に少なかった。術後第1病日でのカテコールアミン(DOA)使用量は,CBC群7.0±5.1μg/kg/min,TBC群2.5±2.0μg/kg/minとTBC群で有意に少なかった。CPK-MB値は,CBC群16.6±13.6U/l,TBC群6.3±3.1U/lとTBC群で有意に低値を示した。以上の結果から,26℃ でのTBCは従来のCBCより心筋保護効果が良好であると考えられた。
  • 百瀬 直樹, 前田 孝雄, 安藤 勝信, 又吉 盛博, 北村 麻未, 山越 理恵
    1998 年25 巻1 号 p. 69-76
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    我々が1989年に開発した体外循環を支援する人工心肺支援システムを基本として,新しい人工心肺支援システムを,NECメディカルシステムズ社と共同で開発した。新しい人工心肺支援システムは人工心肺の準備から体外循環,報告書の作成や体外循環データの利用まで一貫した支援が行える。体外循環中は,体外循環に関するイベントを入力することで,体外循環の状況をコンピュータが認識して最適なデータの監視や支援が行えることや,テンキーだけでほとんどのコンピュータ操作が行えること,音声出力などを活用していることが特徴である。新しい人工心肺支援システムを,1997年4月より410例の体外循環に使用した。この結果,画面を凝視しなくてもコンピュータ操作が容易に行え,体外循環中の血行動態や温度の異常を素早く察知することができた。更に,新しい人工心肺支援システムは,従来のシステムに比べて操作性,処理速度,汎用性,データの有効利用などにおいて高い性能を示した
  • 岩田 浩一, 宇都宮 精治郎, 宮本 隆司, 木村 龍範
    1998 年25 巻1 号 p. 77-80
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回我々は,僧帽弁置換術後のエンドトキシン(ET)ショックに対し,ET吸着(PMX)と持続的血液透析(CHD)の併用が有効であった症例を経験した。症例は,67歳,男性。僧帽弁閉鎖不全症,心不全,二次性肺高血圧のため入院し,僧帽弁置換術が施行された。術中は特に問題なく経過したが,術後2日目にETショックによると考えられる発熱,血圧低下,尿量減少を認めたためPMXおよびCHDを施行した。PMX開始1時間後より血圧上昇,更に,CHDを開始することにより解熱,尿量増加を認めた。IL-6,IL-10はPMX後低下し,翌日のCHD2日目は更に低下した。ET濃度,IL-1B,TNF-α はPMX施行前後,翌日とも低値を維持した。その後,経過良好で術後43日目に独歩退院となった。PMXはETショックに対し極めて有効であり,CHDを併用することによりその効果はさらに増大するものと考えられた。
  • 佐藤 智明, 森田 高志, 関口 敦, 吉田 譲, 曾田 治男, 樺澤 寛二, 笹川 繁, 大木 康則, 見目 恭一, 小柳 俊哉, 許 俊 ...
    1998 年25 巻1 号 p. 81-84
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    TCI社製体内設置型補助人工心臓の装着症例において,臨床工学技士が行う操作・管理について検討した。対象は,拡張型心筋症の男性3症例,年齢29.3±11.7歳,体重75.0±20.0kg,補助時間122.7±82.7日であった。駆動装置・ポンプはともに小型・軽量で自動制御方式である。装着は,人工心肺,心室細動下,直腸温30℃ で行い,手回しハンドルにて丁寧に気泡を除去した。駆動中は,ポンプの容量校正とリハビリの補助以外に特別な操作を必要としなかった。駆動開始12~48時間後には,灌流指数4.0l/min/m2以上を得,流量制限をする必要があった。離脱は,常温・心室細動下でPCPS回路を使用した。症例1でポンプ流入部からの血液リークを,症例2で圧発生部ダイアフラムからのエアリークを経験したが,十分な補助流量と長期補助が可能で,安全かつ管理が容易なシステムであった。技士の携わる管理のポイントは,(1) 緊急時のためにバックアップ装置・部品の準備・対処法に精通すること。(2) 精神的に不安定な患者に不安を助長しないように,操作時に十分な説明をすることであった。
  • ―PCPSから通常人工心肺への移行―
    小野 達也, 塩田 博幸, 作田 淳一, 森 陽裕, 大山 眞, 浅川 洋, 土谷 範昭, 望月 吉彦, 岡村 吉隆
    1998 年25 巻1 号 p. 85-90
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    心原性ショック患者に対し経皮的心肺補助(PCPS)を行い,同一回路での冠動脈バイパス術(CABG)施行にて救命し得た症例を経験した。症例は58歳女性。急性心筋梗塞後ショック状態となったため,PCPS挿入後CABGとなった。CABGの体外循環を行うにあたって,新たに心肺回路を用意して従来どおり行う方法とPCPS回路をそのまま用いる方法があり,後者の利点として,(1) 過剰な血液希釈が回避できる,(2) 循環動態の変動を抑え,輸血量の軽減に繋がる,(3) 回路変更時間は短くて済む,(4) 経済面で通常の人工心肺に切り替えた場合に比較し優位である点などが挙げられる。今回の方法は,術中の不測の事態にも対応可能なように,体外循環法も開放および閉鎖型回路,落差脱血も対応可能とした。そのため本回路では静脈リザーバー,動脈フィルターの追加を行った。本回路は,PCPSから通常人工心肺への移行に有用と考えられた。
  • 原 和信, 広瀬 聡, 上田 彰, 内田 直里, 石原 浩, 宮庄 浩司
    1998 年25 巻1 号 p. 91-94
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    前乳頭筋断裂および人工弁破損により,急性僧帽弁閉鎖不全に陥り緊急僧帽弁置換術前にPercutaneous-Cardio-Pulmonary Support(PCPS)を施行した2症例を経験した。症例1は77歳,女性,近医にてショックの診断で当院救急外来に搬送された。来院時,急性心不全状態で,経胸壁心エコーにて高度の僧帽弁逆流を認め,その後,IABP,PCPS下にて手術室に搬送,緊急僧帽弁置換術を施行した。症例2は47歳,男性。8年前に他施設にてMVR(Bjork-Shiley弁)施行され,その後問題なく経過していたが,突然の呼吸困難を主訴に来院,X線透視にて人工弁のディスクが見られず,直ちにIABPを施行し手術室に搬送後にPCPS導入した。緊急僧帽弁置換術を施行した。灌流量はともに2l/min以上で,PCPS時間は症例1で97分,症例2は155分であった。2症例とも軽快退院となった。PCPSを施行したことにより,術前の血行動態安定がはかられ,術後のLOSも回避できた点から,今回の様な症例にはPCPSは有用であると考えられた.
  • 小池 正穂, 東 拓也, 近 記肇, 段 一志, 向井 恵一
    1998 年25 巻1 号 p. 95-98
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    開心術後の経皮的心肺補助(PCPS)は,長期に使用する場合がある。今回我々は,71歳男性に,左心室瘤切除を目的として手術を行ったが,MRが予想以上に強く,MVRを追加後LOSのためPCPS装着とした。人工肺はクラレ社製MENOX AL-4000,遠心ポンプはBARD社製ライフストリーム遠心ポンプシステム,回路は泉工医科工業社製ヘパリンコーティング回路を使用した。PCPS施行中ACTは200~250秒を目標としヘパリンで調整した。血液灌流量は1.3~2.68l/min,FiO2 75~90%,O2ガス流量は7~16l,血液ガスのPO2は平均203.2±60.8mmHg,PCO2は平均40.5±7.2mmHg,ACTは平均228秒であった。人工肺は,1日目(22時間使用),9日目(194時間使用)に交換し,以後37日間(873時間)連続使用し,使用後に人工心肺内面を電子顕微鏡にて撮影した。人工肺は長期使用にもかかわらず,編み糸部分に血栓の付着がみられたが,中空糸表面は非常に滑らかであり,長期の使用にも
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