体外循環技術
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35 巻, 2 号
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  • 百瀬 直樹, 小久保 領, 山越 理恵, 後藤 悟, 中島 逸郎, 野口 隆, 篠崎 哲弘, 進藤 靖夫, 山口 敦司
    2008 年 35 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    我々は人工心肺の貯血槽の貯血レベルを静水圧で測定する方法を考案し、実際に貯血レベルモニターを作成した。測定法はテルモ社CAPIOX-RR貯血槽のdirect portで圧力を測定し、これを貯血レベルに変換して表示する方法である。作成したレベルモニターは貯血レベルをLED表示するとともに、設定量より低下した場合にはアラームを発する。また、レベルが高い位置であっても低下傾向を示した場合にはアラームを発する。実験の結果でも実際の貯血レベルと測定値の値にはR2=0.998と極めて高い相関があった。考案した測定法は無侵襲で低コストであり、体外循環の安全管理上有用である。
  • 青島 由記江, 中村 直樹, 中村 光宏, 富田 淳哉, 山村 明弘, 山本 希誉仁, 平岩 卓根, 矢野 邦夫, 木倉 睦人, 伊藤 久人
    2008 年 35 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨我々は、無輸血体外循環を目標に全ての症例に対して術中洗浄式自己血回収装置(Haemonetics社製セルセーバー)を使用している。このセルセーバーを開心術後の胸腔、心嚢ドレーン出血に対して継続使用することで、術後の輸血量削減にっながるのではないかと考えた。人工心肺を用いた開心術60症例において、術後の胸腔、心嚢ドレーン血をセルセーバーにて回収した30症例をA群、回収せず直接ドレーンバッグへ接続した30症例をB群とし、術後の輸血量を比較した。ドレーン血の回収は、ICU帰室時より翌朝までとした。結果は、A群において有意に術後の輸血量が少なかった。また翌朝、A群のドレーンを回収してできた回収血を血液培養したところ、菌陽性率は約40%であり、その多くは常在菌であるグラム陽性菌であった。今回、回収血を使用した症例で術後感染症に発展した症例はなかったが、ドレーン血回収は術後できる限り早期に行う必要があると考える。開心術後のドレーン血回収は術後の輸血量削減につながり有効である。
  • 吉田 譲, 小塚 アユ子, 角田 卓哉, 松本 貴澄, 関口 敦, 石田 徹, 新浪 博
    2008 年 35 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    メインローラーポンプと別ローラーポンプで分離送血を施行した場合に、メイン流量と関係なく、人工肺から空気を引き込まず安全に施行するために、メインポンプを短絡し、リザーバから人工肺に連続的に流量が確保できるシャント回路2種類(1.弁入りシャント;6mmφチューブにディスク型一方向弁を組み入れた回路、2.2本掛けシャント:6mmφチューブのシャント回路と、6mmφチューブにダックビル型一方向弁を組み入れた分離送血回路を、同時に2本掛けした回路)を試作し、空気引き込みの可能性について実験的に検討した。メインポンプを停止し、分離送血ポンプ流量を300~700mL/minと変化させたときの空気引き込みの有無を確認したところ、両シャントとも空気引き込みは認めなかった。弁入りシャントではディスク弁の開放運動が容易で吸引負荷が少ないこと、2本掛けシャントでは流入抵抗のあるダックビル弁を回路内抵抗として組み入れたことで適度な陽圧となり空気引き込みが防げた。シャントに適正な一方向弁を組み入れることで空気の引き込みはなく、臨床で使用できる可能性を認めた。
  • 甲 敬之, 篠原 智誉, 大内 徳子, 瀧本 文子, 仲田 昌司
    2008 年 35 巻 2 号 p. 120-123
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨送血回路への動脈フィルタの取り付けは安全性の確保のためには必要不可欠なものである。今回、動脈フィルター一体型人工肺SYNTHESIS(S群)と通常膜型人工肺CAPIOX RX15(C群)を使用し、動脈フィルター一体型人工肺の臨床的性能評価を行った。対象は成人開心術のうち待機症例を無作為に抽出し、生体適合性と酸素輸送能、回路構成に関する検討を行った。採血は体外循環開始前、開始直後、30分後、60分後、体外循環終了直後、手術室退室直前に行った。結果、生体適合性と酸素輸送能において両群間に有意差は見られなかった。回路構成はS群では動脈フィルタやそのホルダーを取り外せたことから回路の簡素化が行えた。また、分離体外循環において、メイン送血回路を分岐させることで従来使用していた動脈フィルター付き分離回路が不用となり、回路の簡素化が行えた。動脈フィルター一体型人工肺は既存の人工肺と比べても生体適合性や酸素化能は遜色なく、回路の簡素化による体外循環の安全性向上に寄与することが示唆された。
  • ―フィルティアFT-50について―
    宮之下 誠, 淵脇 陽一, 山下 正文, 岩岡 健, 河原 畑茂樹
    2008 年 35 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨動脈フィルターであるJMS社製フィルティアFT-50(FT)と現在当院で使用しているポール社製オートベントSV(AV)において、実験では気泡捕捉能を、臨床使用例では圧力損失変化率とプライミング時間について比較検討した。気泡捕捉能は、空気10mLをボーラス状気泡と遠心ポンプにて砕いたマイクロバブルの2種類について比較した結果、ボーラス状気泡では、AVの出口側で40μm以上の気泡を検出しなかった。しかし、砕いた気泡では両フィルターとも出口側で40μm以上の気泡を検出し、完全に安全とは言い切れなかった。臨床使用例の評価は、当院の人工心肺回路に無作為に組み込んで行った。圧力損失変化率は、両フィルター間に各測定ポイントで有意差はなかった。プライミング時間は、FTで4分程度短縮できた。両フィルターの気泡捕捉における安全確保には、システム全体での対処が必要であると考えられる。FTは、ろ過性能に問題がなく、プライミング時間短縮と充填量削減という点で、臨床使用上有用であると考える。
  • 伊藤 英史, 三宅 陽一郎, 岡部 学
    2008 年 35 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨連続した123症例の冠動脈バイパス術(CABG)をoff-pump bypass CABG(OPCAB)82例、OPCAB+大動脈バルーンパンピング(IABP)18例、On-pump beating CABG23例の3群に分類し機械的循環補助の役割と有効性について検討した。術前の心機能状態はOPCAB+IABP群、On-pump beating CABG群の方がOPCAB群より悪かった。手術時間、48時間以上の長期人工呼吸補助、術後再開胸止血術を必要とした症例はOn-pump beating CABG群で多かったが、その他の術後の合併症、グラフト開存率などに有意な差は認められなかった。OPCABを標準術式とした場合には従来のOn-pump beating CABG対象症例のうちIABP補助下でのOPCABによって対応できる症例が含まれると考えられた。その結果としてCABGではOPCAB、OPCAB+IABP、On-pump beating CABGの順に機械的循環補助は位置づけられた。
  • 柏 公一, 渡邊 恭通, 玉井 久義, 小野 稔
    2008 年 35 巻 2 号 p. 133-135
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨ヘパリン起因性血小板減少症を合併した患者に対して、抗トロンビン剤のアルガトロバンを使用して体外循環下の心臓手術を行った。アルガトロバンの投与は、これまでの症例報告を参考に初回0.1mg/kg、持続5~7μg/kg/minで行い、ACTが400~450秒の間になるように努めた。しかし、ACTのコントロールに難渋し、大幅な延長を認める結果となった。アルガトロバンには中和剤がなく、体外循環終了から約2.5時間後のACTは280秒もあったが、手術は無事終了した。
  • 木村 佳央, 舩木 哲也, 稲葉 昌道, 長沼 謙次, 仲野 孝, 荻原 正規
    2008 年 35 巻 2 号 p. 136-137
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨中等度低体温下の間歇的大動脈遮断(Anoxic Arrest:AA)による心筋保護での冠動脈バイパス術(CABG)を導入した。それまでの晶質性心筋保護液(CCP)でのCABGと比較検討を行った。2枝または3枝のCABG症例を対象とし、AA群10例と、CCP群11例を比較した。AAでは、直腸温28℃でVfとし、大動脈遮断下でCABG末梢吻合を10-15分で施行、その後遮断解除して3分間の冠動脈灌流を行い各吻合でこれを繰り返した。各群間における体外循環時間、大動脈遮断時間、術後のカテコラミン使用状況(ICU帰室1時間後の投与量、帰室後12時間の総投与量)について比較した。体外循環時間、および各吻合での大動脈遮断時間はAA群で有意に短縮された。カテコラミン使用は、術後1時間後投与量でAA群が多かったが、術後12時間の総投与量では差がなかった。AA群はCCP群と比較して、体外循環時間および心筋虚血時間が短縮され、低侵襲化が得られた。しかし、術後のカテコラミン総使用量では変化がなく、心筋傷害軽減の効果は明らかではなかった。
  • 渡部 悟, 千葉 二三夫, 那須 敏裕, 菅原 誠一, 根本 貴史, 古川 博一
    2008 年 35 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨連合型心筋保護法(Integrated Myocardial Management:IMM)にMicroplegiaを併用した開心術症例について、従来の心筋保護法を実施した症例と比較検討し、報告する。対象は2006年9月から2007年5月までの成人開心術症例のうち、IMMのみ行った15例(I群)とIMMにMicroplegiaを併用した15例(M群)とした。その結果、ICU帰室後CPK-MB値、心肺血K値(max)などでそれぞれ統計学的有意差は認められなかった。しかし、cold blood灌流時に心室細動が発生し、それに対し心筋保護液が過剰投与されることによるoverdoseを懸念し、最低限のカリウム濃度で灌流中に弛緩性心停止を維持できるMicroplegiaを併用する必要があった。そのため、MPSを使用しIMMにcold bloodにカリウムを添加して灌流するMicroplegiaを併用した心筋保護法は、血液灌流時に6~8mEq/Lのカリウム濃度を維持することが可能であることにより、確実な心停止が得られる方法として有用であると考えられた。
  • 新居 優貴, 山田 悌士, 薗田 誠, 東 和美, 杉浦 裕之, 江向 光希子, 相原 有理, 水野 雄介, 西尾 祐司
    2008 年 35 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨 高度低心機能症例8例、寒冷凝集高値症例3例に対し、大動脈遮断でに持続的かつ選択的に血液冠灌流を行うことで、空気塞栓を防止しながら、自己心拍を温存し、心内修復術を施行した体外循環を経験した。体外循環回路より酸素加され新血液を心筋保護回路へ導き、約35℃に加温した後、血流量250mL/min、先端圧80~100mmHgを目標に灌流を行った。平均体外循環時間322.5min、平均血液冠灌流時間120.8minであった。コロナリーカニューレの屈曲や逸脱などにより一過性の心電図変化が見られたが、重度の血行動態低でを合併することなく、回避することができた。心停止群、冠灌流施行群の術後のCK、CK-MB、LDHを比較したが、有意差はなかった(p<0.01)。灌流状況、心疫図波形の変化の把握、術者との情報交換、トラブル対策を徹底することでより安全性に優れた冠灌流補助法となりえると考えられた。至適冠灌流量、灌流圧などの安全基準を明確にすること、心停止で手術へのスムーズに移行できる体制の確立などが課題と考えられた。
  • ―選択的順行性脳灌流の経験―
    菊地 昭二, 星 直樹, 清水 裕也, 中畑 仁志, 開米 秀樹, 松浦 健, 新田 能郎
    2008 年 35 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨 弓部大動脈人工血管置換術に対して、選択的順行性脳灌流法と体循環停止を併用し脳分離体外循環を行ってきた。弓部3分枝送血において、1987年より1基ポンプで直視下に3分枝送血行い、1992年より前胸部鎖骨下より右鎖骨下動脈に送血部位を変更し、左側2分枝は従来どおりの送血を行った。当施設では術後問題となる脳合併症や脊髄麻痺の要因は低灌流と塞栓であると考え、1997年より左右別々のポンプを使用し、前胸部鎖骨下より両鎖骨下動脈を露出し送血を行い、左総頸動脈には直視下で送血を行っている。選択的順行性脳灌流法と体循環停止を併用することで長時間手術に対応でき、術後の脳合併症や脊髄麻痺の発生を抑え良好な成績を収めている。体外循環における操作や回路は多少煩雑ではあるが、安全な脳分離体外循環法だと考えられる。
  • 開 正宏, 山鹿 章, 蜂須賀 章友, 清水 大輔, 萩原 啓明, 伊藤 敏明, 宮田 完志, 服部 敏之
    2008 年 35 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨 低体温法は脳保護の最も中心的な手段であるが、低体温体外循環中のpHやPaCO2管理は長年にわたって議論されており、統一の見解には至っていない。今回、超低温による選択的脳灌流(SCP)時の脳内酸素飽和度(rSO2)を、α-statとpH-statで比較検討した。その結果、rSO2は両群ともに有意差を認めて冷却時に上昇し復温時に下降した。rSO2の群間比較では、流量規定でSCPを施行した間には、α 群とpH群で有意差は認められなかった。pH群は、超低温でSCPを施行していない体循環時に、rSO2が有意に高値を示した。pH-statはα-statに比して脳血流量が増大するため、圧規定時には弊害の可能性も懸念されるが、rSO2は高値を示し脳組織代謝に有利であると示唆された。
  • 小林 靖雄, 木村 優友, 曽山 奉教, 橋本 武昌, 二重 実, 吉田 秀人
    2008 年 35 巻 2 号 p. 155-156
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨 動脈フィルターは人工心肺回路の充填において、気泡除去に最も時間を費やす部品である。今回,動脈フィルターの充填操作手順の違いによる気泡除去の評価を行った。急速に充填、1分間低流量でゆっくりと充填、ゆっくり充填した後に1分間手で叩く、手で叩いた後にゴムハンマーで1分間叩く、以上の4つの充填方法において動脈フィルター出口部の40μm以上の気泡数を計測した。動脈フィルターの気泡除去は、充填液を低流量で充填し、更に、叩く操作を行うことで気泡を迅速に除去できた。
  • 村松 明日香, 神谷 典男, 増井 浩史, 北本 憲永
    2008 年 35 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨当院の小児人工心肺システムは、患者とリザーバがほぼ同じ高さとなっている。落差をつけない吸引脱血法で壁吸引が途絶えた場合、電気式吸引装置がバックアップとして使用できるのか、また、循環にどのような影響を及ぼすかに加え、重要な安全装置となる陽圧防止弁の性能を確認した。電気式吸引装置と壁吸引の吸引流量はほぼ同等(40L/min)で、Baxter社製ベントレー吸引コントローラと接続した場合でも、壁吸引と同様の操作性を得た。吸引停止の実験は実際の体外循環を模擬した。吸引源停止後、リザーバー内の血液は脱血回路から患者側に逆流し、圧の平衡が取れたところで流れは停止した。吸引・ベントが回転した状態でもリザーバー内は陽圧防止弁により大気開放状態となり、脱血側に送気されることはなく、リザーバー液面と患者との高さで均衡状態となった。陽圧防止弁は取り付け方による抵抗の違いで排気能力が大きく変化することと陽圧が測定できない可能性が確認された。バックアップの吸引装置を常時接続することで、トラブル時のスムーズな対応が可能と考える。
  • 鈴木 一郎
    2008 年 35 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:2007年10月、第60回日本胸部外科学会定期学術集会において人工心肺使用中のトラブル対処法のハンズオンセミナーを開催した。ハンズオンセミナーを開催するにあたり医師(心臓外科医、麻酔科医)の参加を求め、トラブル事例を医師とともに個別的な状況を正しく認知し、優先順位を的確に判断し、冷静・確実に操作する技術の習得を目的としたチーム医療実践を企画した。人工心肺操作時のトラブルシューティングは各施設においてマニュアルなどは整備されていると考えるが、対処法の実践はなかなか行われていないのが現状である。アンケート結果としてはセミナー実施の継続と種々のトラブルシューティングを経験したいとの意見が多数をしめた。問題点としては、(1)インストラクターの養成、(2)全国各地での開催、(3)トラブルシューティングシナリオの作成、(4)学会会員の積極的な参加、(5)使用機器物品の手配、(6)臨床使用時と同等の安全装置の仕様、(7)トラブルシミュレーションシステムの構築などがあげられた。今後、人工心肺使用中のトラブル対処法の確立とトラブルシミュレーションシステムの開発が望まれる。
  • 岡原 重幸, 高橋 秀暢, 二宮 伸治, 徳嶺 朝子, 黒崎 達也, 末田 泰二郎
    2008 年 35 巻 2 号 p. 168-170
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨人工心肺シミュレータ(ECCSIM)を、閉鎖型人工心肺システムの模擬訓練に適用し、新しい回路評価に対するシミュレータシステム適用の可能性について検討した。MECC回路導入による閉鎖型システムの安全性確認のため、ECCSIMでその評価を行った。評価方法として、双方のシステムに対して心拍動下体外循環を想定したシナリオを実施し、血液流量、リザーバレベルなどの操作情報および血行動態情報の経過を記録した。操作情報の解析ではシナリオであらかじめ設定した血液流量とリザーバレベルの目標値と比較し、血行動態の経過が正常値の範囲であることを確認した。閉鎖型回路では、操作情報は目標値とほぼ同様の経過となったが、開放型では、ボリュームのコントロールが遅れる傾向などが確認できた。また、血行動態情報はどちらも正常値範囲内での運転であることが確認された。体外循環情報にて操作牲の差異、血行動態情報にて血圧を維持できたことにより安全性を客観的に評価することが可能であった。今後、小児領域またはまったく新たなシステムの評価にも応用が期待できる。
  • 大石 杏衣, 山崎 隆文, 熊井 良一, 添田 信
    2008 年 35 巻 2 号 p. 171-173
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨近年、体外循環のトラブルシューティングについて、さまざまな取り組みが行われている。今回、通常の人工肺と形状が異なる動脈フィルター内蔵型人工肺(シンセシス)を使用中に人工肺不良が生じ人工肺交換が必要になった場合を想定し、人工肺交換方法について検討した。また、操作性、視認性、充填液量の評価を行った。その結果、人工肺を脱着して交換する方法より、別の人工肺、フィルタに交換するほうがポンプ停止時間の短縮になる結果が得られた。充填液で再循環している時に視認性が若干低下するほか、低流量でプライミングを行う必要があり、操作に慣れが必要であった。充填液は100mL多く必要であり、今後、改善が必要であると考えられた。回路の簡略化、一体化が進むにつれ、トラブル発生時の体外循環中の各パーツの交換が難しくなる場合がある。今回、動脈フィルター内蔵型人工肺に不良が生じた場合の対応を実際にシミュレーションすることで、実践を踏まえたトレーニング、安全対策の必要性を改めて認識した。
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