体外循環技術
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31 巻, 4 号
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  • 石川 昇
    2004 年31 巻4 号 p. 375-380
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • ― CDI System500について―
    佐藤 洋平, 朝日 亨, 小林 英知, 谷澤 勝, 服部 敏温, 小櫃 由樹生, 清水 剛, 平山 哲三, 石丸 新
    2004 年31 巻4 号 p. 381-384
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】今回,テルモ社製体外循環用血液パラメータモニタCDI500を使用する機会を得た。そこで2003年3月より同年4月までの体外循環症例7例を対象に,テルモ社製CDI400およびRadiometer社製ABL625の血液パラメータを使用して,開心術中の血液ガス測定値の流れ,体外循環中の測定値を比較検討した。開心術中における血液ガスの流れの検討の結果,センサーレスポンスに関してはCDI400に比べCDI500の測定値が約5分の1ほど早いことが示唆された。CDI500とCDI400の比較においてPaO2の測定値で高い相関が示され,pH,PaCO2においても良好な相関が示された。CDI500は,CDI400に比ベカリウムなどの測定項目が増え,体外循環回路のセットアップ時間も短縮された。また,モニタ画面がカラー液晶になり非常に見やすくなったため,体外循環中の血液パラメータの変化を捉えるモニタとして有用であった。
  • ― CDI SYSTEM500を用いて―
    福井 威夫, 赤松 伸朗, 山野辺 基, 稲岡 秀隆, 宮本 覚
    2004 年31 巻4 号 p. 385-387
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】体外循環施行中に操作者が血液検査データを知ることは必要であり,施設によりそのデータを知る方法は様々である。当センターにおいては通常の体外循環施行中は簡易血液検査装置を使用して数回の検査を行い,検査から検査の間は操作者が経験による予測のもと判断している。今回我々は連続で血液ガス,電解質を測定できるテルモ社製CDI SYSTEM500を使用する機会を得た。本装置は専用のセルをそれぞれ送血回路と脱血回路に組み込むことでpH,PCO2,PO2,BE,Hb,Hct,K+,HCO3-,SvO2のデータが得られ,これらのデータを当センター検査室データとの相関を評価した。その結果,テルモ製CDI500は当センター検査室データと高い相関を認めた。使用に際して改善点がいくつか必要だが体外循環の連続モニターとして有用な装置であると考えられた。
  • 前田 孝雄, 蛭田 章子, 山田 将紀, 和井 内賛, 瀬尾 憲正
    2004 年31 巻4 号 p. 388-394
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】低侵襲で持続的に心拍出量測定可能な食道エコー的心拍出量測定装置(アロウジャパン社製Hemosonic100)と,サーモダイリューション・カテーテル観血的心拍出量測定装置(バクスター社製Vigillance)を使用し,動物実験にて,大量出血モデルを作り血行動態のパラメーター測定,項目は心拍数,血圧(収縮期/拡張期),肺動脈圧(収縮期/拡張期),肺動脈楔入圧,中心静脈圧(平均),体温(肺動脈),心拍出量,SvO2,EtCO2を測定し比較検討した。その結果は,出血量の体重に対しての度合20%と40%で有意な差は40%脱血時に見られ,HemosonicとVigillanceとでは,持続的に心拍出量を測定可能な装置としてHemosonicが血行動態の急激な変動にも追従し,実験のモニターとして適切な測定結果を出力し有効であったと考えられた。
  • 川名 由浩, 中垣 麻子, 山本 真人, 新浪 博, 竹内 靖夫
    2004 年31 巻4 号 p. 395-397
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】近年,体外循環を使用しない冠動脈バイパス術(OPCAB)が盛んに行われるようになったが,心臓の脱転および挙上により血行動態が悪化して不安定となる。そこで今回,術中の右室容量を測定し検討した。胸骨正中切開による多枝バイパス症例で,OPCABによる完全血行再建を行った12例を対象とした。測定10項目をSwan-ganz CCO/CEDV thermodilution catheterにて測定した。測定値は,Control値を開胸後,BackControl値を閉胸後,また前下降枝(LAD),回旋枝(LCX),右冠動脈(RCA)それぞれの吻合時とした。術中,LCX,RCA吻合時にRVEDVI,RVESVI が有意に減少したのは,スタビライザーによる機械的圧迫と,ハートポジショナーによる心臓の牽引によるものと考えられる。RCA領域では,SV,CIは保たれるので,血行動態の変化はLCX領域に比較すると安定していた。LCX吻合時は,ハートポジショナーによる心臓の牽引の際,右胸壁に心臓を圧迫するためであると考えられた。OPCAB術中の右室容量測定は,血行動態の把握に非常に有用な指標になると考えられた。
  • 安田 英之, 北本 憲永, 神谷 典男, 小出 昌秋
    2004 年31 巻4 号 p. 398-401
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】α 型ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド(以下,hANP)の利尿作用,third spaceから血管内への水分移動を促す効果を期待し,体外循環中から0.025~0.050μg/kg/minの低容量持続投与を試みた。対象:待機的開心術症例(冠動脈バイパス手術を除く)で無輸血体外循環を施行した成人30例に,hANPを投与した群(n=15以下,hANP群)と非投与群(n=15,以下N群)について,尿量,出納バランス,ICU帰室後のA-aDO2について比較した。結果は体外循環中の尿量はhANP群1288.9±685.0mL,N群495.6±231.0mLと有意差(P<0.001)を認めた。しかし,体外循環中の出納バランスはhANP群で317.6±748.1mL,N群646.6±840.9mLと有意(p<0.005)に水分が貯留する結果となった。術後のA-aDO2はhANP群225.9±156.9mmHg,N群125.5±84.0mmHgとhANP群で有意(p<0.05)に高値となり肺酸素拡散能の低下を認めた。
  • 北脇 丈博, 森田 高志, 笹川 繁, 石井 正晃, 本田 博一
    2004 年31 巻4 号 p. 402-404
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】体外循環中の乳酸値の変動および乳酸値に影響を与える因子を明らかにするため,多変量解析により検討をした。対象は当院で行われた待機的On pump冠動脈バイパス術34例とした。血中乳酸値を体外循環開始時から30分間隔および終了時に測定し,検討対象とした因子を説明変数として,体外循環中の乳酸値変化量を目的変数として重回帰分析を行った。血中乳酸値は体外循環開始時より増加し,体外循環終了時に最高値となった。また重回帰分析の結果,血中乳酸値の変動と相関があるものは体重,大動脈遮断中の灌流圧,体外循環時間,希釈率であった。体重,大動脈遮断時間は負の相関,体外循環時間,希釈率は正の相関であった。これらの因子により体外循環中の血中乳酸値の増加を抑制できる可能性が示唆された。血中乳酸値を測定することで,体外循環中の循環動態,組織酸素負債などを評価することができ,安全な体外循環の指標として血中乳酸値の値が使用できることが唆示された。
  • 海江 田章, 石川 隆志, 山内 章弘, 豊崎 正人, 三澤 健治, 榊原 未和, 石川 正敏, 杉森 美幸, 山本 賢, 服部 良信, 伊 ...
    2004 年31 巻4 号 p. 405-407
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】ビスフェノールA(BPA)は,内分泌撹乱化学物質として指摘されている化学物質の1つである。BPAは,エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂の主原料であり,体外循環回路はじめ医療用具に広く使用されている。今回,開心術を施行した成人症例で,CPBを行った24例とOPCAB4例を対象に血中BPAの測定を行った。測定は麻酔導入直後,CPB復温直前(OPCABでは,予定吻合数の半数終了時),硫酸プロタミン投与後15分の3点でサンプリングを行い,CPB症例におけるCPB時間,体温,コーティング回路の有用性,OPCAB症例とCPB症例とにおけるBPA溶出の比較について検討を行った。BPAの溶出は,血液の回路との接触時間,接触面積により増加することが示唆された。また,コーティング回路を使用してもBPAの溶出は抑制困難であると考えられた。今回,CPB回路使用による明らかな血中へのBPA溶出は確認できたが,どの材料からの溶出であるかは確認できておらず,今後の課題である。
  • ― Pigtailカテーテルを用いた僧帽弁逆流試験法―
    田辺 克也, 佐藤 耕一, 石曽根 明浩, 曽根 慎一, 加瀬川 均
    2004 年31 巻4 号 p. 408-410
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】僧帽弁形成術の術中逆流試験は,これまで生理的食塩水をシリンジにて,僧帽弁経由で左室に充満させることにより観察してきた。今回Pigtailカテーテルを用いた逆流試験法を考案し、12症例に施行した。Pigtailカテーテルを大動脈基部から左心室内に留置させ、生理的食塩水を人工心肺側よりローラーポンプにて送水し、弁の逆流の程度を観察した。ローラーポンプを用い、持続的に左心室内に送水、加圧できることで、良好な弁の逆流の観察が可能であった。Pigtailカテーテルを挿入したままでの心筋保護や生理的食塩水の冠動脈への流入による心筋保護障害を懸念したが、CPKおよびCPK-MB、術後の心機能から、従来どおりの心筋保護効果は保たれていると考えられた。
  • 大石 杏衣, 山崎 隆文, 齋藤 健, 熊井 良一
    2004 年31 巻4 号 p. 411-413
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    PM外来をより安全に円滑に行うために,以下の5項目について検討・改善を行ったので報告する。その項目は,1)外来患者の待ち時間,2)不明患者の追跡調査,3)外来予約日に来院されない患者への受診案内,4)PM手帳の紛失・不携帯への指導,5)設定の誤認識の5項目である。1)改善前は1回の外来患者数が平均27名(最大33名)であったが,改善後は平均7名に削減でき,患者待ち時間の短縮に繋がった。2)1998年には24%(83名)だった不明患者は,2002年には0名(0%)になった。3)当日来院されない患者は,1999年の11名(4.6%)が最大であったが,2002年には2名(0.6%)まで削減できた。4.手帳紛失には次回外来時に手帳を再発行し,不携帯患者は次回外来時にデータ記入を行った。付き添いの家族や介助者にもPM手帳の携帯すること指導している。5.最終設定の確認を,点検最後の記録データ用紙でCEが責任をもって行うことを徹底している。この結果,より安全で円滑なPM外来が行えるようになった。
  • 柳館 直美, 進藤 靖夫, 繁在 家亮, 高橋 俊郎, 三澤 吉雄
    2004 年31 巻4 号 p. 414-416
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】体外循環を行った開心術症例21例にエレクタを使用し,その安全性,操作性,処理能力の検討を行った。充填,洗浄,返血の各ラインが一体化されているためセットアップが容易であり,セッティングチェックにより誤接続を減らすことができた。内蔵のHCTセンサーによりHct値をリアルタイムに測定でき,洗浄品質センサーによりFPH除去率や廃液ラインの透明度のモニタリングが可能で,より有効な洗浄効果が期待できた。回収血の平均Hct値は41.2±3.4%,FPH除去率は93.3±0.7%であった。オートスタート機能により全工程を自動化でき,より短時間での血液処理も可能となった。データマネジメントシステムにより,データ管理および事後評価が容易で,今後の統計解析に有用であると考えられた。現機種は英語表記のため,今後は日本語表記仕様の開発が望まれた。エレクタは誤接続を軽減し,各モニターにより最適な設定を随時選択することが可能な自己血回収装置であった。
  • 岩田 浩一, 阿部 敬二朗, 宇都宮 精治郎
    2004 年31 巻4 号 p. 417-419
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】PCPS時のウエットラングは,ガス交換を障害する。そこで我々は,PCPS施行時の人工肺加温方法の違いによる人工肺ガスOUT部の温度,湿度,排水量,回路内温度の違いを検討した。人工肺ウエットラング予防には,人工肺への流入ガスを温める必要はなく,ガス出口付近を温めることが重要であると考えられた。
  • 安野 誠, 中嶋 勉, 花田 琢磨, 遠藤 裕介, 金子 達夫, 江東 雅彦, 佐藤 泰史, 斉藤 祐二
    2004 年31 巻4 号 p. 420-422
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】手術中の心機能を評価する方法として,スワンガンズカテーテルによる連続心拍出量測定(CCO)と2機種の連続代謝モニタであるSVO2,(Edward社,Vigilance),rSO2(Edward社,INVOS4100)を同時に測定し検討を行った。対象はOff-Pump CABの6症例。測定方法は心臓脱転前,脱転直後,その後の1分間隔,脱転解除時,解除後1分後をサンプルポイント(n)とし,6症例の末梢13吻合でn=255であった。3項目の心臓脱転前値と経時変化した値を比較し,変化率でピアソン相関係数の検定を行った。CCOは34/255(13%)で計測が行えなかった。計測の行えたn=221でrSO2対SVO2はR=0.83,y=0.70x+0.28,r2=0.70で高い相関が認められた。CCO対rSO2,CCO対SVO2の相関は認められなかった
  • 小林 剛志, 富永 哲史, 石川 智啓, 加藤 寛城, 高橋 政夫
    2004 年31 巻4 号 p. 423-427
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】連続心拍出量は心機能評価に非常に有用で,開心術や術後管理に必要な生体計測機器である。今回スワンガンツカテーテルを用いずアナログ動脈圧波形から得た情報のみで.連続心拍出量が瞬時に測定できるLiDCO社製PulseCOの有用性を検討した。対象は待機的OPCAB10例で,Edwards Lifesciences社製VigilanceCEDVと比較検討を行った。校正直後の心係数と体血管抵抗係数比較では,PulseCOとVigilanceCEDVは高い有用性が得られた。しかし急激な循環動態変化時の心係数比較でPulseCOとVigilanceCEDVの有用性は得られなかった。OPCABでの心臓脱転などの操作時,DDDペースメーカー埋め込み時のモード設定,人工心肺ウイニングの指標としても非常に有用であった。また適応疾患が幅広く,将来性の高い装置であった。
  • 千葉 二三夫, 渡部 悟, 菅原 誠一, 千葉 直樹, 古川 博一, 勝箟 豊, 河原畑 茂樹
    2004 年31 巻4 号 p. 428-430
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    低充填量小児用動脈フィルターのモデル(JMS社製)を実験検討する機会を得たので,TERUMO社製CX-AF02とDIDECO社製D736との圧力損失,気泡捕捉量を比較検討した。模擬回路は,送脱血6mmの開放型ローラーポンプ回路で,人工肺にはBABY RXを使用し,牛血を用い血液温32℃で検定した。流量0.5~2.5L/min時の出口圧,入口圧の平均の差を圧力損失とした。気泡捕捉量は,流量1.5L/min時で出口圧を100mmHg,人工肺と動脈フィルターの間より空気を2.OmL/minで継続注入し,動脈フィルター出口で40μm以上の気泡を検出した時点での動脈フィルター内の気泡を回収し測定した。その結果,圧力損失は2.5L/min時のJMS社製:29.3mmHgと他2種の動脈フィルターと,同等もしくはそれ以下であった。気泡捕捉量は,JMS社製は8mLと少量であったが,捕捉率は53.3%であった。容量15mLの小児用動脈フィルターのは,従来品と比較し25mL削減され,また出入口のポートが水平であることで回路短縮が可能となり,更なる充填量の削減が期待できる。小児においては無輸血手術,希釈率軽減を目的とした低充填量化に対応しうる小児用動脈フィルターとして臨床使用可能と考える。
  • 笹山 幸治, 南良 義和, 井上 宏隆, 兵藤 好行, 渡邉 智, 中根 亘, 佐藤 秀樹, 高木 靖, 上田 裕一
    2004 年31 巻4 号 p. 431-433
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】従来より胸部下行大動脈瘤および腹部大動脈瘤などの手術の際,遠心ポンプを用いた回路でF-Fバイパスを施行してきた。術中出血は心内血貯血槽に回収したものは回路より補液を行い,自己血回収装置に吸引された出血は,処理後に麻酔科あるいは体外循環より輸血してきた。しかし,大量出血時において,大腿動脈から補液送血するのみでは,時間較差が生じるために心拍出量の維持が難しく,著しく血圧が下降することも多々あった。そこで,補液ポートを延長して心内血貯血槽を接続し,ローラーポンプで補液流量をコントロールした。大量出血時には,鉗子で遠心ポンプ出口を閉塞して,脱血量(送血量)を調節し,ローラーポンプを用いて直接右心房に逆行性送血を行うことで,容易に血行動態を維持することが可能になった。
  • 後藤 悟, 百瀬 直樹, 内田 隆行, 山越 理恵, 富永 あや子, 安藤 勝信, 中島 逸郎, 好並 菜佳
    2004 年31 巻4 号 p. 434-437
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】我々は病院内吸引設備の停止を契機に,吸引設備の停止に伴う危険性を検討するとともに,安全対策を考案し,これを実験的に検討した。対策は吸引ラインに吸引瓶を取り付け,陰圧をより長い時間保持させるとともに,壁吸引からの空気の逆流によって急速に陰圧を失わないよう,吸引ラインに逆止弁を取り付ける方法である。そして,模擬的な吸引補助脱血用の実験回路を作製して貯血槽の陰圧の持続時間を測定した。吸引設備の停止を想定した実験の結果,安全対策を施さなかったときは,瞬時に貯血槽の陰圧は失われてしまったが,吸引ラインに吸引瓶と逆止弁を追加したときは,貯血槽の陰圧を6分58秒維持することができた。この安全対策は容易に入手可能な材料で吸引設備に対する安全性を高められる有効な方法である。
  • 倉島 直樹, 塩練 廣美, 竹田 博行, 松村 卓広, 竹村 隆広
    2004 年31 巻4 号 p. 438-441
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】体外循環において,送血側へのエアーの混入は重篤な合併症を引き起こす可能性があり,貯血槽の監視を目的としたレベルセンサーなどの安全装置が開発されている。しかし,センサー部分は固定式であり,監視装置としての使用には,問題点がある。また,これらの装置はローラポンプと連動し,警報作動時にはポンプを制御し,停止するなどの機能を有しているが,遠心ポンプ装置には使用できない。以上の点から,我々は可動式センサーを試作し,センサーの可動性と動作を確認し,更に,レベルセンサーと連動するチューブクランプを試作した。動作確認として使用期限切れの赤血球M・A・P「日赤」を貯血槽に入れ,生理食塩水で段階的に希釈し,Hct60%~10%範囲で動作可能で,また,遠心ポンプの回転数を1,000~3,500でチューブクランプを作動させ閉塞前後の流量を計測したが,通常使用領域の2,500~3,000rpmでは,0.08~0.18L/minまで流量を低下させることができた。以上より貯血槽の監視能力が向上し,遠心ポンプ送血時におけるエアー混入を防ぐ可能性が高いことが示唆された。
  • 百瀬 直樹, 内田 隆行, 後藤 悟, 山越 理恵, 富永 あや子, 安藤 勝信, 中島 逸郎, 大石 杏衣
    2004 年31 巻4 号 p. 442-445
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】体外循環において低換気のトラブルは非常に危険であるが,現状では低換気の有効なアラームがないのが実情である。我々は人工肺のガス排出口に市販の酸素電池を取り付け,排出ガスの酸素濃度によって低換気を検出しアラームを発する方法を考案した。そして動作を検証するため人工肺モデルと生体モデルでmock回路を作製し,血液を用いて低換気状態を模擬した実験を行った。この結果,一般的な体外循環の状態から人工肺に吹送する酸素流量を下げると,動脈血酸素分圧が100mmHg以下となる前に,排出ガスは大気の酸素濃度の21%以下となることが確認できた。人工肺に吹送する酸素濃度を下げた場合でもほぼ同様な結果となった。しかし,吹送ガスを止めた場合,排出ガスが流れないため低換気の検出が遅れる点が改良点として挙げられる。人工肺に酸素電池が取り付けられるように加工してあれば,取り付けや設定も容易であり,また酸素電池は繰り返し使用可能で,低コストで安全確保ができる。この低換気アラームは,人工心肺のみならず補助循環領域でも有用性がある。
  • 北本 憲永, 神谷 典男, 高柳 綾子, 小出 昌秋
    2004 年31 巻4 号 p. 446-449
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    小児の人工心肺初期充填量軽減を行うため,代表的な動脈フィルタの気泡捕捉能力を確認することで,動脈フィルタの低充填化が可能であると考え製品化を検討した。作製の条件は,最大流量を1.5L/min以上,充填 量を15mL以で,フィルタ孔径40μm,血液流出入口は横から入り横から出る形状とした。圧力損失と気泡捕捉能力はテルモ社製動脈フィルタCX-AFO2(AFO2)の規定最大流量2.5L/minを基準に設定した。AF02で40μm以上の気泡を捕捉できた注入量は10mLであったことから,それに見合った構造を検討し,実験用動脈フィルタ(試作品)を作製し評価した。作製した試作品は,配置も良好で,充填 も容易に行えた。圧力損失は流量1.5L/minで,試作品・AFO2ともに16.5mmHg,2.5L/minでは試作品40.5mmHg,AF02で39.OmmHgとなった。気泡捕捉能力は動脈フィルタ入口部より注入した場合,試作品で流量0~1.5L/minまでは10ml,2.OL/minで8mLであった。試作品を微小凝集塊除去フィルタと考えるなら臨床使用が可能と考えられた。
  • - 脈血貯血槽バイパス回路を用いて-
    笹山 幸治, 南良 義和, 井上 宏隆, 兵藤 好行, 渡邉 智, 中根 亘, 佐藤 秀樹, 高木 靖, 上田 裕一
    2004 年31 巻4 号 p. 450-453
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】胸骨への癒着が高度と推測される再手術症例では,胸骨切開中の心破裂や大血管損傷などに備え,事前に体外循環を確立しておく必要がある。そこで,通常の人工心肺回路に静脈血貯血槽バイパス回路を組み込み,一連の鉗子操作でF-Fバイパスから通常の体外循環に移行できる回路を使用することで,重大な血行動態低下を惹起することなく,安全かつ簡易に再開胸手術を行うことができた。
  • 笹山 幸治, 南良 義和, 井上 宏隆, 兵藤 好行, 渡邉 智, 中根 亘, 佐藤 秀樹, 高木 靖, 上田 裕一
    2004 年31 巻4 号 p. 454-456
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】術前CTにて,心臓・大動脈などが胸骨へ高度に癒着していると診断された再手術では,胸骨切開中の心破裂や大血管損傷などに備え,事前に体外循環を確立しておく必要があると考える。本症例では大動脈弁置換後の仮性大動脈瘤が胸骨切開中に高い確率で損傷すると推測されたため,通常の人工心肺回路に静脈血貯血槽バイパス回路を組み込み,F-Fバイパスで,循環停止可能な体温に下げてから胸骨切開を行い,一連の鉗子操作で通常体外循環に移行した。
  • 朝日 雄一郎, 仲井 照和, 米田 裕一, 山下 繁, 城 崇友, 塩崎 敬, 南村 秀行, 小川 昌彦, 中谷 晋也, 前田 充徳, 森脇 ...
    2004 年31 巻4 号 p. 457-459
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】過去10年間に行ったPCPS85症例の内,社会復帰が可能となった19症例について導入時間帯に因果関係はないか調査した結果,我々臨床工学技士が何らかの原因で残務している時間帯(19時頃まで)を日勤帯とした場合,社会復帰率が高いことが分かった。
  • ― SPY Systemについて―
    塚本 毅, 笠原 勝彦, 太原 孝代, 仲尾次 政隆, 池ノ内 治, 柴崎 郁子, 早川 宏, 野崎 彰, 鎌田 聡
    2004 年31 巻4 号 p. 460-463
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】SPY systemは,インドシアニングリーンを用いて血管造影が可能であり,術中にリアルタイムに映像で確認できるという新しい血管造影装置である。血管造影は,インドシアニングリーンの蛍光という特性を利用し,血管内に存在するインドシアニングリーンにレーザー光を照射して放出された光を撮影することで血管を映し出す。我々は,OPCABで術中にバイパスグラフトの開存を確認するためにSPY systemを使用して術中造影を行ったところ,バイパスグラフトから吻合部,native coronaryへと血行が再建されているのを確認した。また,術後のCAGと比較した結果,CAGと同様にバイパスグラフトの開存を確認し得た。SPYは,操作が容易で,術中速やかにバイパスグラフトの開存を確認できることから,新しい血管造影装置として有用性が高いと考えられた
  • 斎藤 司, 工藤 英範
    2004 年31 巻4 号 p. 464-468
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】胸部下行・胸腹部大動脈瘤時の左心バイパス回路について,これまでに行った回路変更の経過と回路の特徴を報告する。当初,左心バイパス回路は,胸部下行大動脈瘤に対して3/8チューブと遠心ポンプを用いて,左房脱血,下行または大腿動脈送血の閉鎖回路で行っていた。しかし,大量出血時の対応に問題があったため,ソフトリザーバーと自己血回収装置を組み込んだ。その結果,出血時への対応が可能となった。その後,この回路の適応を胸腹部大動脈瘤まで拡大したため,腹部臓器の保護が必要となり,分枝送血回路を設け,ソフトリザーバーを追加し,リザーバー間に熱交換器を組み込んだ。しかし,大量出血時に自己血回収装置にて血液洗浄した場合,回収時間の延長と血小板数の減少が危惧され,準備も煩雑であったため更に変更を行った。改良点としては,追加したソフトリザーバーをハードシェルリザーバーに,ローラーポンプによるサクションを回路に組み込んだ。これにより回収時間の短縮と血小板数の減少対策が可能となった。更に,心筋保護液供給装置を使用することで,回路が簡素化され準備および操作性が向上した。
  • ―オールタッチパネルコントロールについて―
    遠藤 義幸, 坂井 伸行, 斉藤 恭子, 西山 英隆, 堀 貴行, 星 義弘, 田山 雅雄, 諸 久永
    2004 年31 巻4 号 p. 469-472
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】当施設で使用を開始したAPS1ではすべての操作をCCMにて行える。我々はAPS1を使用し,すべての人工心肺操作をCCMにて行い,APS1の利点と欠点について検討した。対象は2003年4月から2004年7月までに当施設で体外循環を施行した56例とした。バッテリー搭載コンソールをベースとし,ローラーポンプを5基搭載し,オプションとしてオクルーダー,リザーバーレベルセンサー,気泡検出器,圧力計,送脱血温計を装備した。CCMはタッチパネルのため,操作上でいくつかの注意点があるが,非常に視認性が良く操作性は向上していた。またAPS1は比較的小さく,省スペース化が可能であった。バッテリーは比較的大容量ですべてのシステムが使用可能であった。各オプションの着脱は簡単で,将来オプションを増やすことも簡単である。安全監視機構はオプション同士またはポンプとの連動するような設定が可能で,警報作動時にはポンプを一時的に自動で止めることもできた。APS1を使用してすべての操作をCCMで行ったが,いくつか注意点はあるが安全に体外循環が施行できた。
  • 赤地 吏, 玉城 聡, 山口 敏明, 神谷 勝弘, 新見 能成
    2004 年31 巻4 号 p. 473-475
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】従来の人工心肺操作実習では,オクルーダーの調整や操作中に起こりえるさまざまな変化を体験することはできなかった。そこで,塩化ビニール製マットを製作し,学会のワークショップや学生実習,医師や新人技士の教育に役立てることを試みた。マットの構造上の特性は,送脱液チューブに分枝を作ったこと,送液ラインとマット内部に血圧トランスデューサーを付けて送血圧とマット内部圧をモニターできるようにしたこと,ドレナージラインを設けたことである。今回,このマットを使って,操作実習を行ったところ,操作した実習生から高い評価を得た。マットを使った実習では,これまでの操作実習と比較して,(1)オクルーダーの操作を体験し,循環血液量の調節が行える,(2)血圧トランスデューサーを付けたことで,血圧,ポンプ流量,循環血液量の関連性が理解できる,(3)さまざまなトラブルの原因と対処を理解できる,などの点が優れていると考えられた。基本的な人工心肺の操作を体験できる人工心肺操作シミュレーションマットは,学生実習,医師や新人技士の教育に役立つ研修器具と考える。
  • 栗原 大典, 原 和信, 上田 彰, 向井 憲子, 竹井 沙緒梨
    2004 年31 巻4 号 p. 476-478
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】今回,人工心肺残血から得た洗浄血の使用が血液凝固にどのように関与するかを,二種類の血液凝固計を使用して,患者血のみの血液と患者血と洗浄血を混合した血液の活性化血液凝固時間を測定し,体外循環時間および低体温施行の有無で比較検討した。長時間の体外循環や低体温体外循環法の施行において,洗浄血の使用でACTが延長したのは,血小板の減少や血小板凝集機能の低下した患者血に洗浄血を使用することで,赤血球のみの洗浄血により凝固因子が希釈されたことと,更に,洗浄血のヘパリン含有量は,人工心肺残血のヘパリン含有量に比例してヘパリンの残存量が増加したことから,凝固因子の希釈とヘパリンの残存量に影響されると考えられた。
  • 土橋 克彦, 仲村 涼子, 戸田 修一, 安友 芳郎, 菅原 浩二
    2004 年31 巻4 号 p. 479-480
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    (要旨)陰圧吸引用レギュレーターと静脈リザーバー間のチューブ内に温度差により結露が発生する。その結露に一時的に白い析出物が見られたので,模擬回路にてその再現を試みた。加温加湿された空気を,ヘパリンコーティングチューブ(イオン結合)とノンコーティングチューブにて陰圧吸引し,チューブ内の結露のできる様子を比較観察した。ノンコーティングチューブでは,内壁全体に均一に結露ができるが析出物は見られなかった。コーティングチューブでは,内壁の透明感が不均一になり一部に白い析出物が見られ始め,その後析出物は見えなくなった。また内壁につく結露の量はコーティングチューブのほうが少なかった。陰圧吸引チューブの結露中に見られた白い物質は,ヘパリンコーティングチューブにのみ見られたことより,コーティング素材が関係し,その素材が加温加湿された細かい水蒸気などにより析出物として見られるようになったと考えられた。結露の付着する量は,コーティングチューブのほうが少なく,陰圧吸引チューブには回路閉塞などの問題が起こりにくく,適していると考えられた。
  • 樺澤 寛二, 會田 治男, 吉田 譲, 大木 康則, 佐藤 智明, 奥村 高広, 小塚 アユ子, 高橋 克弘, 斎藤 亮輔, 矢島 真知子, ...
    2004 年31 巻4 号 p. 481-484
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】当院で人工心肺操作新人トレーニングカリキュラムを設定し,まとめたので報告する。対象は1989年1月から2003年5月までにトレーニングを受けた部内技士14名,関連施設技士11名。トレーニング内容としては,目標症例数を100例とし,見学や組み立てと操作を各30例と,操作者補助係(外回り)を行うことにしている。特徴は手術症例を大切にするために理論的理解とトレーニングの復習などの目的に,各段階での内容の実習レポートを作成し,提出をさせ必ず1例ごとの反省会を行う。操作の目標も(1)送脱血バランス,(2)離脱技術,更に機会があれば重症例や特殊症例などにも段階を踏んで取り組んでもらう。年間でのトレーニング者数は平均2名で,全トレーニング期間平均9.3ヶ月,初回操作までに4.2ヶ月,操作症例数は34.5例で,疾患別では先天性4.1例,弁10.2例,虚血性15.6例,大血管2.8例,その他の疾患0.6例だった。これらトレーニング者の症例は全体から占める割合でも12%。トレーニング間では月37%であった。
  • ―製品不良の早期発見のために―
    森田 高志, 北脇 丈博, 石井 正晃, 本田 博一, 見目 恭一, 許 俊鋭
    2004 年31 巻4 号 p. 485-487
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    【要旨】医療の安全管理意識が向上しているが,人工心肺領域においては製品不良や製品回収は少なくない。過去2年間(平成14年3月~平成16年4月)の製品不良7製品の経験から,製品不良を早期に発見し,製品不良発生時や製品回収時にも慌てないための対応について検討した。製品不良の7製品は臨床使用中に不良が発見されたもの3製品,使用前に不良が発見されたもの1製品,メーカー連絡により事前に製品回収または供給停止されたもの3製品であった。使用前に製品不良が発見された場合,代替品で対応できたが,人工肺の血液漏れについては使用前に製品不良を発見できず,体外循環中に多量の血液漏れが発生し,緊急離脱という状況になった。製品不良発生時や製品回収時にも慌てない対応をするには,日頃から安全意識を持ち,使用前に製品不良を発見することが最も重要であり,その他には製品の選定時にも配慮する必要がある。更に,製品不良発生時に代替ができるよう主要製品を数種類,準備することも重要と考える。
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