人工心肺症例では大量のヘパリンを用い、プロタミンで中和する。様々な要因で術後は出血傾向となるが、その一因にヘパリンリバウンドがある。そこで、当院におけるヘパリンリバウンドの現状を把握し、影響を与える因子、ヘパリンリバウンド検出方法、再中和時のプロタミン投与基準について検討を行った。
人工心肺下心臓大血管手術の50例を対象とし、中和2時間後のヘパリンリバウンドの有無を確認した。ヘパリンリバウンドの有無で群分けし、患者基本パラメータ、術中パラメータ、血液凝固関連パラメータについて比較した。
22%でヘパリンリバウンドを認め、ヘパリン濃度は0.7U/mL(0.5mg/kg)であった。予想血液量、総ヘパリン投与量/体重、術前Hct、術前PT-INR、中和2時間後ACT、感受性スロープ、中和2時間後のROTEM CT値、INTEMのCFT、⊿CTで有意差を認めた。ヘパリンリバウンドの⊿CTのカットオフ値は48秒であった。
理論上は確実に中和したにもかかわらず、22%でヘパリンリバウンドを認めた。影響を与える因子として体重当たりの総ヘパリン投与量が考えられた。
St.ThomasⅡcrystalloid cardioplegia(CCP)を用いた長時間間隔の心筋保護の安全性は確立されていない。本研究は低侵襲僧帽弁手術を受ける患者を対象にSt.ThomasⅡCCPを60分間間隔で投与した場合の安全性を、blood cardioplegia(BCP)と比較して評価した。低侵襲僧帽弁手術を行った症例97件を対象とした。BCP 30分間隔(B群)とCCP 60分間隔(C群)に分け、propensity score matching(PSM)にて交絡因子の調整を行い、術後のCK-MBを比較検討した。Max.CK-MBはB群:58U/L vs. C群:37U/L(p=0.168)と両群間に有意差はなかった。St.ThomasⅡCCPは、60分の投与間隔でもBCPと同等の心筋保護効果が得られる可能性が示唆された。