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川崎臨海地区を対象として
荻原 暁彦, 村木 美貴
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
891-898
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
我が国は2050年に向けてゼロ・カーボンを達成する目標を掲げており、産業界を含むあらゆる分野でその実現が求められている。 再生可能エネルギーの導入、省エネルギー、カーボン・ニュートラル化が推進されており、都市再生の段階ではエネルギー関連設備の整備が不可欠である。本研究では、エネルギー関連設備の具体的な導入量や、脱炭素対策の導入とそのコストのバランスを明らかにした。結論として、土地利用の変化を契機とした環境・水素対策の重要性が明らかになった。また、事業性を確保するために、水素燃料の価格変動に合わせた施策展開の必要性が明らかになった。
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小林 泰輝, 室岡 太一, 谷口 守
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
899-905
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
人々の働く場所が従来のオフィスから他の場所へと変化しつつある中で、フレキシブルオフィス(賃貸借契約を行わず他利用者と共有して使用するオフィス、以下FO)の施設数は急激に増加している。今後の働く場所を考える上で、FOの実態と影響を捉えることが必要である。本研究では、就業者がFOを利用する要因と利用意向を保持する要因を調査した。その結果、1)FOは現在カフェなどで作業を実施している人によく利用されている、2)今後、地方圏でFOの利用が広がる可能性がある、3)事務的職業従事者や非裁量労働者はFOの利用意向を持つが利用できていない場合が多いことが明らかになった。
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自称認知度の高い市民に着目して
稲垣 航大, 小林 泰輝, 谷口 守
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
906-912
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
コンパクトシティの実現には,コンパクトシティ政策に対する市民の認知と同意が必要である.一方で市民の政策認知や政策への賛否に影響を与える要因は,未だ明らかにされていない.そこで本研究では,独自のアンケート調査をもとに市民のコンパクトシティ政策に対する政策認知と賛否の関係性,および政策認知のほかに個人属性等が賛否に与える影響について分析した.分析の結果,1)コンパクトシティ政策に対する市民の賛否には,政策認知の状況が影響していること,2)政策内容に対して誤認が全くなく、かつ政策影響を適切に認知している市民はそもそも少ない,3)職種,世帯構成,都市類型もコンパクトシティ政策に対する市民の賛否に影響を与えている要因であることが明らかになった.
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薄 雪晴, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 海野 遥香, 鈴木 雄
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
913-920
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
モータリゼーションの進展、人口減少・高齢化により、多くの都市が空洞化している。各都市は、少子高齢化に対応し、快適な生活空間の実現に努めている。賑わいあふれる地域社会を目指しているために、既往研究では、商業や歩行者空間の整備に着目した研究が多い.しかし、公共施設に関する分析は十分ではない。そして、従来の因果分析手法は、未観測共通原因がないことを前提としている。この前提が満たされないと、因果関係の推定にはバイアスがある。そこで、本研究では、首都圏の市を対象に、居住・行政・交通・商業の4つの拠点を中心に,徒歩圏における各公共施設の立地状況を評価し、未観測共通原因がある場合に、公共施設の立地とまちの賑わいとの因果関係を明らかにした。
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帝都復興計画から首都圏整備法改正まで
村上 善明, 秋田 典子
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
921-928
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
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1930~60年代、わが国の大都市圏では、都市の成長抑制を目的とした緑地帯計画がたびたび策定され、首都圏では東京における「環状緑地帯計画」が知られている。本研究は、当時、東京と同様の人口増加に直面していた、横浜市域における緑地帯計画の変遷と、東京の環状緑地帯計画との関係性や調整の過程と成果を明らかにすることを目的とするものである。 研究の結果、横浜における緑地帯計画は、当初、東京の環状緑地帯の拡張として策定されたが、その後、横浜市が独自の計画に発展させていたことが明らかとなった。また、首都圏基本計画が横浜市に持ち込まれた際は、横浜市の計画と首都圏基本計画で調整が行われ、調整の成果として両者の合意に基づく緑地計画が構想されていたことが明らかとなった。
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旧外国人居留地内の土地所有と土地利用に着目して
白川 葉子
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
929-936
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
旧外国人居留地であった横浜市中区山手町は、1923年関東大震災でほとんどの建物が焼失したが、再び住宅地として復活した。本研究では、山手町の震災復興期の住宅建設に関して、 住宅建設地の土地所有と土地利用に着目し、都市構造形成過程の一端を明らかにする。 山手町における復興期の土地所有は土地所有権、横浜市市有地、永代借地権の3つが存在し、 土地利用は土地の分割について6つの類型が存在した。 土地所有者はどの所有権にも関わらず、土地を分割せず、または分割して、より多くの住宅を建てて外国人や日本人に供給した。
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空間の保存プロセスに着目して
筈谷 友紀子, 阿部 大輔
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
937-944
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、悲劇の遺産の保存プロセスを明らかにし、様々な主体による悲劇の記憶の継承活動の展開を整理した。悲劇の遺産の保存にあたっては、その過程で一元化できない両義的で多様な空間への評価や解釈が関係主体によって導かれ前景化される。また、悲劇の記憶の継承においては“よすが”としての空間が希求される。保存された空間は観光や訪問学習という手法を通じて、地域を超えた悲劇の記憶の継承を可能とし、将来に渡って議論を喚起する可能性を残す。
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コンパクトで用途混合型の持続可能な都市発展にむけたドイツの都市計画制度の現実と課題
太田 尚孝, 新保 奈穂美
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
945-952
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
コンパクトで用途混合型市街地は持続可能な都市発展を導き、国内外で都市計画論のメインストリームとなっている。本研究では、ドイツの建築利用令を事例に包括的な文献調査に基づき、以下の4点を明らかにした。1)ドイツでも理想と現実の間でのギャップが存在し、計画制度の試行錯誤と議論がみられる。2)ドイツでは建築用途の許容性の拡大と建築密度の緩和が一貫して進んでいる。3)農村空間での用途混合は都市部とは異なった課題に直面している。4)ライプツィヒ憲章の実践には政治的リーダーシップが欠かせない。
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山本 真里奈, 阿久井 康平, 下村 泰彦
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
953-960
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では,まちなか広場における構想期,計画・設計期,運営期の一連の展開プロセスの活動内容とその体制の実態解明することを通じて、継続的な運営のあり方の知見を得ることを目的とした。まず,全国56事例のまちなか広場から,立地特性・空間特性・運営体制を把握した。次に3事例を抽出し,展開プロセスの実態を分析した。次に,あかし市民広場は初動期,IBALABは発展期,グランドプラザは成熟期と位置づけた。発展の可能性を有するIBALABを詳細に分析した。結論として, IBALABは展開プロセスに市民参画が取り入れられている点を示した。成熟期への移行のために,自主財源による活動の継続性の確保,主要団体の集約による運営の可能性などを示した。
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森本 果歩, 中川 嵩章, 真田 純子
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
961-968
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
路線的商業地域は、戦前期に行われたほとんどの都市計画で採用されたが、計画意図や指定後の土地利用変化は明らかになっていない。この研究は、道路の規模や沿道の土地利用といった特徴からみた計画意図の変遷と,指定後の土地利用変化を把握し,戦前期の東京都市計画における路線的商業地域の性質を明らかにすることを目的とする。東京都市計画の指定の状況と指定時の議論を分析すると、戦前期では、路線的商業地域は主に住居地域内で使われていた。①計画街路の商業発展を補助する ②計画街路が完成するまでの間、既に商業発展している路線を代替商業中心地にする ③商業地を路線的に連続させる 上記の3つの計画意図がみられ、沿道の用途面と体裁面が考えられていた。指定後の沿道の土地利用変化をみると、効果がみられた路線もあればそうでない路線もあるが、都市を商業的に発展させる手段としての汎用性があったことが,戦前期に全国的に広まった理由と考えられる。
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和歌山県新宮市の木材産業を事例として
小田 裕平, 中野 茂夫
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
969-976
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、新宮市の木材産業を事例として、在来産業が都市空間の変容に与えた影響を明らかにすることを目的とする。本研究は、1 つの個別事例にすぎないが、とくに木材産業において重要であった「流通」の変遷に着目することで、他地域との比較の視座が得られることが期待される。具体的には、Ⅰ.水運最盛期(大正2年以前)、Ⅱ.鉄道輸送期(大正2年〜昭和20年)、Ⅲ.戦災震災復興期(昭和20年〜昭和35年)、Ⅳ.陸上輸送台頭期(昭和35年以降)に区分し、それぞれ木材産業の推移と都市空間の変容との関係性について検討を行った。研究の結果、それぞれの時期で都市形成過程に大きく違いがあり、特に輸送体系の変化と産業基盤の整備が大きく関わっていることがわかった。
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人口減少過程にある大都市圏:関西都市圏下のニュータウンを対象に
青木 嵩
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
977-983
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
我が国の郊外住宅地は、開発から数十年が経過しており世代交代の時期に差し掛かる。また社会状況の変化から、働き方の多様化や主要産業の変化も起きている。本稿では、現代の郊外住宅地は、開発当初と異なり居住者の従事する産業に基づく住宅地間の分化が起きていると仮説立てた。そして本仮説を検証することで画一的な郊外論ではなく、個々の住宅地に適した再生論を検討する視座を得ることを目的とする。人口減少が進む関西都市圏下の郊外住宅地を対象に、2000年、2010年、2020年時点の居住者の主たる従事産業を把握し類型化を行った。そのうえで各類型の空間特性と居住者構造の変化を整理している。その結果、現代では、従事する産業に基づく郊外の分化が起きている一方で、一部の住宅地では多様な産業を包摂する傾向が伺えた。また郊外のダウングレード/デグレードの傾向も確認された。こうした知見より、郊外住宅地の再生を考える際には新しい雇用や若い世代の流入を促進する必要がある反面,産業の多様性の内包と独自性の強化のどちらのベクトルに進むか個々の住宅地での検討が必要となり得る。
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吉田 萌花, 姥浦 道生, 荒木 笙子
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
984-991
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、秋田県横手市と青森県おいらせ町を対象に、農地や自然環境が広がる地域における無秩序な宅地化の抑制を意図し、住宅を制限する特定用途制限地域を導入できた背景・要因及びその効果を明らかにし、特定用途制限地域のコンパクトシティ実現に向けた白地地域における居住誘導手法としての可能性を示すことを目的とする。対象自治体の担当者へのヒアリング調査および資料・文献調査より、ある程度市街化を許容する特定用途制限地域区分(既存集落型)や特例措置を設定することで住民や開発業者の不満を抑え、農地や自然環境が広がる地域に指定した特定用途制限地域区分(保全型)の制限を確実にしていることが、導入が可能となった要因であると考察した。また横手市における特定用途制限地域の見直し前後3年間の分譲住宅及び建売住宅の立地件数、宅地開発許可件数を、GISを用いて整理した結果、用途地域・既存集落型での立地件数が増加傾向にある一方、保全型での立地件数は大きく変わらず、制限見直し後は用途地域や既存集落型でのみ開発があるという居住誘導効果があった。
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五島 寧
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
992-999
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
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台北市区改築(1912)は,一定の建築様式が連続する中心市街地を創出したことで知られる。本研究は,その改築について,関係主体と事業スキーム,既存の建築法規との関係,主要な利害関係者の負担についての分析を踏まえ,事業を成功させた要因を考察した。制度面での台北市区改築は,台湾総督府・台湾銀行・台湾土地建物株式会社・沿道権利者の民事契約であった。植民地黎明期の環境が,各利害関係者の経済的なリスクの少ない資金スキームをもたらした。
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社会実験・御堂筋チャレンジ2022を対象として
遠藤 真仁, 嘉名 光市, 高木 悠里
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1000-1007
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、道路空間に設置した滞留スポット設置前後の滞留行動の変化を把握し、また滞留者数の違いによる滞留行動の変化を把握することを目的とする。本研究では、大阪・御堂筋における社会実験「御堂筋チャレンジ2022」を対象として滞留行動調査を実施した。調査の結果、以下が確認された。(1)社会実験前と社会実験期間中を比較すると、滞留者数は増加し、座具周辺に滞留が集中する。(2)社会実験期間中で見られたアクティビティは社会実験前と比較して多様化する。(3)社会実験期間中の滞留時間は社会実験前と比較して長くなる。(4) 滞留者数の違いにより、滞留行動は変化する。以上から、通行量の変化が大きい御堂筋で設置されたベンチは通行量の変動に対して対応できていることが確認された。
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生活道路における人優先の道環境づくりを目指して
中川 晴賀, 薬袋 奈美子, 三寺 潤, 三村 泰広
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1008-1015
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、生活道路を人優先空間にするための新しい法定外標識(路面装飾)のデザインを実験的に検証し、ドライバーの安全確認に与える影響を視行動の分析から明らかにすることを目的とした。<br />まず、被験者の路面装飾設置有無別走行映像視聴時の視行動計測し、より適正な路面装飾デザイン・設置場所を選定した。<br />次に、大学構内に設定した実験環境にて実施した車両走行実験で、被験者の路面装飾有無別の視行動や車両挙動、運転意識を調査した。この実験から、1)路面装飾の有無は、危険な場所でのドライバーの空間認識や総注視時間に影響しないこと、2)路面装飾がドライバーの走行速度を抑制すること、3)ドライバーの注意意識を高めることが明らかになった。
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西日本の簡易委託駅28駅を事例として
石原 凌河, 田浦 亘, 池上 将史, 小味渕 悠希, 寺西 亮太
原稿種別: 論説・報告
2023 年58 巻3 号 p.
1016-1023
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本稿では、西日本にある簡易委託駅計28駅を事例として、外部団体による鉄道駅の管理と契約の実態について明らかにした。調査対象である簡易委託駅のうち、切符の販売業務を委託している団体を業種ごとに分類したところ、「基礎自治体直接雇用型」、「観光協会型」、「個人商店型」、「市民団体型」、「第三セクター型」、「交通事業者型」の6種類に分類することができ、鉄道事業者とは異なる多様な外部団体が鉄道駅の業務を担っている実態が明らかとなった。 <br />多様な団体が簡易委託駅の委託先となっているものの、鉄道駅の土地・建物は基礎自治体が所有したり、基礎自治体が駅舎の管理や切符の販売業務を外部団体への委託を働きかけたりするなど、鉄道駅の簡易委託化に関しては基礎自治体の役割が大きいことが確認できた。<br />以上の結果を踏まえて、分類ごとの鉄道駅の管理・委託の詳細と特徴を明らかにしながら、それぞれの団体に分類される要因と外部団体への委託に対して期待される効果と外部団体に鉄道駅の管理を委託する上での基礎自治体の役割について考察した。
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佐賀市中心市街地を含む市街化区域を対象として
猪八重 拓郎
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1024-1031
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究の目的は,佐賀市の中心市街地を含む市街化区域を対象として,市街地の変容と街路網構造の関係性を明らかにすることである.本研究ではまず建物用途別の建築面積,土地利用,人口,事業所数,従業者数の観点から概ね2000年から2018年の期間における市街地の変容について分析し,6つの変容のタイプが存在することを明らかにした.さらに街路網構造についてスペース・シンタックス理論とマルチプル・セントラリティ・アセスメントを用いて分析し,インテグレーション値,近接性,直線性,媒介性の類似性と相違性を明らかにした.最終的に市街地の発展と衰退に寄与する要因について相関分析及び判別分析を用いることにより明らかにした.結論としては,近接性の800m圏域が市街地の発展と関係性が深いこと,及びグローバルインテグレーション値が市街地の衰退と関係が深いことを明らかにした.
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丸尾 大樹, 氏原 岳人, 樋口 輝久, 安藤 亮介
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1032-1039
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
近年,わが国では歩行者中心の街路再編がいくつか実施されている.本研究では道路空間の再配分が実施された通りでの来訪者の滞在行動とその規定要因の関係を実践的かつ網羅的に把握することを目的とした.国内3つの事例を対象として,沿道調査,アクティビティ調査を主とした実地調査,およびアンケート調査により滞在行動とその規定要因を網羅的に調査し,両者の関係を統計的に分析した.結果として,アクティビティ量の増加には沿道施設を下地とした空間利用が必要であること,通りの魅力の増加には,雰囲気や店舗への評価の向上や,歩行・滞在環境に関する要素が影響すること,通りの魅力は消費金額や立ち寄り店舗数に影響することなどが明らかになった.
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小西 秀明, 松中 亮治, 大庭 哲治, 田中 皓介, 宇野 伸宏
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1040-1047
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
日本の地方都市では,公共交通の利用が低迷し,公共交通事業者の経営の悪化が進んでいる.このような状況では,公共交通のサービス水準が低下し,交通弱者が増加すると考えられる.これらの問題を解決する手段として,共有型自動運転車両(SAV)の導入が考えられるが,SAVの導入には,公共交通の補完や交通弱者の移動手段確保などのメリットがある一方,居住地の拡散や公共交通の利用減少などのデメリットもあると考えられる. <br />本研究では,都市内交通シミュレーションと土地利用交通モデルを用いて,地方都市にSAVを導入した場合の都市構造の変化と社会的便益を定量的に評価した.また,導入後の運用や対策として,SAVと既存公共交通の乗換およびSAVの運賃体系を考慮したシナリオ分析を行った.その結果,SAVを導入したすべてのシナリオにおいて社会的便益が正となり,SAVの導入に一定の社会的意義が示唆されること,SAVと公共交通の乗換を実施し,短距離においてSAV運賃を低く設定した場合に,居住地の拡散が抑えられ,公共交通事業者の収益が増加し,社会的便益が最も大きくなることを示した.
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圖師 礼菜, 森本 章倫
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1048-1055
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
近年のコロナウイルスの蔓延により,アバターを介した多人数参加型の仮想空間であるメタバースの利用への注目が高まっている.メタバースは,従来のオンラインサービスを複合した機能を有するほか,空間内での自由な行動を可能とし,サイバー空間上へ生活空間を拡大すると言える.本研究ではメタバースについての概念整理を行うことで,メタバース上への生活空間の拡大について検討したほか,都市計画へのメタバースの活用についても考察を行った.さらに,生活行動のひとつである買い物行動に着目したアンケート調査を実施し,メタバースの利用意向及び外出行動の変化意識についても把握した.以上より,メタバースは買い物を目的とした外出の代替となり,外出行動が減少する可能性を示唆した.
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梶原 徳剛, 室町 泰徳
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1056-1062
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、BEV購入者を対象としたWEBアンケート調査を実施し、SP選択実験などからBEV購入要因の抽出を試みている。その結果、BEV購入者と非BEV購入者とでは加速が良い、ガソリン代と比較して電気代安いが関東地方と寒冷地方で、エネルギー消費量少ないが寒冷地方で認識の相違が有意となっており、いずれの項目も非BEV購入者の認識を改めることでBEV購入促進を図ることができる可能性が示唆された。SP選択実験からは、ガソリン代と比較して電気代安い、技術の興味が強いが全サンプルモデルとBEV購入者と非BEV購入者別モデルのBEV購入者、非BEV購入者で有意となり、これらがBEV購入に関わらず共通した認識となっていることが示された。一方、BEV購入者と非BEV購入者別モデルにおいて、急速充電スタンド少ないはBEV購入者に対して正、CO<sub>2</sub>排出量少ないは非BEV購入者に対して正の有意な係数が得られた。
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井桁 由貴, 出口 敦
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1063-1070
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
近年、世界的に健康、環境等の観点からウォーカブルシティが注目されている。日本では、2019年に「ウォーカブル推進都市」が提唱され、参加自治体は年々増加している。先進的な自治体では独自にウォーカブル実行計画を策定しているが、事業や活動に繋がった例は多くない。本稿では、英国グレーターロンドンにおけるMayor's transport Strategyに着目し、ウォーカブル戦略を実行するための仕組みを明らかにすることを目的とした。その結果、法制度に基づくロンドン市長、ロンドン交通局、ロンドン特別区の組織体制と、データを活用したEBPMの循環型の実行プロセスが、ウォーカブル戦略実行の主な要因であることが明らかになった。
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日本の交通影響評価への知見についての一考察
福本 大輔, 青野 貞康, 菊池 雅彦, 久保田 尚
原稿種別: 論説・報告
2023 年58 巻3 号 p.
1071-1077
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、日本と韓国における交通影響評価制度の特徴を整理、比較することで、それぞれの利点や問題点について考察し、日本の課題に対応するための知見を得ることを目的としている。 <br />韓国の交通影響評価は都市交通整備促進法に基づいて実施されており、様々な先進的な取組みが行われている。特に、日本の課題となっている「最新の発生集中交通量データの取得と蓄積」や「様々な種類の開発に伴う交通の算出方法」、「開発による周辺交通への影響度に応じた対策と費用負担」等に対して、我が国においても参考となる韓国の制度の知見を得ることできた。併せて、これらの制度を日本に適用する際の留意点を整理することができた。<br />今後の課題として、これらの留意点について、韓国における運用をより詳細に把握するとともに、適用にあたっての改善策を検討していくことが挙げられる。
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山形県鶴岡市中心部の市街化区域を事例として
佐藤 康一
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1078-1085
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、人口減少社会において、一定のエリアに人口密度を維持することにより、生活サービスを持続的に確保する動きに対して、人口密度に拠らない都市機能の配置を誘導する用途地域の視点から、商業施設、医療施設、教育施設、児童福祉施設、官公庁施設、文化施設、公園施設の立地状況を分析し、市街化区域の利便性と快適性を明らかにすることを目的とした。利便性については、用途地域又は路線型用途地域により施設が誘導されたという仮定の下、市街化区域の施設の徒歩圏カバー率で捉えた。また、快適性については、各用途地域が目的としている「環境の保護」「利便の増進」の視点で、施設の立地誘導との関係から定量的又は定性的に捉えた。商業施設では、近隣的店舗の徒歩圏カバー率が75.5~90.2%、商業施設以外では、医療施設、教育施設、児童福祉施設が71.6~96.3%と高い値を示し、利便性が高いことを明らかにした。各用途地域において、高い誘導性を示した施設を基に、住居専用系、住居系用途地域では環境の保護の視点で、商業系用途地域では利便の増進の視点で、快適性が確保されていることを明らかにした。
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岡山県岡山市居住者を対象として
大畑 友紀, 氏原 岳人
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1086-1092
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
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本研究では,岡山市居住者を対象として,地方都市での人間関係と居住地の特性との関連性を分析した.1)人間関係の親密度は性別や年代だけでなく,ライフステージによる差異がある.2)人間関係の親密度は居住地の特性によって異なり,職場や学校でのつきあいは中心部に近いほど深く,家族や近所のつきあいは中心部から遠いほど深い.3)転居により居住地の特性が変化することによって家族との親密度が即時に変化するものではなく,家族構成が要因である可能性が高い.
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千波湖借景と樹木成長との関係を対象に
任 伊晗, 石井 儀光, 大澤 義明
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1093-1100
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
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借景は古くからよく用いられている日本庭園の造園手法の一つである。しかし、高度経済成長に伴う周辺地域の開発により、借景が失われてしまう場合もある。偕楽園では、江戸時代から千波湖借景が造園思想の中心に据えられてきた。近年、樹木の成長により、偕楽園から千波湖が見えづらくなっている。そのため、偕楽園を管理する茨城県は伐採など積極的な緑地管理を計画している。本研究では、樹木の成長が借景に与える影響を分析するため、俯瞰景モデルを構築し、可視水面の立体角とアスペクト比を算出して水面借景を定量的に分析する。
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川辺 怜, 大澤 義明
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1101-1108
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究の目的は,全国の上水道事業体を対象に単純なモデルを通して水道管路の更新時期を数値化し,維持管理負担を削減する管路縮減について,実際の管路網データを用いて計量的に検討することにある.最初に,全国の1,388上水道事業体についての情報を網羅する水道統計データを用い,マルコフ連鎖モデルやワイブル分布を駆使し,現状の管路網を維持する前提で管路更新の時期を予測し地域間比較する.次に,上水道管路の地理的配置と経年情報を用いたネットワーク分析を通して,管路縮減を見据えた考察を行う.
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阿部 くらん, 藤巻 米隆, 小西 弘樹, 宇佐美 朋香, 大澤 義明
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1109-1116
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
国土交通省の平成26年度調査によると,空き家の半数以上が相続によって発生しているという.深刻化する空き家問題に対処するため,本稿では相続データを体系的に整理し,日本国内で相続がどの程度空き家を発生させているかを空間的に分析することを目的とする.まず,潜在的な空き家の発生率と,全国の空き家調査で示される現在の空き家率の関係を明らかにする.次に,相続属性に関して,クロス分析やロジスティック回帰分析を行い,空き家を発生させやすい相続と建物の特性を把握する.
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塩野 直志, 鵜飼 孝盛
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1117-1123
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
放射・環状路からなる都市での通勤において,右折禁止が導入されると,通勤時に住居から職場,職場から住居のいずれかの距離が増えることがある.そこで,本研究では稠密な放射・環状型交通網からなる円盤都市において右折制限が設けられた場合の移動距離,流動量の変化に関して分析を行った.右折制限による二通りの大回り経路を考え,距離分布および流動量を求めることで小回り経路と比較を行うとともに,大回り経路と小回り経路の差の分布を求めた.その結果,大回り経路の前提次第で,距離分布が大きく変わる点,二通りの大回り経路を効果的に組み合わせることで距離の増分を抑制できることを確認できた.
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高速道路のサービスエリアの集客数推定への応用
栗田 治
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1124-1131
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、消費者がロードサイドの店舗に立ち寄る際の確率的な挙動について,介在機会モデルを用いて考察する. このモデルを用いて,複数の施設配置の条件下で,顧客の立ち寄り数の和を最大化する数理計画問題を定式化した. トリップ密度が一様な場合,最適な施設配置においては,各施設の間隔が相互に等しく,かつ各施設の立ち寄り客数の期待値も一律となる,という著しい特長が発見された. 次に,このモデルを高速道路上のサービスエリアやパーキングエリアへの自動車の立ち寄り数について記述するために適用した.このモデルの有効性は,本研究の実際のデータによって実証された.
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徒歩および自動車によるアクセスに着目して
山田 育穂
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1132-1139
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究の目的は、救急搬送等ではない日常生活における外来医療への空間的なアクセシビリティを詳細な空間スケールで評価して、その空間分布の特性をアクセスに用いる交通手段や人口、産業集積などの地域属性と関連付けながら明らかにすることである。本研究では受療の多い8つの診療科に着目し、東京都郊外の南多摩医療圏を対象地域として、アクセス可能性の有無に留まらず、診療科の充実度や複数医療機関からの選択可能性など、住環境要素としての医療アクセシビリティを複数の観点から評価した。 その結果、対象地域においては、自動車が利用可能であれば、居住地や診療科によらずアクセシビリティが十分に高く、多くの医療機関の中から受療先を選択できる状況である反面、交通手段が徒歩に限定されると、アクセシビリティの高い地域は鉄道駅周辺などに集中し地域格差が大きいことが明らかになった。
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増橋 佳菜, 羽藤 英二
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1140-1147
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
回遊行動がまちに生み出す賑わいが重視されるとともに,位置観測技術及び歩行者行動モデルの発展に伴って,都市空間改変が歩行者行動にもたらす影響の評価に対する関心が高まっている.同時に,COVID-19の流行など歩行者行動規範を変容させうる様々な要因が同時並行で存在する.このように都市空間改変と行動変化の因果構造が複雑化する中,相関関係の提示に留まる従前の評価手法はもはや限界といえる.本研究では,大規模再開発が進行する渋谷を対象として,大規模空間改変の前後にあたる2時点の長期観測位置データをメッシュ単位に集約化した上で,サンプリングの工夫により因果推論の枠組みに従って分析した.因果推論のアプローチを空間行動分析の方法論に導入しただけでなく,渋谷という実際の都市に提案手法を適用することで,渋谷における再開発が回遊機会を激減させ,時間消費を減少させた上,多様な活動パターンを時間的にも空間的にも喪失させていることを明らかにした.
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長井 香南, 伊藤 史子
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1148-1155
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
携帯情報端末は数十年の間に急速な進歩を遂げ、ここ数年ではスマートフォンの所持が一般的になってきた。それに伴い「歩きスマホ」という言葉が生まれ、歩行中のスマートフォンの利用は危険であるという議論もなされている。2010年代に登場したARゲームアプリは、ゲーム上の仮想都市を見ながら実際の都市を移動できる。本研究では、スマートフォンのアプリケーションの中でもARゲームに着目し、通常の歩行と比較して歩行者の歩行行動や空間認知にどのような特徴があるのかを明らかにすることを目的とする。歩行時の視線の動きや立ち止まり行動、直後の空間認知に関するデータを取得するため歩行実験を実施し、得られたデータをもとに歩行行動と空間認知それぞれの分析を行った。その結果、ARゲームの利用によって実空間を見る時間が低下し、空間認知を都市の場面記憶と捉えれば低下させる可能性があるが、都市空間構造の把握と考えれば、ARゲームの利用は影響がない可能性があることが示唆された。
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根本 侑弥, 羽佐田 紘之, 伊藤 真利子, 長橋 陽介, 岩瀬 義和, 本間 裕大
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1156-1163
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
インターネットやSNS等の情報技術の発展に伴い,観光客は自らの好みに合わせ様々なスポットを訪れるようになってきている.観光において,万人受けする人気観光スポットよりも穴場観光スポットを好む観光客も少なくない.より個別の訪問者の差異を考慮し得るデータと手法による観光分析が,求められている.そこで本研究では,モバイル位置情報データから取得した実際の観光客の観光スポットの訪問履歴に基づき,相性の良い観光スポットと訪問者とを同時にクラスタリングする新たなる手法を提案する.クラスター同士の重複も考慮した二部グラフのクラスタリング手法として定式化し,実際に山形県における観光データへと適用する.さらに,得られた分析結果から個人的な「穴場」観光スポットを抽出するための議論へと展開する.
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米田 有希, 雨宮 護
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1164-1170
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
COVID-19流行前後の人々の日常活動の変化パターンを把握することは、ポストコロナ時代のまちづくりを考える上で重要である。本研究では、2017年から2021年の各4月にスマートフォンアプリから取得したGPSデータ(n=1,492,332人日)をもとに、茨城県における人々の日常活動の実態を把握するために、人々のアクティビティスペースとして重み付き信頼楕円を測定した。さらに、滞在場所と土地利用との関係についても検討した。すべてのアクティビティスペースを面積、離心率、滞在時間のばらつきの3つの指標でクラスタリングしたところ、同じCOVID-19パンデミック下の2020年と2021年でも、人々の外出量、滞在時間、滞在場所の空間的広がりが大きく異なることが明らかになった。
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UR団地の周辺地域における延床面積・地価・人口密度に着目して
伊藤 斉, 岡田 潤, 新山 雅人, 出口 敦
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1171-1178
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、首都圏におけるUR団地を対象に、敷地移譲を伴う団地再生の実態を分析するとともに、その団地再生が周辺地域にもたらす影響を、延床面積・地価・人口密度を指標として評価し、整備敷地の用途との関係の観点から、その傾向を明らかにした。団地再生にあわせて整備敷地に整備される用途は、住宅や福祉施設など多様であるが、特に従前管理戸数が多い団地では、商業施設と病院が整備されることが多い。大規模な敷地移譲を伴う団地再生が周辺の建物更新に影響を与えた圏域は、整備敷地の用途に関わらず、団地の敷地から400m圏内に限られていた。また、商業施設を整備敷地に含まない団地再生を行った団地では、相対的な地価が減少する傾向にある一方で、周辺地域の人口密度が増加傾向にあり、商業施設を整備敷地に含む団地再生を行った団地の多くでは、人口密度が維持・減少傾向にあることが明らかとなった。
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大阪府住宅供給公社 茶山台団地を対象に
中川 健太, 伊丹 絵美子
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1179-1186
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
日本のニュータウンにある多くの公的賃貸住宅(以下、団地という)で様々な課題が顕在化する中、既存ストックを活用した団地再生は有効な解決手法の一つであると著者らは考えるが、事業の実施主体や資金面等が課題となっていることが文献等で指摘されている。こうしたことを踏まえ、本研究では大阪府住宅供給公社茶山台団地の再生事例をもとに、団地所有者や行政等の公的組織の存在に着目し、ストック活用型の団地再生における事業創発で公的組織が果たしうる役割を明らかにすることを目指した。具体的には、事業創発の実態や公的組織の計画等・施策・具体的支援と創発事業の関係性等について調査・考察を行った。結果として、当該事例では(1)公的組織が事業機会の創出・人的・物的・財政的・情報的役割の5つの役割を担った、特に(2)団地所有者が事業の活動場所の提供や家賃減免等を担った、(3)市町村が庁内関係部局の調整支援等を担った、(4)全ての公的組織が計画等での方向性の提示や関連施策の実施、マッチング機会の提供等を担ったことが明らかとなった。
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瀬川 遥子, 島田 由美子, 藤井 さやか
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1187-1194
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
筑波研究学園都市では、1980年の概成から40年が経ち、国家公務員宿舎の廃止や事業予定地の売却に伴う民間事業者による開発が相次ぎ、住宅地開発が加速している。従前の公務員宿舎地区では、エリア全体に適用される「計画標準」という開発ルールによって、空間デザインの統一や敷地間の連続性が図られ、研究学園都市の空間資源を創出していた。計画標準に代わる誘導策として、2010年より宿舎跡地に「地区計画」が策定されている。本研究ではこの地区計画に着目し、規定内容及び形成された空間の質に対する評価から、地区計画が研究学園都市の空間資源の継承に果たす役割と課題を明らかにすることを目的とする。地区計画作成内容、現地調査、規定項目と実際の開発状況の分析から、現行の地区計画では開発ボリュームの増大はコントロールできていないが、反対に、かきやさくの構成と緑については、一定の誘導効果をあげていることが明らかになった。
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東日本大震災後の宮城県南三陸町における意向調査等に基づいて
米野 史健
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1195-1202
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
災害後の住宅再建は重要な課題である。持家を自力再建出来ない被災者に対しては、地方公共団体によって災害公営住宅が供給される。災害公営住宅の必要戸数を計画するために、被災者の住宅再建意向調査がくりか襟実施される。しかし被災者の意向はその時々の状況に応じて随時変化する。本論文では災害公営住宅への入居意向に着目し、意向の推移や変化の実態について明らかにする。宮城県南三陸町の意向調査の分析より次のようなことが明らかとなった。1)個々の被災者の意向は調査のたびに変化するものであり、調査と調査の間で30%の世帯の入居意向は変化している。2)小規模な無職の世帯の場合に途中で意向が変化しやすい状況がみられる。
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舞鶴市・北九州市・広島県の取り組みの整理と住民意見の分析から
永末 圭佑, 山崎 潤也, 似内 遼一, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1203-1210
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
人口減少や災害の激甚化を背景としたコンパクトシティ政策の一環として、区域区分の変更の活用がいくつかの自治体で行われている。しかしそれらは必ずしも円滑ではなく、住民の反発により大幅縮小をした事例も存在する。そこで本研究では、3つの逆線引き事例について、文献調査や自治体、地域関係者へのインタビューを行い、逆線引きの実施形態や背景の比較と、住民意見の分析を行った。その結果、人口減少・災害リスクに対応した逆線引きは、自治体ごとにさまざまな手法で実施されていること、また住宅地の逆線引きでは資産価値の低下や災害対策のあり方を論点とした反発が生じていることがわかった。住宅地の逆線引きは実施プロセス上の問題点も多いが、しかし住民にとっての避けられないデメリットなどの構造的課題も存在するため、今後は多分野の施策を併用したダウンゾーニングの実践と研究が待たれる。
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茨城県桜川市を事例として
西島 優, 関本 崇志, 有田 智一
原稿種別: 論説・報告
2023 年58 巻3 号 p.
1211-1218
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、地区計画と市独自条例である土地利用基本条例を組み合わせた土地利用調整手法を導入している茨城県桜川市を対象として、同手法の実態と活用可能性を検証するものである。桜川市は広域都市計画区域の末端に属し、市街化区域が5%、市街化調整区域が95%を占めていたが、地域の実情に沿った土地利用規制のため、線引きは維持しつつ地区計画を中心とした計画の見直しがなされた。地区計画の区域内では、集落環境保護の観点から工場の新規立地を原則制限しつつ、既存工業施設ストックの有効活用を図るため、所定の立地調整が調ったものについては、新規立地を許容している。立地調整の仕組みは、土地利用基本条例の手続規定に依存し、同条例に基づき立地調整協議を行うための指針として立地調整指針が策定されている。現段階の運用において大きな問題は生じておらず、地区計画制定前後の開発許可箇所の変遷を見ると導入後は区域内に開発が収まり、一定の開発誘因効果、地区計画のゾーニングの妥当性があることが分かった。よって、上記手法は他市町村でも、社会情勢の変化を背景とした従来は想定しえなかった新しい土地利用に対応する手法になりうると考えられる。
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森垣 隆暉, 近藤 早映
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1219-1225
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
人口減少等を背景に全国で空き家が増加している近年、全国で空き家対策が実施されつつある。こうした中、空き家対策の1つである空き家の発生を未然に抑制する取り組みに関心が高まっている。本研究では、空家等対策計画を改定済みの自治体における空き家の発生抑制策の位置付けと空き家の発生抑制の取り組みの実態を把握し、今後、自治体の特性に合った空き家の発生抑制を実行していく上で有用な知見を得ることを目的とする。以下に研究結果をまとめる。1)第2期空家等対策計画を策定している自治体の多くが、空き家の発生抑制策を盛り込み、同時に具体的な取り組み内容を策定していることが明らかになった。2)自治体主体の空き家の発生抑制の取り組みは主に住民への呼びかけが実施され、民間主体では市民に対しての情報提供が実施されていることが明らかになった。3)人口規模、空き家率、高齢化率、空き家担当部署数の自治体特性に応じた効果的な空き家の発生抑制の取り組みが明らかになった。
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山中 翔太, 松川 寿也, 丸岡 陽
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1226-1233
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究では、市街化区域内の施設を利用する市街化調整区域の駐車場に着目し、2つの特性(現況、土地利用変遷)から問題点を把握することで、今後の開発許可制度のあり方に示唆を与えることを目的とする。その結果、市街化区域内にある利用施設には、その施設整備に合わせて市街化調整区域に駐車場を設置するものもあり、市街化調整区域に駐車場を整備することを前提とした利用施設が存在する。また、土地利用計画(都市計画マスタープラン、立地適正化計画、農振整備計画)に適合しない駐車場立地も確認できる。これらの駐車場の立地は、開発許可制度や区域区分制度にも影響している。従って、市街化区域内施設を利用する市街化調整区域の駐車場を施設と一体不可分な土地として扱い、都市計画法上の開発行為の定義に該当させることが必要と考える。
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谷澤 晃平, 松川 寿也, 丸岡 陽
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1234-1241
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、市街化区域の人口密度が40人/haを下回る都市に着目し、現状の把握及び今後の区域区分制度のあり方を検討することを目的とする。昭和50年、平成7年、平成27年の市街化区域内の人口密度変化により空間特性を把握し、人口密度要件の認識についてヒアリングで把握した。その結果、可住地人口密度で人口密度算出し、都市計画区域全体の市街化区域の人口密度判定により人口密度要件を満たしていること、拡大市街化区域の計画人口と実人口に大きな差があるものの検証等を行っていないことが明らかとなった。従って、市街化区域の現状を的確に捉えないまま人口密度要件が達成されていたことを確認した。市街化区域の区分毎にことなる人口動態や、世帯人員の減少が進んでいることを踏まえて、人口密度要件のみで一律に市街化区域を設定することには限界があることを指摘したい。
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熊倉 拓郎, 松川 寿也, 丸岡 陽
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1242-1249
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、居住誘導区域内に残存農地を含む非線引き都市を対象に、残存農地の特徴を把握し、土地利用方針と農業政策との関係を踏まえた今後の残存農地のあり方について検討することを目的とする。残存農地を連担性や営農環境等の農業的観点と、公共交通や基盤整備区域の都市的観点から評価し、今後の残存農地への施策等をヒアリング調査により把握した。<br />その結果、営農環境の良い状態の大規模残存農地が居住誘導区域に含まれて指定されており、都市的評価が低い大規模残存農地も存在した。従って、都市計画運用指針で定める「新たな開発地」を明確に定義する必要がある。また、これら未転用の大規模残存農地は、居住誘導区域もしくは誘導対象行為から除外すると同時に、目標とする人口密度の算出からも除外する等の検討が必要である。
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山梨県と立地適正化計画策定4自治体を対象として
吉田 隼斗, 岡井 有佳
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1250-1257
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
都道府県により定められる任意の広域マスタープランは都市計画の方針を基礎自治体に示すものである。しかし、その内容は都道府県全体を取り巻く都市の現状と課題及び将来の大まかなビジョンを示すにとどまっており、集約型都市構造の構築や立地適正化計画の運用にまで言及したものは少ない。その中でも特に、山梨県マスタープランは、県内の自治体にコンパクトシティ実現に向けた方針を示し、都市機能や居住の集約を推進している。 <br /> 本研究は、コンパクトシティ形成に向けた山梨県の広域マスタープランの運用と、それが立地適正化計画に与える効果と課題を明らかにする。山梨県は、広域マスタープランにおいて、現状の都市機能の立地状況、交通アクセス、インフラ整備の状況等を考慮して、都市機能と居住を誘導する「拠点」を設定した。基礎自治体は、県全体の統一的な考えの下に都市のコンパクト化へ取り組むことが可能となり、「拠点」に基づいた立地適正化計画の誘導区域の設定を行った。これは、県と基礎自治体の強固な連携により実現されており、その結果、広域マスタープランと立適計画の整合性が担保でき、市町村の負担軽減が実現された。
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中心市街地活性化基本計画に着目して
先崎 智哉, 十代田 朗, 津々見 崇
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1258-1265
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、中心市街地活性化基本計画において、観光振興や賑わい創出と低未利用地がいかに取り扱われてきたか、賑わい創出を目的とした低未利用地の活用のためにいかなる事業が予定・実施されたのか、そして多くの事業が行われた都市およびその事業にはどのような特徴があるのか、を明らかにすることを目的としている。研究の対象は2022年4月現在において認定されている中活計画を有する非3大都市圏の都市のうち、中活計画本体が入手できた123都市である。分析の結果、中活計画では賑わい・観光や低未利用地が多く取り扱われ、いずれの期の計画においてもそれらが取り上げられてきたことを明らかにした。また、低未利用地を活用する事業は【誰でも歓迎型】【まちおこし型】【集客商売型】【生活環境向上型】【イベント特化型】【駐車場特化型】の6つに分類でき、【誰でも歓迎型】が中でも多く近年増加したタイプである。なお、事業の数値目標はあまり達成されていない。3都市の事例からは、積極的な事業の実施にはエリア構想が背景にあり、事業の効果は官民連携や資源連携により生まれることが示唆されたともに、タイプごとに賑わい創出への効果には違いがあることがわかった。
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樋口 駿, 松本 邦彦, 澤木 昌典
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1266-1273
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、狭小地・未接道地や低未利用地の解消の手段である隣地統合を自治体等が費用支援する隣地統合事業に着目した。隣地統合事業の利用実績・事業推進上の課題に加え、本事業の実効性や狭小地の解消等の実態を明らかにすることを目的とした。15自治体等へのアンケート調査の結果から、隣地統合時の建物の除却・建替に関する申請要件が利用件数に関係していることが分かった。また、本事業の役割には、隣地所有者をはじめ地元不動産業者等を通じて潜在的隣地取得意向のある者に対して隣地統合という方法を認知させたり、隣地取得意向を強めることがある。個別事例5件のうち、隣地統合により建築可能な最低敷地面積を満たした例は4件でみられ、うち2件で耐火建築物または準耐火建造物への建替が行われていた。
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市民団体による地域活動の展開に着目して
田中 智朗, 阿部 大輔
原稿種別: 研究論文
2023 年58 巻3 号 p.
1274-1281
発行日: 2023/10/25
公開日: 2023/10/25
ジャーナル
フリー
近年、都市空間の暫定利用は国際的な注目を集めており、人口減少下などの将来の見通しが立ちづらい都市の状況においては、不動産需要に柔軟に対応しながら都市空間の再編を進める有効な手段として認識が高まっている。一方で、一時的な利用という形態が持つ利用後の変化については未だに研究の蓄積が少なく不明瞭な点が多い。<br /> 本研究では、スコットランドのグラスゴー市で実施されている市民による未利用地での暫定利用を支援するプログラムStalled Spacesに着目し、未利用地での一時的な活動がどのように展開されてきたかを明らかにする。<br /> その結果、8割のプロジェクトでは開始時と同じ敷地での活動が継続しており、一時的な利用を前提としているものの、利用期間を延長しながら活動が地域に根付いている様子が伺えた。また、次の利用が決定し立ち退きを余儀なくされたプロジェクトが、近隣の空地での新たな暫定利用を計画していることや、プログラムを通して空地の活用を経験した市民団体が、周辺の別の未利用地を活用したプロジェクトを開始する、といった展開が見られ、市民が主体となって地区の未利用地を連鎖的に改善している実態が明らかとなった。
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