日本小児循環器学会雑誌
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最新号
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巻頭言
Review
  • 犬塚 亮
    2025 年41 巻1 号 p. 3-10
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    Marfan類縁疾患とは,Marfan症候群と類似した症状や特徴を持つ遺伝性結合組織疾患を指し,Marfan症候群とともに遺伝性大動脈疾患(heritable thoracic aortic disease: HTAD)に含有される.近年の遺伝子解析の進歩により,これらの疾患の関連遺伝子が多く明らかになり,診断および重症度分類における遺伝子検査の重要性が増している.Marfan症候群は一生涯にわたって進行する多系統疾患で,遺伝科・循環器科・眼科・整形外科・胸部外科・産科の専門科チームと連携しながら,生涯にわたってフォローをする必要がある.また,年齢によって注意すべき症状が異なる.特に大動脈基部拡張の評価・治療が重要で,内科的・外科的治療の選択肢を踏まえながらフォローする必要がある.また,妊娠リスクに関する理解など,小児期から成人移行を見据えた管理が必要である.

  • 武井 黄太
    2025 年41 巻1 号 p. 11-19
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    胎児心エコーによる胎児心疾患の出生前診断は,これまで形態診断を中心に行われてきたが,近年胎児の心機能評価についての知見も集積されてきており,国内外のガイドラインでも胎児心機能評価についての記載がなされている.一方で,胎児の心機能評価においては,出生後とは異なる胎児循環であること,小さい胎児を母体の腹壁を通して観察しなくてはならず超音波診断装置が進歩した現在でも画質に限界があること,胎位が一定ではなく常に一定の断面が得られるわけではないこと,心電図が利用できないことなどの制約あり,必ずしも出生後と同様の方法を用いて評価することができるわけではない.本稿では,現在胎児心エコーにおいて用いられている胎児心機能評価法について,中心静脈圧上昇の評価,心室収縮機能評価,心室拡張機能評価,心室の統合機能評価,胎児心不全の予後評価,新しい技術を使用した心機能評価の各項目に分けて,簡単な原理もふまえて概説する.

  • 倉岡 彩子
    2025 年41 巻1 号 p. 20-27
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    循環器診療には様々な画像診断が用いられるが,そのなかでリアルタイムに心臓を観察できるのは心エコー検査だけである.救急の現場から診断,治療適応と効果の判定,さらに周術期管理など,どのタイミングでも心エコー検査なくては診療が成立しない.近年では形態診断のみならず機能解析の方法が確立され,その重要度が増している.一方で,疾患や血行動態そのものと心エコー検査の特性を理解していなければ,その有用性を活用できないばかりか治療方針を誤誘導することもある.本稿では,心エコー検査の基礎として超音波の特性を知り機器の適切な設定をすること,基本断面と基本計測を中心とした検査手技を身につけること,成長する小児にとって重要な正常値の定義を確認すること,先天性心疾患と血行動態の知識を身につけそれぞれに応じた検査を行うことについて,日常臨床の視点から概説する.

  • 佐藤 慶介
    2025 年41 巻1 号 p. 28-41
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    磁気共鳴血管撮影(magnetic resonance angiography: MRA)はMR現象を用いて心血管の形態評価を可能とする技術である.被ばくがなく,造影剤も必須ではないものの,撮影時間が長く,空間分解能もやや劣る.また,撮影法も多数ある.そのため,いつ/どのようなMRAを選択するかは悩ましい.本稿前半ではMRAの代表的な撮影法の原理と応用例を解説したうえで,この問題を考察する.磁気共鳴リンパ管撮影(MR lymphangiography: MRL)はMR現象を用いてリンパ管の形態評価を可能とする技術である.静的評価ができ造影剤を使用しない非造影MRL(non-contrast MRL: NCMRL)と,動的評価ができ造影剤を使用する動的造影MRL(dynamic contrast-enhanced MRL: DCMRL)とがあるが,いつ/どちらのMRLを選択するかは悩ましい.本稿後半ではNCMRLとDCMRLについて特徴と応用例を解説したうえで,この問題を考察する.

原著
  • 鈴木 彩代, 石川 友一, 田尾 克生, 倉岡 彩子, 山村 健一郎, 兒玉 祥彦, 林田 真, 中野 俊秀, 佐川 浩一
    2025 年41 巻1 号 p. 42-50
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    背景:内臓錯位症候群・単心室患者の食道裂孔ヘルニア(HH: hiatal hernia)は,単心室循環へ悪影響を及ぼし得るが,このコホートでのHH修復術適応は定まっていない.

    方法:2008年1月から2018年12月に当院で出生した内臓錯位症候群・単心室患者109人の,HH合併,修復術の有無等臨床経過を検討した.

    結果:13例(12%)がHHを合併し,6例にHH手術を施行した.4例は滑脱した胃による肺静脈圧排が疑われ,いずれも滑脱した胃が心房椎体間にあり肺静脈を後方から圧排している形態であった.手術施行例のうち3例が術後十二指腸狭窄を合併,1例はHH手術周術期に死亡した.一方HH手術不要と判断した7例のうち4例はFontan手術に到達し追跡期間中(中央値104.5ヵ月,100–112ヵ月)も無症状であった.

    結論:単心室患者のHH修復術は,特徴的な症状や術後経過を考慮し手術適応を決定するべきである.

症例報告
  • 前田 昂大, 提島 丈雄, 酒井 渉, 小笠原 裕樹, 大野 真由美, 名和 智裕, 澤田 まどか, 高室 基樹
    2025 年41 巻1 号 p. 51-57
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    Avalon Elite® Bi-Caval Dual Lumen Catheter(Avalon DLC)は1本のカニューレでV-V体外式膜型人工肺(Veno-venous extracorporeal membrane oxygenation: V-V ECMO)の送血と脱血が可能なデバイスであるが,先天性心疾患児に対する使用報告はない.症例はCantrell症候群,ファロー四徴症,左上大静脈遺残と診断された生後3か月,体重3.5 kgの男児.臍帯ヘルニア,横隔膜ヘルニアと気管軟化症に対して多期的腹壁閉鎖術,横隔膜縫縮術と気管切開術を施行した.生後3か月時から低酸素血症が顕在化し,心臓MRI検査で肺体血流比=0.4と低肺血流状態であり,Blalock–Taussig shunt手術が必要と判断した.腹壁の術創と気管切開孔が胸骨と近接し術後縦隔炎が懸念されたため,正中切開を選択せず左側開胸での手術を計画した.しかし,術側肺の圧排が更に酸素化を悪化させるため,手術執刀前にV-V ECMOの導入を計画した.静脈の解剖学的特徴から,カニューレを経皮的に挿入できる部位は右内頚静脈のみであった.右内頸静脈からAvalon DLC 13 Frを挿入してV-V ECMOを使用し,良好な酸素化を得た.手術終了時にV-V ECMOを合併症なく離脱することが可能であった.先天性心疾患と多発奇形がある場合,バスキュラーアクセスに制限があることがあり,導入時の選択としてAvalon DLCは一候補になりうる.

  • 浦田 晋, 山口 章, 大西 志麻, 植松 悟子, 金 基成, 小野 博
    2025 年41 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー

    機動衛生ユニットは重篤な傷病者の搬送を行うための患者搬送用コンテナであり,航空自衛隊航空機動衛生隊によって運用されている.通常の航空搬送と違い,起動に際しては都道府県知事による災害派遣要請を必要とする.EXCOR® Pediatricは小児重症心不全患者に用いられる体外設置式補助人工心臓であり,このような重症患者の搬送は短時間で実施されることが好ましく,航空搬送は有用な手段である.しかし,現時点で本邦にはEXCOR装着患者の国内施設間搬送に利用可能な医療用ジェットはなく,今回用いた機動衛生ユニットのみが唯一の手段となっているが,搬送の計画から実施まで時間を要するなどの課題もある.

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