-
池上 奈通子, 中西 友子
p.
439
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
これまでの研究によって演者らは、アサガオ(ムラサキ)の茎頂部においてマグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)濃度が光条件に対応するような日内変動を示すことを見出した。さらに、Mgについては短日処理による花成誘導期に濃度変動の規則性が変化することが明らかとなった。そこで今回、アサガオ茎頂部におけるMgとCaの濃度分布を分析することによって、両元素と花成との関わりについて検討を試みた。分析手法としては、共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光試薬、Mag-fluo-4 AMおよびFluo-3 AMによる染色法と、SEM-EDSによる元素マッピング法を併用した。その結果、Mgは茎頂部の先端付近に高濃度に集積している一方、Caは茎頂部全体にほぼ均一に分布していることが示された。特に染色法によって、Mgの分布パターンは短日処理後に変化する傾向が示されたことから、これまで注目されていなかったMgの花成への関与が推察され、現在も実験を継続中である。
なお、元素の分布解析にあたって、包埋を行なわない凹凸のある試料へのSEM-EDSの応用法も検討したので、合わせて報告する。
抄録全体を表示
-
小埜 栄一郎, 上山 由紀子, 仁田坂 英二, 田中 良和
p.
440
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
アサガオMADS box遺伝子
PEONY(PN)はキンギョソウC機能遺伝子
PLENAと相同性が高く、アサガオのC機能遺伝子と思われる。
PNの機能を明らかにするために
PN過剰発現ペチュニアを作製した。その結果、
PN高発現系統において
blind(ペチュニアA機能遺伝子欠損変異体)と類似するホメオティックな表現型を示したことから、
PNはC機能遺伝子として機能することが分かった。さらに、2nd whorlに形成された雄髄様器官においてアントシアニン生合成の構造遺伝子である
DEHYDROFLAVONOL 4-REDUCTASE (DFR)およびその転写調節因子である
ANTHOCYANIN1(AN1)および
AN2が転写レベルで抑制されていることが分かった。以上の結果と
blindと
green petal (B機能欠損変異体) の解析を通じて、花弁への運命決定から色素合成遺伝子の転写調節へのシグナリングについて議論したい。
抄録全体を表示
-
Naoki Sentoku, Hideki Kato, Hidemi Kitano, Ryozo Imai
p.
441
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
We report the isolation, sequence, and gene expression patterns of RMD1, a novel member of the STMADS11 subfamily from rice. Northern blot analysis revealed that expression pattern of RMD1 is different from that of other members of STMADS11 subfamily reported so far. All the members of STMADS11 subfamily has been reported that their expression is detected in vegetative tissues, but RMD1 is mainly expressed during flower development and embryogenesis. In situ hybridization analysis revealed that RMD1 expression is localized in developing stamen primordia and outermost cell layer in embryos. Over/ectopic expression of RMD1 in transgenic rice plants induced abnormal reproductive growth similar to transgenic tobacco plants expressing STMADS16. These results are discussed in terms of a possible role for RMD1 in promoting similar molecular function to STMADS11-like proteins although their expression patterns quite differ.
抄録全体を表示
-
安彦 真文, 阪田 忠, 高橋 秀幸, 浅水 恵理香, 佐藤 修正, 田畑 哲之, 木原 誠, 伊藤 一敏, 東谷 篤志
p.
442
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
植物の生殖成長過程は、栄養成長過程にくらべ様々な環境ストレスの影響を受け易く、配偶子形成能の低下や消失につながり不稔となる。私達は、生殖成長が比較的良く同調するオオムギ(はるな二条)を用いて、高温障害の研究を行い、雄蕊分化初期が高温に最も感受性が高く、5日間の高温処理(30℃昼/25℃夜)によって、花粉母細胞形成が停止して完全に不稔となることを報告してきた。今回、この高温障害の発生機構についてより詳細に観察したところ、葯内のタペート層細胞、胞原細胞の初期発生・分化が高温ストレスにより阻害されることを見出した。またこれら細胞の増殖に伴って、遺伝子発現が著しく増加するヒストンH3、H4ファミリー遺伝子などが、高温ストレス下では発現上昇がみられないこと、また60S ribosomal protein遺伝子などの発現量も低下することが明らかになった。そこで一般的に、オオムギの細胞分裂・増殖が高温ストレス(30℃)下で低下するのかを調べる目的で、芽生えと2種類のオオムギ培養細胞を用いて高温ストレス下と最適温度下での培養時の成長曲線とヒストン遺伝子の発現についても比較した。その結果、30℃という温度は、栄養成長においては抑制的に働く温度域ではなく、生殖成長時の特にタペート層細胞、胞原細胞の初期発生・分化において特異的に高温障害を生じることが明らかになった。
抄録全体を表示
-
Yasutaka Kakiuchi, Hiroetsu Wabiko
p.
443
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
The
6b gene of
Agrobacterium tumefaciens is tumorigenic in certain plants. We have shown that the gene induces morphological abnormality and phenylpropanoid metabolism in tobacco. To study further these processes, the
6b gene from AKE10 stain was placed under the control of dexamethazone-inducible promoter and introduced to tobacco. Upon induction, the transgenic seedlings showed;
(1) Developmental abnormalities including high growth rate of whole seedlings, altered morphology of SAM, and multiple outgrowths in cotyledons in which vascular tissues are densely formed.
(2) High accumulation of a number of phenolics,including chlorogenic acid, which could be partly due to increased transcripts of phenylalanine ammonia lyase gene.
(3) Increased sensitivities of growth inhibition to auxin transport inhibitors. This could reflect altered intracellular auxin levels and/or signal transduciton process (under investigation).
From these results we speculate that the
6b gene may induce phenylpropanoid biosynthesis pathway, promoting vascular development in close association with tumorigenic outgrowth.
抄録全体を表示
-
西川 芙美恵, 加藤 雅也, 兵藤 宏, 生駒 吉識, 杉浦 実, 矢野 昌充
p.
444
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
ブロッコリー小花のアスコルビン酸含量は収穫後急速に減少する。本研究では、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)、アスコルビン酸酸化酵素(ASO)、ガラクトノラクトン脱水素酵素(GLDH)、アスコルビン酸フリーラジカル還元酵素(AFRR)、酸化型アスコルビン酸還元酵素(DHAR)、酸化型グルタチオン還元酵素(GSHR)の酵素活性及び遺伝子発現について、収穫あるいは植物ホルモン処理による影響を調査した。ブロッコリー小花では収穫後12時間以内に葉緑体型のAPX(
BO-sAPX及び
BO-tbAPX)の遺伝子発現が強く抑制された。さらに、アスコルビン酸再生に関わる葉緑体型遺伝子(
BO-AFRR 1及び
BO-DHAR)の発現量も急速に減少した。その結果、収穫後のブロッコリー小花の葉緑体で活性酸素種の蓄積とアスコルビン酸の分解が促進されることが推測された。ジャスモン酸メチルあるいはアブシジン酸の処理によってアスコルビン酸含量の減少は促進され、同時にGLDHとアスコルビン酸代謝に関わる葉緑体型の遺伝子発現の抑制が観察された。
抄録全体を表示
-
森下 宜彦, 田尾 悟, 佐野 智, 齊藤 和實
p.
445
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
アスコルビン酸(AsA)は植物細胞内で重要な抗酸化剤として働くが、このとき一電子酸化物モノデヒドロアスコルビン酸(MDA)ラジカルが生成する。細胞内の抗酸化活性を維持するためにはAsAを再生する必要があり、MDAレダクターゼ(MDAR)はこの反応を触媒する。MDARはFADを含み、NAD(P)Hを電子供与体としてピンポン機構によりMDAを還元する。その機構の第一段階はNAD(P)HによるFADの還元で、この反応はSH修飾試薬によって阻害される。細胞質型MDARには保存された2個のCys残基が存在するがどちらが反応に関与しているのかは明らかではない。そこで、キュウリ細胞質型MDARを材料とし、部位特異的突然変異法を用いてCys残基の役割を調べた。変異酵素としては2個のCys残基(Cys69、Cys198)をそれぞれAla、Serとした計4種(C69A、C69S、C198AおよびC198S)を作成した。その結果、Cys69に変異の入ったC69S、C69Aでそれぞれ32%、56%まで活性が低下した。特にC69SはFADとの結合力が弱く、非変異体では安定な条件下でも急速に解離した。しかし、NAD(P)Hに対する
Km値はCys69、Cys198変異酵素とも非変異体との違いはみられなかった。現在酵素中のFADとNADHの迅速反応を解析中である。
抄録全体を表示
-
藤川 律子, 藤川 愉吉, 飯島 憲章, 江坂 宗春
p.
446
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
ホスホリパーゼA2(PLA2)はグリセロリン脂質の2位のアシル鎖を加水分解し、遊離脂肪酸とリゾリン脂質を産生する酵素である。動物のPLA2はアラキドン酸カスケードの初発酵素であると同時に、食餌性リン脂質の消化や膜リン脂質の代謝回転、再構築など生体内で多様な役割を担っている。分泌型PLA2(sPLA2)は多様な分子種の存在や、様々な組織に発現していることが確認され、レセプターを介した生理応答に関与することも明らかになっている。近年、植物でもsPLA2の精製やcDNAクローニングが報告されているが、その生理機能は明らかになっていない。そこで、植物のsPLA2の生理機能を明らかにするために、タバコsPLA2のcDNAクローニングを行った。タバコの花から全RNAを抽出してRT-PCRを行った。プライマーは植物sPLA2で保存されている配列をもとに設計した。その結果、2種の遺伝子増幅産物が得られた。この増幅断片の塩基配列を決定したところ、sPLA2と高い相同性が認められた。これらの塩基配列に基づいて5'-RACEおよび3'-RACEを行い、2種のタバコsPLA2 cDNAの全塩基配列を決定した。2種のタバコsPLA2のcDNAは、それぞれ145、159のアミノ酸をコードしていた。またN末端側にはシグナルペプチドの存在も示唆された。現在、タバコsPLA2の遺伝子発現などについても検討している。
抄録全体を表示
-
肥塚 崇男, 松井 健二, 梶原 忠彦, Stumpe Stumpe, Ivo Feussner
p.
447
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
(目的)オキシリピンの一種である短鎖アルデヒド類は、不飽和脂肪酸からリポキシゲナーゼ(LOX)、脂肪酸ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)により生成される。HPLには13-ヒドロペルオキシド(HPO)からC6アルデヒドを生成する13-HPLと9-HPOからC9アルデヒドを生成する9-HPLの2種類が知られている。現在までに報告されているHPLは全て双子葉植物由来であり、単子葉植物のそれは未だ見い出されていない。本研究では、単子葉植物であるオオムギのHPLをクローニングし、大腸菌で発現させるとともに、植物体での遺伝子発現解析を明らかにすることを目的とした。
(方法と結果)オオムギのESTデータベースから双子葉植物HPLに相同性の高いクローンを見つけ出し、大腸菌で発現させた。オオムギHPLはナズナHPLとアミノ酸レベルで50.1%の相同性を示し、9-もしくは、13-ヒドロペルオキシリノレン酸を基質として反応させた時、主生成物として、3-(Z)-ヘキセナールを特異的に生成したことから今回クローニングした遺伝子は13-HPLをコードしていることが明らかになった。現在、種々の処理によるオオムギHPL遺伝子の発現様式について検討している。
抄録全体を表示
-
森川 智美, 松原 俊介, 田窪 桂子, 竹中 重雄, 太田 大策
p.
448
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
我々はこれまでに,シロイヌナズナの
AtMFDXと
AtMFDRを,それぞれ新規のフェレドキシン遺伝子とフェレドキシン還元酵素遺伝子として同定し,cDNAクローニングと組換えタンパク発現によって,これらの遺伝子にコードされるタンパクが,動物アドレノドキシンとアドレノドキシン還元酵素の機能ホモログであり,NADPHを電子供与体とした電子伝達鎖を構築することを示した.PSORTとTargetPプログラム解析では,AtMFDXとAtMFDRタンパクがミトコンドリアに局在することが予測されている.今回,これらの電子伝達体がどのような末端酵素と電子伝達鎖を構成するかを解明することを目的にして,昆虫細胞系で発現させたAtMFDRタンパクに対するウサギ抗血清と大腸菌で発現させたAtMFDXに対するマウス抗血清を用いて,これらのタンパクの細胞内局在性を検討した.まず,ウエスタンブロット解析では, AtMFDR タンパクが地上部のいずれの部位(葉,花芽)にも蓄積していることがわかった.さらに,AtMFDRタンパクは膜画分に特異的に局在すること,また可溶性画分には存在しないことが明らかとなった.しかし,細胞分画によって得られた単離葉緑体とミトコンドリアにはAtMFDRタンパクの顕著な蓄積は認められなかった.一方,免疫組織学的には,AtMFDRは葉緑体とは明らかに異なる細胞内構造に蓄積していることが示された.現在,このAtMFDRタンパクの局在する細胞内構造の特定に向けて検討を行っている.
抄録全体を表示
-
松井 健二, 福富 祥子, 梶原 忠彦
p.
449
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
目的)シロイヌナズナでは葯の開裂にジャスモン酸が必須である。
DAD1はホスホリパーゼA1をコードしており、ジャスモン酸合成時に膜リン脂質からリノレン酸の遊離に関与している(1)。我々はトマトESTデータベースに複数の
DAD1様リパーゼ遺伝子ホモログ、
DLLを見い出した。その中のひとつ、
LeDLL1はトマト種子発芽時に顕著に誘導されており、その発現様式はジャスモン酸合成と相関性がなく、他の機能、例えば種子貯蔵脂肪分解に関与している可能性が示唆された。そこで本研究ではこの可能性を検討するため、
LeDLL1の発現様式を詳細に検討すると共に、組換え酵素の酵素学的性質の検討、細胞内局在性等について検討した。方法と結果)
LeDLL1 cDNAをESTデータベースから入手し、その全配列を決定した。LeDLL1はシロイヌナズナDAD1とアミノ酸レベルで34%の相同性を示し、リパーゼモチーフを有していた。乾燥種子中で
LeDLL1は発現が認められないが、発芽とともに急激に、また一過的に発現量が高まり、その発現時期は種子貯蔵脂肪の転流時期に一致していた。一方、他の器官での発現は殆ど見られなかった。また、大腸菌で発現させた組換えLeDLL1は中性脂肪加水分解活性を有していた。こうしたことから、
LeDLL1はトマト種子発芽時の種子貯蔵脂肪分解に関与していることが示唆された。(1) Ishiguro et al., Plant Cell (2001) 13, 2191.
抄録全体を表示
-
福田 隆志, 土屋 徹, 増田 建, 島田 裕士, 太田 啓之, 高宮 建一郎
p.
450
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
クロロフィルの分解は通常の代謝回転に加え、紅葉や葉の老化、果実の登熟、花の分化など植物が緑色を消失する現象に関与し、植物の生活環の中で厳密に制御されている重要な代謝系の一つであると考えられる。現在、シロイヌナズナのクロロフィル分解酵素遺伝子は経路の初反応を触媒する2つのアイソザイム遺伝子、
クロロフィラーゼ1 (
CLH1)、
クロロフィラーゼ2 (
CLH2)、その下流のRCC還元酵素遺伝子(
RCCR)が単離されている。本研究では、植物の生活環におけるクロロフィル分解の意義について知見を得るため、シロイヌナズナを材料として、代謝経路の関連酵素遺伝子の一つであるCLH1を中心として老化・分化の際の発現解析を行った。
老化を制御すると思われる植物処理条件下で時系列を追って発現を解析した。老化を促進すると考えられるメチルジャスモン酸処理では処理後数時間で顕著なmRNAの蓄積を示した。また逆に老化を抑制すると考えられるジベレリンやサイトカイニン処理では発現に変化は見られなかった。
次にクロロフィル分解酵素の植物体の局在性を調べるために、酵素遺伝子のプロモーター領域とレポーター遺伝子である
β-glucuronidase (
GUS)の融合遺伝子を組み込んだ形質転換体の作出を行った。得られた形質転換体の組織をGUS染色した結果、葉や花のがく、鞘などのクロロフィルの存在する緑色組織でCLH1が恒常的に発現していることが明らかになった。
抄録全体を表示
-
高原 健太郎, 明石 欣也, 横田 明穂
p.
451
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
優れた乾燥耐性を示す野生スイカの葉組織では、乾燥ストレス伴い0.3 Mにも達するシトルリンが蓄積される。このシトルリンは活性酸素消去能に優れた新規の適合溶質であり、酸化ストレスの緩和に貢献すると考えられる。しかし、植物でのシトルリン生合成系の知見はほとんどなく、その蓄積機構は全く解明されていない。
そこで、シトルリンの蓄積機構を解明するために、初発段階と第5段階を同時触媒する酵素glutamate acetyltransferase(GAT)に注目し、機能解析を行った。
まず、野生スイカからGAT活性を有する酵素を精製した。精製酵素はSDS-PAGEで約28 kDaの2本のバンドから構成されていた。それぞれのポリペプチドのN末端アミノ酸配列は、シロイヌナズナの GATホモログの37から49番目のアミノ酸、249から283番目のアミノ酸とそれぞれ相同性を示した。酵母や枯草菌のGATは、前駆タンパク質の中央部を自己触媒によって切断し、生成したヘテロ4量体が機能を持つと報告されている。また、シロイヌナズナのGATホモログには、N末端36残基の葉緑体移行シグナルの存在することが示唆されている。このことから、野生スイカのGAT酵素前駆体は、葉緑体に移行し、自己触媒的に切断されることで、ヘテロ多量体を形成すると想定している。現在、詳細な酵素学的性質を解析しており、その結果も合わせて報告する。
抄録全体を表示
-
中嶋 信美, 大嶋 幸子, 玉置 雅紀, 青野 光子, 久保 明弘, 佐治 光, 森田 昌敏
p.
452
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
Bisphenol A (BPA) は内分泌攪乱化学物質の1つとして、生態系への影響が懸念されている。発表者らは植物を用いたBPAの回収を目的として、タバコによるBPAの吸収と代謝について研究をおこなった。その結果、代謝物の1つがBPA-ο-β-D-glucoside (BPAG) であることを同定した (P C P 2002, 43: 1036-1042)。本研究ではBPAの配糖化酵素 (BPAGTase) の性質を調べた。2週間培養したタバコ培養細胞(BY-2)の粗抽出液を用いて酵素反応を行った。反応は50mM Tris-HCl pH7.5, 1 mM 2-mercaptethanol, 1mM UDP-Glucose (UDPG), BPA 50~500μM になるように加え30℃、10分反応させ、生成したBPAGをHPLCにより定量した。また、播種後3週間のタバコ実生 (Xanthi NC) の根、茎、葉のBPGTase活性を同様の方法で測定した。培養細胞由来のBPAGTaseのBPAに対するkmは82μMであった。この値は、これまでに報告されている配糖化酵素と同等の値であった。BPAGTase 活性はタバコ実生にも存在し、葉では根の約4倍、茎の3倍の活性が見られた。以上の結果、BPAGTaseは主に葉で働いてBPAをBPAGに代謝して、無毒化しているものと考えられる。
抄録全体を表示
-
近藤 直子, 平栗 章弘, 伊藤 陸, 相澤 大輔, Hisashi Koiwa, 関 原明, 篠崎 一雄, 福原 敏行
p.
453
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
RNAのプロセシングに関与するRNaseIIIや、ウイルス感染防御にはたらくPKR (dsRNA-activated protein kinase)など、2本鎖RNAに特異的に結合するタンパク質が様々な生物で発見されている。最近では、ショウジョウバエにおいて、2本鎖RNA結合モチーフ(dsRBM)およびRNaseIIIモチーフを含むDICERが、2本鎖RNAによって引き起こされるジーンサイレンシングに関与することが報告されている。我々は、dsRBMに特徴的な配列をもとにデータベースを検索し、シロイヌナズナで7つ(HYL1, ADB2, ADB3, ADB4, CAF, RTL1, CPL1)のdsRBM様配列を含む遺伝子を見出した。その中でもCAF、RTL1はRNaseIIIモチーフとdsRBMを含んでいることから、ジーンサイレンシングへの関与が期待される。これらの遺伝子産物の機能を明らかにするため、ノースウエスタン法およびファーウエスタン法を用いて、2本鎖RNA特異的結合活性およびタンパク質間相互作用の解析を行った。これらのタンパク質はいずれもdsRBMを2つ含むにもかかわらず2本鎖RNAに対する結合活性に大きな差があること、これらのタンパク質がdsRBMを介し相互作用すること等が明らかとなった。
抄録全体を表示
-
Abul Kalam Azad, Takayuki Ishikawa, Yoshihiro Sawa, Takahiro Ishikawa, ...
p.
454
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
Tulip flower oscillation, opening and closing of petals is repeated at least two weeks from the first flowering and then petals fell down. We could produce this petal oscillation in the dark by changing the temperature accordingly. During oscillation, opposite petals apertures were proportional to water content transferred via the stem from medium, the amount was almost three times at 20C compared to at 5C. Ruthenium red, a Ca
2+ channel blocker and BAPTA, a Ca
2+ chelator inhibited petal opening and water movement at 20C almost by 80 and 90% respectively. But they had no any effect on petal closing and water movement at 5C. Phosphorylation of a 31 kDa membrane protein at serine and/or threonine site at mid-temperature by membrane associated CDPK, and its dephosphorylation at 5C suggested its possible involvement in the tulip petal oscillation.
抄録全体を表示
-
加藤 喜明, 恩田 義彦, 伊藤 菊一
p.
455
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
日本には、発熱植物として知られているザゼンソウ(
Symplocarpus foetidus)、発熱現象が未解析のまま残されているヒメザゼンソウ(
S.
nipponicus)とナベクラザゼンソウ(
S.
nabekuraensis)の3種のザゼンソウ属が分布している。本研究では、これらのザゼンソウ属のうち、ザゼンソウおよびヒメザゼンソウに着目し、それぞれの発熱現象の比較と、脱共役タンパク質(UCP)およびシアン耐性呼吸酵素(AOX)をコードする遺伝子群の発現解析を行った。UCPおよびAOXはミトコンドリア内膜に局在し、ミトコンドリアの呼吸活性を増大させることにより、発熱反応を誘導する機能を持つ発熱関連因子である。その結果、ザゼンソウの熱産生部位である雌期肉穂花序は、外気温度が-10℃程度の低温化においてもその体温を20℃程度に保つ能力を有することが判明したが、ヒメザゼンソウの雌期肉穂花序においては、発熱による明確な体温の上昇は観察されなかった。また、ザゼンソウにおける
UCPbおよび
AOXの発現は雌期肉穂花序で特異的であることが明らかとなり、ザゼンソウにおけるこれらのミトコンドリア因子と発熱現象との密接な関連性が示唆された。しかしながら、これらの発熱関連遺伝子は、ヒメザゼンソウの雌期肉穂花序においても高い発現レベルを示すことが判明したため、調査したザゼンソウ属における「みかけ」の発熱現象は必ずしも発熱関連遺伝子の発現レベルを反映していないことが明らかになった。
抄録全体を表示
-
伊藤 孝徳, 伊藤 菊一
p.
456
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
ザゼンソウ(
Symplocarpus foetidus)は、氷点下を含む外気温の変動にもかかわらず、その肉穂花序温度を20
oC 内外に維持する能力を持つ恒温植物である。興味深いことに、本植物の肉穂花序温度の時系列データには、複雑な振動現象が頻繁に現われることが見出されている。我々は、このような複雑な体温振動と肉穂花序における体温制御システムとの関係を明らかにするため、動的システム理論によりザゼンソウ肉穂花序温度の時系列データを詳細に解析した。その結果、ザゼンソウに見られる複雑な体温振動は決定論的なカオスダイナミクスに従い、その振動制御メカニズムには2つの重要な因子が関わっていることが推定された。次に、ザゼンソウ肉穂花序における温度制御メカニズムのモデル化を行うため、我々は、自然環境のもとで人工的に気温変化を与えることのできる装置を開発し、ザゼンソウ肉穂花序温度における体温振動の周期と肉穂花序重量との関係を詳細に測定した。その結果、驚くべきことに、ザゼンソウの肉穂花序温度における体温振動は、肉穂花序の重量とはまったく無関係であり、その周期はおよそ60分であることが判明した。これらの結果に基づき、ザゼンソウ肉穂花序における温度制御メカニズムについて、肉穂花序の重量に関わるパラメータを一切含まない減衰振動モデルを組み立て、シミュレーションを実行した。
抄録全体を表示
-
濱野 敬史, 村上 昌吾, 得平 茂樹, 佐藤 直樹
p.
457
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
ラン藻
Anabaena sp. PCC 7120株には低温で誘導されるRNA recognition motif (RRM) を持つRNA結合タンパク質ファミリーがある。C末端にグリシンリッチ領域を持つRbpA1タンパク質,持たないRbpDタンパク質,および長いC末端領域を持つRbpGタンパク質について,RNAホモポリマーとの親和性を
in vitroで調べた結果,RbpA1とRbpDはpoly(U) > poly(G) > poly(A) > poly(C)の順,RbpGタンパク質はpoly(C) > poly(U) > poly(A) > poly(G)の順に強く結合した。RRMを持つ84アミノ酸残基のタンパク質RbpA1RRM84は,Arg83をGluに置換するとpoly(G)との親和性が下がる事が分かっていたが,本研究で全長RbpA1においてArg83をGluまたはAlaに点変異させてもpoly(G)との親和性は下がらなかった。Arg83に対応するRbpDのArg85を置換しても同じであった。RbpA1をRbpA1RRM84と比べたところ,poly(A),poly(C),poly(G)に対する結合の順は似ていたが,親和性が上がっており,RbpA1タンパク質のC末端領域がこれらの親和性を高める事が示唆された。
抄録全体を表示
-
Dale Karlson, Kentaro Nakaminami, Tomonobu Toyomasu, Ryozo Imai
p.
458
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
A cold-regulated wheat cDNA,
WCSP1, was identified and found to contain an N-terminal cold shock domain (CSD) with two consensus RNA binding motifs, and a glycine-rich region which is interspersed with three C-terminal Cys-X
2-Cys-X
4-His-X
4-Cys (CCHC) zinc fingers (J.Biol.Chem 277,35248). RNA and protein blot analyses showed that
WCSP1 mRNA and protein levels steadily increased during cold acclimation, respectively.
WCSP1 induction was cold-specific, because neither abscisic acid treatment, drought, salinity nor heat stress induced
WCSP1 expression. Nucleotide binding assays determined that WCSP1 binds ssDNA, dsDNA, and RNA homopolymers. Structural and expression similarities to
E. coli CspA suggest that WCSP1 may be involved in gene regulation during cold acclimation. EST database searching revealed that the CSD occurs widespread among diverse plant genera and is highly conserved (Plant Physiol. 131, in press). A complete CSD protein family of Arabidopsis was found to display a differential response to low temperature treatments.
抄録全体を表示
-
南 杏鶴, 長尾 学, 荒川 圭太, 藤川 清三, 竹澤 大輔
p.
459
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
植物が低温馴化により耐凍性を獲得する過程では、タンパク質のリン酸化や脱リン酸化が関わっていると考えられている。我々は、蘚類ヒメツリガネゴケ(
Physcomitrella patens)原糸体が、ABAや低温、高浸透圧処理によって凍結耐性を上昇することを以前に示した。ABA・低温処理によってmRNAの顕著な発現誘導が起こる
PARK(
P. patens ABA-responsive protein kinase)遺伝子は、セリン・スレオニンプロテインキナーゼをコードしていた。PARKはシロイロナズナのS-ドメインレセプター様プロテインキナーゼとキナーゼドメインにおいて56.4%の相同性があるが、細胞外ドメインを持たず、N末端は膜貫通ドメインと思われる疎水領域から始まっていた。GST融合タンパク質を用いたPARKのリン酸化活性の解析では、ミエリン塩基性タンパク質やヒストンIIISの基質をリン酸化し、PARK自身も自己リン酸化することが分かった。また、GFP融合遺伝子による解析では、PARKの細胞膜周辺への局在が示された。
PARK遺伝子破壊株の耐凍性を調べた結果、ABAや低温処理した破壊株では、野生株より低い凍結耐性を示した。これらの結果から、PARKが細胞膜結合型プロテインキナーゼとして、ヒメツリガネゴケのABAや低温による凍結耐性上昇のシグナル伝達の制御に関与している可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
佐藤 和人, 宮嵜 厚, 今井 亮三, 草野 友延
p.
460
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
イネよりbZIP型転写因子をコードする新たなcDNAを単離した。全長cDNAは1,277bpからなり、145アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。このcDNAはトウモロコシ
OBF1遺伝子と高い相同性(ヌクレオチドレベルで60.9%、アミノ酸レベルで86%)がみられたため
OsOBF1と命名した。サザンブロット解析の結果、この遺伝子はイネゲノム中に単一コピーで存在することが判明した。遺伝子産物であるOsOBF1は核に局在し、ヘキサマー配列(5'-ACGTCA-3')への結合が確認されたが、トウモロコシOBF1とは異なり、
ocsエンハンサー配列への結合は確認されなかった。
In vitro実験系において、OsOBF1はホモダイマーを形成するだけでなく、LIP19とヘテロダイマーを形成した。
OsOBF1転写産物は成熟した葉でより強い発現が確認されたが、対照的に
lip19転写産物は老化葉での発現が観察された。また
lip19が低温で発現が誘導されるのに対し、
OsOBF1転写産物の発現はみられなかった。これらの結果に基づき、イネの成長とストレス応答へのOsOBF1の関与及びOsOBF1とLIP19のヘテロダイマーによる転写制御の可能性を考察する。
抄録全体を表示
-
Tarlan Mamedov, Jian Liu, 庄野 真理子
p.
461
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
高等植物が高温による生理傷害克服のため行うストレス応答反応の一つに大量のスモールヒートショックプロテイン(sHSP)の発現が認められる。我々はトマトからクローニングしたER型sHSP(ER-sHSP)の機能解析を行うことを目的とし、
in vitroでの解析を試みた。
40℃で6 hr処理したトマト(
Lycopersicon esculentum Mill cv. Xifen)花のcDNAライブラリーからER型sHSP (LeHSP21.4)をクローニングした。LeHSP21.4がコードするタンパク質は190アミノ酸、推定分子量は21.4 kDaで、シングルコピーであった。トマトの花を用いたER-sHSPの熱誘導性に関するノーザン解析の結果、32℃付近で温度ストレスによる誘導がかかった。
E. coli発現系でLeHSP21.4タンパクを大量に発現させて精製を行い、この組換え精製タンパクを用いて
in vitroでのER-sHSPの機能を調べた。組換えER-sHSPは、他の酵素(LDH及びCS)の化学変性からの回復を助け、高温失活を抑制し、また失活した酵素を回復させる効果を持つことが明らかになった。組換えER-sHSP を加えた
E. coli抽出物では、幾つかのタンパク質が高温下ても凝集されにくくなった。これらにより、ER-sHSPが細胞内において分子シャペロンとして機能していることが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
Tomoko Dansako, Ko Kato, Junko Satoh, Atsuhiko Shinmyo
p.
462
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
When organisms subjected to heat stress, patterns of gene expression change in a cell. Exclusive synthesis of heat shock proteins (HSPs) mRNAs occurs and these
HSP mRNAs are efficiently translated while translation of existing normal cellular mRNAs is suppressed. It has been reported the 5' untranslated region (5'-UTR) of mRNA of
HSP gene plays an important role in the efficient translation during heat stress. We report possibility that the expression of
Arabidopsis thaliana HSP gene,
HSP18.2, was also regulated at translational level under heat stress condition. We show translation was not suppressed during heat stress when the 5'-UTR sequence of
HSP18.2 was inserted at upstream of initiation codon of β-glucuronidase gene in
A. thaliana T87 protoplasts,
Nicotiana tabacum BY-2 protoplasts and stable transgenic BY-2 clones. We also show that the secondary structure of 5'-UTR of
HSP18.2 was unchanged by heat treatment
in vitro.
抄録全体を表示
-
山内 清司, 宮城 和江, 奥山 英登志, 西山 佳孝, 林 秀則
p.
463
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
好冷性細菌
Colwelllia marisは5~15℃の低温環境で生育している。
C. marisのGroEL, DnaKの発現は約20℃で誘導されるにもかかわらず、上流には大腸菌の熱ショックプロモーターとよく似た配列が存在する。好冷性生物の熱ショック応答を明らかにする目的で今回、熱ショックプロモーターを認識するRpoH(σ
32)をコードする
rpoH遺伝子の発現の解析を行った。
他の生物のRpoHのアミノ酸配列を参考にして混合プライマーを作製し、これを用いたPCRによって増幅されたDNA断片の塩基配列を決定したところ、大腸菌のRpoHの相当する部分と64%の相同性を持つアミノ酸配列をコードしていた。またこの推測されたアミノ酸配列中には、RpoHに特有なRpoH boxとよばれるアミノ酸配列領域が確認された。ノーザンブロット分析により、
rpoHのmRNA量は20℃処理で蓄積すること、また20℃におけるその分解速度は10℃の場合より遅いことを確認した。このためRpoHの調節には、
rpoH mRNAの安定性が関与していると推測される。現在さらに詳細な解析を行っている。
抄録全体を表示
-
仲本 準, Asadulghani
p.
464
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
昨年度の本学会で、(1)熱ショックによるシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の groELやhtpGのmRNAの蓄積は光照射により著しく促進されること、(2)この光依存の転写誘導は光合成電子伝達阻害剤DCMUにより阻害されDBMIBにより活性化されることからプラストキノンの酸化還元状態によるHSP遺伝子の転写調節が示唆されることを報告した。
本研究では、熱ショック応答の光依存性について詳細に解析し、以下の結果を得た。
(1)熱ショックによるgroELやhsp17のmRNAの一過的蓄積は光照射下でのみ観察される。
(2)光は転写産物の安定性に顕著な影響を及ぼさない。
(3)熱ショックタンパク質GroELの蓄積も光照射で促進される。
(4)穏やかな熱処理を光照射下で行うと、暗所に比べて細胞はより大きな熱耐性を獲得する。
抄録全体を表示
-
小島 幸治, 中川 毅史, 仲本 準
p.
465
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
枯草菌などの
groESLや
dnaKオペロンの転写調節はCIRCE配列へのHrcAリプレッサーの結合による通常温度での転写抑制と熱ショック温度におけるHrcAの不活性化による抑制解除によって説明される。シアノバクテリア
Synechocystis sp. PCC 6803株のゲノム配列中には、
hrcA相同遺伝子が存在し、二種類の
groEL遺伝子は転写開始点近傍にCIRCE配列をもつので、
groEL遺伝子の調節はCIRCE-HrcA機構によるものであることが示唆されているが、シアノバクテリアHSP遺伝子の発現調節機構は未だ不明である。我々は、
Synechocystis sp. PCC 6803株の
hrcA遺伝子破壊株を構築し、
groEL遺伝子の転写が通常の培養温度30℃において脱抑制されることを明らかにした。野生株と同じ転写開始点からの転写の脱抑制が確認されたが、変異株の
groEL遺伝子のmRNA蓄積量が熱ショックにより、さらに著しく増加したので、CIRCE/HrcA抑制機構以外の調節機構の関与が示唆された。
hrcA遺伝子の破壊によって
groEL遺伝子以外のHSP遺伝子の通常温度におけるmRNA蓄積量に変化は生じなかったが、熱ショック後の蓄積量の経時変化に影響がみられた。
hrcA遺伝子の破壊で大量に蓄積したGroELが、他のHSP遺伝子の転写誘導に影響を及ぼしているのではないかと考えて研究を進めている。
抄録全体を表示
-
尾 洋史, 小池 仁, 仲本 準
p.
466
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
HSP90は真核生物の細胞内に大量に存在する主要HSPの一つであり、酵母やショウジョウバエでは必須タンパク質であることが明らかにされている。変性タンパク質の凝集抑制に加え、平常時でも、多くの転写因子やシグナル伝達分子と複合体を形成し、これら標的タンパク質への結合・解離を通して広範な細胞機能を制御している。
大腸菌や枯草菌にはHSP90ホモログがHtpGしか存在しないが、欠損しても致死とはならないし、高温における生育や生存率に顕著な差が認められない。変異株の表現型が現れないために、HtpGの機能は不明であった。
我々は、HtpG遺伝子をシアノバクテリア(Synechococcus sp. PCC 7942)からクローニング後、遺伝子破壊株を作製し、原核生物では初めてHtpGが高温における増殖や生存に必須のものであることを明らかにした。本研究では、HtpGタンパクを精製し、オリゴマー構造や分子シャペロン活性の測定などの生化学的解析を行った。ホモ二量体を形成するHtpGはcitrate synthaseなどのタンパク質の熱変性による凝集を阻止する活性を示した。凝集体形成がほぼ完全に阻止されるときのHtpGと標的タンパク質のモル比は、等モルあるいは2:1であった。C末端側の124アミノ酸残基を欠損したHtpGは二量体を形成できなかった。標的タンパク質との相互作用に果たすオリゴマー形成の役割についても報告する。
抄録全体を表示
-
本間 大奨, 仲本 準
p.
467
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
我々は、低分子量熱ショックタンパク質(HspA)をコードする遺伝子を大腸菌―Synechococcus sp. PCC 7942シャトルベクターにクローニングし、このシアノバクテリアに導入してHspAを構成的に大量発現する株を構築した。HspA構成的発現株の致死温度処理後の生存率、光化学系IIやフィコシアニンの熱安定性が対照株に比較して上昇した。これらの結果は、高温ストレス下で、低分子量HSPがフィコビリタンパク質やチラコイド膜(タンパク質)と相互作用して光合成の集光機能や電子伝達系を防御することを示唆するものである。
本研究では、HspAやGroELとフィコビリタンパク質との相互作用の解明を目的とした。上記のHspA構成的発現株からフィコビリソームをショ糖密度勾配超遠心分離法で精製したところ、「重い」画分(天然型のフィコビリソーム)と「軽い」画分に分離された。この軽い青色の画分にはフィコビリタンパク質に加えHspAとGroELが存在し、フィコビリソーム「解離産物」が分子シャペロンの標的となることが示唆された。フィコビリソームの構成ポリペプチドから天然型の巨大複合体への集合(あるいは逆に分解)の途中段階のタンパク質集合体がHspAやGroELなどの分子シャペロンの標的となると仮定してイン・ビトロの解析を行っている。
抄録全体を表示
-
早川 尚吾, 皆川 純
p.
468
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
光合成集光装置は反応中心の近傍にある中心集光装置とその外側にある周辺集光装置によって構成されている。中心集光装置を構成するタンパク質は常に一定の割合で存在しているが、周辺集光装置を構成するタンパク質は、光環境に応じて構成や割合を変えるとされる。しかし、個々のサブユニットがどのように光環境に応じて変動するのか、その詳細は明らかにされていない。
そこで、まず標準条件で培養したクラミドモナスから光化学系II(PSII)とその集光装置(LHCII)の複合体を精製し、各バンドのアミノ酸配列を決定した。そして、ESTライブラリの情報と併せ、7つのLHCIサブユニットと3つのLHCIIサブユニットを同定した。更に、異なる光条件下で周辺集光装置を調製し、これらのサブユニットの構成の違いを比較検討した。以上の結果を踏まえ、光合成集光装置の光環境適応について考察する。
抄録全体を表示
-
田中 亮一, 平島 真澄, 田中 歩
p.
469
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
高等植物は様々な光環境に適応するために、アンテナサイズを調節している。我々は、これまでに、このアンテナサイズの調節はクロロフィルb合成酵素であるCAO(chlorophyllide
a oxygenase)の発現によって制御されていることを明らかにした。CAOを過剰発現する形質転換シロイヌナズナはどのような光条件下でもアンテナサイズが大きく、高照度下で野生株の2倍のLHCタンパク質を蓄積している。高等植物の光馴化におけるCAOとLHCの役割を明らかにするために、このCAO過剰発現株のチラコイド膜の構造とカロチノイド含量を調べた。電子顕微鏡でCAO過剰発現株のスタッキングの度合いを調べたところ、スタッキングの程度は野生株と変わらないことが明らかとなった。また、LHCタンパク質がほとんど蓄積していないCAO欠失変異体(
ch1-1)においても明らかなスタッキングが見られた。この結果は、チラコイド膜のスタッキングにはLHCタンパク質以外の要因が関与していることを示している。また、HPLCによるカロチノイド含量の測定によってキサントフィルサイクルの色素の脱エポキシ化の比率が、
ch1-1では高く、CAO過剰発現株では低いことが明らかになった。これらの結果から、植物の高照度への馴化のメカニズムとアンテナサイズの制御について考察する予定である。
抄録全体を表示
-
山里 明弘, 永田 望, 田中 亮一, 田中 歩
p.
470
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
クロロフィリド
a オキシゲナーゼ(CAO)はクロロフィル
bを合成する酵素であり、クロロフィル
bの供給を介して集光装置(LHC)の構築を制御する。この制御は高等植物が様々な光条件に適応して光合成を行うために重要であり、そのLHCの構築機構を理解するためには、CAOの葉緑体中での局在や機能を解明することが必要である。
高等植物のCAOのアミノ酸配列を他の生物の配列と比較することで、葉緑体移行シグナル、高等植物間でのみ高い相同性があるAドメイン、相同性がないBドメイン、全CAOで高い相同性があるCドメイン、の四つの領域から構成されていることが分かった。本研究では、CAOの全長または各ドメインをgreen fluorescence protein (GFP)と融合し、それらを一過性の遺伝子発現系(エンドウ葉)、または形質転換株による恒常的な遺伝子発現系(シロイヌナズナ)を用いて発現させ、共焦点顕微鏡で局在を観察した。GFPを全長のCAOのC末端に融合すると葉緑体への輸送が正しく行われずに他の細胞内小器官に蓄積したが、葉緑体移行シグナルの下流に挿入すると葉緑体内での局在が観察された。また、CAOの各ドメインをGFPに融合して局在を比較すると、Cドメインが葉緑体内での局在において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに各ドメインの酵素的役割についても報告する予定である。
抄録全体を表示
-
辻 容子, 竹田 恵美
p.
471
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
培養細胞ながら発達した葉緑体を有し,無糖培地中で光合成のみによって継続的に生育するペチュニア光独立栄養培養細胞を材料として,強光適応過程における葉緑体色素タンパク複合体の変化について調べた。これまでに強光下で培養した細胞(HL細胞)は弱光下で培養した細胞(LL細胞)に比べて,強光ストレス緩和機構のひとつであるキサントフィルサイクルに関与する色素violaxanthin(V), antheraxanthin, zeaxanthin(Z)の合計含量ならびに強光ストレス処理によりZに変換され得るVの割合が高いことを報告した。今回は両細胞のチラコイド中の色素タンパク複合体の違いを明らかにするため暗処理後および強光ストレス処理後に分画遠心によってチラコイド膜画分を調製し,nativeゲル電気泳動により分析した。各色素タンパク複合体をゲルより回収し色素組成を調べた結果,強光ストレス処理後はLL,HLいずれの細胞においてもMajor LHCII およびMinor LHCIIでZの割合が増加した。また,HL細胞においてPSIIのMajor LHCII およびMinor LHCIIのタンパク質当りのキサントフィル含量が高く,暗処理後でも高い割合でZが含まれていたことからHL細胞のLHCタンパク質はZをより多く結合していることが示唆された。
抄録全体を表示
-
Amarendra Narayan Misra, I. Terashima
p.
472
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
Photoinhibition of photosynthesis was studied in Vicia faba leaf discs at chilling (4oC), room (25oC) and high (40oC) temperature under 2000 *mole quanta m-2s-1. Quantum efficiency of PS II (FV/FM) showed a linear time dependent decrease at room temperature. The decrease was further enhanced at chilling temperature and maximum at high temperature.
The far-red (FR) light (13.5W.m-2) induced *I/I0 at 830nm (P700+FR) and FR+SP (saturating-pulse) induced P700+TOT in vivo, decreased with photoinhibition. High temperature treatment accelerated the decrease in P700+FR and P700+TOT in darkness. High light accelerated the decrease in P700+FR but caused no significant change in the P700+TOT compared to that in darkness at room temperature, suggesting that P700 pool could not be fully oxidised during photoinhibition at room temperature. However, chilling temperature caused severe damage (*80%) to P700+TOT. This study shows a characteristic difference in the temperature dependent changes in PS I activity under photoinhibitory condition.
抄録全体を表示
-
津田 拡史, 新村 洋一, 加藤 哲也
p.
473
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
セントポーリア葉を急激に冷却すると細胞内膜系の損傷やクロロフィル蛍光の消失がおこり、やがて細胞死にいたる。しかし冷却前後の速度差が小さいときには冷却境界の外側だけが過敏化しこの部分を低温で処理すると黄色斑となるが、はじめから冷却されていた部分は無傷で残る。一方、冷却速度を毎分1℃かそれより遅くした場合には、5℃まで冷却しても傷害は起こらず、光合成系蛍光の光化学的消光は増加するものの、フラッシュによるPlastoquinon A還元 (Fm') の大きさは変化しなかった。毎分1℃の速度で冷却し5℃に達した直後に常温にもどした葉は低温傷害を受けやすいが、5℃で10分おいてから常温にもどした場合には葉は正常に光合成を行い、急激に冷却しても傷害を起こさなくなっていて、5℃におかれた10分の間に低温耐性葉に変換していることが分かった。セントポーリアは熱帯原産の植物で、細胞活性全般が低温で傷害を受けると考えられてきたが、ここで得られた知見はセントポーリアには急激な温度低下を感知し反応する機構があり、それが反応したときには細胞破損が誘発されるが、それ以外の細胞活性は低温傷害をうけないことを示している。
抄録全体を表示
-
大脇 友裕, 浅田 浩二
p.
474
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
昨年度の年会において、C
4植物のトウモロコシで光合成誘導期にO
2がないとCO
2固定は進行しないが、1%O
2によってCO
2固定が開始すること、しかし一旦光合成が進行するとO
2がなくてもCO
2固定は進行することを報告した。O
2がCO
2固定の開始に必要な原因を明らかにするため、さらに解析を進めた。
暗適応させた葉を光照射したとき定常状態でのCO
2固定速度と蒸散速度は、2%O
2では21%O
2の80%であり、PS2の電子伝津速度(ΦPS2)は70%,PS1の電子伝達速度(ΦPS1)は等しかった。2%以下のO
2濃度では、これらのパラメーターはさらに低下し、O%O
2では21%O
2と比べCO
2固定速度は15%,ΦPS1は40%,蒸散速度は0に近かった。ΦPS2は光合成誘導初期には21%O
2と同じであったが、その後は大きく低下した。これらの結果は、O
2がwater-waterサイクルを起動するために必要であり、これによりCO
2固定サイクルや孔辺細胞での気孔の開口に必要なATPを供給していることを示唆している。なお、C
3植物ではC
4植物ほど顕著なO
2の影響は認められなかった。
抄録全体を表示
-
和田 啓, 多田 俊治, 吉村 和也, 石川 孝博, 重岡 成, 西村 勁一郎
p.
475
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)アイソザイムは、高等植物において常時もしくは種々のストレス環境で生成される H
2O
2 の消去に機能するヘムタンパク質である。この消去反応において、本酵素は特異的電子供与体としてアスコルビン酸 (AsA) を必要とする。本研究では、葉緑体型 APX の X 線構造解析による AsA の結合部位を含む反応機構の解明を目的とした。
【方法および結果】タバコ葉緑体型 APX の結晶タンパク質を 10 μM H
2O
2、あるいはそれに 100 mM AsA を加えた溶液に数秒から数分間浸した後、液体窒素気流下で凍結させて回折X線の測定を行った。また同時に結晶の顕微分光を測定し、可視光の吸収変化から結晶中の反応状態の評価を行った。測定は大型放射光施設 SPring-8 において行い、構造は分子置換法により決定した。その結果、反応中間体と考えられる二種類の構造を決定した。H
2O
2 反応後の状態と考えられる中間体の構造においては、触媒残基である Arg のディスオーダーが観測された。また、H
2O
2 および AsA の両者を添加した系の結晶においては明瞭な AsA の電子密度が得られ、AsA の結合部位を決定することができた。これらの構造から、H
2O
2 の結合によりヘム遠位の Arg 側鎖が移動し、ヘム-γ端の近傍に結合した AsA から電子を受け取る反応機構が考えられた。
抄録全体を表示
-
Mitsutaka Okamura, Akiho Yokota, Chikahiro Miyake
p.
476
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
We elucidated the inactivation mechanism of ascorbate (Asc) peroxidase (APX) in chloroplasts. In the presence of nigericin, illumination of intact chloroplasts decreased electron flux in PSII (Je(PSII)), with the uptake of O
2. APX was simultaneously inactivated. These results show that inactivation of APX suppressed the consumption of electron from PSII for the regeneration of Asc. On the other hand, in the absence of nigericin, both the decrease in Je(PSII) and O
2 uptake were suppressed. This indicates that non-photochemical quenching and cyclic electron flow within PSII protect WWC activity by preventing H
2O
2 production in its cycle. Furthermore, we found that APX reaction rate in chloroplasts depended on H
2O
2 production rate and that Asc regeneration did not limit H
2O
2 scavenging. These results indicate that even in the presence of Asc, H
2O
2 produced in WWC decomposes APX intermediates, that is, functioning of WWC is dangerous for APX.
抄録全体を表示
-
松本 史紀, 増田 建, 島田 裕士, 太田 啓之, 高宮 建一郎
p.
477
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
クロロフィル・ヘムなどのテトラピロール化合物は、十数段階の酵素反応により生合成される。これまで、代謝系の特定の段階を触媒する酵素において、環境応答や発達段階において異なる遺伝子発現制御を受けるアイソザイムが存在し、それらが制御段階としてテトラピロールの生合成を調節していることが示されている。しかし、他の制御段階との協調的制御また代謝系全体の統御機構についての知見は未だに乏しい。そこで今回我々は、シロイヌナズナよりテトラピロール合成系に関与する全ての酵素(アイソザイム)を網羅し、かつ各遺伝子の特異的な発現解析を可能にするためのミニアレイの作製を行った。まずシロイヌナズナの全ゲノム配列より、計35のテトラピロール合成系遺伝子の塩基配列情報を得た。アイソザイムを構成する酵素については、それぞれの遺伝子特異的な領域を検索し、最終的にすべての酵素遺伝子について200~300 bpの遺伝子特異的な領域をRT-PCRにより増幅し、ミニアレイ作製のためのプローブとした。ゲノムサザン解析により全てのプローブが単一の遺伝子とハイブリダイズできることを確認後、光や植物ホルモン応答遺伝子などと合わせて計48プローブを、最終的にナイロン膜に高密度スポットし、ミニアレイを作製した。本ミニアレイを用いて得られた、光や植物ホルモン応答性また組織特異的な遺伝子発現解析による、テトラピロール合成系遺伝子の制御機構について報告する。
抄録全体を表示
-
山崎 将司, 藤田 祐一
p.
478
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
ラン藻を始めとする多くの光合成生物は、進化的起源の異なる二つのプロトクロロフィリド還元酵素;光非依存性酵素(DPOR)と光依存性酵素(LPOR)、を用いてクロロフィル(Chl)を合成している。今回、二つの酵素の種々の酸素濃度条件下における機能分化に関して検討した。
ラン藻
Plectonema boryanumのDPOR欠損株、LPOR欠損株及び対照株(野生株)を、強光条件下(>250 μE m
-2 s
-1)において、酸素を0%~21%(v/v) 含む N
2-2%(v/v) CO
2ガスを通気しながら、光独立栄養的に培養した。DPOR欠損株は、いずれの酸素濃度下でも対照株と同じように生育した。一方、LPOR欠損株は、O
2 5%以上では生育できなかったが、酸素濃度の低下に従って増殖が回復し、O
2 0%では対照株の約62%の生育速度で増殖した。この結果は、LPORは5%以上の酸素濃度下ではChl合成に必須であることを示しており、また、ニトロゲナーゼと類似性を示すDPORは、酸素に対し不安定な酵素であることを示唆している。
黎明期の光合成系では、Chl合成にはDPORのみが用いられてきたが、酸素発生型光合成の成立に伴い、祖先ラン藻は、新たに生じた酸素に富んだ環境下においてもChlを滞りなく合成するために、DPORに加えて酸素非感受性のLPORを新たに創出したことが推察される。
抄録全体を表示
-
増田 建, 房田 直記, 島田 裕士, 後藤 弘爾, 柴田 大輔, 加藤 友彦, 田畑 哲之, 太田 啓之, 高宮 建一郎
p.
479
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
被子植物のクロロフィル合成系において、NADPH-プロトクロロフィリド還元酵素(POR)は光に依存したプロトクロロフィリド
aの還元反応を触媒する。PORはプロラメラボディを形成する主要蛋白質で、葉緑体形成にも重要な役割を果たしている。シロイヌナズナでは、光や発達段階によって異なる遺伝子発現制御を受ける3つのPORアイソザイムが存在する。我々は、POR各アイソザイムの生理機能の解明を目的として、シロイヌナズナT-DNAタグラインの検索を行い、
PORBのT-DNAノックアウト変異株の単離について、一昨年度の本年会において報告した。今回新たに、
PORC変異株についても探索を行い、
PORCにT-DNAが挿入された2つの独立した変異体を得た。両変異体とも
PORC mRNAおよび蛋白質は検出できなかったことから、null mutationであることが明らかとなった。
porCは
porB同様、連続白色光下で生育させた植物体は、野生株と同程度のクロロフィル含量および光合成活性を有していた。また暗所芽生えの緑化について検討した結果、
porBのみが連続赤外光照射による緑化阻害に高い感受性を示すことが明らかとなった。これらの結果は、PORB、PORCアイソザイムは通常の生育条件では過剰に存在しているが、限られた光環境条件や発達段階においては、特定のPORアイソザイムの発現が重要であることを示唆している。
抄録全体を表示
-
坂下 幸輝, 根本 晃希, 池上 勇
p.
480
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
クロレラを有機栄養存在下・暗所で培養すると、通常の2000-4000倍のZnを含む培地でも、1-2ヵ月のlag phaseを経て細胞は生育し始める。今回は、この生育に伴う光合成色素類の変動をODS-120T(TOSO)逆相カラムを用いたHPLCによって解析し、細胞生育の定常期にZn-Chl aが徐々に蓄積することを見出した。(1) lag phaseにはChlideのみが検出される。Chl類の合成は細胞の増殖に伴って起こるが、log hase初期にはPheo aが主であり、少量のChl bがChl aに先立って一時的に蓄積した。(2)stationary phaseに入ると Chl aが主となるが、時間と共にZn-Chl aが蓄積し始め、最終的にはChl aの10%程度に達した。(3) 通常培地で育てた細胞で、log phaseに酸化型Chl aが一時的に多量に検出される他は、Pheo aやZn-Chlなどの異常なChl類は検出されない。(4) 低温におけるChl aの蛍光は、early log phaseではF685が高く、log phaseの間にその蛍光収率は低下し、stationary phaseでは逆にF725が徐々に高くなった。(5) 以上の結果から、生成したZn-Chl aは光合成膜中に取り込まれ、アンテナとして機能しているものと推定された。
抄録全体を表示
-
古谷 将彦, 相田 光宏, 田坂 昌生
p.
481
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
植物は胚発生過程において、その後の発生に必須な基本的体制を確立する。双子葉植物の胚では、頂端―基部軸と放射軸の2つの体軸が形成され、その体軸に沿って一定のパターンで器官及び組織が形成される。これまで、オーキシンが胚頂端部のパターン形成に重要な役割を果たすことは示唆されてはいたが、分子レベルではアプローチされてこなかった。そこで我々は、シロイヌナズナの胚頂端部に異常を示すオーキシン関連変異体の分子遺伝学的解析とパターンマーカーとなりうる遺伝子の発現解析を行った。胚頂端部に異常を示すオーキシン関連変異体としては、オーキシン排出キャリアーをコードする遺伝子の変異体
pin1、セリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子の変異体
pidを用いた。その結果、
PIN1遺伝子と
PID遺伝子が、異なる系列でオーキシンの分布を介して子葉の分離・発達に働くことが示唆された。
さらに、胚におけるオーキシンの分布を想定するため、IAA生合成経路に乗る
YUCCA遺伝子の発現解析を行い、子葉の境界部で発現していることが分かった。このことから、子葉の境界部でオーキシンが合成され、子葉原基の先端部や胚の基部へと輸送されるといった胚におけるオーキシンの流れを想定することができた。また、オーキシンが胚頂端部に及ぼす影響を詳細に解析するため、シロイヌナズナの胚にオーキシンを投与したところ、胚の形態異常を引き起こすことが認められた。
抄録全体を表示
-
桧原 健一郎, 田坂 昌生
p.
482
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
我々はシロイヌナズナを用いて胚発生過程における茎頂分裂組織の形成および器官の分離に関与する
CUC1 (
CUP-SHAPED COTYLEDON 1)、
CUC2遺伝子を解析している。
cuc1もしくは
cuc2 単独変異体はごく低頻度で子葉の融合が観察される。一方、
cuc1 cuc2二重変異体は子葉の境界部が盛り上がることで1つのカップ状の子葉を形成し、また茎頂分裂組織が形成されないため、seedling lethalである。
CUC1,
2はどちらもNAC domainをもつタンパクをコードしており、転写因子として機能すると考えられている。子葉の境界部や茎頂分裂組織の形成に関与する新しい遺伝子を単離するため、
cuc2変異体をEMS処理し、芽生えにおいてカップ型の子葉を形成するものや茎頂分裂組織を欠失する
cuc2エンハンサー変異体の単離を行った。得られた
cuc2エンハンサー変異体を遺伝学的に調べたところ、その半数以上は
cuc1の新規のアリルであった。一方、残りの変異体に対してマッピングを行ったところ、
CUC1や
CUC2と同一のfamilyに属するNAC box 遺伝子(
CUC3)内に変異が見つかった。今回の発表ではこの
CUC3に関する解析結果を報告する。
抄録全体を表示
-
佐藤 豊, 伊藤 純一, 佐藤 奈美子, 伊藤 百代, 芦苅 基行, 長戸 康郎, 松岡 信
p.
483
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
頂端分裂組織は胚発生の過程で形成され発芽後は植物の形態形成の主要な場となる。頂端分裂組織の形成およびその機能維持機構の解明は植物の形態形成を理解する上で重要な課題である。本研究では、頂端分裂組織の形成およびその機能維持の機構を明らかにするために、イネの胚発生突然変異体
shoot organization1 (sho1)および
shootless2 (shl2)の遺伝子単離を行った。
sho1は胚発生の段階で頂端分裂組織が扁平な形態を示し、それに伴い葉の形態や葉序が異常になる幼植物体致死の変異体である。また、
shl2は胚発生で頂端分裂組織が特異的に欠損する変異体で胚発生致死である。最近、表現型の弱い
shl2変異体を新たに単離したところ
sho1変異体と極めて類似した幼植物体致死の表現型を示すことが明らかになり、
SHO1遺伝子と
SHL2遺伝子は非常に密接した過程に関与していることが予想さた。遺伝子単離の結果、
SHO1遺伝子および
SHL2遺伝子はともにRNA interference (RNAi)の機構に関連したタンパクをコードすることが明らかになった。このことから、イネのシュート形成およびその維持にRNAiと一部類似したメカニズムが働いていることが予想された。
抄録全体を表示
-
岩川 秀和, Endang Semiarti, 上野 宜久, 相馬 徹平, 小島 晶子, 塚谷 裕一, 町田 千代子, 町田 泰則
p.
484
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
植物の葉は成長に伴って茎頂メリステムから発生分化し、三つの軸(向軸背軸・基部先端部軸・中央側方軸)に沿って成長する。シロイヌナズナの
asymmetric leaves2 (
as2)変異体は、小葉様の構造体が形成され、葉の切れ込みや葉脈パターンが左右非対称になり、葉の左右相称軸としての中肋の形成に異常が認められた。我々は、葉の発生分化を分子レベルで解析するために、
as2変異の原因遺伝子を同定した。
AS2遺伝子は植物特有の新奇蛋白質をコードし、シロイヌナズナのゲノム上に42個のメンバーを持つファミリーに属していると考えられた。これらの遺伝子がコードする蛋白質は、C-motif (Cx2Cx6Cx3C)とロイシンジッパーを含むAS2ドメインをN末側に持つが、C末側の領域はあまり保存されていない。
as2とよく似た表現型を示す変異体として
as1が知られている。
AS1遺伝子はMYB様の転写因子をコードしていることが報告されている。我々はAS1とAS2がin vitro系において相互作用することを明らかにした。また
AS1、
AS2の発現を調べたところ、葉原基において共に発現している領域が存在した。さらに変異型GFPを用いて細胞内局在を調べたところ、核に共局在した。これらのことからAS1とAS2は相互作用して、核で機能していると考えられる。これにより、AS1・AS2複合体が葉の発生過程の初期段階において機能していることが考えられる。
抄録全体を表示
-
Yoshihisa Ueno, Takamichi Matsumoto, Hidekazu Iwakawa, Miki Nakazawa, ...
p.
485
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
Building of the plant architecture is achieved by the highly organized growth and differentiation of cells. Arabidopsis mutant,
asymmetric leaves2 (
as2), exhibited ectopic leaf lobe and altered leaf venation pattern in asymmetric manner. Shoot regeneration potency from leaves of
as2 mutant is higher than that of wild type. Leaf is generated and differentiated from totipotent shoot apical meristem (SAM). Furthermore class1-
KNOX genes which encode SAM-related homeobox proteins were expressed ectopically in developed leaves of
as2 mutant. Thus AS2 may be involved in spatially and/or temporally proper cell differentiation and also in direct or indirect repression of class1-
KNOX.
AS2 gene encodes a protein that belonged to a novel family (named AS2 family). AS2 interacted with Myb-like transcription factor ASYMMETRIC LEAVES1. To further understand how AS2 regulates the differentiation of cells and the expression of class1-
KNOX, we carried out screening of another factors that interacted with AS2 physically and/or genetically.
抄録全体を表示
-
石川 貴章, 町田 千代子, 町田 泰則
p.
486
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
eye (
embryo yellow)は胚形成の成熟期に異常を示す変異体として、シロイヌナズナのT-DNA挿入系統より分離された。発芽した
eye変異体は、矮小であり、茎頂から多くの不定葉を形成した。
EYE遺伝子は、アミノ末端側にコイルドコイル構造を持つタンパク質をコードしていると予測された。このコイルドコイル構造を含むアミノ末端領域のみを発現させたところ
eyeの表現型を回復することができた。このことから、アミノ末端側の領域がEYEの機能にとって重要であることが示された。また、EYEは哺乳動物のCog7のホモログである。Cog7は、ゴルジ装置に局在するCOG複合体の構成因子の一つであることから、
eye変異体の表現型は、細胞壁多糖類の合成やタンパク質の修飾といったゴルジ装置の機能が低下したことが原因なのかもしれない。
抄録全体を表示
-
神谷 紀子, 伊藤 純一, 長戸 康郎, 松岡 信
p.
487
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
SCR遺伝子は様々な植物において根の内皮及び静止中心に発現することが報告されており、シロイヌナズナにおいては内皮・皮層始原細胞の娘細胞における不等分裂に関与していることが明らかとなっている。
我々はイネより
OsSCR遺伝子を単離し、その発現パターンを詳しく調べた。根においては他の植物と同様に内皮及び静止中心に発現していたが、地上部においては非常に興味深い発現パターンを示した。若い葉原基(P1, P2)では将来維管束が分化する領域以外のすべての細胞で発現しており、葉原基の発達に伴い
OsSCRはL1層のみに発現するようになる。さらに、発達した葉原基の先端側ではある間隔をおいて特定の細胞列、あるいは特定の細胞に発現していた。これ以降の発現パターンからこれらの細胞列が気孔の形成される列であり、気孔形成の初期においては孔辺母細胞と副細胞に発現し、その後、孔辺母細胞が等分裂をするころには副細胞のみに発現することが明らかとなった。これらのことから、
OsSCRは内皮の形成のみでなく、気孔の形成における不等分裂(特殊な細胞分裂)にも関与している可能性が考えられる。
抄録全体を表示
-
武田 泰斗, 諏訪 裕子, 北野 英巳, 上口(田中) 美弥子, 芦苅 基行, 松岡 信, 上口 智治
p.
488
発行日: 2003/03/27
公開日: 2004/02/24
会議録・要旨集
フリー
高等植物の最終的な形態を決定する過程で腋芽の形成と生長はきわめて重要な役割を果たしている。イネ
TB1遺伝子(
OsTB1)は、当初トウモロコシの
TEOSINTE BRANCHED 1 (
TB1)遺伝子と一次構造が酷似した遺伝子として単離された。
TB1はトウモロコシの側枝の生長に抑制的に働く遺伝子として同定され、TCPドメインと命名されたDNA結合ドメインを有する転写因子であると考えられている。イネ
OsTB1遺伝子の生物学的機能を探る目的でこの遺伝子の過剰発現体を作製したところ、分げつ原基の形成は正常であるにもかかわらず、分げつ数は顕著に抑制された。また過剰発現体の示す多面的な表現型に着目して
OsTB1の機能欠損変異体の表現型を推測したところ、古典的な形態変異マッピングマーカーである
fc1変異体が
OsTB1のnull mutationを保持していることを見出した。
fc1変異体を野生株と比較したところ、この変異体は分げつ数の増加という表現型を示すことが判明した。GUS融合遺伝子を用いた発現解析から、
OsTB1は分げつ原基全体で発現している。以上の結果から、
OsTB1遺伝子産物はトウモロコシの
TB1同様に、側枝の生長を負に制御することによって植物体地上部の形態決定に重要な役割を果たしていることが強く示唆される。
抄録全体を表示