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亀岡 啓, 有手 友嗣, 花田 篤志, 秋山 康紀, 林 誠, 山口 信次郎, 経塚 淳子
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0353
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ストリゴラクトンは腋芽の伸長を抑制する植物ホルモンであるが、その受容やシグナル伝達の経路には不明な点が多い。
イネのDWARF 14(D14) はα/β-hydrolase様タンパク質をコードしており、d14変異体はストリゴラクトン非感受性の表現型を示す。また、イネはD14パラログであるD14likeを持つが、D14likeオーソログはD14オーソログより広く地上植物に保存されていることが明らかとなっている。しかし、D14 とD14likeがストリゴラクトン経路でどのように働いているのかは未解明である。
D14like RNAi系統を作出し、表現型をd14変異体と比較すると、メソコチルの伸長促進は両方で見られたが、腋芽の伸長促進や根の伸長阻害などの表現型はd14変異体のみで見られた。このことから、D14 とD14likeが重複した働きをする場合と独自に働く場合があることが明らかとなった。
また、RNA in situ ハイブリダイゼーションを行うと、D14とD14likeのmRNAはメリステムや若い葉、維管束の伴細胞と木部柔組織で発現が見られたが、GFP融合タンパク質をオウンプロモーターで発現させた系統でタンパク質の局在を観察すると、mRNAの発現部位以外に、師部要素の中にもGFPの蛍光が観察された。このことから、D14タンパク質は師管液中を輸送されている可能性が考えられた。
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懸樋 潤一, Tong Wurina, 本瀬 宏康, 高橋 卓
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0354
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シロイヌナズナにおいて、ポリアミンの一種であるサーモスペルミンの合成欠損株
acaulis5 (acl5)は、茎の伸長が著しく欠損する。ポリアミンの基質の一つである脱炭酸S-アデノシルメチオニンは、S-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素(SAMDC)によって合成される。シロイヌナズナにはSAMDCをコードする遺伝子が4つ存在し、
SAMDC1~3は、過剰なスペルミンまたはスペルミジンの存在下で、5’リーダー配列にある小さなORF、uORFによって翻訳が負に制御されるが、
SAMDC4/BUD2はuORFを持たず、異なる制御を受けると考えられる。
SAMDC4/BUD2欠損変異株
bud2が茎の伸長欠損を示すこと、
SAMDC4/BUD2の発現がサーモスペルミンにより負のフィードバック制御を受けることから、
SAMDC4/BUD2はサーモスペルミンの合成に深く関わると予想された。
bud2変異株におけるポリアミン含量を調べた結果、サーモスペルミンが検出限界以下であることがわかった。また、
acl5変異の茎の伸長を回復させるサプレッサー変異、
sac51-d, sac52-d, sac56-dの効果をかけ合わせにより調べたところ、いずれも
bud2変異の茎伸長欠損を抑圧することが示された。以上の結果は、
SAMDC4/BUD2がサーモスペルミンの合成に主要な役割を果たすという仮説を支持する。
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Tong Wurina, 懸樋 潤一, 今井 章裕, 本瀬 宏康, 新津 勝, 高橋 卓
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0355
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シロイヌナズナの
ACAULIS5 (ACL5) 遺伝子はサーモスペルミン合成酵素をコードし,その遺伝子欠損突然変異は木部組織の過剰な分化と著しい茎の伸長阻害をもたらす.サーモスペルミンを外から加えると,植物ホルモン変異体に対して外的なホルモンが効果を示すように,表現型の回復が見られる.しかし,サーモスペルミンに対する植物の応答性は,分子レベルでほとんど調べられていない.本研究では外的なサーモスペルミンに応答する遺伝子を明らかにするために,サーモスペルミンとその構造異性体であるスペルミンの両方を作らない
acl5 spms二重変異体の芽生えを用いて,Gene-Chip解析を行った。その結果,維管束分化の誘導に関わる多くの遺伝子の発現がサーモスペルミンによって負に制御されることが確かめられた.これらの多くは,未処理でも野生型に対して変異株において発現レベルが上昇していた.サーモスペルミンに応答して発現が増加する遺伝子,サーモスペルミンとスペルミンの両方に応答する遺伝子も,わずかながら見つかった.これらの結果について,報告する.
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近藤(小山内) 久益子, 明賀 史純, 流水 利恵, 篠崎 一雄
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0356
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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Rhomboidタンパク質は6-7回膜貫通型のSerプロテアーゼで原核生物から真核生物に渡り広く保存されている。ショウジョウバエのRhomboid-1タンパク質はEGF受容体リガンドを分解することが分かっており、このような基質特異性は酵母をはじめ生物間をまたがって保存されている。それに対し植物でのターゲットは依然として未知のままである。シロイヌナズナゲノムには15個のRhomboid 様遺伝子が存在するが、そのうち13あるいは14個において酵素活性に必要であるとされるアミノ酸が保存されている。AtRBL2が葉緑体のトランスロコン成分のTic40を切り出すことが示唆されているが、他のメンバーの機能は未だ不明である。我々は今回AtRbl10がシロイヌナズナにおいてABA感受性に関与していることを見出したので報告する。AtRbl10は葉緑体トランジットペプチドを有しており、葉緑体タンパク質であると推定される。AtRBL10遺伝子に
Ac/Dsトランスポゾンが挿入された変異体やT-DNAが挿入された変異体を、ABAを含む培地で生育させたところ、
atrbl10変異体では野生型植物体と比較して生育阻害が顕著であることが分かった。一方、通常条件下で生育させた変異体の光合成活性は野生型植物体との差は見られなかった。現在GFPやGUSを用いた発現解析を行っており合わせて発表する予定である。
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矢津 芙美子, 柿崎 智博, 中山 克大, 稲葉 靖子, 稲葉 丈人
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0357
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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葉緑体から核へと伝達されるプラスチドシグナルは、葉緑体機能と核遺伝子発現を協調させるために必須のシグナルである。これまでの研究で、除草剤や抗生物質処理、あるいはタンパク質輸送の阻害により何らかのプラスチドシグナルが発生するとされている。それぞれの薬剤、あるいは突然変異の作用点が異なるため、それぞれの処理により異なるプラスチドシグナルが発生すると考えられているが、その実体は不明である。そこで、演者らはそれぞれのプラスチドシグナル誘発処理に対してユニークな核遺伝子発現応答が見られるか調べた。ノルフラゾン及びリンコマイシン処理、あるいは葉緑体タンパク質透過装置であるToc159タンパク質が欠失した変異体 (
ppi2-2変異体)における核遺伝子発現を比較解析したところ、三つの処理の間に顕著な違いは見られず、同じような遺伝子発現応答をしていることが示唆された。そこで次に、これら三つの処理で同じように影響を受ける葉緑体内の代謝系が存在するかどうか調べた。その結果、
ppi2-2変異体では葉緑体ゲノムにコードされた
accD及び
rps14遺伝子のRNA編集が損なわれていることが明らかになった。中でも、
rps14遺伝子のRNA編集は、ノルフラゾン及びリンコマイシン処理した植物でも共通して阻害されていた。これらの結果を踏まえ、プラスチドシグナルと葉緑体RNA編集の関連について議論する。
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稲葉 靖子, 飛田 耶馬人, 矢津 芙美子, 松村 英生, 寺内 良平, 稲葉 丈人
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0358
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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発熱植物ザゼンソウは、寒冷環境下においても花の体温を20℃前後に維持できる。発熱ステージは生長ステージとともに移行して、雌期における安定した恒温性は、雄期に入ると失われる。最近、雌期の花序には発達したミトコンドリアが豊富に含まれており、一方で雄期になるとミトコンドリアの量が減り液胞の割合が増えることが示された(J. Exp. Bot., 60, p3909-22, Planta, 121, p121-30)。しかし、こうした細胞内部の特徴を支える分子機構は依然として不明である。そこで本研究では、汎用的な遺伝子発現解析法であるSuperSAGEを用いて、生長ステージの移行に伴う遺伝子発現プロファイルの変化を解析した。まず異なる生長ステージごとにSuperSAGEライブラリーを作成して、ザゼンソウcDNAライブラリーとのアノテーションを行った。その結果、雌期で高く発現する遺伝子のうち、熱産生に重要な呼吸やミトコンドリア機能に関連する遺伝子が約4割を占めた。これらの遺伝子の大半は、シロイヌナズナの花のMPSSデータセットと比べて高く発現していた。一方で、雄期で高く発現する遺伝子のうち、液胞に局在するシステインプロテアーゼの発現量が顕著に高く約6割を占めた。以上の結果は、先に観察した細胞内部の特徴を支持しており、本発表では発熱ステージと生長ステージをつなぐ分子機構について議論したい。
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岩野 恵, 永井 里奈, 梶村 直子, 円谷 徹之, 磯貝 彰, 高山 誠司
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0359
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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アブラナ科植物では、柱頭の乳頭細胞に他家の花粉が受粉すると、花粉は吸水し花粉管を発芽・伸長させる。花粉管は乳頭細胞の細胞壁に侵入し、花柱内を伸長し子房に達して受精が成立する。それに対して、自家の花粉が受粉した場合には、花粉の吸水・発芽は阻害され、受精は成立しない。このような自家不和合性反応は、花粉側のS遺伝子産物であるSP11が柱頭の乳頭細胞の
S遺伝子産物であるSRK(
S-receptor kinase)と相互作用し、SRKの自己リン酸化反応がおこることにより誘起される。しかし、SRKのリン酸化後の花粉の吸水・発芽抑制にいたる経路は明らかではない。これまでに我々は、他家・自家受粉後の乳頭細胞で誘起される生理変化を解析し、他家受粉時の乳頭細胞で、花粉の吸水・発芽に伴いCa
2+濃度が変動すること、花粉直下の領域でアクチン重合が促進されること、自家受粉時にはむしろアクチンが脱重合すること、アクチンの重合阻害剤であるサイトカラシンDが花粉の吸水を阻害することを明らかにしてきた。そこで本研究では、乳頭細胞の容積の大半を占める液胞や小胞体などに着目し、超高圧電顕トモグラフィーにより、他家・自家受粉過程におけるこれらオルガネラの3次元構造を比較解析した。また、これらのオルガネラのライブセルイメージングの結果についても報告したい。
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島田 貴士, 嶋田 知生, 西村 いくこ
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0360
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物脂質は生体膜成分だけでなく,貯蔵物質,シグナル分子,防御物質として重要な生理機能を担っている.植物脂質はオイルボディというオルガネラに貯蔵される.種子は多数のオイルボディに大量の貯蔵脂質を蓄積し,オイルボディの膜タンパク質オレオシンはオイルボディのサイズや種子の耐凍性を担っている (1).一方,葉の細胞のオイルボディに関する生理学的知見は乏しい.カレオシン3 (
CLO3)は,種子に局在するオイルボディ膜タンパク質のホモログで,ストレスに応答する.CLO3とGFPの融合タンパク質をCLO3プロモーターにより誘導する形質転換シロイヌナズナ(pCLO3::CLO3-GFP)の観察を行った所,CLO3-GFP蛍光は若い植物体では見られなかったが,ストレスにより誘導され葉のオイルボディ膜上に局在した.pCLO3::CLO3-GFPをEMSにより変異原処理し,若い時期でもCLO3-GFP蛍光を発する変異体を選抜した.現在までに3系統の変異体の単離に成功している.そのうちの一つの系統(#025-681)では,発芽後10日目の本葉でCLO3-GFP蛍光が見られた.野生型では発芽後10日目の本葉にオイルボディが見られないが,#025-681ではオイルボディが認められた.栄養器官におけるオイルボディ形成について考察する.
(1) Shimada et al. (2008) Plant J.
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山田 健志, 永野 惇, 仁科 桃子, 西村 いくこ, 西村 幹夫
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0361
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ERボディはアブラナ目に見られる小胞体由来のオルガネラである.ERボディには,βグルコシダーゼ,PYK10が大量に蓄積し,耐虫性,耐病性に関与すると考えられている.シロイヌナズナにおいて転写制御因子NAI1と,ERボディタンパク質NAI2がERボディ形成に必要であるが(1),その具体的な形成機構は不明であった.私たちは,ERボディを持たないタマネギにシロイヌナズナのPYK10とNAI2を同時に発現させるとERボディがされることを見いだした.このことから,ERボディ形成はNAI2とPYK10の発現で十分であることが明らかになった.nai1変異体を用いたトランスクリプトーム解析から,ERボディの膜タンパク質,MEB1,MEB2を見いだした.NAI2はPYK10やMEB1,MEB2と結合することが明らかとなった.このことから,NAI2はERボディの形成とMEB2のERボディの成分であるPYK10,MEB1,MEB2のERボディへの局在を制御していることが明らかになった.
(1) Yamada et al., (2008) Plant Cell. 20, 2529-2540.
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後藤 志野, 真野 昌二, 中森 ちひろ, 近藤 真紀, 山脇 隆一, 加藤 朗, 西村 幹夫
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0362
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物ペルオキシソームは植物ホルモンの生合成や光呼吸に関与し、植物独自の機能を進化の上で獲得してきた。興味深いことに、外的環境の変化や組織の違いによって可逆的にペルオキシソームの機能転換が起こることが知られており、このようなペルオキシソームの柔軟性が植物の高次機能獲得の鍵となっている。ペルオキシソームは独自のゲノムを持たないため、機能、形態維持に必要な遺伝情報は全て核にコードされている。そのため、ペルオキシソームの柔軟な機能転換において、サイトゾルからペルオキシソームへの新生タンパク質の輸送は厳密に制御されている。我々は、ペルオキシソームの形態形成の分子機構を明らかにするために、ペルオキシソーム可視化形質転換体を親株としたスクリーニングを行い、種々の
aberrant peroxisome morphology (
apm)変異体を単離してきた。このうちのひとつ、
apm10変異体ではタンパク質の輸送効率が著しく低下しており、APM10がペルオキシソームにおける輸送機構の構成因子であると期待された。遺伝子同定の結果、APM10はペルオキシソーム輸送シグナルをもつLONプロテアーゼであることが明らかとなった。今回の報告では、タンパク質輸送機構においてLONプロテアーゼが担う役割を考察したい。
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真野 昌二, 荒木 雅美, 中森 ちひろ, 曳野 和美, 西村 幹夫
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0363
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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我々はペルオキシソームがGFPで可視化された形質転換シロイヌナズナを親株として変異処理を施し、GFPの蛍光パターンが親株と異なる
apm (
aberrant peroxisome morphology) 変異体を多数選抜し、ペルオキシソーム形成や機能に関わる因子の同定と機能解析を進めている。
apm7変異体では、GFP蛍光がサイトソルでも観察されることから、ペルオキシソームへのタンパク質輸送が低下した変異体であると考えられる。マッピングの結果、
APM7遺伝子はペルオキシソーム形成因子群 (PEROXIN: PEX) の1つPEX4に相同性のあるタンパク質をコードしていることが明らかとなった。PEX4は酵母でのみ同定されおり、ユビキチン系のE2酵素として働くUbiquitin-conjugating (UBC) enzymeとして機能することが報告されているものの、植物のPEX4 のUBC活性の有無などの解析は行われていない。今回、我々はシロイヌナズナのPEX4もUBC活性をもつこと、その活性がペルオキシソームへのタンパク質輸送に必要であること、
apm7では異常なユビキチン化が起こっていることを明らかにした。現在、
PEX4プロモーターと
GUS融合遺伝子を発現する形質転換体の解析およびPEX4の局在性について解析を進めている。
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金井 雅武, 林 誠, 西村 幹夫
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0364
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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種子の脂質合成を制御する機構の解明は植物科学における重要な課題の1つである。植物では葉緑体で合成された脂肪酸を用いて、ER内でトリアシルグリセロールを合成し、オイルボディに蓄積される。このように脂質合成は3つのオルガネラが関与しており、種子中の脂質合成を制御する機構は未解明な部分が数多く残されている。我々は典型的な脂肪性種子植物であるシロイヌナズナを用いて、種子中の脂質含量が変化している変異体を種子の密度を指標に選抜した。種子密度が高くなっている変異体種子の中から、野生株よりも脂質蓄積量が低下している変異体として
HS3(
Heavy Seed3)が選抜された。
HS3はDEADボックスDNA/RNAヘリカーゼをコードし、葉緑体に局在した。
HS3は発芽後の初期生長及び、種子形成前期に強い発現を示し、
hs3欠損変異体は発芽後の初期生長及び、種子形成前期において特異的な葉緑体の発達不全を示した。定量PCR解析の結果から
hs3変異体では発芽後の初期生長及び、種子形成前期において特異的に葉緑体ゲノムにコードされている遺伝子の発現が低く抑えられており、それらの遺伝子の中には脂肪酸合成酵素である
ACCaseのサブユニットである
ACCDが含まれていた。以上の結果からHS3は葉緑体内において葉緑体ゲノムの遺伝子発現に関与するタンパク質であり、初期生長及び種子の脂質貯蔵合成に関与していることが示された。
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柴田 美智太郎, 及川 和聡, 真野 昌二, 近藤 真紀, 吉本 光希, 大隅 良典, 西村 幹夫
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0365
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ペルオキシソームを可視化したシロイヌナズナを用いてペルオキシソームの細胞内局在の異なる変異株
peup1 (
peroxisome unusual positioning 1)をスクリーニングした。
peup1におけるペルオキシソームは凝集体を形成し、サイトゾルをただよっている。しかしながら、この凝集体は葉肉細胞など光合成細胞のみで観察され、根やトライコームといった非光合成細胞では観察されない。シロイヌナズナにおけるペルオキシソームの機能として、光呼吸、脂肪酸の分解、植物ホルモンの合成、ポリアミンの合成などが知られている。このうち光合成細胞におけるペルオキシソームの機能は主に光呼吸である。光呼吸に関わるペルオキシソームを特に緑葉ペルオキシソームと呼ぶ。ペルオキシソームにおいては副産物として毒性の強い過酸化水素が産生されるが、カタラーゼによって水と酸素に分解される。これまでの解析から、原因遺伝子
PEUP1はオートファジー関連遺伝子をコードしており、
peup1ではオートファジーの欠損が示唆される。また、免疫電子顕微鏡観察およびイムノブロットの結果から、
peup1におけるペルオキシソームの凝集体では、低活性カタラーゼの蓄積が示された。しかも、
peup1には活性酸素種が蓄積し、植物体の老化が早まっている。以上の結果から緑葉ペルオキシソームの機能維持に対するオートファジーの役割を議論する。
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後藤 千恵子, 田村 謙太郎, 嶋田 知生, 西村 いくこ
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0366
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物細胞の核は組織やその発達段階によって異なった形態をとる.核の形態維持や形態変化は核そのものの機能,ひいては細胞・組織・器官・個体レベルでの高次生命現象に関与していると考えられるが,その分子機構はほとんど明らかにされていない.この分子機構の解明を目標に,核の形態が異常になったシロイヌナズナの変異体
kakuを解析した。まず,核局在タンパク質とGFPとの融合タンパク質を過剰発現する形質転換体を作製した。この形質転換体の種子をEMS処理し、得られたM2個体を蛍光顕微鏡で観察して核の形態が異常になった変異体を選抜した.野生型シロイヌナズナの表皮細胞の核は紡錘形であるが,
kaku変異体では核が球形であるものや,紡錘形で巨大なものが観察された.今回は,核が球形かつ小型の
kaku2と
kaku4のマップベースドクローニングを行った.
kaku2変異体では
LITTLE NUCLEI 1 (LINC1)遺伝子に塩基置換変異が見つかった.LINC1は,核周縁部に局在するコイルドコイルタンパク質で (Dittmer
et al. 2007,2008),核の形態形成に関わる主要な骨格タンパク質であると考えられる.一方,
kaku4変異体では機能未知の遺伝子内に塩基置換が見つかった.タバコの葉における一過的発現系により,KAKU4は核膜に局在し,その過剰発現が核の伸長に寄与する可能性のあることが示唆された.
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中井 篤, 林 誠, 深尾 陽一朗, 吉瀬(新井) 祐子, 西村 幹夫
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0367
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
真核細胞に存在するオルガネラの1つであるペルオキシソームは脂肪酸代謝、光呼吸、活性酸素種の除去など植物の一生を通じて重要な機能を担っている。さらに、酵母や哺乳動物では観察されず、植物特異的な現象として、高等植物のペルオキシソームは、環境や組織、成長段階に応じて可逆的な機能転換を行うことが知られている。しかし、ペルオキシソームのタンパク質は未同定のものが多く残されていると考えられる。本研究では、定量的プロテオーム解析によるペルオキシソームタンパク質の網羅的同定と共に、ペルオキシソーム機能転換時のダイナミックなタンパク質変動を明らかにした。
暗所発芽させたダイズ子葉のグリオキシソームと、光照射して機能転換させた緑葉ペルオキシソームを密度勾配遠心によって単離した。iTRAQを用いたMS解析によって各ペルオキシソームタンパク質の網羅的同定と、機能転換に伴うペルオキシソームタンパク質の量的変動を解析した。グリオキシソームタンパク質と緑葉ペルオキシソームタンパク質は、変動パターンにおいて明確に区別することができた。ペルオキシソーム機能転換時のタンパク質変動パターンを明らかにすることで、他オルガネラ由来コンタミネーションと考えられるタンパク質を排除するとともに、複数の新規ペルオキシソームタンパク質を同定した。
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國枝 正, 近藤 真紀, 嶋田 知生, 横山 隆亮, 西村 幹夫, 西村 いくこ, 西谷 和彦
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0368
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シロイヌナズナの種皮は,一次細胞壁と細胞膜の間にムシレージと呼ばれるペクチン性多糖を大量に蓄積する特徴をもつ.吸水によって膨張したムシレージは,一次細胞壁を突き破り,種皮から放出される.放出されたムシレージは,種子の周りにゲル状のマトリックスを形成することで,発芽時の乾燥から胚を保護している.
我々は,分泌型のペルオキシダーゼ(PER36)が,ムシレージ蓄積細胞に一過的に発現することを見出した.PER36のT-DNA挿入変異体では,ムシレージ放出時の一次細胞壁の崩壊が起こらず,ムシレージの放出異常を示した.この一次細胞壁の崩壊異常は,細胞壁中のペクチンを可溶化させるEDTAやNa
2CO
3によって種子を処理することで改善した.PER36プロモーター制御下でPER36-GFP融合タンパク質を発現させたところ,ムシレージ放出の際に崩壊する一次細胞壁で強いGFPの蛍光シグナルが観察できた.したがって,PER36はムシレージ蓄積細胞において一次細胞壁の分解に関与していると考えられる.また,
per36変異体では,野生型のムシレージで観察される細胞壁の繊維状構造が顕著に減少した.一般に,ペルオキシダーゼは細胞壁成分間の架橋反応を触媒して,細胞壁の構造を強固にすることが知られている.以上の結果は,PER36が一次細胞壁の分解とムシレージの架橋形成の双方を制御していることを示唆している.
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齋藤 扶美恵, 新間 陽一, 岡 拓二, 陶山 明子, 横尾 岳彦, 松岡 健, 地神 芳文
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0369
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物に固有なO-結合型糖鎖にはヒドロキシプロリン残基に複数の糖が付加したアラビノガラクタンとアラビナン、およびセリン残基に1個のガラクトースが付加したSer-O-Gal構造が知られている。アラビナンとSer-O-Gal構造は細胞壁タンパク質であるエクステンシンに多く存在し、細胞壁形成において重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、これらの生理的役割は未知であり、この解明の一環として、我々はセリン残基へのO-結合型ガラクトース転移酵素(SGT)遺伝子の同定を行った。最初に、SGT活性測定系の確立を試みた。クラミドモナスのミクロソーム画分を酵素源、合成ペプチドを受容体としてSGT活性を測定した。HPLCによって複数のプロダクトを検出し、ガラクトシダーゼ処理、β脱離処理によって、セリンにα結合でガラクトースが付加していることを確認した。この活性測定系を用いて、クラミドモナスの粗抽出液からSGTを精製し、SGT遺伝子を同定した。クラミドモナスとシロイヌナズナのSGT遺伝子を酵母で発現させ、活性を測定したところSGT活性が確認できた。また、シロイヌナズナのSGT変異体でのSGT活性の消失、細胞壁画分におけるガラクトース量の減少が確認された。この研究は「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発」(経済産業省)プロジェクトの一環として行われたものである。
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辻 真喜, 石井 忠, 田幸 正邦, 小西 照子
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0370
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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UDP-アラビノピラノースムターゼ(UAM)はUDP-アラビノピラノース(UDP-Arap)とUDP-アラビノフラノース(UDP-Araf)の相互変換を触媒する酵素である。UDP-Arafはアラビノフラノース(Araf)残基の合成基質であることから、UAMはアラビナンなどAraf残基を含む糖鎖合成に関わっていると考えられる。これまでに、我々は大腸菌によりクラミドモナス由来組換えタンパク質を調整した。組換えUAMの酵素科学的性質を測定したところ、UDP-ArapおよびUDP-Araf対するKm値はそれぞれ6.5mM、0.2mMであった。一方、イネから精製したUAMのKm値はUDP-ArapおよびUDP-Arafに対してそれぞれ0.45mM、0.06mMであった。このことより、組換えUAMではイネ由来UAMに比べ、UDP-Arapに対する親和性が低いことが分かった。酵素はリン酸化や糖鎖の修飾を受けることで、その活性が制御されることが知られている。そこで、UAMのリン酸化について検討したところ、クラミドモナスから精製したUAMはリン酸化修飾されていることが明らかとなった。現在、UAMにおけるリン酸化修飾と酵素活性ついて解析を行っている。
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濁川 睦, 渡辺 藍子, 園木 和典, 伊藤 幸博
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0371
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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セルロース由来のバイオエタノールの効率的な生産を目的とし、セルロースを糖に分解する微生物の研究と改良が盛んに行われている。これらの研究と並行して、セルロースを生産する植物側も改良されれば、分解しにくいセルロースを効率よくエタノールにすることができる。そこで、セルロース由来のバイオエタノール生産に適したイネの開発を試みている。具体的には、時期特異的プロモーターとセルラーゼ遺伝子を用いた糖化性の向上したイネの開発を目指している。
本研究では、まずセルラーゼ過剰発現イネを作成した。RT-PCRによりセルラーゼの過剰発現を確認し、さらに蛍光基質を用いてセルラーゼ活性の向上を確認した。
次に形質転換イネの表現型を観察した。セルラーゼ過剰発現イネでは葉身の褐変、縮れ、分岐や不稔などの異常が観察された。また糖化試験を行ったところ、形質転換イネは茎の糖化性が向上していた。これらにより、セルラーゼ過剰発現によりセルロース由来のバイオエタノール生産に適した糖化性が向上したイネの作出が可能であると考えられた。
さらにセルラーゼ過剰発現によるイネ生育への影響を回避するため、発現時期を老化時期に限定することを試みている。現在、SGRプロモーターの有用性を検討している。
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藤木 友紀, 大隅 良典, 西田 生郎
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0372
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
オートファジーに必須な遺伝子群(
ATG )の一つとして単離されたAtg6は、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)と複合体を構成してその活性や細胞内局在を調節することで、オートファジー以外にも様々な生命現象に関わっていると考えられている。植物ではPI3Kは花粉発芽に必須で、逆遺伝学的な解析は進んでいなかったが、我々はPI3K調節因子としてのAtg6に着目することで、植物の発生や成長制御におけるPI3K複合体の役割を明らかにしたいと考えた。シロイヌナズナのAtATG6破壊株もPI3K欠損株と同様、雄性不稔となるが、花粉特異的プロモーターを利用した
AtATG6 の機能相補により雄性不稔を回避し、
atatg6 のホモ変異体植物を得ることができた。この変異体ではPI3Pの蓄積量が低下し、オートファジー不能となるだけでなく、著しい生育阻害など多面的な表現型が見られた。また、マイクロアレイ解析から老化や傷害応答遺伝子を含め多様な遺伝子発現の誘導が示唆された。
atatg6 変異体は、植物のPI3K複合体が担うリン脂質シグナリングと生理機能を理解するモデルケースとして期待される。さらに、AtAtg6の結合タンパク質の一つとしてAtUVRAG を同定し、その変異体表現型を
atatg6 と比較したので、あわせて報告する。
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愿山 郁, Britt Anne, 真木 寿治, 梅田 正明
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0373
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
DNAチェックポイントとは、ゲノム上のダメージや複製フォークの進行阻害といった問題を感知し、直ちに細胞周期を停止させる仕組みである。このチェックポイント機構が機能しなければ、ゲノムが正確に複製される前に細胞分裂が生じてしまうため染色体異常が生じ、細胞を正常に維持出来なくなる。
植物におけるDNAチェックポイントの研究は酵母や動物に比べて遅れをとってきたが、近年になって動物のチェックポイント因子のオルソログがシロイヌナズナにおいていくつも単離されていることから、植物においてもチェックポイントは重要な役割を果たしていると考えられる。その一方で、動物のチェックポイント因子の中には、いまだ植物では見つかっていない因子もあることなどから、植物と動物のチェックポイントの仕組みは異なることが予想される。これまでに我々は、植物のみがもつチェックポイント因子としてシロイヌナズナの転写因子SOG1を単離し、その機能解析を行ってきた。その中で、SOG1の働きは動物のガン抑制遺伝子であるp53と似ているが、その両者にアミノ酸配列のホモロジーがないことが明らかになり、植物は進化の過程で動物とは異なったチェックポイント機構を獲得した可能性が考えられた。現在はSOG1を中心としたさらなる解析を行っており、これによって植物に特異的なチェックポイント機構の仕組みが明らかになることを期待している。
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大野 裕介, Narangajavana Jarunya, 山本 章子, 服部 束穂, 加賀谷 安章, Paszkowski Jerzy, ...
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0374
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
クロマチンの状態はエピジェネティック制御の基礎となっている。DNA複製に伴うクロマチンの再構築は、エピジェネティック情報の伝達に不可欠であるが、そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。我々は、クロマチン再構築に寄与することが示唆されているシロイヌナズナの核内因子BRU1について解析を行っている。これまでの解析からBRU1欠損株は、ヘテロクロマチン構造の不安定性や構成的なDNA損傷応答を示すことが示されていた。本研究では、
bru1が
STMや
FUS3など、組織分化の鍵となる転写制御因子であり、かつポリコーム群産物による発現抑制を受ける遺伝子の制御異常を引き起こすことを示す。また、マイクロアレイを用いた解析でも、
bru1で発現上昇する遺伝子が、しばしばポリコーム群産物による発現制御に関わるヒストン修飾(H3K27me3)の標的となっていることが示された。以上のことから、
bru1は異なるタイプのエピジェネティック制御に広範に影響することが示唆された。一方で、
bru1で発現上昇する遺伝子の多くは染色体上で偏在し、174~499 kbのクラスターを形成していた。しかしながら、このクラスター領域には、これまでに知られたエピジェネティックマークの偏在は見られない。このクラスターがどのような異常を示しているのか、現在さらに解析を進めている。
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藤 泰子, 金 鍾明, 松井 章浩, 栗原 志夫, 諸澤 妙子, 石田 順子, 田中 真帆, 遠藤 高帆, 角谷 徹仁, 豊田 哲郎, 木村 ...
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0375
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素HDA6は、RNA依存性DNAメチル化を介したヘテロクロマチン制御因子として同定されている。我々が行った全ゲノム発現解析の結果から、HDA6とDNAメチル化酵素MET1は、ヘテロクロマチン領域を主とした共通の遺伝子を抑制することが示された。また
hda6機能欠損により、これら領域ではヒストンアセチル化の上昇など、エピジェネティックなクロマチン状態の推移が認められた。一方、同領域にはRDR2依存的な24nt siRNAが多数マップされるにもかかわらず、その転写活性は
rdr2変異では殆ど影響を受けなかった。HDA6標的領域では周辺のDNAメチル化状態に呼応した2つのCGメチル化状態が観察された。周辺のDNAメチル化領域から孤立している場合では、
hda6機能欠損により標的領域のCGメチル化は完全に消失していた。一方、DNAメチル化が隣接する場合には、CGメチル化が残留していた。また、これら両領域ではCGメチル化の状態に関わらず、CHGおよびCHHメチル化はともに消失し、転写が再活性化されていた。さらに、HDA6は周囲のDNAメチル化領域には結合せず、その標的領域にのみ結合していることが確認された。これらの結果から、HDA6はRNA依存性DNAメチル化経路に殆ど依存せず、MET1と協調して領域特異的なヘテロクロマチン抑制に機能することが示唆された。
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石川 貴章, 玉田 洋介, 日渡 祐二, Thompson Kari, 大島 真澄, 倉田 哲也, 西山 智明, 長谷部 光泰
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0376
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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polycomb repressive complex 2 (PRC2)は、ヒストンH3の27番目のリシン残基(H3K27)を特異的にトリメチル化する活性を持ち、動物や植物において遺伝子の発現抑制状態を安定に維持するために機能している。今回、我々は、ヒメツリガネゴケにおけるH3K27me3の局在をゲノムワイドに調べるため、野生型およびPRC2の構成因子の一つをコードする
Physcomitrella patens CURLY LEAF (
PpCLF)遺伝子の遺伝子破壊体(Okano
et al. PNAS 2009;106,16321-26)を材料に、ChIP-Seq解析を行った。その結果、H3K27me3は、全JGI遺伝子モデルの20%に相当する6000以上の遺伝子上に局在することが分かった。また、
PpCLF遺伝子破壊体では、これらの遺伝子上におけるH3K27me3の局在が消失していた。このことから、ヒメツリガネゴケでは、ほぼすべてのH3K27me3修飾をPpCLFを含むPRC2が担っていると考えられた。現在、これらの解析に加えて、抗H3K4me3抗体を用いたChIP-SeqとDigital Gene Expressionも行っており、H3K27me3と他のヒストン修飾との相互作用および遺伝子発現との関係に関しても考察したい。
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佐藤 壮一郎, 松尾 充啓, 工藤 久幸, 木村 宏, 中邨 真之, 山本 義治, 小保方 潤一
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0377
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物に限らず、真核ゲノム上で新規のプロモーターや転写領域が出現するメカニズムはまだよく分かっていない。私たちは、シロイヌナズナをモデルにして、ゲノム上で新規のプロモーターが出現するメカニズムについて解析を進めてきた。その結果、ゲノム中に新規のコード領域配列が挿入されると、その5'末端近傍でしばしば新たな転写開始点が出現すること、さらに、これらのゲノム領域をクロマチン免疫沈降法によって解析したところ、コード領域の挿入によって周辺のヌクレオソームにリモデリングが生じ、新たにプロモーター機能を持ったクロマチン領域、つまりプロモーター領域が形成されていること、などが明らかになった。これらの知見は、プロモーターの本質・実体は、その領域の塩基配列自体にあるのではなく、周辺配列との相互作用によってその領域のエピゲノム上に形成される特殊なクロマチン構造にあることを示している。本研究では、コード領域配列のどのような因子がこのようなプロモーター形成を誘導するのかを、様々なキメラ遺伝子を導入した形質転換植物を用いて解析した。その結果、少なくともシロイヌナズナのゲノムでは、コード領域のATG開始コドンがこのようなプロモーター機能の誘導に関与していることが示された。以上の知見を基にして、真核ゲノム上で新規のプロモーターが出現するメカニズムについて、一つのモデルを提案する。
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上田 実, 高見 常明, Peng Lianwei, 石崎 公庸, 河内 孝之, 鹿内 利治, 西村 芳樹
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0378
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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細胞内共生により誕生した葉緑体は共生成立以降、自身のゲノム上にコードされていた大部分の遺伝子を消失しているが、陸上植物の葉緑体ゲノムには120前後の遺伝子が残存し核ゲノムとは異なる遺伝子発現系を有する。葉緑体には2つのRNAポリメラーゼ、バクテリア型 RNAポリメラーゼ(PEP)と、T7ファージ型 RNAポリメラーゼ(NEP)が存在する。シグマ因子はPEPのプロモーター認識と転写開始に関わる制御因子であることが知られている。緑藻クラミドモナスの核ゲノムにはシグマ因子が1種のみコードされているが、被子植物であるシロイヌナズナでは6種のシグマ因子が(SIG1~SIG6)、緑藻から被子植物への進化の中間段階に位置するコケ植物では3種(SIG1, SIG2, SIG5)のシグマ因子が核ゲノムにコードされている。つまり、シグマ因子の種類は陸上植物が進化していく過程で増加しており、葉緑体ゲノムにコードされている遺伝子の発現制御が多様化したものと考えられる。演者らは、陸上植物の進化を解明する上で有用なモデル植物である基部陸上植物ゼニゴケにおいて
Mpsig1T-DNA挿入変異体を同定し、MpSIG1が少なくとも光化学系I複合体の蓄積に関与している事を明らかにした。本研究により、陸上植物におけるシグマ因子の多様化の一端や未だ明らかとなっていないシグマ因子の機能を明らかにできるものと期待される。
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石川 雅樹, 三澤 直美, 秋田 朝日, 大場 久美子, Thompson Kari, 倉田 哲也, 西山 智明, 日渡 祐二, 長谷部 光 ...
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0379
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ヒメツリガネゴケは、胞子から発芽後、細胞が一列に並んだ原糸体を経て、茎と葉からなる茎葉体へと発生する。葉を茎葉体から切り離すと、切断面に面した葉細胞がリプログラミングされ、原糸体細胞へとその細胞運命を変える。我々はこれまでに、動物や顕花植物で細胞周期の進行を制御している転写因子E2Fをヒメツリガネゴケから単離し、そのE2Fが葉切断後におこるリプログラミングを制御していることを報告してきた。そこで我々は、この過程におけるE2Fの機能を理解するため、超並列シークエンサーを用いた全ゲノムクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP seq)解析を行い、ゲノムワイドにE2Fの標的遺伝子を探索した。その結果、動物や顕花植物でE2Fの標的遺伝子として知られているヒストンやDNA複製・合成を制御しているタンパク質をコードしている遺伝子のプロモーター領域にE2Fが結合していることが分かった。このことは、細胞周期制御におけるE2Fの機能がヒメツリガネゴケにおいても保存されていることを示唆している。またE2Fは、クロマチンリモデリングに関与すると思われるタンパク質をコードしている遺伝子のプロモーター領域にも結合していた。本大会ではChIP seq解析の結果をふまえ、E2Fによるリプログラミングの制御機構について考察する。
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宇治 利樹, 嵯峨 直恆, 三上 浩司
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0380
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物の生活環は、胞子体(2n)世代と配偶体(n)世代から成る異型世代交代を基本とする。その制御機構の理解を長期的な目標として、胞子体と配偶体が独立して生育する海産紅藻スサビノリにおける世代特異的遺伝子の転写調節機構の解析を行った。まず、スサビノリが高等植物では見られないナトリウムポンプをコードする2つの遺伝子、
PyATP1A、
PyATP1B、を持ち、前者が胞子体で優占的に、後者が配偶体特異的に発現していることを明らかにした。そのため両遺伝子の発現制御機構の比較に興味が持たれたが、本研究では、
PyATP1Aの胞子体世代優占的な遺伝子発現制御機構の解明に焦点を当て、
PyATP1Aのプロモーター解析をパーティクルガン法による一過的遺伝子発現系を用いて行った。
PyATP1Aのプロモーター領域をInverse PCR法により取得後、PyGUSレポーターを用いた5'欠失プロモーター解析を行った結果、配偶体世代特異的に機能するリプレッサー結合領域を特定することができた。そのため、この領域が
PyATP1Aの配偶体での転写を抑制することで胞子体世代優占的な転写を可能としていると考えられた。現在、同定された制御領域における配偶体特異的な負のシス配列の同定を行っているが、今後は
PyATP1Bの配偶体特異的発現の制御機構についても解析を進める予定である。
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金 俊植, 溝井 順哉, 中嶋 潤, 吉田 拓也, 戸高 大輔, 藤田 泰成, 中島 一雄, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
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0381
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シロイヌナズナの環境ストレス応答性遺伝子DREB2Aは不良環境耐性の獲得にとって鍵となる転写因子をコードする。しかし、乾燥ストレスに応答したDREB2Aの発現誘導の機構は明らかになっていない。そこで、DREB2Aの転写制御機構を解明するため、DREB2Aのプロモーター領域の解析を行った。その結果、転写開始点から約100塩基上流にあるABRE配列が乾燥ストレスに応答したDREB2Aの発現誘導に重要であることが示唆された。我々は、AREB/ABF転写因子群、特にAREB1、AREB2、ABF3が、多くの乾燥誘導性遺伝子におけるABRE配列を介した発現誘導に重要な機能を果たしていることを示してきた。そこで、これらの転写因子がDREB2Aの発現を制御している可能性を検証するため、一過的発現系における転写活性や、植物体におけるDREB2Aプロモーターとの結合を解析した。さらに、areb1 areb2 abf3三重変異体では、野生型と比較して乾燥ストレス時のDREB2Aプロモーターの活性が低下することを確認した。また、ABAの生合成経路やシグナル伝達経路に位置する遺伝子の変異体において、DREB2Aの乾燥応答性が変化することを明らかにした。以上のことから、DREB2Aの乾燥ストレスに対する誘導性はプロモーター上のABRE配列に依存し、ABAシグナル伝達経路の影響を受けることが明らかになった。
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猿橋 正史, 中村 いずみ, 太治 輝昭, 林 隆久, 坂田 洋一
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0382
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
我々は、種子特異的な転写因子として解析されてきたABI3 がヒメツリガネゴケにも保存され、アブシジン酸 (ABA) と協調して原糸体細胞に乾燥耐性を付与することを明らかにしてきた。種子植物において、ABI3はABA 応答配列 (ABRE) および RY 配列を介して遺伝子発現制御を行う。ヒメツリガネゴケABI3 (PpABI3) による遺伝子発現制御機構を明らかにするため、ヒメツリガネゴケにおいてABAおよびABI3により活性化されるコムギ
Emプロモーターのシスエレメント解析を行った結果、PpABI3は主にRY配列を介して転写を活性化していることが示された。次に、ABAとPpABI3により制御されるヒメツリガネゴケ由来の
LEA遺伝子 (
PpLEA1)について同様の解析を行った。その結果、転写開始点上流180bpから190bpの領域にABAとPpABI3による活性化に必須のシスエレメントが存在することを明らかにした。この領域には、セイヨウアブラナ種子タンパク質遺伝子
napinプロモーターにおいて、ABAとABI3による活性化に重要な配列DistBと一致する配列が含まれていた。以上の結果から、ヒメツリガネゴケと種子植物において、ABAとABI3を介した遺伝子発現制御機構が分子レベルで保存されていることが考えられた。
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中村 いずみ, 川戸 高博, 猿橋 正史, 太治 輝昭, 林 隆久, 坂田 洋一
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0383
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
我々は、ABI3とアブシジン酸 (ABA) を介した遺伝子発現制御機構が基部陸上植物ヒメツリガネゴケにおいてすでに確立した機構であることを明らかにしてきた。ヒメツリガネゴケABI3 (PpABI3) を介したABA応答性遺伝子の発現制御機構を明らかにすることを目的とし、これまでに酵母の系においてPpABI3とCCAAT結合タンパク質複合体サブユニット (NF-YC) が相互作用することを明らかにしている。しかしながら、ヒメツリガネゴケの一過的発現解析においては、ヒメツリガネゴケNF-YC (PpNF-YC) はPpABI3によるABA応答性のヒメツリガネゴケ
PpLEA1プロモーターの活性化に影響を与えなかった。そこで、シロイヌナズナにおいてNF-YCと複合体を形成するシロイヌナズナLEC1に着目した。LEC1はNF-YBをコードし、ABI3と遺伝学的に相互作用することが報告されている。LEC1をPpNF-YCと共発現させるとPpABI3による
PpLEA1プロモーターの活性化能が大幅に増大することが明らかとなった。さらに、LEC1はシロイヌナズナ由来のABI3およびNF-YCと共発現させた場合においても
PpLEA1プロモーターを活性化した。以上のことから、ABI3とNF-Y複合体を介した新規の遺伝子発現制御機構の存在が示唆された。
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野坂 亮太, 林 秀樹, 吉田 絵梨子, 西澤(横井) 彩子, 丸田 隆典, 池田 美穂, 高木 優, 薮田 行哲, 重岡 成
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0384
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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熱ショック転写因子HsfA2は種々の細胞防御関連遺伝子を誘導することで酸化的ストレス耐性能の獲得に関与する重要な転写因子である(Plant J. 2006)。これまでにHsfA2のストレス応答の発現に、転写開始点から-191 bpの領域内に存在する3つのHsf認識配列(HSE I, II, III)が必要であることを明らかにした。さらに、種々のHsf機能欠損株を用いた解析により、HsfA1d、HsfA1e およびHsfA4cがHsfA2の強光ストレス応答性の発現を制御していることが示唆された。本研究では、これらのクラスA Hsfsを介したHsfA2の発現制御機構をより詳細に解析するため、各々の二重変異株を作出し、HsfA2の強光ストレス応答に及ぼす影響を解析したところ、単独の欠損と同様に著しくHsfA2の誘導が抑制された。また、HsfA2の強光ストレス応答に必要であるHSEに変異を導入し、HsfA1dおよびHsfA1eと共発現させたところ、HsfA1dおよびHsfA1eによるHsfA2の発現制御にはHSE Iが重要であることが明らかとなった。現在、ゲルシフト法によるHsfA1d、HsfA1eおよびHsfA4cのHSEへの結合能を解析している。
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高橋 英之, 若佐 雄也, 林 晋平, 川勝 泰二, 高岩 文雄
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0385
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
我々は,イネ胚乳に有用タンパク質やペプチドを蓄積した組換え米の開発を進めている.しかし,導入産物によっては,種子の粉質化,白濁化といった死米様表現型が観察される.このような種子では,BiP等の小胞体シャペロンの発現が上昇しており,異種タンパク質発現による小胞体ストレスが誘導されると推察される.これまでに我々は,イネプロトプラストにおいて
BiPaプロモーターを活性化する膜貫通型転写因子OsbZIP39を同定した.本研究では,OsbZIP39による他の
BiP遺伝子群(
BiPb,
BiPc)の転写活性化能について解析した.イネプロトプラストでの一過的発現解析において,
BiPaと
BiPcプロモーターは,DTT処理およびOsbZIP39ΔCの共発現により活性化された.一方,
BiPbプロモーターはDTT処理およびOsbZIP39ΔCの共発現により活性化されなかった.
BiPaプロモーターの活性化は,小胞体ストレス応答エレメント(ERSE)への変異の導入により有意に減少した.また,OsbZIP39の転写活性化領域は,主に51-98アミノ酸領域に局在していた.これらの結果から,OsbZIP39による
BiP遺伝子の転写活性化は,小胞体ストレスによって誘導されると示唆された.
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中塚 貴司, 日影 孝志, 西原 昌宏
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0386
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
現在、日本で園芸利用されているリンドウには本来の青花に加えて、ピンク花が存在する。ピンク花はフラボノイド3′, 5′水酸化酵素遺伝子(
F3′5′H)へのトランスポゾン挿入による機能欠失変異であることが判明している(Nakatsuka et al. 2006)。今回、別の2系統のピンク花リンドウを解析したところ、これまでとは異なる新たな2つの
F3′5′H遺伝子の変異が認められた。一つは、
F3′5′H遺伝子のイントロン内への322bpのトランスポゾン様配列の挿入であり、RT-PCRによる解析から本配列の挿入は
F3′5′H遺伝子のミススプライシングを引き起こしていることが判明した。もう一方の変異は、第一エキソン領域へのチミジンの1塩基挿入であり、
F3′5′H遺伝子のフレームシフト変異がピンク花化に関与する可能性が示された。今回解析したピンク花品種においてはピンク花から青花への復帰変異体も得られており、現在、本原因について解析を進めている。
Nakatsuka et al. (2006) Molecular Genetics and Genomics 275: 231-241.
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嶋田 典基, 明石 智義, 青木 俊夫, 金森 千奈, 太田 大策, 青木 考, 柴田 大輔, 鈴木 秀幸
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0387
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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マメ科のミヤコグサ
Lotus japonicus はフラボノイド系黄色色素を花弁に蓄積する。その色素は広く植物に見られるフラボノールケルセチンの 8 位が水酸化された 8-ヒドロキシケルセチン配糖体であることが明らかにされている。8 位の水酸化については、キク科植物では NADPH および FAD 依存性の膜結合酵素であるとされているが、遺伝子の単離は未だなされていない。本研究では、ゲノム解析が行われたミヤコグサを用いて、フラボノイド 8 位水酸化酵素遺伝子の単離と機能解析を行うことを目的とした。
ミヤコグサの花弁および蕾由来の EST データを検索したところ、蕾のみで見られる配列の中に FAD 結合モチーフを有するモノオキシゲナーゼ様配列を見出した。この全長 cDNA を単離し、大腸菌および酵母細胞発現系を用いて機能解析を行った。ケルセチンを基質に用いた反応産物を LC/MS で分析したところ、反応産物の保持時間と質量電荷比および MS/MS フラグメントパターンは 8-ヒドロキシケルセチンと一致した。フラボノイド骨格の水酸化を行う酵素としてはシトクロム P450 や 2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼが報告されているが、今回同定した酵素はこれらとは異なる酵素群に属する新たなフラボノイド水酸化酵素である。現在、本酵素の諸性質について解析を行っている。
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杉山 圭吾, 名川 賢治, 小埜 栄一郎, 川出 洋, 高橋 征司, 中山 亨
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0388
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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黄色キンギョソウの花弁には、オーレウシジン6-グルコシドとブラクテアチン6-グルコシドが蓄積し、黄色花色の原因となっている。同花弁にはカルコンの4'位配糖体(テトラヒドロキシカルコン4'-グルコシドおよびペンタヒドロキシカルコン4'-グルコシド(PHC4'G))も蓄積し、黄色の一部を構成する。カルコン配糖体は、オーレウシジン合成酵素(AmAS1)の作用により上述のオーロン配糖体に変換される。AmAS1の基質特異性および生成物特異性解析から、同花弁の主たるオーロン前駆体はPHC4'Gである可能性が示唆された。しかし、PHC4'Gの前駆体であるPHCの生合成の詳細な知見は得られていない。最近、キンギョソウのカルコン合成酵素(AmCHS1)がマロニル-CoAとカフェオイル-CoAから、PHCを
de novoに合成しうることが示された。リグニンの生合成において、カフェオイル-CoAは
p-クマル酸3位水酸化酵素(C3H)/ヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼの共役酵素系によって生合成されることが明らかにされており、キンギョソウ花弁においてもカフェオイル-CoAの生合成が同酵素系により達成され、PHCの合成に提供されると考えた。そこで本研究では、黄色キンギョソウ花弁に発現するC3H遺伝子の単離、異種発現および活性評価を行なった結果を報告する。
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榊原 圭子, 花田 耕介, 斉藤 和季
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0389
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ファミリー1配糖化酵素(UGT)は、植物二次代謝産物を含む様々な低分子化合物に糖を転移する酵素である。
我々は、陸上植物の進化の過程において、UGTがどのようにその数と機能を拡大してきたのかを調べる目的で、
Physcomitrella patens, Selaginella moellendorffii, Populus trichocarpa, Oryza sativa, Arabidopsis thaliana, Arabidopsis lyrataの6植物種から保存UGTドメインUDPGTを持つ推定UGT遺伝子を特定した。これらのUGT遺伝子の系統樹解析により、UGTは種特異的に著しく増加していること、維管束植物において
Physcomitrellaとの分岐後、特に遺伝子重複が盛んであることを見いだした。また、上記6植物由来のUGT遺伝子はそれぞれ1つの共通祖先に由来すると考えられる24のorthologous グループに分類された。いくつかのorthologous グループは、機能既知の多数のUGTファミリーを含んでおり、基質認識の機構は種特異的に獲得されたことを示唆していた。また、1種類のUGTファミリーのみを含んでいるグループも存在し、これらのUGTファミリーは、植物において重要な役割を担っており、そのため機能的制約を受けている可能性が考えられた。
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山崎 真巳, 樋口 真理, ワンワッタナー ブンヤパー, 斉藤 和季
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0390
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
シソの成分変種であるアカジソとアオジソについては古くから遺伝学研究が行われており、アントシアニン生産に関して少なくとも3つの遺伝子座(A、BおよびK)が関与することが示されている。また、近年複数の植物種においてMBW複合体(MYB/bHLH/WD40)がアントシアニン生合成を制御することが明らかにされている。これまでに演者らはシソから2つのMYB因子(MYB-P1、MYB-C05)、3つのbHLH因子(MYC-F3G1、MYC-RS、MYC-RP/GP)ならびにWD40因子(PFWD)を単離し機能解析してきた。しかしながらアカジソ特異的に発現する因子の単独過剰発現体ではアントシアニン誘導は見られなかった。そこで、アカジソにおけるアントシアニン生産制御には因子間の組み合わせが重要であると推測し、シソのMYB因子、bHLH因子ならびにWD40因子のすべての組み合わせの間でタンパク質相互作用とそれぞれの因子のDFRプロモーターへの結合能を調べた。その結果、MYB-C05とMYC-F3G1、PFWDとMYC-F3G1の間で最も強い相互作用が認められ、これらの相互作用がアカジソとアオジソのアントシアニン生合成の違いを決定することが示唆された。
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佐々木 伸大, 松葉 由紀, 岡本 えみ, 岡村 正愛, 寺 正行, 阿部 裕, 長澤 和夫, 小関 良宏
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0391
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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代表的な植物色素の一種であるアントシアニンはその基本骨格が糖や有機酸によって修飾されて液胞に蓄積されている。アントシアニンの配糖化は糖ヌクレオチドを糖供与体とした酵素反応によって行われることが明らかとなっている。これまでにアントシアニン骨格の3位や5位に糖を転移させる酵素については多くの報告があるが、カーネーションにおいてアントシアニンの5位に糖を転移する酵素についての報告はなかった。また、デルフィニウムなどはアントシアニンの7位が糖によって修飾されているが、アントシアニンの 7 位配糖化酵素活性はこれまでに報告がなかった。本研究では、カーネーション花弁内に糖ヌクレオチドではない糖供与体を用いたアントシアニン5位配糖化酵素反応を触媒する酵素が存在していることを突き止めた。また、その糖供与体となる化合物がカーネーション花弁内に蓄積していることも分かった。この新規糖供与体について植物体から精製し、各種分光学的手法によって確認したところ、バニリル-β-D-グルコース (VG) であることが明らかとなった。また、VG を糖供与体として、デルフィニウム花弁から調整した粗酵素液を用いて、A3Gを糖受容体として反応させたところ、アントシアニン 3,7-ジグルコシドの生成が確認された。この研究は生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業により行った。
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小関 良宏, 岡本 えみ, 松葉 由紀, 岡村 正愛, 寺 正行, 長澤 和夫, 佐々木 伸大
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0392
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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これまでに我々の研究グループでカーネーションとデルフィニウム花弁中にアシルグルコースを糖供与体としたアントシアニン配糖化酵素(AAGT)が存在することを報告した。そこでカーネーション花弁から7 段階の精製ステップを経てAAGT酵素の精製を行った。精製したタンパク質のアミノ酸配列情報をもとにAAGT cDNAを獲得した。AAGT cDNAを大腸菌に導入しタンパク質を生産させ、アントシアニン 3-グルコシドを糖受容体としてAAGT活性を検討したところ5位配糖化酵素活性が確認された。カーネーションにおけるAAGT遺伝子の発現は、花弁の比較的早い時期で極大になることが確認された。また、アントシアニンの5位の糖が欠損したアントシアニンを持つカーネーション花弁では発現は確認されず、さらにこの欠損体の花弁の表皮細胞にAA5GT cDNA を一過的に導入したところ、アントシアニン5位配糖体に由来する特徴的な蛍光が観測された。またデルフィニウムにおける AAGT相同cDNA を単離し、大腸菌を用いて組換えAAGT活性を検討したところ、その活性が認められた。これらのアミノ酸配列についてデータベース上で検索したところglucoside hydrolase family 1に分類される酵素であることが明らかとなった。この研究は生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業により行った。
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松葉 由紀, 佐々木 伸大, 岡本 えみ, 岡村 正愛, 寺 正行, 長澤 和夫, 小関 良宏
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0393
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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カーネーション花弁より精製したアシルグルコース依存型アントシアニン 配糖化酵素(AAGTs) は、48 時間反応を触媒する安定な酵素であり、至適 pH と温度は、4.5 - 6.0 と 40 - 45°Cであった。AAGTs は 3 位が糖(または更に有機酸)で修飾されたアントシアニンのみを糖受容体とする一方で、様々なアシルグルコースを糖供与体とした。植物精製(及び組換え) AA5GT のシアニジン 3-グルコシド(Cy3G)に対する
kcat、
Km は 0.06 (0.07) s
-1、13.0 (6.5) μM、バニリル-β-D-グルコース(VG)に対する
kcat、
Km は 0.01 (0.01) s
-1、46.5 (51.9) μMであった。AA7GT の Cy3G に対する
kcat、
Km は 0.17 s
-1、22.9 μM、VGに対する
kcat、
Km は 0.10 s
-1、260.8 μMであった。また AAGTs のシグナルペプチドと GFP を融合させたタンパク質を一過発現させたタマネギ表皮細胞で GFP 蛍光を観察した結果、AAGTs は液胞に局在していることが示唆された。この研究は生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業により行った。
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由田 和津子, 涌井 絵里, 作田 正明
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0394
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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高等植物の赤色の多くはアントシアニンが発色源であるのに対し、ナデシコ目植物はアントシアニンを合成せず、その赤色はベタシアニンにより発色されている。我々は、ナデシコ目植物にはなぜアントシアニンが存在しないかという問題に対しアプローチを試み、これまでにアントシアニン合成のlate step (
DFR、
ANS)の発現制御がその一因である可能性を示唆した。そこで今回は、ナデシコ目植物の
ANSの発現制御について、シス領域およびトランス因子の両者に注目し解析を行った。
ナデシコ目植物の
ANSプロモーターの下流に
uidAレポーター遺伝子を融合したコンストラクトを作製し、これをシロイヌナズナに導入した。形質転換体より得た種子を高スクロース条件下で発芽させ、アントシアニン合成を誘導したうえでGUS染色を行ったところ、子葉や上胚軸のアントシアニンが蓄積した部位で染色が見られた。このことより、ナデシコ目植物の
ANSは、シロイヌナズナにおいてはアントシアニンの合成・蓄積部位で発現することが示された。
次に、ナデシコ目植物の
ANSプロモーターを活性化する転写因子を探索した。その結果、シロイヌナズナのTT2 およびPAP1が、
ANSプロモーターを活性化することが、トランジェントアッセイにより明らかとなった。現在ナデシコ目植物におけるTT2 およびPAP1ホモログの解析を試みている。
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内田 英伸, 正岡 祥吾, 兼田 昇, 岡田 茂, 大濱 武
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0395
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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群体性微細藻
Botryococcus brauniiのB品種は良質な燃料となる液状炭化水素を大量に生合成する。しかし、増殖速度が非常に遅いため炭化水素生産効率が低く、遺伝子組換えによりバイオマス生産能を向上させる必要がある。この藻類における遺伝子導入系を確立するために、形質転換体を選抜する薬剤種とその有効濃度を調べた。2500 luxの白色光を照射、2.5 % CO
2を通気、Chu13液体培地にて1.5x10
5群体/mlの濃度まで藻体を培養後、さまざまな種類と濃度の薬剤を添加した寒天固化培地上に0.3 mlの培養液をイノキュレート、3週間培養、藻体の増殖を観察した。その結果、薬剤を添加しなかった固化培地上では藻体の増殖が確認されたが、20 mg/l, 10 mg/lのハイグロマイシン、100 mg/l, 50 mg/lのスペクチノマイシン、6 mg/lのゼオシンそれぞれを添加した培地上では増殖が確認されなかった。現在、細胞壁分解酵素の前処理が藻体の薬剤感受性を変化させるかどうかを解析するとともに、ヒートショックタンパク質70, ルビスコ小サブユニット, スクアレン合成酵素の遺伝子5’上流域のゲノム断片をRESDA-PCRにより増幅している。本研究を行うにあたり奈良女子大学の野口哲子博士のご協力と、財)日本証券奨学財団からの平成22年度研究調査助成の支援を受けた。
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松本 直, 斉藤 維友, 北川 良親, 岩崎 郁子
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0396
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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イネの細胞膜型アクアポリン(OsPIP)は11種類報告されており、そのアミノ酸配列より1群と2群に類別される。これまでに
Xenopus oocyteを用いて11種類のOsPIPの水透過性実験を行い、1群は水透過性が低いが、2群は高い水透過性を示し、1群と2群を共発現させると水透過性が向上することを報告した。また、1群-EGFP融合タンパク質をOocyteに発現させると細胞膜(PM)にあまり存在せず、2群と共に発現させると1群-EGFPの存在量がPMで増加することが解った。そこで、この現象をより詳しく調べるため、イネOcCell由来プロトプラストを用いて1群と2群に蛍光タンパク質を融合させて細胞内局在を観察した。1群は主に小胞体(ER)に、2群はPMに存在する細胞が多く確認されたが、1群は2群と共発現させるとPMへ移動した。さらに、改変Fluo-chase Kitを用いて1群と2群が結合する細胞内小器官を観察したところ、OsPIP1;1と2;1の結合は24h後でERに局在し、72h後にはPMに局在する細胞が多く認められた。OsPIP1;1同士の結合は72h後も大部分がERに留まり、OsPIP2;1同士の結合は、OsPIP1;1と2;1の結合よりPM局在の割合が少なかった。以上の結果からOsPIP1群の細胞膜移動には、2群の結合が重要であると考えられる。
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柴坂 三根夫, 篠野 静香, 且原 真木
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0397
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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高等植物の原形質膜局在型アクアポリンはPIP1とPIP2の2種類に分類できる。PIP2はアフリカツメガエル卵母細胞機能発現系や酵母の小胞で大きな水輸送活性があるが、PIP1は活性がないか、あっても非常に小さい。しかし、PIP1はアフリカツメガエル卵母細胞で単独で発現させると、発現が低レベルであり、原形質膜へターゲティングさせることができないので、PIP1分子の水チャンネルが本当に閉じているかどうかは疑わしかった。HvPIP1;2はアフリカツメガエル卵母細胞で単独で発現すると活性がみられないが、HvPIP2;4と共発現した時にはHvPIP1;2自体の水チャンネル活性が確かに発現していることは既に示した(2009年大会)。本研究は単独で発現しても卵母細胞の原形質膜へターゲットできるHvPIP1;2キメラタンパク質を作成し、これをエスコートタンパク質として利用してHvPIP1;2を原形質膜に届けても活性が検出できないことを明らかにした。これはPIP2とヘテロマーを形成しないPIP1は活性がないことを示している。これはPIP1の生理学的役割を考える上で重要な発見である。この研究は生研センター基盤研究推進事業によって実施された。
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土平 絢子, 半場 祐子, 前島 正義
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0398
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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アクアポリンは水や多様な小分子を輸送する膜タンパク質である。これまでに、水ストレスに関連した様々な環境ストレスに応答し、発現や局在を変化させることが報告されているが、高温ストレスに関する報告はない。本研究では、外界の温度変化を受けやすく、水ホメオスタシスに重要な役割を果たしていると考えられる細胞膜型のPIPに注目し、アクアポリンの高温応答性について検証した。
シロイヌナズナにある13種のPIP遺伝子のうち、PIP2;3のみが高温ストレスによる発現誘導性を示すことを見出した。この発現上昇は一過的で、植物を36℃の高温条件に置いてから2時間以内にはPIP2;3の発現がピークに達し、そのまま高温状態が維持されても数時間後には元の発現レベルに戻った。これらの結果から、この現象は高温に対する初期のストレス応答であることが示唆される。また、PIP2sのタンパク質量もmRNA量の変化と同様に高温で増大し、次第に減少した。このことから、高温によるPIP2;3の高温誘導は、転写レベルだけでなく、アクアポリン量にも反映されると考えられる。プロモーターGUS解析の結果、高温処理後のPIP2;3は主に胚軸や本葉の葉脈および若い組織で強い発現上昇がみられた。さらに、PIP2;3破壊株を用いた実験も併せて報告し、PIP2;3の高温応答性についての生理学的意義について考察する。
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村上 晴子, 前島 正義, 奈良 久美
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0399
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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EARLY FLOWERING 3 (ELF3)は、概日時計の中心振動子への光・温度シグナルの入力を夕方に特異的に調節する因子である。
elf3-1変異体では、幾つかの遺伝子の発現や胚軸伸長の概日調節が見られず、早咲きになることが知られている。さらに、野生型で観察される根の水分量の概日調節(明期で減少、暗期で増加)が、
elf3変異体では観察されない。この根の水分量の増減が水の流速の変化に起因している可能性が高いことから、我々は、ELF3が欠損すると水輸送の概日調節が異常になると予想している。水輸送には、生体膜に存在する水チャネル、アクアポリンが重要な役割を担っている。そこで、アクアポリン遺伝子のうち、
PIP1;2と
PIP2;1の発現を調べたところ、連続明期で育成した
elf3変異体の実生では、野生型で観察される主観的明け方での発現の増加と主観的夕方での発現の減少がみられなかった。実生におけるこれらのアクアポリン遺伝子発現の概日調節の異常から、連続明条件ではアクアポリンタンパク質の量が一日を通して変化していないことが予測される。そこで現在、
elf3変異体の胚軸と根におけるアクアポリンタンパク質量の概日制御について、解析を進めている。
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Rhee Jiye, Mori Izumi, Sasano Shizuka, Katsuhara Maki
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0400
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
Some aquaporins showed CO
2 transport activities, many aquaporin species have not yet been analyzed. NtAQP1 already reported the activity of CO
2 transport but the method has technical restrictions. Therefore, we have developed the new yeast system to detect CO
2 permeability of aquaporins from barley and rice. CO
2 induced intracellular acidification was measured in yeast cells with fluorescein fluoresce. Double transformants containing the carbonic anhydrase and pH-sensitive EGFP in addition to the aquaporin constructs were selected. Transport of CO
2 resulted in an intracellular acidification and a decrease of fluorescein fluoresces. We have screened aquaporins from barley and rice. Previously, our research had reported barley aquaporins, HvPIP2;1 can transport CO
2. We have confirmed such results using our new yeast system. In addition, other two HvPIP1;1 and HvPIP2;3 are detected to have CO
2 transport activities. In rice aquaporins, it was revealed that OsPIP2;1 and OsTIP2;2 could transport CO
2. Our investigation of using new yeast system in the aquapoirns gives more easy and simple method for examination of CO
2 transport activity.
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山本 禎子, 祢宜 淳太郎, 松田 修, 磯貝 泰弘, 射場 厚
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0401
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
SLAC1は気孔閉鎖に必要な陰イオンチャネルであり、その変異体
slac1-2 はCO
2やABAなどの気孔閉鎖シグナルに応答せず、常に気孔を開いたままの表現型を示す。最近、SLAC1と直接的に相互作用する因子として、ABAシグナル伝達因子であるOST1キナーゼがSLAC1のN末端領域をリン酸化することにより、そのチャネルを活性化することが報告されている。一方、SLAC1のCO
2シグナル受容に関しては未だ知られていない。本研究では、SLAC1のCO
2シグナル受容部位の探索のため、SLAC1のN末端領域またはC末端領域を削り込んだコンストラクト(S1ΔN、S1ΔC )を
slac1-2 変異体に導入し、形質転換体の表現型解析を行った。S1ΔN、S1ΔCはいずれもCO
2応答に関してSLAC1の機能を相補し、SLAC1のCO
2シグナル受容部位は180~504 a.a.の膜貫通領域に存在することが示唆された。そこで、ABAシグナリングと同様、CO
2シグナリングにおいてもリン酸化が関与していると想定し、SLAC1の立体構造モデルを作製した上で、膜貫通領域にあるアミノ酸残基のうちリン酸化される可能性のあるものを検索した。本講演では、それらについても議論する。
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佐々木 孝行, 森 泉, 古市 卓也, 宗正 晋太郎, 豊岡 公徳, 松岡 健, 村田 芳行, 山本 洋子
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0402
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物では気孔開閉により二酸化炭素の吸収や水の蒸散が制御されており、それはいくつかのイオンチャネルによって調節されている。私たちは、コムギのアルミニウム(Al)活性化型リンゴ酸輸送体TaALMT1のシロイヌナズナにおける相同遺伝子であるAtALMT12が、気孔を構成する孔辺細胞で特異的に発現することを見出した(Plant Cell Physiol. 2010)。野生系統ではCaやABA処理により誘導される気孔閉口が、
AtALMT12ノックダウン系統では抑制されており、この表現系は
AtALMT12形質転換により相補された。一方で、明条件下においてノックダウン系統の気孔開口の応答は野生系統と同様に見られた。さらに、
Xenopusオーサイト発現系を用いた電気生理的測定では無機アニオンの輸送活性が認められた。また、パッチクランプにより
AtALMT12ノックダウン系統での気孔アニオンチャネル活性に差は無かったが、最近Meyerら(Plant J. 2010)はAtALMT12を気孔のRタイプアニオンチャネルであると報告している。これらのことから、AtALMT12は気孔閉口を調節するアニオン輸送体と考えられた。このように、当初Al耐性に関わるリンゴ酸輸送体として発見されたALMTだが、ALMTタンパク質ファミリーは、植物におけるアニオン輸送体として生理的役割に多様性を示すことが明らかとなった。
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