マウスの肺の抗細菌防御能への高温影響を明らかにするために, マウスを23℃, 32℃, 35.5℃環境で各々14日間暴露した.暴露後, 気管肺胞洗浄 (BAL) 液中の細胞・液性成分を分析するとともに,
Staphylococcus aureus並びに
Proteus mirabilisのエアロゾル吸入による肺の殺菌活性を調べた.その結果,
S
.aureus並びに
P.mirabilisに対する肺の殺菌活性は35.5℃群で明らかに抑制された.又, 35.5℃群では, BAL液中の肺胞マクロファージ (肺胞Mφ) 数が有意に減少した.肺での
S.aureusの殺菌は主に肺胞Mφに依存し,
P.mirabilisの殺菌は, 肺胞Mφと肺へ流入してくる多形核好中球 (PMNs) の両者に依存することが知られており, 肺の殺菌活性低下の理由として, 肺胞MφとPMNsへの高温影響が示唆された.しかしながら, BAL液上清中の総蛋白, アルブミン, LDH活性の結果から, 高温暴露による肺胞―血管関門の透過性上昇や肺胞上皮の細胞障害はないと考えられた.
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