日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
2 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著論文
  • ―レジン添加型グラスアイオノマーセメントを用いた場合―
    村田 容子, 宇野 清博, 多和田 泰之, 畑 好昭
    2010 年 2 巻 3 号 p. 143-150
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    目的:メタルコアのセメント合着後,4週間の範囲内での支台歯形成の時期が引抜き強さに与える影響を検討することである.
    方法:ステンレス鋼製(SUS304)のメタルコアを,築造窩洞形成を行った牛歯歯根にレジン強化型グラスアイオノマーセメントにて合着し,最長4週間後までの経時的な引抜き強さを計測した.経過時間は,0分,30分,24時間,1週間,2週間,3週間,4週間の7種類を設定し,形成は条件1としてセメント硬化直後,および条件2として各設定時間経過後,とした.引抜き試験は,条件1 は形成後各設定時間経過後に,条件2 は形成直後に行い,条件3 はコントロールとして形成しないままセメント硬化ののち,設定時間経過後に行った.
    結果:メタルコア合着後に形成を行わない場合,引抜き強さは4週間後まで増加し続けるが,1週間経過 時点で4週間後の引抜き強さの95%に達した.セメント硬化直後に形成を行ったものは,すべての経過 時間において形成しないものとの有意差を認めなかったが,セメント硬化後時間を経過し形成したものは24時間から3週間までの間で,他2群との間に有意に小さい値を示した.
    結論:メタルコアを用いた歯冠修復において良好な予後を得るためには,メタルコア合着当日に支台歯形成を行い,その後4週間はできるだけ応力が加わらないようにするか,合着後4週間は形成を行わないことが望ましい.
  • 横田 嘉代子, 中禮 宏, 高橋 英和, 上野 俊明
    2010 年 2 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    目的:我々は熱変形の比較的ないシリコーンゴムやアクリル樹脂等の歯科で使われている材料のマウスガード(MG)用材料としての応用に着目しており,鉄球自由落下衝撃試験を行い,市販MG 材料との性能比較を行ったので報告する.
    方法:試験材料は市販MG 用材料2 種MG,MG2,シリコーンゴム材料2種SL1,SL2,及びアクリル 樹脂材料2種RE1,RE2の計6種である.直径15 mmの鉄球(13.8 gf)を600 mm上方から自由落下させて加撃し,最大荷重(P1)ならびに加撃開始から最大荷重までの時間(P1-t)を算出し,分散分析およびScheffe の多重比較を行った.
    結果:6試料のP1間には統計学的有意差が認められ,RE1 ≈ RE2 > SL1 > MG1 ≈ MG2 > SL2であった. 同様に6試料のP1-t間にも統計学的有意差が認められ,RE1 ≈ RE2 < SL1 ≈ MG2 ≈ MG1 < SL2であった.
    結論:本実験結果より,市販MG 材料よりSL1は若干衝撃吸収能が低く,SL2は衝撃吸収能が高いことが示唆された.またアクリル樹脂材料は衝撃吸収能に乏しく,単体でMG用材料として用いるには問題があった.
  • 佐々木 圭太
    2010 年 2 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は漏斗状根管に対する最適な支台築造方法を見いだすことである.
    方法:実験は,三点曲げ試験と破折試験を行った.三点曲げ試験では,コア用とポスト用の2種類の支台築造用コンポジットレジンに対して,レジン支台築造方法を想定した4条件(レジン支台築造,1本のファイバーポストを中央に配置したレジン支台築造,3本のファイバーポストを配置したレジン支台築造,スリーブならびにファイバーポストを配置したレジン支台築造)について曲げ強さ,曲げ弾性係数を比較検討した.破折試験では,ウシ歯をヒト上顎中切歯の歯根形態に倣い加工し,支台歯を製作した.築造方法は,三点曲げ試験で行った4条件に鋳造支台築造を加えた5条件について破折強度,破折様相を比較検討した.
    結果:曲げ強さにおいて,2種類の支台築造用コンポジットレジンともに3本のファイバーポストならびにスリーブを配置させた条件は,ファイバーポストなし及び中央に1本の条件と比較して高い曲げ強さを示した.破折強度では,鋳造支台築造が最大値を示し,その他の条件と比較して有意に高い値を示した.破折様相において,鋳造支台築造は再修復不可の重篤な破折様相を多く示したが,その他の条件は再修復可能な破折様相を多く示した.
    結論:漏斗状根管において,レジン支台築造を行う場合は,複数本のファイバーポストもしくはスリーブを配置させたレジン支台築造方法が望ましいと思われた.
  • 時庭 由美子
    2010 年 2 巻 3 号 p. 167-176
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    目的:ファイバーポストの配置の違いが,支台築造用コンポジットレジンとファイバーポストの複合体にどのような影響を及ぼすかを明らかにする.
    方法:内径 3 mm,長さ 24 mmのガラス管内に支台築造用コンポジットレジン( UC)とファイバーポスト(FP)を各条件に合わせ挿入し光照射を行った.硬化させた試験体をガラス管から取り出し,長さ20 mmにトリミングし,常温重合レジンに 10 mm包埋したものを試料とした.静荷重試験および繰り返し荷重試験による破折試験を行い,初期破折強さ,最大破折強さ,繰り返し荷重試験試料の破折までの荷重回数,また破折しなかった試料においては試験後の試料の変位量および破折様相を評価した.
    結果:初期破折強さにおいて,レジン単体の条件と比較し有意に高い値を示したのは,1.0と 1.6 mmのFPを引張り側に配置した条件であった.最大破折強さにおいて,1.6 mmの FPを引張り側に配置した条件が,他の条件と比較し有意に高い値を示した.繰り返し荷重試験において,1.6 mmの FPを引張り側に配置した条件と FPを複数本使用した条件で,他の条件と比較し試料の変位量が有意に少なかった.
    結論:ファイバーポストの配置の違いにより支台築造用コンポジットレジンとファイバーポストの複合体の初期破折強さ,最大破折強さおよび繰り返し荷重試験後の変位量に差が認められた.特に引張り側に配置することの有効性が示された.
専門医症例報告
  • 都築 尊
    2010 年 2 巻 3 号 p. 177-180
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:57歳の女性.上顎延長ブリッジの動揺を主訴に来院した.抜歯により臼歯の咬合支持が喪失し,部分床義歯の装着が適応と考えられたが,違和感のために口蓋を被覆する設計が受け入れられなかった.そこで大連結子を使用しないコーヌステレスコープ義歯を装着し,口腔内諸機能の改善がみられた.
    考察:装着感を考慮した義歯設計により,患者が違和感なく義歯装着できた.また,コーヌステレスコープ義歯で補綴することにより,臼歯部咬合支持を得ることができ,清掃性が向上した.これらのことが咬合崩壊の防止につながったと考えられた.
    結論:咬合崩壊を防ぐために,患者の装着感を考慮した義歯設計を行うことは重要である.
  • 田坂 彰規
    2010 年 2 巻 3 号 p. 181-184
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:60歳の男性患者で,上顎前歯部の前装鋳造冠脱落による審美障害および下顎臼歯部の多数歯欠如による咀嚼障害を主訴に来院した.咬合高径の分析結果より低位咬合と診断した.プロビジョナルレストレーションおよび治療用義歯にて咬合挙上を行った後,最終補綴装置を装着した.
    考察:本症例は,臼歯部欠如の放置および残存歯の咬耗により低位咬合となった結果,前歯部の咬合負担を増大させ,上顎前歯部の補綴装置の脱落を引き起こしたと考えられた.
    結論:本症例では,咬合挙上および咬合再構成を行うことで,審美障害および咀嚼障害を改善することができた.
  • 柳澤 光一郎
    2010 年 2 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:45歳の男性で,外傷による審美障害と下顎両側臼歯部欠損による咀嚼障害を主訴に来院した.上顎前歯部の不良な暫間補綴装置と下顎両側臼歯の欠損を認めた.上顎はプロビジョナルレストレーション装着後,個歯トレーを用いて固定性補綴装置を製作し,下顎は可撤性義歯を装着した.
    考察:上顎のプロビジョナルレストレーション装着時に審美性を確認した後,最終補綴装置を製作したこと,ならびに下顎に義歯装着したことで主訴の改善がなされたと考えた.
    結論:プロビジョナルレストレーション装着後,個歯トレーで多数歯の同時印象を確実に行い,補綴装置を装着することで審美障害と咀嚼障害の改善ができ,良好な結果を得た.
  • 渡辺 智良
    2010 年 2 巻 3 号 p. 189-192
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は慢性歯周炎を有した 46歳女性.歯周外科処置を含む歯周治療および矯正治療によって,歯周組織の安定化を図り,補綴治療を施行した.
    考察:本症例は,プラークによる細菌性因子に加え,外傷性咬合によって修飾されたことで,歯周炎が重篤化したものと考えられる.歯周治療および矯正治療により歯周炎の原因除去が適切に行え,プラークコントロールが行いやすい補綴装置を設計したために,現在のところ良好に経過しているものと考えられる.
    結論:慢性歯周炎に対する補綴治療は,プラークコントロールが行いやすく,歯周ポケットの再発に対応できる補綴装置の設計に考慮することが重要といえる.
  • 竹市 卓郎
    2010 年 2 巻 3 号 p. 193-196
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:59歳女性.下顎右側臼歯欠損による咀嚼困難を主訴として来科した.上顎右側臼歯の挺出による咬合平面の不正が認められた.装着されていた歯冠補綴装置を再製するにあたり,患者は特に審美性を重視していたためオールセラミッククラウンを装着した.下顎右側臼歯欠損部にはインプラントを埋入し,安定した経過を得ることができた.
    考察:今後さらに,歯冠補綴装置の咬合面の変化に対し,注意深く経過観察を行うことが不可欠であると考えている.
    結論:オールセラミッククラウンの装着によって,咀嚼障害を改善し,審美性も回復できたことによって,患者の満足度も高く,安定した経過を得ることができた.
  • 城下 尚子
    2010 年 2 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:58歳の女性.右側上顎の腫脹・疼痛を主訴に来院した.口腔外科にて上顎右側歯肉癌と診断され,腫瘍切除後には7―1|の顎欠損が予想された.術前歯列の精密印象採得を行い,術後早期に機能と形態の回復を行う早期顎義歯を装着し,創部の安定を待ち最終顎義歯を製作した.
    考察:口腔外科と連携した術前からの補綴的介入により術後すみやかに術前の形態を再現した補綴装置を装着することで,外観の早期回復だけでなく,嚥下障害や発音障害を最小限に留めることができた.
    結論:上顎早期顎義歯を用いた補綴的リハビリテーションにより外観回復と機能低下の防止が図られ,患者の高い満足度が得られた.
  • 鳥巣 哲朗
    2010 年 2 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2010/07/10
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    症例の概要:初診時 60歳女性.下顎義歯臼歯部低位咬合による咀嚼障害と審美障害を主訴して来院.咬合平面の不正と過蓋咬合が認められたため,咬合挙上を行い主訴の改善および咬合平面の修正を図った.
    考察:初診時に使用していた下顎義歯および上下顎のプロビジョナルレストレーションを利用して複数回に分けて咬合挙上と咬合平面の修正を行った.その結果,咀嚼筋痛や咬合過高感等の違和感を生じることなく咬合平面の修正および過蓋咬合の是正が達成できた.
    結論:咬合挙上を複数回に分割し,安静空隙前後での挙上を十分な間隔を設けて繰り返すことにより,咀嚼系に不快症状を生じることなく咬合挙上を達成できることが示唆された.
feedback
Top