目的:補綴物への微生物類の付着抑制は,二次う蝕や日和見感染症予防への有効な手段となると考えられる.このことから,前装冠への微生物類の付着およびプラーク形成の抑制を目的として,surface reaction-type pre-reacted glass-ionomer(S-PRG)を含有した前装冠用レジンを試作した.
方法:本研究では,in vivoにて抗プラーク性,in vitroにて微生物類付着性および抗菌性の試験を行うとともに,曲げ強さ,ビッカース硬さ,歯ブラシ磨耗量においても検討した.
結果:曲げ強さ,ビッカース硬さでは,すべての試料においてISOの基準値を満たしていた.歯ブラシ摩耗試験では,S-PRGフィラーの含有量を増やしても摩耗量に大きな変化を認めなかった.抗プラーク性試験では,S-PRGフィラー含有量が増加するほどプラークの付着が抑制された.微生物付着性試験では,S-PRGフィラー含有量が増加しても蒸留水浸漬した試料には大きな変化は認められなかった.しかし,唾液浸漬した試料,サーマルサイクリング後の試料ではStreptococcus mutans,Candida albicansともに減少を認めた.
結論:9.4~18.8 wt%の含有量において抗プラーク性を有する材料であり,優れた物性を示す材料であることが明らかとなった.さらに,長期間の抗微生物付着性が発揮できると示唆された.
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