日本補綴歯科学会が創設されてから,今年で80周年を迎えるに至ったことは,誠に喜ばしく,そのような節目の年に理事長に就任させていただくことはこの上ない光栄である.理事長講演では80周年を節目として,今後学会がめざす方向やなすべき活動を会員諸氏に明示し,所信表明とした.
現在,社会構造や疾病構造の変化を背景に医療費が増大し,国の医療費抑制策により歯科医療の経済基盤は大打撃を受け,良質の歯科医療の提供が危うくなっている状況にある.その中で,歯科を覆う閉塞感を打破するために,日本補綴歯科学会は,より質の高い学術情報の発信と健康増進に直結する活動を通じて人々の健康な暮らしや豊かな人生にこれまで以上に貢献しなければならない.
歯科補綴学が人々の健康増進により貢献するためには,狭い専門領域にとどまることなく健康科学・生活科学としての歯科補綴学に脱皮しなければならない.そのような視点に立った施策を学会活動の基本としたい.
いまだに学会主導で行うべき仕事は多く残されている.すなわち,学会主導の疫学研究の推進,それらの結果を基にしたEBDに資する臨床エビデンスの構築,臨床ガイドラインの作成と公開,学会主導の大型研究予算の獲得などである.これらの学会活動を通じて補綴歯科臨床が人々の健康にいかに役立っているかを国民に明示するとともに,蓄積した学術情報の臨床歯科医による利用を促し,補綴歯科臨床全体のレベル向上に繋げたい.
また,国際他学会との人的交流,国際的学術集会の日本開催,JPR誌の重要補綴関連雑誌への格上げなどにより本学会の国際的役割を整備したい.加えて,本学会がアジアにおける中心的役割を担えるよう留学生の受け皿づくりや留学基金創設などを通じてアジア諸国との交流を深めたいと考えている.
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