日本補綴歯科学会誌
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5 巻, 3 号
【特集】摂食・嚥下障害患者への対応
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依頼論文
◆特集:摂食・嚥下障害患者への対応
  • ―舌圧測定と舌接触補助床―
    小野 高裕, 堀 一浩, 藤原 茂弘, 皆木 祥伴
    2013 年 5 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    増加する摂食・嚥下障害患者に対する有望な歯科的アプローチとして,口腔における食塊の形成と咽頭への送り込みに大きく寄与している舌機能の客観的評価と,その低下に対する代償的治療法である舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis, PAP)について取り上げる.舌機能はこれまで嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査によって評価されてきたが,舌と口蓋との接触によって生じる舌圧を極薄型の舌圧センサシートを用いて測定することにより,咀嚼・嚥下における舌運動の正常と異常を定量的にとらえることができる.この舌圧測定は, PAPの適用診断,設計,効果判定において有効であり,今後代償嚥下手技の生理学的裏付けや咀嚼・嚥下困難者用食品の開発においても有用な情報を提供し得ると期待される.
  • ―摂食嚥下の生理学を中心に―
    井上 誠
    2013 年 5 巻 3 号 p. 254-264
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    摂食・嚥下障害に対する臨床を行う上で,歯科や口腔機能のもつ可能性を考慮することは非常に重要である.本稿では,周知の摂食・嚥下リハビリテーションにおける機能評価や訓練内容についてではなく,食べることを全身機能と考えること,歯科独自の視点の必要性を理解するための基礎的知識について解説する.また,これまでのほとんどの機能研究が咀嚼または嚥下のみに特化していたが,口腔機能・咀嚼機能と嚥下機能の機能連関に注目することの面白さを考え,臨床への足掛かりとするためのヒントにする.最後に,口腔ケアをどのように考えるかについての更なる知識の整理をしたい.
  • ―摂食・嚥下障害の評価と訓練―
    戸原 玄, 阿部 仁子, 中山 渕利, 植田 耕一郎
    2013 年 5 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    日本では要介護高齢者が増加しているため,誤嚥性肺炎の予防が重要である.誤嚥性肺炎は摂食・嚥下障害により引き起こされるため,患者の食べる機能を正しく評価した対応が重要である.訪問診療で利用可能な評価法にはスクリーニングテストと嚥下内視鏡検査があり,嚥下内視鏡検査は近年小型化が図られている.咀嚼中には食塊が咽頭に送り込まれるため相対的に嚥下反射が遅延するが,症例によっては噛み方を工夫することで嚥下反射遅延を防ぐことができる可能性がある.歯科的な対応のうち特殊な補綴物には舌接触補助床および軟口蓋挙上装置がある.また,新しい訓練方法として開口訓練により舌骨上筋群を鍛えて嚥下機能を改善する方法がある.
原著論文
  • 廣瀬 知二
    2013 年 5 巻 3 号 p. 272-280
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    目的:素材の異なる各種市販ノンクラスプデンチャー材料の特徴を,曲げ特性の面から明らかにする.
    方法:ノンクラスプデンチャー材料(ポリアミド系樹脂:ルシトーンFRS,ポリカーボネート系樹脂:レイニング樹脂,ポリエステル系樹脂:エステショット,アクリル系樹脂:アクリトーン),加熱重合型アクリル樹脂(アクロン)を対象に,成形したままの試験片(乾燥)と30日間水中浸漬試験片(浸漬)の3点曲げ試験を行った.応力-ひずみ曲線を作成し,曲げ強さ,曲げ弾性係数,0.05% 耐力を算出した.得られたデータについて各材料の比較,材料ごとの乾燥と浸漬の比較を行った.
    結果:応力-ひずみ曲線は,アクロンが脆性材料の特徴を示すのに対し,ノンクラスプデンチャー材料はいずれも靱性材料の特徴を示した.曲げ強さはレイニング樹脂を除き,アクロンに比べ有意に小さい値を示した.曲げ弾性係数はいずれのノンクラスプデンチャー材料も,アクロンに比較して有意に小さい値を示した.0.05% 耐力はエステショットが他のノンクラスプデンチャー材料に比較して有意に大きい値を示した.アクリトーンの曲げ強さ,曲げ弾性係数,0.05% 耐力は浸漬が乾燥に比べ有意に小さい値を示した.
    結論:各材料の曲げ特性は素材となる樹脂の性質に基づくことが示唆された.ノンクラスプデンチャーの症例選択,義歯設計には材料の基礎的物性を把握した上での十分な配慮が必要である.
  • 松香 芳三, 萩原 芳幸, 玉置 勝司, 竹内 久裕, 藤澤 政紀, 小野 高裕, 築山 能大, 永尾 寛, 津賀 一弘, 會田 英紀, 近 ...
    2013 年 5 巻 3 号 p. 281-290
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    目的:(社)日本補綴歯科学会は病態とその発現機序の把握に基づく適切な補綴歯科治療を国民に提供するために,補綴歯科治療における新たな病名システムを提案した.これは患者に生じている「障害」を病名の基本とし,この障害を引き起こしている「要因」を併記して病名システムとするものであり,「A(要因)によるB(障害)」を病名システムの基本的な表現法としている.本研究の目的は考案した方法に従って決定した補綴歯科治療における病名の信頼性と妥当性を検討することである.
    方法:模擬患者カルテを作成し,(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会で模範解答としての病名(以下,模範病名)を決定した.その後,合計50 名の評価者(日本補綴歯科学会専門医(以下,補綴歯科専門医)ならびに大学病院研修歯科医(以下,研修医))に診断をしてもらい,評価者間における病名の一致度(信頼性)ならびに(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会による模範病名との一致度(妥当性)を検討した.
    結果:評価者間の一致度を検討するための算出したKrippendorff’s αは全体では0.378,補綴歯科専門医では0.370,研修医では0.401 であった.Krippendorff’s αは模範病名との一致度の高い上位10 名の評価者(補綴歯科専門医:3 名,研修医:7 名)では0.524,上位2 名の評価者(補綴歯科専門医:1 名,研修医:1 名)では0.648 と上昇した.日常的に頻繁に遭遇する病名に関しては模範病名との一致度が高かったが,日常的に遭遇しない病名は模範病名との一致度は低い状況であった.さらに,模範病名との一致度とアンケート回答時間や診療経験年数の関連性を検討したところ,相関関係はみられなかった.
    結論:全評価者間の一致度を指標とした本病名システムの信頼性は高くはなかったが,模範病名との一致度の高い評価者間では一致度が高かった.日常的に遭遇する補綴関連病名については模範病名との一致度が高かった.以上から(公社)日本補綴歯科学会の新しい病名システムは臨床上十分な信頼性と妥当性を有することが示唆された.
  • 瀧田 史子, 岩堀 正俊, 若松 宣一, 土井 豊, 都尾 元宣
    2013 年 5 巻 3 号 p. 291-299
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    目的:ガラスファイバー強化型コンポジットレジンの一つであるエステニアC&B EGファイバー(以下EG)は優れた疲労耐久性を示す.しかし,定変位疲労試験後の真直型EG製クラスプには,ガラスファイバーの剥離や亀裂が生じるなど臨床応用前に解決しなければいけない問題点も提起されている.本研究では,ガラスファイバーの剥離や亀裂の抑制を目的として,円弧型EG 製クラスプにレジンコーティング(サーフィスコート®,以下SC)を施し,サーマルサイクリング試験と定変位疲労試験から,SC の有用性を評価した.
    方法:上顎左側第一小臼歯を支台歯とし,円弧型EG 製クラスプにSC を塗布したクラスプ(以下EG/SCクラスプ)を製作した.サーマルサイクリング試験では6ヶ月間の使用を想定して5400 サイクル負荷した.定変位疲労試験では1日5回義歯を着脱すると仮定し,一定変位(0.25 mm)を1800 サイクルまで繰り返し負荷した.試験後,クラスプ表面を光学顕微鏡観察した.
    結果:6ヶ月間の使用を想定したサーマルサイクリング試験と定変位疲労試験の結果,SCの脱落,亀裂が認められた.しかし,0.25 mm 変位させるのに必要な荷重の変化は認められなかった.
    結論:メーカー指定ではSC塗布後3ヶ月以内のリコールが必要である.よってEG/SCクラスプを3ヶ月後のリコール時に観察し,SCの脱落,亀裂が観察されたクラスプに関しては再塗布すれば十分臨床応用可能である.
症例報告
  • ―片側性咬合平衡の確立に主眼を置いた新しい人工歯排列法―
    岡本 信, 前田 直人, 山本 美恵, 鵜川 由紀子, 洲脇 道弘, 沖 和広, 西川 悟郎, 皆木 省吾
    2013 年 5 巻 3 号 p. 300-308
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:顎堤の対向関係に起因する問題を有した上下無歯顎患者に対して全部床義歯によって機能回復を行った症例を示す.また,片側性咬合平衡の確立に主眼を置いた新しい人工歯排列法を合わせて紹介する.まず咬合採得時に,咬合床を用いて片側性咬合平衡が得られる領域の記録を行った.対向関係の検査として,模型の規格撮影を行い,オクルーザルマップを作製した1).オクルーザルマップ上の片側性咬合平衡が得られる領域の中で、上下顎が重なる部分に咬合接触が得られるように,臼歯部の人工歯排列を行った.完成義歯では,咀嚼時の安定が保たれ,咀嚼能力の向上が認められた.
    考察:オクルーザルマップによって,症例の問題点を正確に診断することができ,診断に基づいた治療の結果,良好な結果をもたらしたと考えられる.また,オクルーザルマップは人工歯排列位置の方針決定に際して非常に有用であった.今回用いた片側性咬合平衡の確立に主眼を置いた人工歯排列法は,咀嚼時における義歯の安定を獲得するために,効果的な方法であった.
    結論:オクルーザルマップと片側性咬合平衡の確立に主眼を置いた人工歯排列法によって,難症例においても咀嚼時における義歯の安定が得られ,患者のQOL 向上に貢献することができた.本報告に用いた検査方法と人工歯排列方法は補綴臨床的に有意義な手法であると考えられた.
専門医症例報告
  • 前田 望
    2013 年 5 巻 3 号 p. 309-312
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は69 歳の上下無歯顎の女性で,下顎義歯維持不良と義歯新製(金属床義歯)希望を主訴に来院した.旧義歯の床辺縁は短く,人工歯は著しく磨耗し,咬合高径の低下と下顎の前方偏位が認められた.適切な咬合高径と適正な下顎位を付与した暫間義歯を作製し,咀嚼機能および審美性の回復を行った後,暫間義歯にて決定した下顎位で上下金属床義歯を作製した.
    考察:適切な咬合高径および下顎位を付与することにより,良好な義歯の安定を得ることができた.
    結論:暫間義歯を用いて機能および審美の回復を確認した後に,最終補綴物を作製したことにより,良好な予後を得られた.
  • 古池 崇志
    2013 年 5 巻 3 号 p. 313-316
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:上下顎無歯顎の女性.咀嚼困難を主訴に来院した.上顎前歯部から小臼歯部にフラビーガム,下顎では高度な顎堤の吸収が認められた.口腔習癖により義歯は安定不良を生じていた.下顎義歯は,安定を改善するためにフレンジテクニックを応用して人工歯排列位置と義歯研磨面形態を決定することとした.上顎では,フラビーガム部に対し石膏印象法にて対応することとした.
    考察:フレンジテクニックを応用することで,下顎義歯の安定が改善された.さらに石膏印象法によりフラビーガム部の適切な床粘膜面形態を付与でき,調整は短期間で終了した.
    結論:フレンジテクニックを応用することにより口腔習癖による義歯の安定不良が改善された.
  • 田中 章寛
    2013 年 5 巻 3 号 p. 317-320
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は44 歳男性.診断は残存歯の重度歯周病と不良補綴装置に起因して咬合崩壊が招いた審美および咀嚼障害とした.そこで,多数歯抜去を行い,義歯補綴治療を行った.
    考察:多数歯の抜歯と即時義歯および義歯修理を行い,上下顎治療用義歯として総義歯形態とした.義歯床調整および咬合調整を行い,粘膜面が良好になり義歯に関する満足が得られた段階で最終義歯調製に着手できたことが良好な結果に繋がったと考えられる.
    結論:義歯を用いた治療が功を奏し審美および咀嚼機能の回復を図られたことで患者のQOL の向上に有効であった.
  • 阿部 英二
    2013 年 5 巻 3 号 p. 321-324
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は初診時73 歳女性.使用中の全部床義歯の発音困難感を主訴として来院した.上顎全部床義歯の研磨面は均一に研磨され,顎提粘膜が透過している状態であった.旧義歯にパラトグラム試験を行ったところ,軟口蓋音以外に発音障害が認められた.義歯研磨面の形態不良による発音障害と診断し,新義歯は発音障害が改善されるように製作した.新義歯装着後,審美・機能的に良好な結果が得られた.
    考察:義歯研磨面形態と舌可動域を調和させたために発音障害が改善されたと考えられる.
    結論:旧義歯装着時の発音状況について,パラトグラム試験を用いて確認し,新義歯製作にあたり,口蓋部歯肉形態を配慮したことで良好な治療経過が得られた.
  • 松崎 文頼
    2013 年 5 巻 3 号 p. 325-328
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:71 歳女性.義歯で食べづらいことを主訴に来院した.約10 年前に装着した上顎義歯の不適合を認めた.患者はインプラント治療を希望したが,リップサポートから可撤性義歯が適すると考えられた.診断用義歯による確認後,患者は可撤性義歯を選択した.
    考察:義歯床によるリップサポートが顔貌変化の回復程度に影響する場合がある.顎堤の形態変化による影響を把握することは,補綴法を選択する際に重要であると考えられる.
    結論:最終補綴装置の形態を患者に体験してもらうことで,より高い満足度が得られ,良好な経過を得ることができた.
  • 正木 千尋
    2013 年 5 巻 3 号 p. 329-332
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は53 歳,女性.下顎前歯ブリッジの動揺を主訴として来院した.ブリッジの支台歯を抜歯後,顎堤吸収が大きい3 歯連続欠損に対し,2 本のインプラントを埋入した.その後,プロビジョナルレストレーションで経過観察し,歯肉付きカスタムアバットメントおよび陶材焼付鋳造冠を装着した.
    考察:本症例では歯肉付き上部構造を装着することで骨移植をせずに審美的回復をすることが可能であったが,今後もプラークコントロールと咬合管理を注意深く行う予定である.
    結論:骨吸収の著しい前歯部欠損へのインプラント治療において,骨移植を避け,補綴的対応により機能回復を行うことは有効な選択肢の1 つであることが本症例より示された.
  • 柴田 紀幸
    2013 年 5 巻 3 号 p. 333-336
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は61 歳男性で臼歯の喪失による咀嚼困難を主訴として当院を受診した.精査にて,臼歯部の欠損および左側咬筋の圧痛が認められ,患者より前歯部の反対咬合を審美的に改善したいとの訴えがあった.
    考察:本症例では咬合挙上を行い,歯冠修復処置による前歯部被蓋の改善を行った.スプリント装着による十分なリハビリテーションを行ったことで,咬合高径を維持したまま治療用義歯,最終補綴へと移行できた.
    結論:本症例ではスプリントの使用による咬合挙上を選択し,機能面のリハビリテーションを十分に行い,良好な結果を得た.可逆的な咬合挙上装置であるスプリントが,全顎的な補綴処置に有効であると考えられる.
  • 小畑 俊剛
    2013 年 5 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は50 歳女性,上顎義歯不適合による咀嚼困難を主訴に来院した.全顎的な歯周疾患と咀嚼時の義歯の動揺が認められ,パラファンクションの存在も疑われた.ミリングテクニックを用いた部分床義歯により補綴処置を行った結果,機能的にも審美的にも患者の高い満足を得ることでき,装着3年7カ月後に1|が抜根となった他は良好に経過している.
    考察:リジッドサポートの概念に基づく設計により,義歯の支持能力が増強され,過大な咬合力にも対応できたと考えられた.
    結論:アイヒナー分類B3症例に対し,リジッドサポートの概念に基づくミリングテクニックを用いた部分床義歯にて補綴処置を行うことにより,良好な予後が得られた.
  • 若林 一道
    2013 年 5 巻 3 号 p. 341-244
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は22 歳の女性.自転車の転倒で抜歯となった上顎右側中切歯欠損に対し,Minimal Intervention(MI)の概念を重視し,歯槽堤増大術と接着ブリッジにより機能性と審美性の回復を図った.
    考察:歯槽堤増大術とオベイト型ポンティックを用いることで,初診時と比較して大幅な審美性の改善が得られた.さらに接着ブリッジを用いた治療により,若年者に対してMI の概念に基づいた補綴歯科治療が実践されたものと考える.
    結論:外傷により上顎右側中切歯の欠損と顎堤吸収を起こした症例に対し,歯槽堤増大術および接着ブリッジを用いることで,機能性と審美性を回復し,長期的に満足のいく結果が得られた.
  • 横山 政宣
    2013 年 5 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は52 歳女性.左側顎関節部の疼痛を主訴に受診した.12 ~ 13 年前,上下顎右側欠損部に部分床義歯を製作したが,使用せず放置していた.顎位の偏位が疑われたため,上顎に治療用義歯を下顎に有床型のスプリントを装着し,咬合支持と顎位の改善を図り,再評価後,全顎的な最終補綴を行った.
    考察:義歯による咬合支持の確立,およびスプリント療法による顎位の修正により,全顎的な咬合の再構築を行った結果,顎関節や咀嚼筋の症状が改善したと考えられる.
    結論:臼歯部での咬合支持を失ったことで顎関節症を発症したと考えられる症例に対し,臼歯部の咬合支持の確立と適切な顎位を与えることで良好な治療結果が得られた.
  • 塚野 寛久
    2013 年 5 巻 3 号 p. 349-352
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は初診時80 歳の男性.右下・左上大臼歯部の排膿および左下可撤性義歯部の咀嚼困難を主訴に来院.7 6||4 5 6|6 7部はインプラントを支台とした固定性補綴装置にて治療を行った.咀嚼機能の変化を客観的に評価するため,咀嚼能力値および最大咬合力を測定した.測定は術前・最終補綴装置装着時・5年経過時に行った.
    考察:術前に比較して,最終補綴装置装着時および5年経過後の咀嚼能力値・最大咬合力が大幅に改善していることから,良好な予後が得られていると考えられる.
    結論:下顎両側遊離端欠損症例に対し,インプラントを用いて咬合支持の再建を行い,咀嚼障害を改善することができた.
  • 竜 正大
    2013 年 5 巻 3 号 p. 353-356
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は82 歳の女性.上下顎無歯顎で上顎骨左半側に網目状の複雑な欠損腔を有し,義歯は維持,安定不良であった.顎義歯新製にあたり,各個トレーを用いて精密印象採得し,試適後には咬合圧印象を行った.また義歯製作と並行して構音訓練を行った.
    考察:各個トレーを用いた精密印象および咬合圧印象により欠損腔内のアンダーカットを有効に利用し機能的な形態を義歯に付与できた.また義歯製作と並行して構音訓練を行ったことで早期に障害の改善が認められたと考えられる.
    結論:複雑な欠損腔を有する上顎顎欠損症例に対し欠損腔内のアンダーカットを利用し義歯の維持を向上させた.また構音訓練を並行して行いQOL を向上させた.
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